北村からのメッセージ

 

 第32回(12月16日) 大詰めの予算編成 雇用と医療で奮闘中

 厳しい寒さが続きます。同時多発テロや狂牛病感染、完全失業率5・4%など緊迫した情勢下でも、臨時国会は雇用対策中心の第1次補正予算、テロ対策特措法と国連平和維持活動(PKO)協力法改正を含む安保関連5法、改正金融再生法、雇用対策臨時特例法など数々の重要法を成立させ、7日に閉幕しました。この間、小泉改革の柱である日本道路公団など主要7特殊法人の廃止・民営化、医療制度改革などにも道筋が付けられました。

 予算獲得にハッスル

 その過程では、抵抗勢力にいらだつ小泉首相が、トップダウンによる内閣主導強化のため「政策決定の一元化」構想を示し、自民党内に波紋を描きました。また、安保関連法採決を巡って民主党が内部分裂を起こし、政界再編機運を助長するなど、色々な副産物が生じました。政府与党は今、来年度予算と01年度第2次補正予算の編成、構造改革の具体化に全力を挙げていますが、私も年内の残された2週間、厚生労働、農林水産、地方自治の得意分野で、国民の期待する予算獲得を目指し、大いにハッスルしているところです。

 2期連続マイナス成長
予算編成では、景気浮揚と小泉改革の同時並行をどのように実現するかが最大の焦点。内閣府が7日発表した国民所得統計速報によると、7−9月期の国内総生産(GDP)は前期(4−6月)比で0・5%減少し、2期連続のマイナス成長。年率換算では2・2%の減少です。民間設備投資はやや増加したものの、テロ事件などで輸出が減少したり、国内需要が落ち込み、これまで景気を下支えした個人消費が前期比マイナス1・7%も低下したからです。これでは物価下落と景気後退が相乗的に進むデフレスパイラルに陥ります。

 「枯葉作戦だ!」

 「つるべ落としの不況。小泉改革は間伐で弱い枝葉を落とし、太い幹だけ育てようとするが、英国のように外国資本の侵略を許す枯れ葉作戦だ」と、亀井静香前政調会長が9日の民放テレビで語ったように、自民党内では公共投資を増やして景気浮揚を図るべきだとの要求が高まっています。これに対し、財政再建を改革の柱に据える小泉首相は、財政赤字をこれ以上増やさないよう、来年度予算も新規国債の発行額を30兆円以内に抑える方針を堅持、公共投資の10%削減と特殊法人への政府出資1兆円の削減を厳命しています。

 麻薬経済は避ける
「債務超過のバランスシートを改善するにはまず借金をチャラにせよ」との信念で、竹中平蔵経済財政担当相も「フィジカル・ドラッグ(麻薬経済)は避けなければならない」と述べています。公共投資の麻酔注射で一時的な痛みを和らげるより、借金清算の財政改革を断行する姿勢を強調したものです。政府は財政支出も従来型の公共投資でなく、福祉施設や都市再生・活性化に振り向け、自動車重量税の一部を一般財源に活用する方針を打ち出しています。しかし、私が選挙区へ帰る度に痛感するのは、中央よりも地方の経済危機がより深刻であり、予算編成では都市の再生よりも地域振興策を重視すべきことです。

 財源構想花盛り

 しからば財源はどう確保すべきか。前号で触れたように、与党からはデフレスパイラル防止に向けて、麻生太郎党政調会長が9兆円の「小泉行革国債」を、橋本派が10兆円の「構造改革推進ボンド」を提言しています。いずれも国有財産の売却資金を償還財源に充てるもので、先号で紹介した「小泉ボンド(国債)」とほぼ同じ内容です。一方、財務省は首相の指示を受け、個人保有に限定した新型国債を02年度から発行する方針を固めるとともに、税外収入の大幅増額を目指して特別会計や特殊法人から臨時の資金調達を可能にする「財源確保法」の制定を検討しています。このように財源構想は花盛りです。

 郵便局で新型国債

 財務省の新型国債は市場の長期金利を反映した変動金利型で、現行では5万円から購入出来る国債を、個人が購入しやすいよう1万円程度に小口化し10年満期とする考えです。日本の国債が先進国で最下位に格下げされるなど、国債価格の下落(長期金利の上昇)への懸念が深まる中で、貯蓄性向の強い国民のニーズを当て込んで、郵便局や銀行などで個人の「貯蓄国債」購入を促進、円滑な国債消化や相場安定に寄与させる狙いが込められています。前にも取り上げた、日銀に「インフレ目標の導入」を求める声も高まっています。

 完全失業率5・4%

 予算編成で最も重要なのはついに完全失業率5・4%を記録した雇用対策です。不良債権の最終処理ではゼネコン、不動産、スーパーなどが軒並み倒産すると懸念されていますが、「不良債権ではない要注意先債権」に分類されていた大手スーパーのマイカルが倒産したのに続き、バブル期には「プラザ合意」で有名なニューヨークのプラザホテルを買収したことのある、中堅ゼネコンの青木建設が経営破綻しました。マイカル倒産直後に、政府が急遽まとめた改革行程表に金融庁の「特別検査」を盛り込んだのが背景にあります。

 3月期決算は大赤字

 金融庁は10月から来年3月まで、株価の急落など市場が危険と判断した大企業などへの融資が不良債権化していないかどうかを厳しく検査したうえ、金融機関がやむを得ず処理する不良債権を整理回収機構(RCC)が1兆円程度引き取ることにしています。大手銀行14行は、過剰債務の「特別検査」を受けて、02年3月期決算で合計6兆4450億円の不良債権処理に踏み切る計画です。各行は経営不振企業を対象に引当金を積み増したり、資本の一部である法定準備金の取り崩すなど不良債権処理の対応に追われていますが、保有株式の株価低落による内部留保資金が枯渇し、3月期決算はいずれも大幅な赤字。

 淘汰の対象は3業界

 青木建設は、99年にあさひ銀行など主要取引行から総額約2050億円の債務免除(借金の棒引き)を受け、再建を進めてきましたが、公共事業の削減や株価低迷による信用失墜により自力再建は困難と判断され、民事再生法の適用を申請、事実上倒産したものです。
青木建設の関連企業を含めると従業員は約7千人。民事再生法の適用で青木の優良部門は存続しますが、大量の失業者が出るのは確実。「不良債権の早期処理を怠れば傷口を広げるだけ」と大手銀行は融資先の選別、淘汰を加速させる勢いですが、淘汰の対象は前述したゼネコン、不動産、スーパーの3業界が目標。建設業は650万従業員だけに深刻です。

 350万人超の失業者

 それに、ハイテク不況で大手通信メーカーはそれぞれ7千―1万5千人規模のリストラ計画を発表。スーパー業界も第2、第3のマイカルが出ないとも限らず全国の失業者は350万人を超えると予想され、02年の完全失業率は6%台に達すると心配されています。臨時国会で成立した雇用対策臨時特例法には、@失業した人を地方自治体が補助教員や防犯指導の警察支援要員などに臨時雇用する緊急地域雇用特別交付金の拡充A失業手当が切れた後も職業訓練を2回まで受けられるようにし、期間中は手当てを支給B派遣社員の契約期間を1年から3年に緩和C経営革新を行う中小企業の新規雇用に新たな助成金制度を創設D就職情報の提供機能を強化し、求人と求職がかみ合わない雇用のミスマッチ解消E30歳未満の失業者を対象にトライアル(試行)雇用の開始――などを盛り込みました。

 団塊世代の苦悩

 このように、学校の補助教員や森林伐採員、ケアサービス要員など公的機関の臨時雇員として救済する道が開かれましたが、あくまでも暫定的な特例措置であって抜本策とは言い難い。企業のリストラで勧奨退職の肩叩きを受ける層は、多年にわたり企業戦士として経験、技能を積んできた、私と同じ団塊の世代。これらの優秀な人材がそれこそミスマッチの臨時雇員として第二の人生を送るとなるとやりきれない気持ちです。小泉改革の工程表に示されたニュービジネス、ベンチャー企業の育成と人材開発など、各省にまたがる施策を総合的に推進することが強く望まれます。私は衆院厚生労働委員として、予算編成ではこれらの点を入念にチェックし、政策決定したいと念じております。医療制度改革も診療報酬をめぐる攻防が続いていますが、長くなるので次回で詳しく説明するつもりでいます。