第331回(8月30日) 3日に内閣改造断行 大幅なマイナス成長
 第2次安倍内閣は8月17日に600日を超過。首相は9月3日に自民党役員人事と内閣改造を断行します。党3役は総入れ替え、18閣僚の半分以上は交代、女性を多数起用する方針。首相は大幅な人事刷新で求心力を高め、政権運営に意欲満々で取り組みます。消費増税に伴う駆け込み需要の反動減から思うような回復が見込めず、大幅なマイナス成長。おまけに円安による輸入穀物や原油の高騰、台風・長雨による野菜など生鮮食品の高値続きが庶民生活を圧迫。各省は落ち込んだ個人消費の回復を目指し、8月末の2015年度予算の概算要求額は初めて100兆円を突破、政府は成長戦略の構築に懸命です。国際情勢は、ロシアのウクライナ侵入、中国の軍事力を背景とした海洋進出など露・中両国の地域覇権主義が新しい冷戦の様相を深めています。秋の臨時国会はこうした内外の緊迫情勢を受けて与野党論戦が一段と活発化しそうです。一層のご支援、ご教唆をお願い申し上げます。

入閣要請は組織人として当然受託
 改造内閣の焦点は石破茂幹事長の去就でしたが、8月29日の首相と石破氏の首脳会談で、石破氏は「入閣の打診(要請)があれば組織人として当然受託する」と述べ、全力で政権を支える意向を表明しました。これにより石破氏は地方創生担当相など重要閣僚で処遇される見通しです。マスコミは、石破氏の後任に細田博之元幹事長の再任、内閣の要である麻生太郎副 総理兼財務相、菅義偉官房長官、甘利明経済再生相の3閣僚に加え、岸田文雄外相も留任、小渕優子元内閣府特命担当相が党3役入り、高市早苗政調会長は入閣――などと女性を多く起用する大幅刷新人事を予想。派閥推薦人事にはほとんど耳を貸さず、老・壮・青のバランスを考慮した適材適所の人財を「1本釣り」して配置すると、見ています。また、首相は集団的自衛権を限定容認する法制化と地方創生を担当する両新ポストを重視、安全保障に精通した石破氏を安保法制担当相に起用して閣内に封じ込め、来年9月の総裁選で再選を果たす構えだと、マスコミは一斉に報じました。

首脳会談で対立の先鋭化回避
 これには石破氏側近から「国会答弁用の格下げ人事」との反発や、「無役になり、自由な立場でポスト安倍に備える方が得策だ」との声が上がり、森喜朗元首相ら政界を引退した党長老も「総裁の目がなくなる。幹事長を続投すべきだ」と警告していました。そこで石破氏は25日のTBSラジオで、「首相と100%考え方が一緒の人が答弁するのが一番望ましい」と安保担当相を固辞し、「(来春の統一地方選で)きちんと勝ち、(この先の福島、沖縄両県の)知事選も勝てるよう、私としてはやりたい」と述べ、幹事長続投の意欲を示しました。政府が集団的自衛権行使を限定的に容認するのに対し、石破氏には、より幅広く容認すべきだという持論があり、野党時代に自身が主導してまとめた「国家安全保障基本法案」を優先して成立させる意向が強く、野党が国会審議でこの点を追及する懸念がありました。このような首相、石破氏双方の確執から、プレ総裁選の神経戦的な様相を呈していましたが、党内対立の先鋭化を避けるため、首脳会談で虚心坦懐に話し合った結果、石破氏が全面協力を申し出、挙党体制を固めたものです。

海江田降ろし乗切ったが党内不満
 連立の公明党は21日の党大会で、山口那津男代表の任期切れに伴う代表選を行いますが、他に立候補の動きがなく、山口氏の4選が確実です。大会では次期衆院選での勇退が見込まれる
井上義久幹事長と漆原良夫国対委員長の後継人事が焦点ですが、井上氏の後任には斉藤鉄夫幹事長代行の昇格、後任国対委員長には大口善徳国対委員長代理か高木陽介広報委員長の名が 挙がっています。閣僚人事は太田昭宏国交相の留任を求める考えです。7月末の両院議員懇談会での「海江田降ろし」をどうにか乗り切り、続投が決まった民主党の海江田万里代表は、安倍改造内閣の顔ぶれを見て、大畠章宏幹事長の交代を含む9月人事を行い、野党共闘の筋書きを描く構えです。しかし、人事が秋の臨時国会以降の野党共闘を進める鍵となるだけに、岡田克也前副総理(元代表)が8月20日のBS番組で、「早く執行部を決め、他野党との連携を今からやっていかないと、国会が始まってからでは遅い。危機感がどこまであるのか、非常に気になる」と苦言を呈したように野党第1党の民主党(衆院55、参院58、計113人)内では優柔不断な海江田氏に対する不信が強まっています。マスコミの一部は、1強他弱という野党の体たらくを見据え、首相が11月の沖縄知事選と併せ衆院を解散、衆参3分の2以上の改憲勢力を確保し長期政権を狙うと観測しています。

維新・結いの党は自民寄りの政策
 確かに次期衆院選に向けた野党各党の擁立作業は遅れ、「空白区」は全295選挙区のうち96に上るのに、民主党と維新の会、みんなの党など4野党との間の「競合区」は40以上も数え、共倒れ防止には野党間の選挙協力が最優先課題。野党再編の狙いは非自民票の受け皿を1つにまとめる新党が結成されるかどうかです。9月に合流を目指す日本維新の会(橋下徹代表)と結いの党
(江田憲司代表)は8月20日の会合で、61項目からなる新党の「政策素案」をまとめました。新党は衆院41、参院11、計52人の勢力で野党第2党になりますが、江田氏は民主党の玄葉光一郎前外相や安住淳元財務相らに、「次期衆院選前には民主党も解党して、新党に合流すべきだ」と迫っています。政策素案は@憲法改正発議(96条)のハードルを下げ、改正により道州制、首相公選制、
一院制国会など統治機構の改革A日米同盟を機軸に現行憲法下で可能な自衛権行使のあり方を具体化B原発推進施策を廃止し、市場メカニズムを通じた原発フェードアウトと既存原発に世界最高の原子力技術を維持C外需を取り込むTPP・FTA(自由貿易協定)等の経済連携を主導――など集団的自衛権行使の関連法整備や憲法改正の方針を掲げ、安倍内閣との協力姿勢を強く打ち出しました。

マイナス成長克服の戦略を構築
 内閣府が8月13日に発表した4〜6月期の実質国内総生産(GDP)は1〜3月期に比べ1・7%減と、2四半世紀ぶりの大幅マイナス成長。年率換算では6・8%減で、東日本大震災発生の2011年 1〜3月期(年率6・9%減)以来の落ち込みです。消費増税(4月実施)後の消費の回復が鈍く、アベノミクス効果による好景気は失速気味で、来年10月に予定される10%への消費税率2%アップに悪影響が懸念されています。政府は2%アップの判断材料となる7〜9月期の実質GDPを高めるため、景気浮揚の成長戦略構築に全力を挙げ、8月末決定の来年度予算の各省概算要求は100兆円を突破、今年度の補正予算案編成も検討しています。政策面では農業・雇用・医療・中小企業振興など地方創生の施策を柱に据えています。しかし首相が「対話の窓口はいつもオープンだ」と呼びかける対中国の戦略的互恵外交や、対韓国の未来志向型外交も歴史認識の相違によって11月に北京で開くAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の際の日中、日韓の両首脳会談は開けそうもなく、北朝鮮が9月初めに拉致被害者再調査の特別委報告を行う、日朝協議も確かな成果は期待薄と見られます。山梨県の別荘で長期夏休みを取り、英気を養い人事構想を練った首相ですが、改造人事は党内、国民の支持を得る“吉”と出るか否か。課題が山積しているだけに前途は多難です。

法王に接見できず、万博施設視察
 首相に劣らず8月は私も外遊が多く、1〜4日の西アフリカ・モーリタニア訪問に次いで、17〜24日まで衆院の消費者問題等調査議員団(山本幸三団長=自民3野党2人)に参加し、イタリア各地を訪問しました。イタリアの食品安全など消費者行政の実態と2015年に開催するミラノ万博の施設状況を視察するのが目的。ローマでは下院議場視察後、国連食糧農業機関(FAO)とコーデックス委員会(CAC)で意見交換、イタリア保健省食品安全局食物管理部長から説明聴取、イタリア消費者団体と懇談。フィレンツェでは革製品工房(シセイ)と日本企業・クイーポ社を視察、在留邦人との意見交換。ミラノでは市文化・ファッション・デザイン委会委員長やEXPO 2015 評議委会委員長、消費者利用者国家評議会のロンバルディア州代表、在イタリア日本商工会議所、ジェトロ担当者との意見交換、ミラノ万博会場の日本館建設会場を視察しました。もう1つの目的は、2年後の世界文化遺産に「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎・熊本両県)の推薦が決まったためバチカンではフランシスコ・ローマ法王に謁見し中村法道長崎県知事、田上富久長崎市長から預かった協力要請書を手渡し直々にお願いする考えでしたが、法王はあいにく14〜18日まで韓国を訪問、すれ違いになったため私は出発前、協力要請書をバチカン駐日大使に手渡しました。

教会群文化遺産で観光・街興し
 文化審議会の世界文化遺産・無形文化遺産部会は7月10日、2016年の国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会に、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の推薦を決定しました。関係省庁連絡会議で正式決定し、9月末までにユネスコに暫定推薦書、来年2月1日までに正式な推薦書を提出します。「教会群」は16世紀のキリスト教の繁栄やその後の弾圧を示す城跡、禁教下で信仰を守った集落、19世紀の宣教再開後の教会という3分野の13資産で構成。
島原の乱(1637年〜38年)で信者が立てこもった「原城跡」(長崎県南島原市)、禁教を潜り抜けた信者が1865年に外国人神父に信仰を明かしたことで知られる「大浦天主堂」(長崎市)が含まれます。同審議会は昨年も「教会群」を2015年の推薦候補に選びましたが、内閣官房に新設された有識者会議が挙げた「明治日本の産業革命遺産」(福岡・佐賀など8県)と競合し、首相の出身地山口県も含む「産業革命遺産」が15年の候補に決まっています。この「産業革命遺産」にも長崎市の『軍艦島』と呼ばれる「端島炭鉱跡」や「長崎造船所」が構成資産にされており、私は2年にわたる両遺産のユネスコ指定を実現しようと積極的に取り組んでいます。日本の世界文化遺産は昨年の富士山や、今年6月に登録された「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県)で14件。自然遺産を含め18件に上り、2千万外人客誘致の「観光立国」と「街興し」の貴重な資産になっています。