第316回(1 月16日)首相、政局運営に自信 解釈改憲で論戦
 通常国会は24日開幕、首相の施政方針演説に対する各党代表質問で論戦の火蓋が切られます。昨年は第2次安倍内閣の組閣直後で予算編成が遅れたため、施政方針演説は予算編成後の3月に延期され、国会冒頭は所信表明演説に留まりました。政権担当2年目の今年はアベノミスクが功を奏して株価は高値を維持し、デフレ脱却の兆しにあるほか、米軍普天間飛行場の辺野古移設の展望が開けたことから、首相は政局運営に自信を深めています。今年も年始から中東・アフリカ、スイス、印度と3回の外交ラッシュ。施政方針では景気の好循環の持続を強調しますが、13年度補正予算案と14年度本予算案を合わせた15ヶ月予算案を提出、補正は2月初旬、本予算は会期内の3月末までに成立させ、切れ目ない好景気作りを目指します。後半国会で政府与党は懸案の集団的自衛権の行使容認、武器輸出3原則の見直しに乗り出し、憲法改正の手続きを定めた国民投票法改正案を提出する構えです。しかし、辺野古移設と前国会で成立した特定秘密保護法、新規策定の「国家安全保障戦略」には共産、社民など多くの野党が猛反発。首相の靖国神社参拝には中韓両国が厳しく批判し、両国との首脳会談はさらに先送りされるなど、まさに内憂外患の政局。19日は辺野古の地元で名護市長選が行われます。さらなるご支援、ご教唆をお願い申し上げます。

午尻下がりのジンクス忘れて
 「新しい経済政策でデフレ脱却に挑み、経済はマイナスからプラスに大きく転じた。来年もアベノミクスは買いだ」――安倍首相は昨年末、歴代首相で初めて東京株式市場の大納会に出席してこう誇りました。アベノミクス第1矢の「大胆な金融緩和策」で円安が進み、輸出関連業が息を吹き返して自動車などの株が買われ、平均株価が1万6291円と昨年の最高値を更新、41年ぶりの伸び率を示しています。4月に消費税が3%アップされるまでは耐久消費財の住宅購入など駆け込み需要もありますが、これ以上円安が進むと化石燃料の原油・液化天然ガス(LNG)、穀物など輸入原材料の価格上昇に繋がり、電力を多く消費する国内の生産業や食品関連業は業績の圧迫要因となり、個人も消費税増税によって消費意欲にブレーキが掛かると見られます。2013年の巳年は12年の辰年と併せて「辰巳天井」と言われ株価は最高値を更新しましたが今年の午年は「午尻下がり」で株価下落が予想されます。首相は大納会でこの格言を紹介、「ジンクスは忘れて」と呼びかけました。年男の首相は伊勢神宮参拝後の年頭記者会見で「1年前、無死満塁でマウンドに立ったが、危機は何とか乗り越えた。今年はデフレ脱却の勝利に向けて攻める番。馬の視野は350度、午年生まれの私は馬のような広い視野で経済運営に当たりたい」――と自信満々でした。

アベノミクスの3矢政策出揃う
 13年度補正予算案は12年度の剰余金や13年度の税収増も見込んで5兆4654億円計上。消費増税の影響を最小限に抑え込むための経済対策を打ち出しました。14年度予算案は一般会計の歳出が95兆8823億円で過去最大。公共事業や社会保障など政策経費は72・6兆円と前年度より約2・2兆円増ですが、先端医療開発など成長分野や景気下支えの公共事業、橋・道路などインフラ整備に重点配分。双方の予算を合わせた「15ヶ月予算」は100兆円を突破します。こうしたアベノミクス第2矢の「積極的財政出動」と第3矢の「成長戦略」により8%への消費増税による景気の落ち込みや駆け込み需要の反動減に備え、切れ目ない好景気の持続を狙います。黒田東彦日銀総裁は読売のインタビューに答え、デフレ脱却に向けた「2年で2%のインフレ目標」である「異次元緩和」(量的・質的金融緩和)の期限を当初案の2年にこだわらず、状況に応じて継続する方針を示しました。米倉弘昌経団連会長も同紙のインタビューで、「春闘では従業員の報酬アップに賛成。物価だけ上がり消費が落ち込むと成長が腰折れとなる」と述べ、農業の6次産業化など規制改革の実行を期待し、年末に政労使協議でまとめた賃上げ合意文書を会員企業に促す意向を示しました。

デフレ脱却に全力投球と年頭辞
 首相は元旦付けの年頭所感を発表、経済政策では「景気回復の実感を中小企業・小規模事業者をはじめ、全国津々浦々まで必ず届ける」とデフレ脱却に全力で取り組むことを強調。外交・防衛では「『積極的平和主義』は日本が背負うべき看板だと確信する」と述べ、「制定から68年になる憲法は今、時代の変化を捉えた改正に向け、国民的議論をさらに深め、『新しい国づくり』を目指し大きな1歩を踏み出す時だ」と改憲に強い意欲を示しました。中国の習近平政権は「中国の夢」と称する富国強兵路線を掲げ、人民解放軍を有事即応型に再編、尖閣諸島を含む東シナ海上に防衛識別圏を一方的に設定し識別圏を飛行する全飛行機を「防御的緊急措置」の対象にすると警告しています。さらに西太平洋での艦隊・航空機演習、南シナ海の実行支配強化を活発に進めています。このままでは日中間で偶発的な衝突が起きかねません。首相は靖国参拝後、「戦いの犠牲になった英霊に対し尊崇の念を表明した」と説明、中韓に対話の窓口を開いていますが、両国は首相と新藤義孝総務相の靖国参拝を「誤った歴史認識」と批判、日中韓首脳会談は凍結する姿勢を強めています。

年始3回の「地球儀俯瞰外交」
 首相は仕事始めの6日に来日中のトルコのエルドアン首相と会談、両国の経済連携協定(EPA)交渉を年内に開始することで合意。日本からトルコへの原発輸出に向けた原子力協定の今国会での早期承認を確約、安全保障協力を協議しました。9日からは商社、建設業など約20社の財界代表を引き連れ、中東オーマンとアフリカのコートジボアール、モザンビーク、エチオピアを歴訪し今年もトップセールス。21〜23日はスイスで開く世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席。国会召集直後の25日からは訪印し、日本の首相としては初めて共和国記念日軍事パレードに参列するほか、シン首相と首脳会談を開きます。首相は日本の存在感向上に繋がる「地球儀俯瞰外交」に力を入れて月1度の外遊を計画、就任以来1年間に13回、25カ国を訪問しましたが、今年もハイペースの外遊が続きそうです。首相の国会出席日数を減らし外交に集中できるようにする国会改革を進めています。政府は昨年12月、外交・安保政策の包括的な指針「国家安全保障戦略」と今後10年の防衛力整備の「新防衛大綱」、「次期中期防衛力整備計画」(中期防)の3防衛策を閣議決定しました。有識者会議「安全保障の法的基盤再構築懇談会」(座長=柳井俊二・元駐米大使)は4月に集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の見直しを含む報告書を政府に提出する予定。14年度予算の成立を待って本格的な解釈改憲の論議が国会で始まります。

解釈改憲で日米防衛協力指針改定
 政府は夏にも新たな憲法解釈をまとめ、年末を期限としている日米防衛協力の指針(ガイドライン)を改定、武器輸出3原則も見直す方針ですが、公明党の山口那津男代表は憲法解釈の変更に反対の姿勢を崩さず、靖国参拝にも「中韓両国はもちろん、米露欧(EU)からも厳しい声が聞かれる。真摯に耳を傾けねばならない」と苦言を呈し、「安倍政権の安全・ブレーキ役」を自認しています。そこで首相は日本維新の会やみんなの党など解釈改憲に積極的な「第3極」に盛んに秋波を送り始めました。昨年暮れの12月23日夜、首相は菅義偉官房長官、石破茂自民党幹事長と都内のホテルで維新の会の橋下徹共同代表、松井一郎幹事長、松野頼久国会議員団幹事長と約3時間の夕食会を開き懇談しました。みんなの党の渡辺喜美代表は首相と緊密な関係にあり臨時国会ではいち早く特定秘密保護法の修正合意に達しました。そのしこりで党が分裂、たもとを分かった江田憲司氏は結いの党を結成、「党の発展的解消も辞さず」と党綱領に明記、政界再編の裏方に徹する構えです。

野党再編よりも部分連合先行か
 江田、松野両氏と民主党の細野豪志前幹事長は12月10日、国会内で超党派の勉強会「既得権益を打破する会」を設立、3氏が共同代表に就任しました。政界再編の触媒になるという江田氏の結いの党は、夏をメドに維新の会と合流して新党を結成し、年末までに民主党の一部と合流する考えです。しかし、維新の会の石原慎太郎共同代表ら旧太陽の党系議員は、「結いの党は護憲勢力だ。江田氏は太陽の党系排除をチラつかせている」と警戒感を強めており、細野氏も民主党主導の野党結集を目指していることから、第3極の野党再編は展望が見えていません。野党は「原発ゼロ」ではほぼ一致していますが、民主党が特定秘密保護法の廃止法案提出を検討しているのに対し、維新、みんなは特定秘密の妥当性をチェックする第3者機関の権限強化を主張するなど足並みは乱れています。首相公選制や行政改革を唱える渡辺氏はアジェンダ(政策課題)の連携が重要と強調しており、政策の是々非々が中核となる部分(パーシャル)連合が実現するかどうかが焦点。首相が「好循環実現国会」と名付けた通常国会は、冒頭から波乱含みの与野党攻防が続きそうです。

自民が連戦連勝目指す4地方選
 米軍普天間飛行場を移設する辺野古の地元の那護市長選は19日で、自民党が推す移設賛成派の末松文信・前県議と反対派の稲嶺進・現市長が一騎打ち。中村法道・現知事が再選を目指す長崎県知事選は2月2日、猪瀬直樹・前知事の後任の都知事選は同9日、体調不良で辞任する山本繁太郎・山口県知事の後継の県知事選は同23日に行われます。山口は首相のお膝元であり、自民党は4戦4勝しなければなりません。都知事選には自公両党が支援し無所属出馬の舛添要一・元厚労相、石原慎太郎元都知事が支持する田母神俊雄・元航空幕僚長、共産、社民両党が推薦する宇都宮健児・前日弁連会長、熊本県知事の実績がある細川護煕・元首相は小泉元首相の支援を取り付け、民主党の「勝手連」的支援を受けて出馬するなど、混戦模様が続いています。