第322回(4月16日)好循環維持の正念場 日豪EPAは合意
 消費税3%アップから2週間が経過。3月までは駆け込み需要で好景気が続いたものの、4月からの反動減で消費は低迷。首相は景気の腰折れを防ごうと、13年度補正と新年度を合わせた「15ヶ月予算」の早期執行に全力を挙げています。しかし、燃油高騰による輸入増の半面、ウクライナ情勢が欧州経済に影を落とし、中国でも「シャドーバンキング(影の銀行)」の膨大な不良債権問題がくすぶるなど輸出にも黄信号が灯り、貿易と財政の「双子の赤字」をどう乗り切るか、まさに安倍政権は正念場です。首相肝いりの集団的自衛権の憲法解釈見直しは、「限定的な行使」でほぼ自民党内のコンセンサスが得られましたが、公明党内には依然、慎重論が多く与党内折衝が手間取っています。首相は24、5日に来日するオバマ米大統領との日米首脳会談に「解釈見直し」で花を添えようと懸命です。もう1つの課題の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉は、7日の日豪首脳会談で豪州産牛肉の関税引き下げを柱とした日豪EPA(経済連携協定)で合意したことが、米国の 譲歩を誘う狙いもあり、安倍外交は成果を上げています。アベノミクス3本目の矢の「成長戦略」を先取りして国家戦略特区・東京圏の新橋―虎ノ門を結ぶ「新虎通り」も3月末に開通しました。経済の好循環を維持するには、6月に改定する成長戦略や経済財政運営の基本方針(骨太の方針)で如何に新機軸を打ち出せるかが鍵。私は党政調副会長として日夜、成長政策作りに励んでいます。ご支援下さい。

長期デフレの同じ徹踏まぬ決意
 「世界に誇るべきわが国の社会保障制度を次の世代に引き渡していくものだ」――首相は3月31日の参院決算委員会で消費増税の意義を改めて強調。翌1日の閣議では、5・5兆円の2013年度補正と、一般会計総額で過去最大の14年度当初予算で切れ目なく公共事業を続け、消費増税後の景気落ち込みを最小限に抑えるため、14年度予算は9月末までに6割以上執行するよう「政府一丸での対応」を閣僚に求めました。前回1997年4月の消費増税後、当時の橋本龍太郎内閣は財政構造改革の緊縮財政を進め、公共事業を絞った結果、アジア通貨危機や山一證券の破綻など金融不安が重なって景気が冷え込み、日本経済は17年間の長期デフレ不況に沈みました。首相は「同じ徹を踏むまい」との強硬な意思を示したものです。自民党の高市早苗政調会長も記者会見で「3月までの駆け込み需要は4〜6月に反動減となる。それを速やかに緩和するため補正予算は公共事業だけでなく様々な調達も含め6月までに7割執行、9月までに9割を実施する。予算の早期執行と転嫁(増税分上乗せ)対策が非常に重要。景気は成長戦略がどれだけインパクトがあり、効果的な内容が盛り込まれるかで決まる」と述べました。

日銀の官兵衛に望む2足の履物
  3月23日朝刊の読売は「絵コノ時評」欄に「官兵衛の教え 貫くか」と題する黒井崇雄・経済部次長のコラムを載せ、「黒田軍師」こと黒田東彦総裁を要旨次のように論評しました。@NHK大河ドラマの軍師、黒田官兵衛が残した言葉に「草履片々、木履片々」があるが、人は時に片方は草履、もう片方は下駄という走りにくい状態で走らねばならないA時機を逃さず行動することが大切で、黒田総裁は就任直後、アベノミクスの経済改善が見通せない中、「2年で物価上昇率2%」の目標を掲げ、円安・株高の流れを作ったBしかしウクライナ情勢や中国経済の減速など海外リスク、消費増税の影響の懸念もあるC黒田総裁は「リスクが顕在化すれば、躊躇なく政策調整を行う」と話すが、デフレ脱却に向けて官兵衛の教えを何処まで貫くのか注目したい――と述べています。日銀はデフレ脱却に向け、2%のインフレを2年で達成する目標を立て、昨年4月に「量的・質的金融緩和」を導入しました。その後も黒田総裁は想定通りの道筋を動いているとし、追加緩和には慎重な構えです。

物価上昇率は3か月連続横ばい
 黒田総裁が導く「量的・質的緩和」はバズーカ砲と称される異次元の金融措置で、2014年度終わりから15年度にかけて、消費者物価上昇率を2%にすることを目指しています。そのため、日銀は、市場から国債などを買って、お金の量であるマネタリーベース(出回るお金と金融機関が日銀に預ける当座預金残高の合計)を2倍にする目標を立て、昨年4月からジャブジャブ日銀券を刷って大量のお札を流し込んできました。その結果、3月のマネタリーベースの平均残高は、前月比3・6%増の208・6兆円となり、13ヶ月連続で最高を更新し、この1年で74兆円増え、年末の目標(270兆円)達成が視野に入ってきました。しかし、海外投資家が景気の腰折れを警戒、金融緩和の効果で上昇した株価は1万5000円前後で頭打ち。2月の物価上昇率も3か月連続横ばいです。日銀が3月の短期経済観測調査(短観)の一環として2日に発表した全国企業の物価見通し調査では、全規模・全産業の1年後の消費者物価上昇率の見通しは平均1・5%と、日銀目標の2%に届きませんでした。1年後に留まらず、3年後、5年後についても1・7%と見込む企業が多かったといいます。

間接税優位の税体系で負担増加
 財務省は2014年の消費税収が15・3兆円で、所得税の14・8兆円を上回ると見ており、1949年のシャウプ勧告以来の所得税、法人税など「直接税」中心の税制は「間接税」優位の税体系に転換されます。少子高齢化が進み年金、介護を受ける人が増え社会保障費が毎年1兆円規模で膨らむため、消費増税分は全て社会保障財源に充てられます。だが、消費増税に加え、6月からは復興財源として住民税が一律1千円高くなり、10月から厚生年金保険料も引き上げられるなど家計負担が増え、年収500万円の会社員と専業主婦、3歳以上中学生以下の子供2人の4人世帯では5万4800円の負担増になるとの試算があります。このままでは景気の腰折れが起きても止むを得ません。首相の知恵袋・浜田宏一内閣官房参与(米エール大名誉教授)は、2日付けの読売インタビューで、「4,5月に消費増税の影響が大きいと思えば、財政政策ではなく、金融政策で対応するのが正道だ。景気が厳しい状態になれば、15年10月に予定されている税率10%への引き上げをやめるべきだ」と慎重意見を述べています。日銀は8日の金融政策決定会合で、「消費増税の揺れを伴いつつも、基礎的には緩やかな回復が続く」とし「大幅金融緩和の継続」を決めました。黒田官兵衛は財政健全化の草履と、大胆な金融の木履の2つの履物をうまく履きこなせるでしょうか。

豪州産牛肉の関税半減し米牽制
 安倍首相は7日、来日したアボット豪首相と会談し日豪EPA交渉で大筋合意、安保分野では外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を6月に東京で開き、協力を強化することを確認しました。大筋合意では、現行関税率38・5%の豪州産牛肉について、@レストランなど外食産業向け冷凍肉を18年かけて19・5%に半減Aスーパーなどの店頭向け冷蔵肉は15年かけて23・5%に引き下げるB輸入量が急増した場合は関税率を元に戻す緊急輸入制限措置(セーフガード)を設けるC乳製品や麦などの一部農産物も関税率引き下げや一定量を低関税で輸入する特別枠を設定D豪州が輸入日本車にかけている5%の関税は、中小型車が発効から即時、大型車は3年で撤廃――が柱。セーフガードで日本の農家を保護するとともに、自動車業界には輸出振興を促す内容です。安倍首相は「EPAは両国間の貿易、投資を促進する極めて重要な枠組みで、歴史的意義がある」と強調しましたが、膠着状態にある日米間のTPP交渉を打開するため、豪州と組んで牽制球を投げたことは明らかです。5日に来日したヘーゲル米防衛長官は、首相から集団自衛権の憲法見直し作業の説明を受け、「日本の取り組みを歓迎する」と述べ、24日の日米首脳会談で日米同盟をさらに強化していくことを確認しました。首相は景気対策だけでなく外交ポイントも着実に上げています。12日に新宿御苑で開いた首相主催の「桜を見る会」では、「給料の上がりし春は八重桜」と駄洒落の句を披露し大はしゃぎ。しかし、日米TPP交渉は予想外に難航しています。

資金提供は猪瀬氏の16倍と巨額
 「全ての責任は代表の自分にある。今後は一兵卒として原点に立ち返り、党が目指したことに邁進したい」――みんなの党の渡辺喜美代表は7日、支持者の吉田嘉明・化粧品製造販売会社(DHC)会長から8億円を借り入れた問題の責任を取って辞任。同党は後任代表に浅尾慶一郎幹事長を選出しました。渡辺氏は吉田会長から10年参院選前に3億円、12年衆院選前に5億円の計8億円を借り、「政策策定や情報収集、色々なところに出かけるための費用」などに2億数千万円を使ったと説明、「資金は(候補者の供託金など)党に貸したもので、政治資金規正法及び公選法に違反してないことは総務省に確認している」と繰り返し主張してきました。しかし、選挙間近に巨額の資金提供を受けた点では、医療グループ「徳洲会」から5000万円を受け取り、東京地検に略式起訴され罰金50万円を支払った猪瀬直樹・前東京都知事と似た構図。しかも提供額は猪瀬氏の16倍と巨額。吉田会長からは「選挙資金として貸した」と渡辺氏から届いた選挙資金依頼メールをもとに証言され、    江口克彦最高顧問ら党員から辞任要求が出されては「万事休す」で10日後に辞任しました。

個人商店的独裁者と江田氏批判
 渡辺氏は、14人の同志を引き連れて党を割り結いの党を結成した江田憲司氏の「謀略だ」と批判しましたが、江田氏は「渡辺氏が政党交付金や立法事務費を勝手に差配し幹部との協調がなかった『個人商店』的独裁者だった」と批判して党分裂に至ったのは確か。渡辺氏は「脱官僚」の統治機構改革を唱え、鳩山由紀夫元首相が母親から資金提供を受けた際、譲与税逃れが狙いだと指摘し、「使途を解明することは大事だ」と厳しく追及、党勢を拡大してきた人物。「票を集めるため酉の市で熊手を70万円で買った」などと釈明しても理解は得られません。石破茂自民党幹事長は、「政倫審に本人が自ら進んで出席し、解明に努めるべきことは、政治倫理綱領から明らかだ」と述べ、各党も説明責任を求めています。第1次安倍政権で閣僚を務めた渡辺氏は、集団的自衛権の憲法見直しにも前向きで、アジェンダ(政策課題)ごとに協力する「責任野党」を標榜してきましたが、みんなの党が党首交代で反転攻勢に出られるかは疑問。日本維新の会は5日の執行役員会で、結いの党と参院での統一会派を結成する方針を決め、逆に更迭された江田氏ら結いの党が力を付けました。