第327回(7月1日)成長戦略決定 7月1日限定容認閣議決定
 通常国会は当初予定の重要法案を全て成立させ、会期延長をしないで閉幕しました。懸案の集団的自衛権行使問題は「限定容認」で公明党とようやく合意に到達。消費増税の駆け込み需要の反動減も予想より少なく、ボーナス商戦で需要が回復し、デフレ脱却は確かな足取りです。首相は経済の好循環を持続するため、アベノミクス第3弾の新成長戦略の構築に全力を上げて6月24日、「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」などとともに閣議決定しました。これには@企業の法人税実効税率を数年で20%台に引き下げA雇用、農業、医療分野でいわゆる「岩盤規制」の緩和B1億人の人口を維持するための抜本的な少子化対策――などを盛り込みました。政府は骨太方針をもとに2015年度予算編成に取り組みますが、首相は政策遂行に欠かせない適材適所の人材を起用するため9月に内閣改造・党役員人事を断行、政権の求心力を高める方針です。日本維新の会の分党で政界再編の動きが活発化し、長梅雨・冷夏の気象情報ですが政界は暑い夏を迎えています。ご支援下さい。

経済の稼ぐ力高める新成長戦略
 「デフレ脱却を確実にするために経済成長と財政健全化の双方を実現する取り組みを盛り込むことが出来た」――首相は政府の財政経済諮問会議が13日に公表した骨太の方針素案をこう評価、日本経済の「稼ぐ力」を高める新たな成長戦略「日本再興戦略」の最終案を16日に発表。「規制改革実施計画」と併せ3案を24日の臨時閣議で決定しました。骨太の方針はデフレ脱却を本格化させ経済の好循環に繋げるため@消費増税に伴う駆け込み需要の反動減への対応A雇用や賃金制度を検討する政労使の連携B人口減社会に対応した制度改革C財政健全化――の4課題を示し、デフレ脱却や国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字解消に向けた経済再生策を打ち出しました。アベノミクス第1の矢「大胆な金融緩和」、第2の矢「機動的な財政政策」に次ぐ第3の矢「成長戦略」は骨太の方針の根幹をなすもので、@法人税実効税率を数年で20%台へ引き下げA雇用・医療・農薬のいわゆる「岩盤規制」の緩和B女性の社会進出を促す税制、社会制度の見直しC外国人技能者制度の拡大――などが柱です。

医療・農業・雇用の岩盤規制緩和
次年度予算編成の骨格となる骨太の方針は自民党政権が2001年に導入し、官邸が主導する政策運営の象徴でしたが、民主党政権で廃止され、第2次安倍政権になってようやく復活しました。それだけに首相の思い入れは強く、産業の空洞化を招かないための法人税実効税率の引き下げ、少子高齢化で膨らむ社会保障費の財政支出抑制、混合診療を拡充する「患者申し出療養制度」(仮称)の創設、全国農協(JA全中)を新たな組織に移行する農協改革、仕事の成果で評価する新雇用制度の創設――など盛り沢山な「岩盤規制」緩和策を打ち出しています。育児など少子化対策と地方経済活性化にも力を入れました。中でも、成長戦略の切り札となる法人税実効税率の引き下げは、首相が6月の先進7カ国首脳会議(G 7 サミット)でも、対中露牽制の外交政策とともに国際公約に掲げており、“財界総理”に就任したばかりの榊原定征経団連会長ら財界人も法人税減税を高く評価しています。日銀が6月12〜13日に開いた金融政策決定会合では「消費増税の反動減は概ね想定の範囲内という声が企業から多く伝わる」とし世の中に出回るカネの量を2年で2倍にする「量的・質的金融緩和」(第1の矢)の継続を決めました。黒田東彦総裁は「現状の金融政策で、目標とする2%の消費者物価上昇率を実現できる」と記者会見で自信を深めています。

法人税減税の恒久財源は年末決着
 しかし法人税実効税率(約35%)の引き下げは、諮問会議の民間議員が中韓両国並みの25%程度を提言、首相周辺や甘利明経済財政相らが賛成したのに対し、財務省は10%も下げると5兆円近い税収減になると猛反発。麻生太郎副総理・財務相、野田毅・自民党税制調査会長が穴埋めの恒久財源をどう確保するかで慎重姿勢を崩さず、結局首相決断の形で「数年(3年程度)で20%台に引き下げる」ことで決着。前号のHPで触れた「外形標準課税の強化、租税特別措置の縮小」など財源確保策や具体的な税率は、年末の税制改正に先送りしました。2015年度予算編成では、国・地方合わせて2000兆円にも達するPBの赤字解消策が焦点となりなす。日本創成会議(座長=増田寛也・元総務相−岩手県知事)が先に発表した「人口減社会」像は、2060年代に地方は限界集落化が進んで財政赤字により約1千市が消滅、東京も出生率がさらに低下し、日本の総人口は1億人を切るという恐るべき内容。老齢者を扶養する将来世代の負担が4人に1人の騎馬戦型から1対1の肩車型に変わったのに加え年金未加入の非正規社員やパート・アルバイトが増えて年金を積み立てる若者がさらに減少。給付削減や負担増の年金改革を実施するとしても、賦課方式の年金制度は既に崩壊現象。労働力確保策に移民を解禁すべきだとの声も高まっています。

女性の雇用改革、年金の運用拡大
 そこで首相が議長の「産業競争力会議」がまとめた成長戦略は「人口減少社会への突入を前に、経済全体の生産性を向上させ、稼ぐ力(収益力)を強化することが不可欠」と総論で謳い、人口減対策推進本部を設け50年後も人口1億人を維持する方針。特に「女性の活躍促進と雇用改革」として@配偶者控除を見直し、学童保育を19年度までに30万人分拡充A一定の年収(1千万円程度)以上で高度な能力を持つ労働者に成果で評価する労働時間制度の創設B外国人技能実習制度の期間を3年から5年に延長し業種も拡充――などを挙げ、「科学技術イノベーションの推進」では介護や農業の人手不足解消と中小企業の生産性を向上させるロボットの開発を促進、20年に「世界ロボット五輪(仮称)」を開催。同年の東京五輪までに、国内免税店を1万点規模に倍増、「おもてなし」の外国人観光客を年間2千万人に倍増する計画です。「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」の公的年金を株式などへ運用拡大する案も示しました。首相は「これまで何度も挑戦し乗り越えられなかった壁を突き抜ける政策を盛り込めた」と大満足ですが、政策実現は大仕事になります。

機雷除去など8事例は対処可能
 最大焦点である集団的自衛権行使の憲法解釈見直し問題は、政府が17日、「限定容認」の新たな閣議決定原案を、「安全保障法制整備与党協議会」(座長・高村正彦自民党副総裁)に提示しました。政府原案は、13日の協議会で高村座長が公明党の意向を汲んでまとめた私案の「自衛権発動の3要件」を取り入れた上、新3要件に基づく武力行使は「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される『おそれ』がある」場合に限り、集団的自衛権の行使を容認すると明記しました。国連憲章第51条は「安保理が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間」の措置として、国連安保理事会への報告などを条件に、加盟各国の個別または集団的自衛権も行使を容認しています。政府原案は@武力攻撃に至らない侵害(グレーゾーン事態)への対応A国連PKO を含む国際協力(集団安全保障)など国際社会の平和と安全への一層の貢献B憲法9条の下で許容される自衛の措置――の3分野については、「国際法上は集団的自衛権に該当する」とし、今後の法整備の進め方を具体的に示しました。政府は先に15事例を提示しましたが、政府・自民党は「原案通りなら邦人輸送中の米艦防護やシーレーン(海上交通路)の機雷除去、米本土向けミサイル防衛など、政府が示した15事例中8事例は全て対処可能だ」としています。

拡大解釈の「おそれ」を公明修正
 これに対し「平和政党」を標榜する公明党は、停戦時ならペルシア湾の機雷掃海活動などは「警察権や個別的自衛権で対応できる」と主張し、慎重姿勢をとって来ました。だが、「覆されるおそれ」では、曖昧で実際には主観的な判断で拡大解釈し自衛権が行使されるのではないかと危惧し、「おそれ」の文言を限定的にするため「切迫した事態」などに修正するよう求めました。このため、高村座長が24日、自衛権発動の3要件について「おそれ」を「明白な危険」に改め、@集団的自衛権を発動する相手を「わが国と密接な関係にある他国」とより限定A武力の行使が許されるのは「自衛の措置」の場合に限られる点を明確化――するなど歯止め措置の修正案を提示しました。公明党はこれに異論を唱えず、30日の党合同会で執行部一任を取り付け、両党はようやく合意に達しました。首相は7月初旬に豪州を訪問するため、1日に同案を閣議決定。その後速やかに衆参両院予算委の閉会中審査を開いて集団的自衛権問題を審議する段取りです。湾岸戦争の際、日本は増税までして、130億ドル(1兆円以上)の巨額資金援助をしたにもかかわらず、評価されたのは海自が停戦時に行った機雷除去の掃海活動だけ。それゆえ首相は厳しいアジアの安全保障環境下にあって、「限定容認」で多くの事例が解消されて日米安保の抑止力が高まると期待、年末の日米防衛協力の指針(ガイドライン)の改定作業を急ぐよう指示しています。

民主内紛続行、みんなは再分裂か
 日本維新の会は22日に大阪市で開いた臨時党大会で7月末に分党することを正式に決定、地方発の政党は1年9ヶ月の寿命でした。一方、民主党代表選の立候補要件緩和を求める若手の署名運動は、同党全議員115人の5分の1の23人しか署名が集まらず、「海江田降ろし」はやや失速気味。海江田万里代表に近い郡司彰参院議員会長の無投票再選が決まったことが影響したと見られます。だが、蓮舫元行政刷新相ら参院議員約10人は18日に海江田氏と会い、代表選の前倒し実施を申し入れました。24日の両院議員総会では、海江田氏が「7月の総会で総括する」と確約、代表選の前倒しは一応回避されましたが、依然、海江田降ろしは燻ぶっています。みんなの党も浅尾慶一郎代表が進める政府与党との連携路線に反発した野党再編派の衆院議員1人が離党するなど「再分裂」の様相が目立ってきました。国会は改正地方教育行政法、医療・介護総合推進法など重要法案を含む内閣提出法案が過去10年最高の97・5%も成立、議員立法も憲法改正手続きの改正国民投票法が成立しました。首相は国会閉幕後の24日の記者会見でこれらの成果を自讃し、集団的自衛権の限定的容認、新成長戦略、骨太の方針について国民に理解を求めました。野党が集団的自衛権の容認問題を巡って両院の閉会中審査を要求したため、まだまだ暑い日が続きます。