第316回(2月1日)激動国会が開幕 国政争点の地方選は疑問
 首相が「好循環実現国会」と名付けた通常国会は1月24日開幕。首相の施政方針演説に対する衆参両院の代表質問と13年度補正予算案の衆院予算委員会質疑で与野党が早くも火花を散らしています。首相は同19日の自民党大会で、「厚く黒い雲を吹っ飛ばした」とアベノミクスの経済成果を強調、施政方針でもデフレ脱却の決意を表明しました。しかし、同日の沖縄・名護市長選は辺野古移設反対派の稲嶺進・現市長が再選され、日米同盟の深化に暗影を投げかけました。2日の長崎県、9日の東京都、23日の山口県の3知事選が激戦を展開中です。都知事選では自民党支援の舛添要一候補の対抗馬として出馬した細川護煕氏が、小泉純一郎氏とタッグを組んで「両元首相連合」を結成、人気投票的な“小泉劇場第2幕”を狙っています。日本の安全保障に深く関わる在日米軍の抑止力やエネルギーの確保策など国政の重要課題を地方選の争点にするのは好ましくありません。自民党は最近の地方首長選の成果が芳しくなく、3知事選の結果次第では安倍政権の行方に大きな影響を及ぼすため総力を挙げて戦っています。さらなるご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

経済重視の政権運営を行う決意
 「日本をずっと覆っていた厚く黒い雲を吹っ飛ばすことが出来た。ぶれることなく強い経済を取り戻し、デフレ脱却を目指したい」――首相は19日、都内ホテルで開いた自民党の定期党大会で、経済重視の政権運営を行う決意を表明。24日の施政方針演説でも「景気回復の実感を全国津々浦々まで届ける」と述べ、アベノミスクで「経済の好循環」を推進する考えを強調しました。石破茂幹事長も、「野党時代の辛さを忘れず、謙虚で丁寧、正直で親切」な党運営を目指そうと呼びかけました。来賓の米倉弘昌経団連会長は「政権の政策運営に引き続き全面協力する」と応じ、公明党の山口那津男代表も「民間主導で経済最優先の政策が前進した流れを確実にしていくことが最大の課題」と連携姿勢を示しました。確かに4月の消費増税を前に駆け込み需要や設備投資の持ち直しで内需は堅調。政府が発表した1月の月例報告では4ヶ月ぶりに「景気は回復している」と上方修正しました。景気の腰折れを招かぬよう賃上げを経済再生に繋げる好循環政策が安倍政権の最大課題です。政府は今国会で成長戦略関連の約30本を含む80法案、18条約案の成立を目指します。

改憲・靖国参拝も党方針に明記
 党大会で採択した14年の運動方針には@政府与党が一体となってデフレ脱却と景気回復に取り組むA党憲法改正草案への正しい理解を深め、国民全体として機運を高めていくための対話集会を全国で実施B国の礎となられた方々に尊崇の念を高め、感謝の誠を捧げ恒久平和への決意を新たにするC党勢拡大のため衆院の全小選挙区で各4000人の党員を確保する「運動推進要綱」を定めるD原発の再稼動に向けて地元自治体の説得に努力する――などを明記し、首相の靖国参拝を支持。14年度予算の成立後は速やかに集団自衛権の行使を可能とする憲法解釈の見直しと取り組み、原発の再稼動にも努力する姿勢を打ち出しました。だが、公明党は靖国参拝など首相が掲げるタカ派的政策に慎重姿勢を崩していないため、与党内の政策調整は骨が折れそうです。成長戦略のカギとなる環太平洋経済連携協定(TPP)交渉も大詰めを迎えており、4月にアジア歴訪を予定しているオバマ米大統領の来日に合わせ日米首脳会談で合意が得られるかどうか、外交力の強化が必要です。首相は国会開幕直前の21〜23日、スイスの世界経済フォーラム(ダボス会議)に出席し、日本の首相として初めて基調講演。国会開幕後の25日から印度を訪問。中国以外は米大統領らG8首脳が欠席する7日のソチ・オリンピック開会式にも出席。プーチン露大統領と会談し、北方領土問題を協議する積極姿勢を見せており、大きな期待が寄せられています。

混迷地方選、名護市は番狂わせ
 ところが、米軍普天間飛行場を移設する辺野古の地元の那護市長選は19日、自民党が推した移設賛成派の末松文信・前県議が反対派の稲嶺進・現市長に約4千票差で敗れる番狂わせが生じました。自民党推薦候補の1本化調整が遅れたうえ、公明党が自主投票になったのが敗因です。稲嶺氏は「辺野古移設は白紙にし、県外・国外(移設)に戻す。移設の手続き、協議は断る」と述べ、漁港周辺の資材置き場使用や河川付け替え、水道管敷設など移設関連工事は市長の許認可権を使ってでも阻止する考えを明らかにしました。仲井真弘多沖縄県知事は昨年末、移設先・辺野古沿岸部の埋め立てを承認しており、政府は「普天間の固定化を避けるため移設作業は粛々と進める」と近く着工調査に踏み切る予定です。中村法道・現知事が再選を目指す長崎県知事選は2月2日、東京都知事選は同9日、山本繁太郎知事の辞任に伴う同23日の山口県知事選には自民推薦の村岡嗣政氏(元総務省財政企画官)が立候補しました。山口は首相のお膝元だし、政局の「潮目」が変わらないためにも、3知事選は自民党にとって極めて重要です。都知事選には自公両党が支援し無所属出馬の舛添要一・元厚労相、石原慎太郎元都知事が支持する田母神俊雄・元航空幕僚長、共産、社民両党が推薦する宇都宮健児・前日弁連会長に加え、熊本県知事経験者の細川護煕・元首相が小泉元首相の支援を取り付け、民主党の「勝手連」的支援を受けて出馬しました。

五輪返上論と借入金で細川氏苦境
 民主党の支持母体である連合東京は細川氏の「原発ゼロ」公約は「中長期的に原子力エネに対する依存度を低減する」と言う連合東京の方針に一致しないとして、厚労相で労働問題に取り組んだ舛添氏を支援し民主党とは“ねじれ現象”。維新、みんなの党は自主投票。みんなを割って出た結いの党と生活の党は細川氏を支援するなど混戦模様が続いています。小泉氏が細川氏を担ぎ出した背景には、@官房副長官に起用して可愛がった子飼いの安倍氏が幹事長当時に反郵政の行動を取った10数人の造反分子を除名しなかったA再生可能エネの開発と並行して段階的に脱原発を図り、当面は原発技術を輸出する方針の安倍氏が「原発ゼロ」に賛同しなかった――の2点が小泉氏の癇に障り、『師弟対決』になったと政治評論家は解説しています。都知事選は事実上、舛添氏と細川氏の一騎打ちですが、舛添市が「おもてなし心で史上最高の五輪」「災害に打ち勝つ東京」を掲げ、防災対策、医療・介護の充実、雇用対策などの公約を発表したのに対し、細川氏は東京都が東電の有力株主であることを背景に、「原発ゼロで再稼動は認めず」「東北でも五輪の催し実施」「待機児童ゼロの早急な実施」などを訴えています。しかし昨年、20年の東京五輪開催が決まった時に「原発問題があるから辞退すべきだった」と“五輪返上論”を述べ、原発以外の公約発表も告示の前日まで遅らせたことから本気度を問われています。加えて今回は猪瀬直樹前知事が5000万円借入金問題で辞職しての出直し選挙だけに、細川氏には首相辞任の要因となった東京佐川急便からの1億円借り入れ問題がつきまとい、記者会見では釈明に追われました。

国政を地方選に悪用するなと読売
 「東京が原発なしでやっていける姿を見せれば、必ず国を変えることが出来る。原発ゼロでも日本は発展できるというグループと、原発なくして日本は発展できないというグループとの争いだ」――小泉元首相細川氏は出馬表明を行ったi4日、記者団に「細川氏とタッグを組んで全国遊説に出かける」と語りました。小泉氏は昨夏、フインランドの核廃棄物最終処理場「オンカロ」を視察、「核のゴミ」は10万年間も地中に埋めて保存するとの説明を聞いて、地震国での管理は不可能と判断し脱原発論者に変身。さらに郵政総選挙と同様、「原発ゼロ」をシングル・イシュウ(争点)に掲げて戦うべきだと細川氏に出馬の決断を促しました。独特のポピュリズム(大衆迎合)で大都市の無党派層を取り込む「小泉劇場第2幕」を目指しています。細川氏には日本新党結成当時のグループや小泉氏側近の中川秀直元幹事長らが支援しています。磯村尚徳NHK初代キャスターを都知事選に担ぎ出し、敗れて自民党幹事長を引責辞任したことがある生活の党の小沢一郎代表は「人気投票になるのはどうか。青島幸男都知事は都政で何ら実績を残せず、『パンパカパーン』の横山ノック大阪府知事も最後は醜態を演じた」と知名度優先の国民的投票に陥ることを批判しました。もっとも小沢氏は「神輿は軽くてパーがよい」と細川氏を首相に担いだ張本人。辺野古移設は東アジアの米軍抑止力確保の上で重要。脱原発までの再生エネルギーの確保も国政の重要課題。読売は「国家の存立に関わる問題は国政選挙だ。地方自治体の基本は地域住民の福祉増進であるべきで、地方選を悪用すべきでない」と厳しく批判しています。