第326回(6月16日)外交は順調な成果 安保の与党協議は難航
 5月末のシンガポール、6月初めのブリュッセルG7 サミットで首相は「力による現状変更は認めない」と中露を牽制する演説をし、発言内容をそのまま首脳宣言に盛り込むことに成功しました。拉致問題を討議する北朝鮮との交渉も再開。7月下旬から8月にかけてはメキシコやブラジル、チリなど中南米5カ国も歴訪、“韋駄天走り”のように、トップセールスの「地球儀俯瞰外交」を月1回ペースで展開しています。こうした外交成果に加え、消費増税の駆け込み需要の反動減からも次第に回復。首相は自信を深め、今月中にアベノミクス第3弾の新成長戦略を策定し、国会閉幕後は内閣・党役員人事を断行する構えです。しかし、国際公約した集団的自衛権行使の憲法解釈見直しは与党調整が難航、国会会期中に閣議決定できるか微妙。日米が合意した日米防衛協力の指針(ガイドライン)の年内改定も困難が予想されます。政府与党は経済の好循環を維持するため、雇用制度、農業、混合診療など、首相がいう“岩盤規制”の緩和や基礎的財政収支の赤字解消などに全力を挙げています。私は政調副会長としてこれら課題と取り組んでいます。宜しくご指導下さい。

力による現状変更は認めぬと首相
 首相は5月末から6月上旬にかけ、またも外遊に精を出しました。ベルギーのブリュッセルで開いた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット) は6月4日開幕。夕食会の討議で、首相は中国が沖縄の尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返し、南シナ海でも海洋進出を行っている問題や、ウクライナ情勢について、「我々は力による現状変更は認められないとの強いメッセージを出している」と述べ、国際法遵守の重要性を訴えました。この発言が評価され、首脳宣言は@ウクライナ大統領選の成功を歓迎し、経済発展を支援A同国の主権と領土を侵害するロシアを非難し、情勢が悪化すれば制裁強化を用意B東シナ海、南シナ海の航行・飛行の自由、法の支配の重要性を強調C北朝鮮の核・ミサイル開発を非難し、拉致問題を含む人権侵害に速やかな措置を要請――などが骨子です。5日は外交政策のほか世界経済やエネルギー、気候変動問題などを討議しました。G8サミットは本来、ロシアのソチでプーチン露大統領が議長で開く予定でしたが、ロシアによるクリミア編入に抗議し、欧州連合の主宰でロシアを除いてG7として開催され、メルケル独首相が議長を務めました。

東南アの海洋監視能力強化を支援
 首相はこれに先立ち、5月30日にシンガポールで開いたアジア安全保障会議(英国際戦略研究所主催)で演説し、フィリピン向けに新しい巡洋艇10隻を提供するなど、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国が海洋監視能力を強化するのを支援する方針を表明しました。首相は@国家は法に基づいて主張するA主張を通すために力や威圧を用いないB紛争解決には平和的収拾を徹底する――と「海洋の法の支配」の3原則を挙げ、東・南シナ海の資源開発で挑発を続ける中国を牽制しました。この発言はG7サミットの首脳宣言に取り入れられました。この後イタリアを訪問、日伊首脳会談後にはバチカンの法王庁でフランシスコ・ローマ法王と会談、江戸時代の「隠れキリシタン」が使った「魔鏡」を贈呈しました。法王との会談は09年の麻生首相以来5年ぶり。7月下旬にはメキシコ、ブラジル、トリニダード・トバゴ、コロンビア、チリを歴訪、15年10月の国連安保理事会の非常任理事国選挙に立候補することへの理解を求めます。首相の外遊については各党も理解を示し自・公・民・日本維新の会の4党は、5月22日の実務者協議で首相の国会出席を軽減する国会改革案で大筋合意し秋の臨時国会から実施する方向です。参院とは別の改革案は首相出席の国会審議を衆院予算委の基本的質疑や集中審議に絞り、代わりに党首討論を充実させ、原則月1回開催するという内容。議員立法をより積極的に審議することも盛り込んでいます。

グレーゾーン事態は運用改善で
 中露の地域覇権主義で、世界の安保環境は危うい状況にありますが、日米安保条約の抑止力を強化するため、政府は防衛協力指針(ガイドライン)を17年ぶりに年内に改定することで、日米間が合意。「安全保障法制整備与党協議会」を週2回に増やし、精力的に協議を続けています。これまでの協議では、政府が示した15事例のうち、集団的自衛権の行使が必要とされる3事例に関する討議が進んだほか、グレーゾーン事態と国際協力の2分野では合意の見通しが出てきました。だが、集団安全保障分野の多くの事例には公明党が依然慎重で、今国会会期中に閣議決定できるかどうか予断を許しません。6日の3回目会合では、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態の3事例のうち、武装集団による離島占拠など2事例について、当面は法制化せず、運用改善で対処することで一致。平時の米艦防護は自衛隊法に新たな規定を設ける案を公明党が党内で検討することで議論を終了しました。国連平和維持活動(PKO)などの集団安全保障分野の4事例では後方支援で大筋一致したほか、離れた場所にいる民間人を助ける「駆けつけ警護」や邦人救出の武器使用についても、停戦合意が守られたり、現地政府の警察権が行使されている場合は、憲法が禁ずる一体的な「武力行使」には当たらないとする政府の見解に、公明党から異論は出ませんでした。

若手が海江田降ろしの署名運動
 憲法見直しは野党再編に影響しています。結いの党との合同話が破綻し、「分党」が決まった日本維新の会は5日、橋下徹共同代表が結いの党と結成を目指す新党に松野頼久幹事長代行、小沢鋭仁国対委員長、片山虎之助副政調会長ら37人、石原慎太郎共同代表らが作る新党には旧太陽の党に所属していた平沼赳夫代表代行、藤井孝男副総務会長、園田博之副幹事長ら保守系23人が参加を表明。残る2人が無所属となり、両派は7月下旬にそれぞれ新党を結成します。石原系は党名に「新保守」を名乗る予定です。20人以上を確保した石原系は議員立法の提出権を得、路線的にも自民党に近いことから、自民党との政策連携を一層強めると見られます。維新の分党は野党再編の引き金になると見て、民主党内では「海江田降ろし」が始まりました。党内から「海江田万里代表のままでは来春の統一地方選は戦えない」との厳しい声が出ており、海江田氏と距離を置く「6人衆」といわれる玄葉光一郎前外相、安住淳元財務相らは5月13日夜、中堅、若手議員を集め「任期満了を待たずに代表選を行うべきだ」とぶち上げ、当選1、2回の若手衆院議員6人は21日、党代表選の立候補に必要な推薦人の数を現行の「20人以上、25人以内」から「10人以上」に引き下げ、中堅・若手が活躍できるよう党代表選規則の改正を求める署名運動を始めました。

海江田氏は任期満了・続投の構え
 集団的自衛権限定容認派の長島昭久元防衛副大臣ら若手議員15人も28日夜に開いた会合では再編をにらんで代表選前倒し論が相次ぎました。前原誠司元代表は翌29日、「昨年の参院選後、1年間で眼に見える成果を出さなければ辞めると(海江田氏は)公言した。総括はきちんとしてもらいたい」と記者団に語り、任期が1年以上残っている党代表選の前倒しを求めました。前原氏は保守系議員で作る勉強会「防衛研究会」の会長を務め、5月4日には集団的自衛権行使を限定容認する「安全保障基本法」案の骨子案を発表しました。日本維新の会、みんなの党の見解と合致する内容です。再編派は、維新の会やみんなの党などとの統一会派に前向きな岡田克也元代表を次期代表選で擁立する考えと言われます。海江田代表は、旧社会党系で参院議員のドン・輿石東参院副議長を後ろ盾とし、15年9月末の任期満了まで続投する構えで、6日にみんなの党、結いの党と党首会談を開き、1強他弱の状況では「日本の政治にとってよくない」と呼びかけ、みんなの党とは来春の統一地方選に向けて選挙区調整を行うことを確認。結いの党とは政策協議を実務者レベルで始めることを確認しました。だが、党内では再編積極派と自主再建派のせめぎ合いが続いていて、集団的自衛権の憲法解釈見直しで党内合意が得られず、11日の党首討論でも限定容認に慎重な海江田氏は「立憲主義を守るべきだ」と主張したものの、野党第1党の党首の討論としては迫力に欠け、20日の両院議員総会では、海江田降ろしが再燃しそうです。

成長戦略で農業・雇用・医療を重視
 6月下旬に閣議決定する「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」には@50年後も1億人の人口を維持するために出産・育児など抜本的な少子化対策A基礎的財政収支の対国内総生産(GDP)費での赤字を2020年度までに半減B企業の法人税実効税率を20%台に引き下げ――などを盛り込みます。新成長戦略の柱には、「岩盤規制の緩和」を念頭に農業、雇用、医療を重視し@整備契約社員・臨時職員など非正規雇用の多い流通・教育・派遣・健康――の4業種を対象に資格制度を創設、接客力を評価し正社員化を図るA外国人技能実習制度の日本での実習期間を優秀な実習生に限り、現行の3年から5年程度に延長B1度帰国しても再来日して2年程度再実習ができるようにし、受け入れ対象業種も「介護」や「林業」「自動車整備業」「店舗運営管理業」「惣菜製造業」の5種類程度に拡充C公的医療保険が認められない先進医療についても「混合診療」を大幅拡大――などを挙げています。農業6次産業化では、政府が検討している全国農協組中央会(JA全中)の廃止を柱にした農協改革案にJAの反発が強まったことから、自民党は9日に妥協案をまとめました。私は衆院農水委筆頭理事として鋭意取り組んでいますが、諫早湾開門調査を巡る福岡高裁の判決もあり農業改革などは別稿の「北村の政治活動」にシリーズで取り上げました。是非お読み下さい。