第323回(5月1日) 日米同盟強化を確認 TPP交渉は協議継続
 4月24日に東京で開いた日米首脳会談は、オバマ大統領が「尖閣諸島は対日防衛義務を定めた日米安保条約第5条の適用対象である」と明言し海洋進出を目指す中国を強く牽制。集団的自衛権行使の憲法見直しを歓迎・支持するなど安全保障と経済の両面で日米同盟の強化を確認しました。これで首相の「積極的平和主義」とオバマ氏のアジア歴訪目的であるアジア太平洋地域への軍事・経済重視の「リバランス(再均衡)政策」によって日米がアジア太平洋地域の安定に主導的役割を果たすことが明白になり、首相の靖国参拝で一時、ギクシャクした日米関係は修復されました。しかし、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉は農産品「重要5項目」の豚肉の関税と自動車の安全基準を巡って首脳会談後の閣僚折衝でも合意できず、協議を継続することになり、日米共同声明の発表は25日に持ち越される異常事態となりました。日本には「関税死守」の国会決議があり、米国は11月の中間選挙を控え業界団体の圧力が強く、双方とも譲れないからです。交渉は長丁場になりそうですが、党政調副会長として私は農家サイドに立った最終決着に努力を重ねているところです。

中国の海洋進出抑制でASEAN支援
 オバマ氏は、米大統領としてはクリントン氏以来18年ぶりに国賓として23日に来日し東京・銀座のすし店で首相と懇談。翌日は日米首脳会談や宮中晩餐会、財界人との会合に出席、明治神宮も訪問して25日に離日。韓国、マレーシア、フィリピンを歴訪しました。ライス大統領補佐官が「米国がアジア太平洋地域に焦点を当て続けていることを明確に示す重要な機会となる」と述べたように、アジア地域重視の「リバランス政策」を強調する旅でした。それだけに会談では、首相が「平和で繁栄するアジア太平洋を確実にするため、日米同盟の主導的役割を実現していきたい」と述べたのに対し、オバマ氏は「日米は国際的な秩序を守る強いルールを一緒に協力して作らねばならない」と応諾。ASEAN支援策では@日米が巡視船などを供与A沿岸警備関係者の人材育成B海賊船や不審船に関するASEAN各国間の情報共有の枠組み作り――など日米両国が東南アの発展に寄与するため、警戒監視能力を含め様々な分野で協力することを共同声明に明記しました。ベトナムやフィリピンは南シナ海の領有権問題で中国と対立。インドネシアやマレーシアは中東から東アジアに原油を輸送するタンカーなどが多く通るシーレーン(海上交通路)に海賊が出没中で、支援策には中国の一方的な海洋進出を抑制し、「航行の自由」確保の狙いがあります。

コメ・麦・甘味作物は関税率維持
 アベノミクスの「第3の矢」・成長戦略の最重要課題である日米TPP交渉は、4月上旬の東京での甘利明TPP担当相と米通商代表部(USTR)のフロマン代表との閣僚協議、ワシントンで日本時間の17日から3日間行われた再協議でも大筋合意に至らず、首相主崔の夕食会の傍ら23日深夜から24日未明にかけて、さらには首脳会談後も続行し、閣僚折衝は計40時間を費やしましたが、妥結出来ませんでした。交渉では農産品「重要5品目」のうち「コメ」、「麦」、サトウキビなどの「甘味作物」は現行の関税率をほぼ維持する見通しとなったほか、@牛肉の関税は38・5%から「9%以上」へ引き下げA豚肉の「差額関税制度」は維持。4・3%の関税率は引き下げB牛肉などに緊急輸入制限措置(セーフガード)を導入Cバター、脱脂粉乳などの乳製品は関税率引き下げを極力抑える代わりに低関税輸入の特別枠を設ける――などで合意に近づきました。しかし、双方主張の隔たりが大きく、オバマ大統領は共同会見で「日本の市場は十分に開放されていない」と厳しく指摘しました。

日豪EPAは決着の参考にならず
「差額関税制度」は安い豚肉を輸入する場合、国産品の流通価格を参考に決めた「基準価格」との差額を関税として徴収する制度で、価格が安いほど関税が高くなります。セーフガードは牛・豚肉と乳製品が関税率の引き下げに伴って輸入量が急増した場合、税率を元に戻すもので、先に大筋合意した日豪EPA(経済連携協定)で先鞭をつけました。日豪EPA交渉では、牛肉38・5%の関税を冷凍肉で協定発効後18年目に19・5%、冷凍肉で15年目に23・5%と段階的な引き下げにとどめ、日米折衝でも日本側は日豪EPAと同水準での決着を目指しました。交渉の過程で米側が「1〜2%なら認める」と折れてきたため、日本側は「9%以上であれば2桁台に近い関税を残したことになる」とギリギリ9%案を提示、米国も「1桁台への下げに成功した」と評価し、双方の痛み分けで妥協するかに見えました。だが、安い豚肉を生産する酪農家が多いオハイオ州などは「関税撤廃」を主張し「差額関税制度」にも反対。米自動車メーカーは日本独自の安全基準が自由貿易を妨げる「非関税障壁」になっているとして安全基準の緩和を強く要求しました。11月の中間選挙を乗り切るため、オバマ氏は「米国メーカー、農業には日本市場のアクセス(開放)が必要だ。大胆な措置によって包括的な合意に達することを信じている」と歩み寄りを求めました。

外米にミニマムアクセス制度活用
しかし、安易な妥協をすれば、日本は27日に豚の名産地・鹿児島2区で衆院補欠選挙が行われること、米国は大統領に通商一括交渉権(TPA)を与える法律が米議会で成立するメドが立たないことから、共同声明では「TPPで大筋合意」の表現を避け,「重要課題で前進する道筋を特定した」としTPP参加国に協定妥結の措置を早期に採るよう呼びかけました。この配慮が効いて鹿児島2区補選は、自民党新人の金子万寿夫前県議会議長が民主など4野党推薦の候補を破り初当選。首相は「政策に一定の評価を頂いた。景気回復に全力を尽くす」と大喜びで,政策遂行に追い風となりました。TPP交渉では農産品重要5項目について「“聖域なき”関税撤廃には応じない」との国会決議があるため、関税778%のコメ、252%の小麦、583%のデンプンや328%のサトウキビなど甘味作物は現行関税率を概ね維持する方向となり、これも消費増税後初の国政選挙で国民の信頼を確保しました。その代わり米国産の輸入量を増やす方策として一定量(77万トン)の外国産米を無関税で輸入できる既存の枠組み(ミニマム・アクセス制度)の活用を検討中です。米国産コメ輸入量は2012年度で36万トンですが、安くて品質が高い米国産の輸入米が増えれば国内の米価が下がる恐れがありコメ農家の強い反発が予想されます。牛・豚肉の詳細な関税率については今後、実務者間で引き続き詰めますが20年程度かけて段階的に引き下げることになりそうです。

日米会談は秋の日露会談に影響か
日米首脳会談で注目されるのは、共同声明に尖閣諸島沖で領海侵犯を続ける中国と、ウクライナへの関与を強めるロシアの双方を念頭に「威嚇、強制、力による領土または海洋に関する権利を主張するいかなる試みにも反対する」との共通認識を盛り込んだことです。オバマ大統領が尖閣防衛を確約し、TPPで日本に強く出たことについて、経済評論家は「オバマ氏が尖閣を守る“用心棒”代をTPPで求めている」と解説しています。共同声明は中露両国への抑止力になるとしても、これによって首相と蜜月関係にあったプーチン露大統領が来日する秋の日露首脳会談は、国民期待の北方領土問題に深入りできず、予想外に険しくなりそうです。財務省が21日に発表した貿易収支は1979年度以降最大の13兆7488億円の赤字で12年度の1・7倍。しかも、3年連続の赤字です。東電福島原発の事故を受け、火力発電用の原油、液化天然ガス(LNG)の輸入が急増したうえ、海外の日本企業が自動車などの現地生産を進めたため、円安が進んでも輸出が伸びなかったからです。消費増税後の景気腰折れが懸念され、デフレ脱却を目指す安倍政権は6月に成長戦略第2弾を策定し、雇用・医療・農業などの分野で「岩盤規制」を排除しようと全力を挙げています。

安倍政権は宏池会4閣僚が支える
 23日に東京・芝公園の東京プリンスホテルで開かれた「宏池会と語る会」は2600人が集まり大盛況でした。岸田文雄会長(外相)は「池田勇人元首相が創始者の宏池会は57年を迎えるが、『寛容と忍耐』を唱えた池田氏の所得倍増論、大平正芳氏の田園都市構想、宮沢喜一氏の資産倍増論など歴代の宏池会首相の教えで戦後日本は復興・発展してきた。これら先達の足跡と自由と大らかな精神を受け継ぎ、がんばりたい」と挨拶。オバマ大統領との非公式夕食会に出席する直前の首相も駆けつけ、「私は岸田会長と政界同期。安倍政権は保守本流の伝統ある宏池会の4閣僚に支えられている」と感謝の弁。来賓の山口那津男公明党代表も、「内閣は宏池会が支え、政権は公明党が支えている」とエールを送りました。なお、日本維新の会は26日の執行役員会で、来春の地方統一選に勝利し「大阪都構想」を実現するため、結いの党との政策協議が整えば今年夏までに合流し、新党結成を目指す方針を決めました。しかし、石原慎太郎共同代表は「結いは護憲政党だ」と反発しています。