第318回(2月16日)経済好循環のベア春闘激化 国会は順調
 経済対策約5・5兆円の13年度補正予算は6日に成立。14 年度本予算案の審議も順調です。首相は7日のソチ冬季五輪の開会式に出席、プーチン露大統領と北方領土問題を協議しました。首相が施政方針演説で唱えた「女性が輝く日本」を象徴するように“リケジョ”の小保方晴子さんがSTAP細胞の作成に成功するという朗報に加え、1月末の経済指標はアベノミクスによる成果が個人消費、生産、雇用面に現れて改善され、安倍政権は順風万帆に進んでいます。しかし米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和縮小が新興国の通貨安を招いて日本経済にも影響。 経済好循環の決め手・賃上げを巡り春闘は激化しています。幸い私が選対本部長代行を務めた長崎県知事選は中村法道知事が大差で再選され都知事選も自公両党が支援した舛添要一元厚労相が圧勝しました。国会運営では安保政策面で公明党との間に多少の摩擦が生じていますが、責任野党の協力もあり政府与党は一体となって本予算の会期内成立に全力を挙げています。一層のご支援、ご教唆をお願い申し上げます。

成長戦略「女性が世界一輝く国」
 「全ての女性が活躍できる社会を創る。これは成長戦略の中核です」――首相は1月23日の施政方針演説で、@仕事と子育てが両立しやすい環境を創るA男性の育児参加を促し、育休給付を半年間50%から67%に引き上げるBあらゆる分野で指導的地位の3割以上が女性となる社会を目指すC国家公務員の採用は再来年度から3割以上を女性にする――など具体策を掲げ、今流行の「ウーマノミクス」もアベノミクスに取り込むことを強調。それに応えるように1月31日、神戸市の理化学研究所発生・再生科学総合研究センターユニットリーダーの小保方晴子さんが様々な組織や臓器に育つ新たな万能細胞のSTAP細胞の作成に成功したと発表、世界を沸かせました。首相は既に施政方針の中で「IPS細胞を始め再生医療・創薬の分野で日本は強みを持っている。官民一体で基礎研究から実用化まで取り組む医療分野での研究開発の司令塔として日本版NIHを創設する」と述べていただけに大喜び。同日の衆院予算委では、「私たちは今、成長戦略として女性政策を進めている。日本が『世界で女性が一番輝いている国』にするため全力を挙げたい」と理系女子(リケジョ)を賞賛しました。ソチ五輪の後半戦では日本女性選手の活躍が期待され、米国のFRBも2月1日に女性議長のイエレン体制が発足。グローバルな「女性の時代」が到来しています。

大手労組は4千円以上ベア要求
 春闘はたけなわ。日興、野村證券など民間調査機関10社は先月末、昨年10から12月期のGDP速報値など経済指標を発表。10社の予測ではアベノミクス1年間の効果で各指標が軒並み改善されたとし、@前年同月比の家計消費は1世帯あたりで0・7%増(33万4433円)、小売業販売額は2・6%増、生鮮食料品を除く消費者物価指数は1・3%上昇A前月比の雇用の有効求人倍率は0・03ポイント(1・03倍)上昇、完全失業率は0.3ポイント(3・7 %)低下B前月比の鉱工業生産指数は1・1%(100・3)上昇――などを挙げています。景気回復の成果を全国津々浦々まで届けるには「経済の好循環」が喫緊の課題です。政府は1月20日の第5回政労使会議で@デフレ脱却には賃上げが必要で企業収益の拡大を賃上げ上昇につなげるA中小企業支援のため消費税の転嫁を阻害する行為の是正措置を着実に実施B設備投資支援では賃上げ実施企業を優先――などで合意。同27日の労使フォーラム(公開討論会)で古賀伸明連合会長は「全ての働く人の賃金底上げを図る」と述べ、約2%の定期昇給に加え昨年までのベアゼロ時代から5年ぶりに1%以上のベアを要求。トヨタ、日立製作所、新日鉄住金など大手企業労組は4千円以上を掲げ春闘に突入しました。

賃上げの選択肢は個別労使協議
 連合はデフレ長期化について、「各企業が人件費を削減して社会全体の消費が冷え込んだのが原因。賃金増で不安解消を」と主張。これに対し、米倉弘昌経団連会長は経済が緩やかに回復していることを認め、「業績好調な企業は拡大した収益を賃金の引き上げに振り向けていく」と述べながらも、今春闘での賃上げを「年収ベースで見た報酬の引き上げ」と位置づけました。宮原耕治副会長も「賃上げの選択肢は個別の労使協議に委ねる」と述べ、ボーナスなどの一時金の増額で決着させる道を残し、デフレ脱却の実感がない全国の7割を占める中小企業への配慮を見せました。内需、生産、雇用面で景気を回復する主役は中小企業だからです。労働者の4割に迫る非正規労働者の処遇改善や雇用安定も重要課題。政府は法人税の軽減措置や規制緩和など企業支援策を打ち出してきましたが、自主的な景気回復には持続的な生産性の向上が不可欠。景気の腰折れを防ぎ底上げを図るには@女性や高齢者など貴重な人材の活用A長期雇用に繋がる技能の再教育B雇用安定のための労働市場整備Cセーフティネット拡充――など、政府が政策で支援すべき領域は沢山あります。

ダボスで岩盤規制改革の決意表明
 「いかなる既得権益も(権益の岩盤を打ち破る)ドリルから無傷でいられない」――首相は1月22日、日本の首相として初めて行ったダボス会議(スイス)の基調講演で、昨年は族議員や霞が関(官庁)、業界団体の抵抗で突き崩せなかったとする「岩盤規制」を突き破る決意を表明。同29日の衆参代表質問でも、「岩盤規制とは、経済社会情勢の変化の中で、民間が創意工夫を発揮する障害なのに長年改革されない規制だ」と述べ、首相がリーダーシップを発揮し、「今後2年間に規制改革の突破口である国家戦略特区を活用、思い切った改革を進める」との決意を示しました。安倍政権が抱えているハードルは@雇用、医療、農業などの規制緩和に対する官僚、業界の抵抗A法人税の実効税率引き下げB集団的自衛権行使の憲法解釈見直しC日中、日韓関係の緊張緩和――の4項目で、経済の好循環を安定成長につなげる@の規制緩和など本格的な成長戦略を、6月までに改訂する方針です。

法人税実行税率の引き下げ公約
 Aの法人税は首相がダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)で実行税率の引き下げを公約。日本の実効税率は35・64%で、独の29・55%、中国の25%、韓国の24・2%より高く、日本企業が海外投資に向かうなど産業の空洞化が進むため、15年度から欧米、アジア諸国並みに25%程度に引き下げるよう政府や自民党の税制調査会で本格的検討に入りました。しかし、Bについてはダボスの安全保障討論会で、中国が「軍国主義の象徴」とする靖国神社を参拝した首相を、「日本はアジアのナチス」と批判、その後も欧州でメディアや大使館を通じた日本批判を繰り返し、日中の関係修復は絶望的です。文科省が28日、尖閣諸島や竹島を中・高校の学習指導要領解説書に「わが国固有の領土」と明記したことにも中韓両国は反発しています。集団的自衛権行使の憲法見直しと安保政策、Cの日中韓関係については、別項の「北村の政治活動」で取り上げました。是非お読み下さい。

日露平和条約交渉は年内進展か
 首相は7日、主要国(G8)首脳の中では伊首相と2人だけ、中国の習近平国家主席とともにソチ冬季五輪の開会式に出席、日露首脳会談でプーチン露大統領の今秋来日と武道交流などで合意しました。同性愛を規制するロシアの法律に不快感を示した米仏両大統領らが欠席した中で、首相がテロの危険も恐れず、国会審議の合間を縫って訪露したのは、@7日が「北方領土の日」であり、平和の祭典五輪にあやかり、平和条約の締結交渉を進めたいA首相の実父・晋太郎元外相が熱烈な日ソ関係改善論者であり、亡父の意思を年内にも実現したい――との強い意欲を示したものです。プーチン氏は首相の開会式出席を「大変重視し感謝している。最も難しい問題解決のための環境が出来ている」と大歓迎しました。今回は5回目の首脳会談ですが、13年4月の第1回会談では、北方領土問題で「双方に受け入れ可能な解決策を目指す」ことで一致しており、互いにファーストネームで呼び合う蜜月関係にあります。6月にソチで開くG8サミットや秋の首脳会談では極東ロシアでの液化天然ガスの共同開発などを軸に、4島返還交渉が一歩前進する可能性が出てきました。

訪欧、日米会談と首相外交活発
 5月連休にはパリで開かれる経済協力開発機構(OECD)の閣僚理事会に議長国の首相として出席しオランド仏大統領と会談した後、ベルギー、英・独・伊など欧州各国を歴訪。夏には豪州も訪問し、アベノミクスへの理解とともに、世界の平和と安全に貢献する「積極的平和主義」や中韓両国が批判する首相の靖国参拝について「戦没者への尊崇・哀悼の念を込めて不戦の誓いをした」との真意を説明し、各国の理解を求める方針。靖国参拝では米政府も「失望」を表明、日米関係もギクシャクしましたが、7日の岸田文雄外相とケリー国務長官の日米外相会談で、「中国の東シナ海防空識別圏は認めない」との認識で一致するなど強固な日米関係を再確認しました。4月にはオバマ米大統領の3回目訪日も固まり、日米防衛協力の指針(ガイドライン)の見直しや日米韓関係の修復を確認する考えです。首相の外交活動は全世界を股にかけ、益々活発になってきました。

補正予算で景気底上げ成長軌道へ
 13年度補正予算が成立した翌7日の閣議で、首相は「景気が下振れしないよう、補正予算を景気の底上げに回し、成長を軌道に乗せよう」とハッパを掛けました。景気落ち込みを防ぐための補正予算は、中小企業に投資を促す補助金や20年の東京五輪に向けた道路整備など競争力強化策、東日本大震災の復興策――に計5兆4654億円を計上しています。政府は経済対策で約500兆円の国内総生産(GDP)が1%程度増え、約25万人の雇用が増えると試算しています。日本経済のけん引役となるのが東京都です。その「首都の顔」を選ぶ知事選は16人が立候補し、9日の投開票で自公両党が総力支援した舛添要一元厚労相が        211万票を得て圧勝しました。少子高齢化、首都直下地震対策、20年開催の東京五輪への対応、エネルギー対策を巡り論戦を展開しましたが、「即原発ゼロ」のシングルイシュー(単一争点)で、小泉純一郎元首相と二人三脚の演説を繰り広げた「元首相連合」の細川護煕氏は百万票に届かず、共産・社民両党推薦の宇都宮健児前日弁連会長にも敗れ3位に敗退。猪瀬直樹前知事が徳洲会から5千万円を受けた問題で辞任し、「政治とカネ」問題が問われたことも影響したと見られます。自民党が政権奪回した契機となったのが4年前の長崎県知事選でしたが、今回の中村法道知事の再選も一連の知事選勝利の出発点になりました。

大阪都構想で出直し大阪市長選
 「今回の(都構想を巡る)対立は中東だったら銃を持っての殺し合いだ。それを避けるにはワンイシュー(単一争点)であっても選挙しかない」――橋下徹大阪市長(日本維新の会共同代表)は、都構想の制度設計を1つに絞り込む案が府議や市議らで作る法廷協議会で認められなかったため、7日に木下吉信・大阪市議会議長に辞表を提出。出直し市長選は3月9日告示・23日投開票と決まりました。市議会の野党である自民、民主両党は市長選経費が6億円も掛かることから、「大儀のない辞職だ」と候補擁立を見送りました。橋下氏は小泉元首相と同様、「劇場型選挙」が得意。再選を果たせば年内に住民投票を実施し、来年4月の統一地方選で争点にし、大阪都構想を実現したい考えです。しかし、都議選で無党派層が原発ゼロにソッポを向いたように、橋下氏が再度支持を得られるかどうか。仮に橋下氏が再選されても、府市両議会で第1党を占める維新の会が統一選で敗北すれば都構想が一気に頓挫し、東西2極化した維新の会は分裂、政界再編成が進行するでしょう。