第328回(7月16日) 集団的自衛権行使を限定容認 日朝協議山場
 自衛隊発足60年記念の7月1日、政府は臨時閣議で集団的自衛権の行使を限定容認する新たな政府見解を決定しました。中国の軍拡による海洋進出、北朝鮮の核・ミサイル開発などに対処、尖閣諸島周辺グレーゾーン事態への対応能力を高め、抑止力の向上を図るものです。政府は年末の日米防衛協力の指針(ガイドライン)の改定作業を加速するとともに、来年の通常国会に関連法案を一括提出する方針です。戦後日本の安全保障政策の大転換を迎え、野党は14,15両日の衆参両院予算委員会の閉会中審査で、憲法解釈問題を厳しく追及しました。一方、安倍政権が重要課題に掲げる拉致問題を巡り、日朝協議で北朝鮮が特別調査委員会を発足させたことを、首相は「国家的決断、意思決定できる体制」と評価し、制裁の1部解除を決断しました。このように外交・防衛分野で得点を上げている首相ですが、新成長戦略を15年度予算でどう具体化し、同年秋の消費税率10%への増税に結びつけるか。私は党政調副会長として日夜努力中です。一層のご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

中国軍拡念頭に抑止力強化を強調
 「平和国家としての歩みをさらに強いものにする。国民の命と暮らしを守るため、切れ目のない(シームレス)安全保障法制を整備する」――首相は限定的容認の政府見解を閣議決定した1日、テレビ記者会見の冒頭でこう述べ、日本が再び戦争をする国にはならないと断言、憲法解釈変更については「現実に起こりうる事態において何をなすべきかという議論だ。万全の備えをすることが日本に戦争を仕掛けるたくらみを挫く。これが抑止力だ」と中国の軍拡などを念頭に、抑止力の強化を強調しました。首相の言う「積極的平和主義」です。新聞紙面1ページ分に相当する政府新見解は、集団的自衛権行使の歯止め策として限定容認に該当するものに@日本と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される「明白な危険」があるA国民を守るために他に適当な手段がないB必要最小限度の実力の行使――の新たな3要件を掲げています。

3要件なら武力行使の8事例可能
この3要件を満たせば、自衛隊による多国籍軍などへの後方支援の拡充、国際平和維持活動(PKO)などで離れた場所の民間人らを助ける「駆けつけ警護」、漁民に扮した武装勢力による尖閣諸島など離島占拠といったグレーゾーン事態でも、自衛隊が素早く活動できるようになります。また、先の記者会見で首相が国民に図解で説明した@在留法人輸送中の米輸送艦の防護A武力攻撃を受けている米艦の防護B弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護C米本土が武力攻撃を受け、我が国近隣で作戦を行う米艦防護D武器を輸送する船などの強制的な停船検査Eグアム、ハワイなど米国に向け我が国の上空を横切る弾道ミサイル迎撃Fシーレーン(海上交通路)の機雷掃海G民間船舶の国際共同護衛――など従来の憲法解釈では容認されなかった集団的自衛権(武力)行使の8事例が可能になります。この方針に米国はもとより、豪州、東南ア(ASEAN)諸国も「平和に貢献する」と大歓迎です。

みんなの党、維新の会も基本的賛成
 安保法制与党協議会(座長・高村副総裁)は先月末までに11回開き、「平和政党」公明党が最後まで慎重姿勢をとり続けましたが、前号までのHP で詳しく説明した通り、自衛権発動3要件の「おそれ」を「明白な危険」に改める歯止め措置を入れた高村修正案を最後には受け入れて合意、山口那津男代表も閣議決定に関し、「従来の政府の憲法解釈との論理的整合性、法的安定性を維持し、憲法の規範性を確保する役割を公明党は果たすことが出来た」と満足しています。みんなの党や日本維新の会の橋下徹氏系、石原慎太郎氏系の平沼赳夫氏ら、分裂した同会の双方とも、限定容認に基本的に賛成し、関連法整備に向けた国会審議にも前向きな姿勢を示しています。だが、共産、生活、社民の3党はいずれも反対姿勢を明確にし、閉会中審査では激しく反発しました。野党第1党の民主党は解釈変更を批判しながらも集団的自衛権行使の党内意見がまとまらず判断を先送りし、質疑も迫力に欠けました。

担当相新設し通常国会に一括提出
 閣議決定を受けて政府は2日、自衛隊の具体的な活動内容を定める関連法案の「作成チーム」を国家安全保障会議(NSC)事務局「国家安全保障局」に設置しました。作成チームは兼原信克、高見沢将林の両国家安全保障局次長(官房副長官補)をトップに内閣官房、外務、防衛、国交、警察など各省庁の約30人で構成、秋までに法整備の全体像をまとめる方針です。年末の日米ガイドライン改定見直し作業も睨みながら、出来れば秋の臨時国会にPKO 協力法改正案を提出、集団的自衛権に直接かかわる法案は全て来年の通常国会に提出する考え。提出法案は自衛隊法(邦人救出、集団的自衛権関連の出動規定、平時の米艦防護)、武力攻撃事態法、周辺事態法(武力行使と一体化の適用緩和)、船舶検査活動法(臨検)、海賊対処法、防衛省設置法、NSC 設置法の各改正案など17〜18本に達する見通し。首相は5日の読売インタビューや11日の外遊先会見で、9月の内閣改造では安全保障法制と地方創生の担当相を新設、国会答弁の総括責任者に任命、関連法案は来年の通常国会に一括提出する考えを示しました。安保法制の担当相は与党安全保障法的基盤再構築協議会座長の高村正彦副総裁か、幹事長を続投しない場合の石破茂氏(元防衛相)が有力です。

ガイドライン改定で日米同盟深化
小野寺五典防衛相は11日、米国防総省(ペンタゴン)でヘーゲル国防長官と会い、ガイドラインの骨格となる中間報告を早期(秋の臨時国会開幕前後)に公表することで合意。ヘーゲル氏は「大胆で歴史的な決定により、日本は地域や世界の安全保障への貢献を飛躍的に増大する」と記者会見で評価しました。現行の日米ガイドラインに基づく周辺事態法では、武力行使との一体化を恐れて紛争地から遠く離れた「後方地域」での輸送や補給しか出来ず、戦闘に向かう米戦闘機の給油や整備は日本の領土ですら認めていませんでした。それが17年ぶり年末に改定する新ガイドラインでは空中給油や米艦防護が可能になり、日本上空を横切り米国に向かう弾道ミサイルを自衛隊が迎撃することも認められ、尖閣諸島周辺グレーゾーン事態防衛や朝鮮半島など日本周辺の有事で自衛隊と米軍の統合作戦が練り上げられて抑止力が強化され、日米同盟は深化します。首相は「日米同盟は全く次元の違うものになる。集団的自衛権行使はものすごい抑止力になる」と側近に漏らしています。中国外務省の報道局長は「日本が中国の脅威をでっち上げ、国内の政治日程を続けるのは反対だ」と日米連携による中国封じ込めを警戒。韓国外交省報道官も「日米同盟の枠内で地域の平和を害さない方向で、透明性をもって推進すべきだ」との声明を発表しました。

ミサイル5回発射し中韓・日米牽制
中国の習近平国家主席は3日、かつての友邦・北朝鮮より先に国賓として韓国を訪問しました。朴槿恵大統領とは5度目の会談で蜜月関係にあり、中韓首脳会談では、5月下旬に打ち出した「中国主導のアジア安保秩序構想」(アジア安全観)をもとに安全保障や経済などの諸政策を提示、韓国を日米両国から切り離す手に出ました。「アジア・リバランス(再均衡)政策」を打ち出したオバマ米大統領は中韓の急接近によって、日米・米韓両同盟を軸とする北東アジアの安全保障や対北朝鮮政策での日米韓連携が揺らぐことを懸念しています。北朝鮮は3日の中韓首脳会談や16〜21日の米韓合同航空機迎撃訓練に向けて3月3,26日と6月29日、7月9,13日の5回、日本海に射程5百キロの短距離弾道ミサイル・スカッドや同1300キロのノドンを2発づつ撃ち込み、習氏らの中韓首脳会談と同盟関係の日米韓連携を牽制しました。北朝鮮は先の核実験以来、各国の制裁措置を受け経済状態は深刻です。

孤立脱却に拉致問題の切り札使う
特に2001年以来最悪とされる旱魃に見舞われ、麦やトウモロコシなど穀物生産に被害が続出し外国からの支援は不可欠。金正恩第1書記は今年を「人民生活向上の年」と位置づけていただけに、中国からの食料援助が打ち切られたことは一般庶民階層にとって死活問題です。1日は北京で日朝協議が開催中でしたが、日本がミサイル発射に強く抗議したにもかかわらず、平然とスカッドミサイルを日本海に発射。計5回の発射はいずれも韓国との軍事境界線付近の別個の基地からの発射で、「何処からでも撃ち込めるぞ」とばかり韓国に脅威を与えました。北朝鮮は孤立状況を脱却するため、日本から日朝協議を中断されるリスクも顧みず、対日交渉の切り札である拉致問題のカードを有効に使ったと言えるでしょう。

権力中枢の安全保衛部が特別調査委
北朝鮮が1日に示した回答は、権力中枢である国家安全保衛部(秘密警察)のソ・テハ副部長をトップに人民保安部(警察)、人民武力部(国防)など政府機関の30人程度で特別調査委員会を設置、@拉致被害者A行方不明者B日本人遺骨問題C残留日本人・日本人配偶者――の4調査対象ごとに分科会を設け、最高指導機関の国防委員会から全ての国家機関まで調査する権限を持ち、必要なら日本側関係者と面談もし、今夏の終わりか秋の初めに最初の結果を報告、1年以内に調査を完了するというものです。首相は「国家的な決断、意思決定が出来る体制ができた」と評価、「行動対行動」の原則に立って3日、対北朝鮮制裁の1部解除を決断しました。解除は@人的往来の規制A政府への報告が必要な送金額(300万円超)や届け出が必要な現金の持ち出し額(10万円超)の規制B人道目的の北朝鮮籍船舶の入港禁止措置――です。これで在日朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の許宗萬議長ら幹部(国会議員格)が北朝鮮に渡航し、日本に再入国が可能にとなり、北朝鮮困窮者に対する在日親族からの送金が大幅に増えます。ただし貨客船「万景峰号」の入港禁止は継続されます。

北朝鮮は巨額な遺骨調査費狙う
 日本側は政府認定の横田めぐみさんら拉致被害者12人の究明を最重点に考え、被害家族は「これが帰国できる最後の機会」と捉えています。我が国の行方不明者は860人。民間の「特定失踪者問題調査会(東京)は全国で突如失踪した470人のうち「拉致濃厚」なのは77人も居ると判断しています。しかし、北朝鮮はこれまで「横田さんを含め8人は死亡、4人は入境の事実がない」と主張、めぐみさんの遺骨と称し送ってきた遺骨をDNA鑑定した結果、別人と判明。このように平然と嘘をつく国家です。今回発表した分科会の順位を見ても遺骨、残留日本人、拉致被害者、行方不明者の順に並べ、遺骨調査を最優先に取り組む姿勢です。これは過去の米国遺骨調査で、米国が1体につき2万ドル(2百万円)を支払ったと言われる経緯から、北朝鮮は「日本人埋葬地から数万人の遺骨を発掘した」として巨額な発掘・調査費を請求してくることも予想されます。またもデータを捏造し、DNA鑑定など手間と時間を浪費することがあっては、遺族は裏切られ、混乱を招くだけです。首相は「これはスタートでしかない」と述べ不誠意な態度なら制裁を復活させる考えです。

安倍政権は外交、内政で大車輪
 首相は6〜12日までニュージーランド、豪州、パプアニューギニアのオセアニア3カ国を訪問、豪議会で日本の首相として初めて英語で演説し、日豪首脳会談では経済連携協定(EPA)や防衛装備品の共同開発に関する協定に署名しました。就任以来22回、42カ国を歴訪した首相ですが、相変わらず外遊を重視し、月末にはメキシコ、ブラジルなど中南米5カ国を訪問します。一方、自公両党は「来年10月に消費税率を10%に引き上げる時に軽減税率を導入する」ことで合意していますが、与党税制協議会は8日から経済団体、消費者団体など46団体から集中ヒアリングを始めました。飲食料品のどこまでを軽減の対象とするか。取引ごとに税率や税額を細かく記すインボイス型とするか――などを聴取しています。解釈改憲の政府見解決定で各紙調査の内閣支持率はやや低下しましたが、安倍政権は外交、内政両面で大車輪の活躍を続けています。残念ながら13日の滋賀県知事選は自公両党の推薦候補が元民主党衆院議員に惜敗し、14,15日の閉会中審査で民主党を勢いづかせました。原発問題を抱える10月26日の福島、基地問題が問われる11月16日の沖縄の両県知事選、来年4月の統一地方選が迫っています。潮目が変わらぬよう、どうか自民党をご支援下さい。