第325回(6月1日)TPP交渉は漂流気味 集団的自衛権で論戦
 大企業の大幅賃上げを背景にボーナス期のお中元商戦はたけなわ。「アベノミクス」の大胆な金融、積極的財政が功を奏し、緩やかに好景気を持続、内閣支持率も好調です。長期デフレのきっかけとなった前回の消費税2%アップ時とは様変わり。安倍政権は第3の矢「成長戦略」の仕上げに懸命です。しかし、戦略の柱となる環太平洋経済連携協定(TPP)交渉は夏の大筋合意を目指すものの漂流気味。国際情勢は、米国の「アジア重視のリバランス(再均衡)政策」に対抗して、ウクライナ領の編入を図るロシアと、東シナ海や南シナ海で「力による現状変更」を目指す中国が天然ガスの取引で合意。中露海軍の合同演習を始めるなど「地域覇権主義」に基づくアジア新安保構想を発表、露骨に日米同盟を牽制しています。グレーゾーン事態の尖閣諸島の防衛は今や喫緊の課題。22日閉幕の終盤国会では集団的自衛権行使を巡り与野党が論戦を展開中です。私は党の政調副会長として6月末策定の成長戦略と鋭意取り組んでいます。ご支援ください。

霧晴れ交渉は最終局面と甘利氏
 安倍政権が成長戦略の柱に掲げるTPP交渉は、5月19,20日にシンガポールで開かれた閣僚会合で、@日米協議などの前向きな成果を確認A交渉妥結には何が必要かの認識を共有B関税協議と経済ルールの課題を前進させたC今後数週間で関税協議と経済ルールについて集中的に取り組む道筋を決定D首席交渉官会合を7月に開催――の共同声明を発表、大筋合意へ向けて前進したことを表明しました。7月の首席交渉官会合では関税分野、先進国とベトナム、マレーシアなど新興国が税制優遇措置を巡って対立を続けている国有企業改革のあり方や知的財産権などの経済ルール作りで残された課題を協議、解決のメドがつけば閣僚会合を再開し今夏の大筋合意を目指すことになります。共同記者会見で甘利明TPP担当相は「今までよりはるかに霧は晴れてきた。交渉は最終局面にある」と述べ、米通商代表部(USTR)のフロマン代表も「2日間の協議は圧倒的に前向きで、(関税撤廃など)市場アクセスやルールで前進した」と語り、4月の日米協議で実質合意に達したことが目安となり、他の2国間での関税協議を加速させる好結果につながったことを言外に匂わせました。日米は29日からワシントンで事務レベル協議を再開、牛・豚肉輸入のセーフガードなど関税協議や米国から輸入する自動車の安全基準見直しなど細部の詰めを急いでいます。

増える関税は豚肉業の補助金充当
 シンガポールの閣僚会合は、豪州が「日米協議の前進が基礎となり、今後の進路が特定された」と評価したように、日米の主導により、甘利、フロマン両氏が綿密な根回しを行った結果、交渉が加速しました。しかし、米国の牛・馬肉業界のロビー活動が活発で、米議会がまだ、大統領に「通商一括交渉権(TPA)」を与える法案を成立させていないため、
11月の中間選挙を睨んでオバマ政権はTPP交渉の数値公表などには慎重で、全体の交渉が長期化する恐れもあります。日本も「関税死守」の国会決議をもとに、日米協議では「農産物重要5項目」のうちコメ・麦・甘味作物の関税率は原則維持し、牛・豚肉と乳製品などの関税は、セーフガードの発動要件を維持しつつ「安い豚肉に掛かる482円の関税を15年程度で50円に引き下げ、38・5%の牛肉は10年程度で9%に引き下げる」など長期的な引き下げ案でギリギリ妥結しました。政府は酪農業界の不満が強いため、今後安値で大量に輸入される豚肉の関税分をそっくり豚肉業界の補助金に充てることを検討しています。

公約に沿い20%台まで法人税減税
 「内閣の基本方針はグローバル経済の中で日本が強い競争力を持って成長していくことだ。法人税を成長志向型の構造に変革してほしい」――首相は5月15日の経済財政諮問会議で檄を飛ばしました。TPP交渉が山を超えたことで、政府は5月下旬からアベノミクス第3の矢「成長戦略」の策定作業に入っています。戦略の柱は法人税減税、ロボット活用の新産業革命など首相が欧州歴訪で公約した施策のほか、子育て女性の雇用制度充実、企業の農業参入促進、混合診療の拡充、家事・介護分野への外国人労働者受け入れ――などの規制緩和で、「岩盤規制にドリルで穴を開ける」(首相)荒業です。首相が経済活性化の主軸に据えているのが、外国企業の日本進出を妨げ、日本企業の競争力を削いでいると見られる高い法人実効税率の引き下げ。首相は諮問会議で6月下旬にまとめる「骨太方針(経済財政運営の基本方針)に法人税減税の方向性を示してほしい」と述べ、伊藤元重・東大教授ら民間議員4人が「将来的には25%を目指しつつ、当面は20%台への引き下げを目指すべきだ」と提言。甘利明経済財政相も5年程度で20%台まで引き下げる案を示しました。

租税特別措置や減価償却制度見直し
法人実行税率は米国40・75%、日本34・62%(東京都は35・64%)、仏33・33%、独29・55%、中国25・0%、韓国24・2%、英国23・0%で、日本はアジア諸国と比べても10%以上高いのが現状です。政府税制調査会(首相の諮問機関)は16日、「主要国でも高い実効税率の引き下げは避けては通れない課題」と提言する原案をまとめました。原案には、課税の範囲(課税ベース)を広げて財源を確保する方法として、企業の研究開発を促すなどの目的で法人税を軽くする「租税特別措置」や、機械購入費用を年数に分けて経費を計上し、法人税を少なく出来る「減価償却制度」の見直しも含まれます。租税特別措置は約130種類あり、減収額は年間で約1兆円に達することから、「ゼロベースでの見直しが必要」とし、使っている企業が少なく、効果が薄いと見られる特別措置は、適用対象を絞ったり、廃止や縮小を検討し、「恒久財源を用意することが鉄則」であるとしています。

与党税調、財務省は代替財源で難色
自民党税調や財務省は代替財源を巡り法人税減税に難色を示しており、 麻生太郎副総理・財務相は政府が2020年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を解消し、財政健全化を図る見地から諮問会議で「税率と課税ベースの双方を見直し、(企業が)薄く広く負担する仕組みを目指すべきだ。単純に数年で引き下げという話には応じられない」と反論、同日の記者会見で、「恒久的減税には恒久的な財源が必要」と強調しました。法人税を支払う企業は3割でしかなく、7割の中小企業は「大企業優遇の法人税減税になる」と反発し、公明党内にも「消費税を増税して法人税を下げるのは国民の理解が得られない」との慎重論があります。むしろ同党は、来年10月から10%に引き上げられる消費増税に備え、生活必需品の軽減税率を強く主張しており、自公両党の与党税制協議会は同15日、財務省が提示した「全ての飲食料品」、「生鮮食品」、「酒類・外食を除く飲食料品」など8案を巡り検討を始めました。従って法人税率を巡る政府与党内調整は難航が予想されます。

公明はグレーゾーン、駆けつけ警護
 さて、自公両党の「安全保障法制整備与党協議会」は高村正彦自民党副総裁を座長、北側一雄公明党副代表を座長代理とし、20日に初会合を開き、毎週火曜日を定例日とし、会期末の6月22日まで数回開き、合意を得れば閣議決定することを決めました。初会合では@武装集団による離島占拠などのグレーゾーン事態A国連平和維持活動(PKO)で自衛隊が民間人らを助ける「駆けつけ警護」などの国際協力B武力行使にあたる行動(集団的自衛権を含む)――の順番で協議を進めことで合意。2回目の27日は政府側が現在の憲法解釈・法制では支障が生じる15の具体事例と1参考例を示し、協議を重ねました。政府・自民党は集団的自衛権行使を容認する解釈見直しを含め全体のパッケージで夏までに閣議決定したい考えです。公明党はグレーゾーン事態や駆けつけ警護などに関する法改正には前向きの姿勢を示していますが、支持母体・創価学会の意向を受けて憲法解釈見直しを伴う集団的自衛権行使の限定容認には依然、慎重な態度を取り続け、閣議決定先延ばしの作戦に腐心しています。

来春統一地方選で必勝期す公明
 公明党は今年11月に結党50年、来年11月に創価学会が創立85年を迎えます。その節目に組織強化を図るには、来春の統一地方選で全員当選することが肝要と考えています。「平和・福祉政党」を標榜する同党は、創価学会の中核をなす婦人部の活躍が強く期待されます。自公連立政権は15年以上の実績を積み、公明党が連立を外れて選挙協力がない場合は、自民党が維新の会など他野党に連立を組み替えても、現有勢力を維持できないのは明らかです。それだけに公明党は強気で、自衛隊法や周辺事態法の改正には応じても憲法解釈の見直しは応じない姿勢です。維新やみんなの党は限定容認に基本的に賛成ですが、共産、社民党などは猛反対しており、28日の衆院予算委、29日の参院外交防衛委の集中審議では激しい論戦が展開されました。

中国主導でアジアの新秩序構築
 こうしたさなか、中国の習近平国家主席は21日、上海で開かれた中露など26カ国・地域が加盟する「アジア相互協力信頼醸成措置会議」(CICA)で「アジアの問題はアジアの人々が処理し、アジアの安全はアジアの人々が守る」と基調講演し、アジア新安保構想をぶち上げ、「上海宣言」を発表しました。新安保構想は、アジア重視の「リバランス(再均衡)政策」を掲げる米国に対抗し、共存共栄の「アジア観」の名の下に中国主導でアジアの新秩序構築を進める姿勢を鮮明に打ち出しました。上海宣言は@対話と協力を通じ、アジアを調和の取れた平和と繁栄の地域にするACICAとその他の地域機構や国際機関との連携を推進B主権、独立、領土の保全を尊重する――が骨子。しかし、東シナ海では尖閣諸島の国有化以来、これまでに中国の公船約300隻が日本領海を侵犯、一方的に防空識別圏を設定し5月24日に中国戦闘機が自衛隊機に30〜50メートルの距離まで異常接近。南シナ海では石油の掘削作業を始めてベトナム、フィリピンと対立。韓国貨客船が転覆した黄海では韓国領海に中国漁船が約140隻も押しかけ、「空き巣狙い」のように魚を乱獲するなど暴挙の限り。「独立、領土の保全を尊重する」などの上海宣言は頬かぶりし、巨大化した武力を背景に「力による現状変更」を目指す覇権主義でアジアを支配しようとしています。

露は天然ガスの対中輸出契約締結
習氏は昨年6月のオバマ米大統領との会談で、「新しいタイプの大国(G2)によるウイン、ウインの米中関係」で太平洋を支配する構想を提案しましたが、オバマ氏が4月のアジア歴訪で尖閣諸島への日米安保条約の適用を明言して以来、習氏は「軍事同盟は冷戦思考だ」と切り捨て、米国を牽制。CICAに出席したプーチン露大統領とは価格交渉が難航していた天然ガスの対中輸出の契約締結にこぎつけました。ロシアの天然ガス輸出の7割は欧州向けでしたが、ウクライナ情勢を巡る米欧の経済制裁に対抗して輸出を削減する方向だったため、ロシア経済の先行きにプラスになりました。しかし、互いに領土問題で蜜月関係を深める中露の天然ガス取引合意は、シベリア開発の日露協力に影響が出るのは必至で、プーチン氏が来日して北方領土問題を話し合う秋の日露首脳会談は厳しい展開が予想されます。このように近隣諸国の外交関係は食料を含む日本の安全保障に大きな影響を与えています。一方、内政では、日本維新の会の石原慎太郎、橋下徹両共同代表が28日、名古屋市で会談し「分党」を決定しました。結いの党との合流を目指す橋下氏に、合流に否定的な石原氏が「自主憲法制定」を合流政策に盛り込むよう主張、会談でも両者の溝が埋まらず“協議離婚”となったものです。これで石原氏ら旧「太陽の党」系議員が分党して、維新と結いが合流し,7月にも新党が結成される運びとなり、政界再編は加速されます。