第319回(3月1日)会期内に14年度予算成立 経済は好循環
 2014年度予算案は2月28日に衆院を通過、年度内(3月末)成立が確実となりました。4月1日の消費税増税を睨んだ駆け込み需要が追い風となって、13年10〜12月期の国内総生産(GDP)は年率1・0%の増でした。アベノミクスの成長戦略を織り込んだ13年度補正予算と新年度予算を合わせた約100兆円の「15ヶ月予算」が切れ目なく執行されれば、春闘にも好影響し、経済の好循環達成は間違いなしです。「戦後レジーム(体制)からの脱却」を唱える首相は、終戦後70年を迎える来年までに占領政策お仕着せの憲法、教育制度の改革を実現しようと意欲的です。3月の中盤国会では集団的自衛権行使の憲法解釈見直しや教育改革などが大きな争点となります。野党は衆院予算委でもこれら問題を追及しており、激しい攻防が予想されます。その合間を縫って首相は3月末にオランダで開く核安全サミット、5月は欧州5カ国を歴訪、夏は豪州訪問と中国包囲網の「地球儀俯瞰外交」に向けハードな日程を組んでおり、首相が国会中に外遊が自由にできるよう国会法の改正を求めています。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の最終決着は4月末のオバマ米大統領来日まで先送りされそうです。多忙な国会ですが、さらなるご支援をお願い申し上げます。

責任野党味方に与党ペース国会
 衆院予算委の14年度予算案審議は、2月10日から始まりましたが、衆参ねじれ解消と都知事選で自公支援の舛添要一元厚労相の圧勝した勢いに乗り、終始与党ペース。トップバッターの海江田万里民主党代表が集団的自衛権や靖国神社参拝問題などを取り上げ、「在日米軍基地に手付かずでハワイやグアムにミサイルが飛ぶとは思えない」と追及したのに対し、首相は「それは相手国の指導者が決めることで、外交では様々なことが起きる。それを考えないと指導者の資格がない」と一蹴。同党2番手の岡田克也氏が20日、憲法解釈見直しの閣議決定前に国会で議論するよう迫ると、「自民党は長い議論をまじめにやってきた。民主党は(集団的自衛権に)どういう姿勢を持っているのか。立場すら決まっていない」と逆襲。その半面、“責任野党”を唱え集団的自衛権行使の見直しに賛成のみんなの党や日本維新の会には丁寧で堅実な答弁を重ね、予算案の衆院通過を2月末に果たしました。

民主覇気なく代表の求心力低下
 民主党は同9日、わざわざ被災地・福島県の郡山市で党大会を開き、気勢を上げようとしましたが,@原発再稼動A安全保障B憲法改正――の3点を巡って党内の意見はバラバラ。脱原発の菅直人元首相は都知事選で細川護煕元首相を支持しましたが、東電労組が加入している民主党支持団体の連合東京が反発したため「勝手連」的な細川氏支援に終わりました。海江田代表は集団的自衛権の「憲法見直し反対」で党内意見を集約しようとしたものの、首相の指摘通り、野田佳彦前首相や前原誠司元外相ら保守系の旧主流派“6人衆”との調整がつかず党方針の公表は見送り。「最低保障年金制度創設」などの看板政策の見直しも結論を先送りしました。政権担当時代に58%あった民主党の支持率は6%に落ち込み、海江田氏の求心力は急低下しています。田中−竹下派重鎮の故・金丸信元副総裁はかつて、自派に対抗する派閥を「あそこ(の派閥)は馬糞の川流れになる」と決め付けました。田中軍団の著書が多い政治評論家の小林吉弥氏は、覇気のない民主党をこの揶揄になぞらえ、「金丸“名言”通り消滅するか、分裂する」と連載中の日本農業新聞コラムで警告しました。対照的に安倍政権は就任以来50〜60%の高支持率を維持し、マスコミが“一強他弱”“政高党低”の呼称で持ち上げています。しかし、米国の量的緩和縮小策が瞬時に新興国の通貨安を招いたように国際経済の流れは油断禁物。早急な成長戦略の確立が望まれます。自民党内を引き締めるため、石破茂幹事長は18日の総務会で「全国会議員が最低1千人の新規党員を集め、不足分1人につき2千円の『罰金』を徴収する」と決め、来春の統一地方選に向けて党勢拡大にハッパをかけました。

TPP閣僚会合は関税巡り対立
 安倍首相が成長戦略の柱に位置づけるシンガポールのTPP交渉は、2月17〜21日の首席交渉官会合を経て、22〜25日に閣僚会合を開き、昨年末に流産した会合の仕切り直しをしました。だが、知的財産権や国有企業の優遇撤廃などの分野で若干の進展が見られたものの、またも膠着状態に陥り大筋合意に至らず、「今後事務方が集約に向けて取り組む」と先送りし、閣僚声明の発表だけに終わりました。もたつく最大の要因は、参加国の国内総生産(GDP)の8割近くを占める日米両国が、関税撤廃を巡って対立しているからです。今後は米以外とも個別折衝を進めます。1月25日にスイスで行われた茂木敏充経産相、林芳正農水相とフロマン米通商代表部(USTR)代表の協議では「早期合意への協力」を確認しただけ。2月15日にワシントンで開かれた甘利明TPP担当相とフロマン氏との事前協議でも具体的な妥協点は見出せませんでした。事前折衝で日本側は聖域としたコメや麦など「重要5項目」586項目のうち、比較的輸入実績が少ない牛・豚肉に一部例外を設け、40%近い関税を30%台に引き下げる譲歩案を提示した模様ですが、米側は「例外を極力なくし、期限を設けても将来的に関税撤廃すべきだ」と主張して譲らず、重要5項目はゼロとする全面撤廃を求めています。米国は自動車業界への配慮から日本の乗用車に2・5%、トラックに25%の関税をかけていますが、これまで「交渉の最も長い期間(20年程度)で撤廃する」との文言で日米合意するなど、工業品の関税を可能な限り維持する方針です。米畜産団体や工業団体が11月の米中間選挙前に、活発なロビー活動で圧力をかけているからです。

中間選挙意識し米大統領は懸命
 中間選挙を意識してオバマ大統領は1月の一般教書演説でTPPをテコにした輸出と雇用拡大を目指す考えを強調しました。だが、共和党はもとより民主党の一部議員や労組には貿易自由化によって安価な輸入品が大量に流入し、雇用が失われるとの懸念が根強く、オバマ大統領にTPPの通商交渉権を与える貿易促進法案の早期成立が危ぶまれています。日本は「聖域なき関税撤廃を前提としない」ことを確認したうえ、TPP交渉に参加しました。「重要5項目」での譲歩には農業団体の強い反発があり、自民党は昨年7月参院選の総合政策集で、「聖域が確保できない場合は(交渉からの)脱退も辞さない」と明記し、衆参両院の農林水産委員会でも5項目の関税死守を求める決議をしており、譲歩を迫られる場合は党内調整が難航します。このように日本は農産品、米国は工業品を極力守る構えで、交渉では互いに関税撤廃の例外となる聖域をどこまで絞り込むかが最大の焦点です。

日米会談でTPPとガイドライン
 いずれにせよTPPと「日米防衛協力の指針(ガイドライン)」は、4月下旬のオバマ大統領訪日までに決着を図る必要に迫られています。首相は「安全保障の法的基盤再構築懇談会=安保法制懇」(柳井俊二座長)の4月答申を待って内閣法制局を含む政府部内で検討し、解釈見直しに慎重な公明党との与党内協議を経て政府解釈を閣議決定、自衛隊法改正案などを国会に提出すると確約しました。安保法制懇座長代理の北岡伸一国際大学長は2月21日、日本記者クラブの会見で、集団的自衛権の行使について@密接な国にある国が攻撃を受けた場合A放置すれば日本の安全に大きな影響が出る場合B当該国から明確な要請があった場合C第3国の領空・領海の通過には許可を得るD首相が総合的に判断し国会承認を受ける――の5つを憲法解釈見直しの要件に挙げ、報告書に盛り込む考えを示しています。これを踏まえ、自衛隊と米軍の役割分担を定めたガイドラインは12月に12年ぶりに改定されます。

ハード日程で外遊予算が不足
 首相は3月24,25の両日にオランダ・ハーグで開く核安全サミットに出席する意向です。2年に1度の同会議はイランや北朝鮮の核問題などが議題となり、中韓両国の首脳も参加するため、日中、日韓首脳会談開催の期待があります。5月連休にはパリの経済協力開発機構(OECD)の閣僚理事会に出席しオランド仏大統領との会談後、ベルギー、英・独・伊など欧州各国を歴訪。夏には豪州も訪問し、アベノミクスへの理解と世界の平和と安全に貢献する「積極的平和主義」を訴える予定です。首相の外遊は就任以来15回27カ国、夏までさらに後3回7カ国が加わるわけで、外遊予算が足らず捻出には苦労しているそうです。