第330回(8月9日)焦点は幹事長の処遇 地方創生が成長戦略
 猛暑とゲリラ豪雨続き。皆様のご健勝を祈り上げます。第2次安倍政権が1年7ヶ月を超え、首相は9月第1週に内閣改造・党役員人事を断行します。改造では安全保障法制と地方創生の両担当相を新設、秋の臨時国会にアベノミクス第3の矢「成長戦略」の柱である、地方創生の関連法案を成立させる方針です。人事の焦点は石破茂自民党幹事長が留任するか、又は首相の意向 を受け入れ安保法制相に就任するかの石破氏処遇と、党3役や閣僚に女性を何人起用するかに絞 られます。人心一新が成功し求心力が高まれば今後の政局運営は安定しますが、国際情勢は緊迫し秋の日中・日韓・日露首脳会談、日朝協議は全て明確な見通しは立っていません。また景気の好循環を持続するための成長戦略が確立できなければ、来年10月の消費増税2%アップの筋書きが狂いかねず、安倍政権の正念場は続きます。野党第1党の民主党は海江田万里代表の続投が決まり、日本維新の会を分党した「次世代の党」は平沼赳夫を代表に再出発しました。一層 のご支援をお願い申し上げます。

 財界首脳連れトップセールス外交
 「国際社会で影響を高めている中南米は、私の地球儀俯瞰外交に欠かすことの出来ないパートナーだ」――首相は中南米5カ国歴訪を終えた2日、ブラジル・サンパウロでの記者会見で外遊成果を強調しました。榊原定征・経団連会長(東レ会長)、三村明夫・日商会頭(新日鉄住金相談役)ら財界首脳約70人の「経済ミッション」を引き連れた首相は、ブラジルでは南東部沖の海底油田開発で油田開発に必要な浮体式構造物(メガフロート)や、サンパウロ地下鉄建設などに、日本企業が受注出来るよう技術協力で合意、今後5年で60兆円超のインフラ整備を計画するメキシコでは、石油・天然ガス開発の協力で一致するなど、中南米市場にトップセールスを敢行しました。日本首相の中南米訪問が途絶えていた過去10年間に中国は資源や食糧の調達先として活発な経済進出を行い、特に習近平国家主席は昨年と今年の2回も中南米7カ国を訪問、ブラジルにとって中国は最大の輸出国で輸出額は日本の5倍に達しています。日本は1908年(明治41年)のブラジル移民以来、中南米全体で180万人の日系人を擁し、日本には良いイメージを持っていることから、首相は遅ればせながら巻き返しに出たものです。首相の地球儀俯瞰外交47カ国に達しました。

 日・中・韓・露首脳会談に赤信号
 首相は2日の記者会見で、@積極的平和主義(集団的自衛権行使の限定容認)はいずれの国からも強い支持を得たA11月の北京でのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の際に日中首脳会談が出来ればいいBG 7(先進7カ国)と連携し、ロシアに行動を促していくためにもロシアと意思疎通を図り、平和的、外交的な解決に向けて役割を果たす――と述べ、「日中は戦略的互恵関係の原点に立ち返るべきだ。懸案があるからこそ対話すべきで、静かな努力を続けることも大事。対話のドアは常にオープンだ」とし、習国家主席とは一度も実現していない日中首脳会談に意欲を見せました。しかし、習国家主席は7月初旬、伝統的友好国の北朝鮮よりも先に韓国を訪問、安倍首相の靖国参拝など歴史認識や従軍慰安婦問題で「反日共闘」の中韓協調路線を演出、APECの際の日中・日韓両首脳会談は絶望的です。北方領土問題を話し合う秋の日露首脳会談も、ウクライナ問題で日本が欧米と連携して対露制裁に踏み切ったことから、プーチン大統領の来日すら危ぶまれています。拉致問題解決の日朝協議も、結果を待たず日本が一部制裁を解除したにも関わらず、北朝鮮が19回もスカッドなどの弾道ミサイルを発射、「いつでもワシントンをミサイルで攻撃できる」と挑発し、米韓の合同演習や日米韓の連携を牽制しています。経済外交では成果を上げた首相ですが、臨時国会乗り切りのため人心を一新し成長戦略を推進しなければなりません。

9月第1週に党役員・内閣大改造
 ブラジルの記者会見では当面の課題として、「内閣改造・党役員人事を9月第1週に断行する。経済最優先に変わりはない」と人事刷新、成長戦略構築の決意を表明しました。インドのモディ首相が来日し、1日に首脳会談を予定しているほか、6〜8日には安倍首相がバングラデシュ、スリランカ歴訪を控えていることから、9月第1週の2〜5日間に人事を断行するもので、1昨年12月の第2次内閣発足以来、1人の閣僚も交代していないため、18閣僚の半数を超える大改造になる見通しです。現在党3役には野田聖子総務会長、高市早苗政調会長、閣内に稲田朋美行政改革相と3人の女性が活躍していますが、首相は少子高齢化、人口減対策の一環として、財界に3割の役員起用を要請するなど「女性活用」の姿勢を堅持しており、稲田氏の党3役へ差し替えや、統一地方選向けに人気の高い小渕優子財務副大臣(元内閣府特命担当相)の再入閣または3役入りが取り沙汰されています。首相は7月24日に官邸で石破幹事長と会談した際、幹事長交代と安全保障法制担当相への就任を打診、石破氏が回答を保留したと言われています。石破氏は防衛庁長官や防衛相を歴任した安保の専門家で新ポストに適任との声が多いのは事実ですが、この点、石破氏は「安保担当相に『あの人が望ましい』などと申し上げて首相の人事権に干渉しては絶対にならない」と記者会見で語り、打診の有無すらノーコメント。首相もチリの記者会見で、「官房長官は大黒柱だが、全くの白紙、幹事長も全く決めていない」と記者団を煙に巻きました。

統一地方選に勝利し解散も視野
 改造人事の焦点は石破氏処遇の1点に絞られています。首相と石破氏は2012年9月の党総裁選を争ったライバル。石破氏は地方票でトップに立ちながら国会議員による決選投票で首相に逆転された苦い経験を持ちますが、幹事長就任以来、献身的に協力して同年12月の衆院選で政権を奪回、昨年7月の参院選も大勝して衆参両院の「ねじれ」を解消した功労者。上げ潮の首相は、集団的自衛権容認の法制化を実現、来春の統一地方選を勝利して9月の総裁選で再選を果たし、長期政権で念願の憲法改正を実現する構えです。それには安保問題超ベテランの石破氏に法制化と国会答弁を任せて閣内に封じ込め、総裁選再出馬を断念させるのが一石二鳥の策。混乱すれば総裁選直前の夏に衆院解散か、2016年の衆参同時選挙など多彩な戦略を描いているようです。先の滋賀県知事選で民主党の実質支援候補に惜敗したのを契機に、政権中枢を担う両者の間には微妙な距離感が生じたと見られます。

改造は来年総裁選前哨戦の様相
 さてマスコミはどう見ているか。共同通信は「11月の沖縄県知事選に向けた候補者調整でも党本部の意向を振り切って地元県連が仲井真弘多知事の擁立を決めるなど、首相サイドが石破氏の調整能力に疑念を持ち始め、隙間風が吹いている」と指摘。読売は石破氏の側近が「外相など重要閣僚の兼務がないと国会答弁に利用されるだけで『格下げ』になる」と反対していると報じ、首相の兄貴分・森喜朗元首相が「党の信頼が大きくなった石破幹事長の続投が望ましい。2人で胸襟を開いて話し合ったらどうか」と述べた、と企画記事で取り上げました。4年前に引退した後も国会近くの砂防会館に事務所を構え、政官界に隠然たる影響力を持つ青木幹雄元自民党参院議員会長も、「石破氏の入閣は首相に屈服したことを意味し、総裁の可能性を失う」と警告、5日の全国幹事長会議でも石破氏続投を求める意見が多く出されました。一方、石破氏の外相兼防衛担当相や首相腹心の菅義偉官房長官の幹事長説も浮上。各派閥は各地で夏季研修会を開き結束を固め、改造人事は来年総裁選の前哨戦の様相を呈しています。だが、防衛白書を見ても安保の法整備は喫緊の課題。人事抗争に暮れる暇はなく政権与党が一体となって取り組む体制を構築することが望まれます。

政府特使で西アフリカ訪問強行軍
 前号のHP でお知らせした通り、私はモーリタニアのアブデルアジズ大統領の就任式典に政府の特派大使として出席するため、8月1〜4日まで西アフリカを訪問しました。ホテルにも泊まらず、往復ともビジネスクラスの機中泊という、とんぼ返りの強行軍でしたが、至って元気。就任式当日の2日午前、安倍首相から預かった大統領再選・就任の祝辞を大統領に手渡し、30分にわたり漁業分野を中心に両国の協力関係を強化したい旨を伝えました。大統領からは「ヤマハによる協力も含め、これまでの両国間の協力関係が多岐にわたり非常に良好であり、日本の協力に感謝する」との謝意表明があり、会談後は現地メディアのインタビューを受けました。国立競技場で開かれた2日午後の就任式典には、近隣国の首脳、各国の特使に加え、約4千人の観衆が見守る中、就任の宣誓が行われ、最後に政府特使の私を含め、各国代表が大統領に直接挨拶し、祝意を伝達しました。モーリタニア・日本友好議連のザーメル会長(与党の下院議員)との意見交換で、ザーメル氏は「モーリタニアの議連は国別にあり、上下院や与野党の区別なく、モーリタニアの共通利益を求めて活動している」と議連の取り組みを紹介、同会長が私の滞在中、接遇をしてくれました。

 蛸壺生産・漁業振興で意見交換
 旧知のジャハール住宅公社総裁(前在日モーリタニア大使)には、日本から持参した長崎で実際に使われている蛸壺を見せつつ、モーリタニアの蛸壺生産、漁業振興について意見を交換しました。モーリタニアは世界でも名高い蛸漁の拠点地ですが、粗末なプラスチックの蛸壺を使用したり、冷凍施設がないため鮮度は落ちて輸出が出来ず、土産に貰った生蛸もアイスボックスが溶解して帰郷まで鮮度が保てず、残念ながら廃棄処分にしました。ヤマハ発動機(柳弘之社長)は創立以来半世紀にわたり、10カ国以上に発動機を売り込む傍ら、スポーツ振興財団を作り、モータースポーツ、マリンスポーツばかりか、サッカー、ラグビーなどスポーツ全般の普及に貢献してきたグローバルビジネスです。これからは漁船の冷凍設備、漁港の保存施設の整備にもテコ入れしてほしいと考えています。

今回から都合により、不定期の更新となりますことをお断り申し上げます。