第315回(1月元旦)内外とも激動年が開幕 機動防衛力整備
内外ともに激動する2014年の幕開け。まさに身の引き締まる思いで元旦を迎えました。4月に迫った消費増税を巡る春闘の激化。中国の防空識別圏設定で冷え込む日中関係。北朝鮮の残虐な「粛清」の恐怖政治。日韓共通して東シナ海、日本海は波高しです。首相は政権担当1周年の12月26日に靖国神社を参拝、中韓両国は強く反発し首脳会談はさらに遠のきました。果たしてデフレ脱却は可能なのか。2年目の安倍政権は内政、外交、防衛の山積する課題に直面し、波乱の航海が待ち受けています。首相は年末に米軍普天間飛行場の辺野古移設に決着をつけて日米同盟を強化。1月末開会の通常国会でアベノミクス第3弾の成長戦略を盛り込んだ14年度予算と税制改革案を早急に成立させ、7年後の東京五輪成功に向けてインフラを整備、長期政権の礎を固めようとしています。しかし、長期デフレは17年前(1997年4月)の消費税率2%引き上げがきっかけでした。今回は政労使協議を5回開き企業収益の拡大を賃上げに繋げることで合意しましたが、中小企業へ波及するかどうかが課題。ベアも消費需要も伸びず景気回復に失敗すれば、安部政権は失速します。政府与党は一丸となって国会乗り切りを図ります。もっとも、野党はみんなの党が分裂、日本維新の会は東西不和、民主党が路線対立と混迷状態で、政界再編が進むでしょう。私は皆様の信託に応え頑張りますが、旧年以上のご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。

中国を牽制しASEAN外交完結
「ASEANと共に法が支配し、努力した者が報われる、繁栄した経済、社会を作りたい」――ASEANを戦略的パートナーとする首相は12月14日、東京・元赤坂の迎賓館で開かれた日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の特別首脳会議で挨拶。今後5年間に2兆円規模の政府開発援助(ODA)で高速鉄道など経済・技術援助を実施する方針や、ASEAN諸国との防衛相会合の開催を提案。同会議は中国を念頭に、「公海上空での飛行の自由と安全の重要性を認識し、国際法を順守する」ことを盛り込んだ共同声明を発表しました。東京での特別首脳会議は2度目。首相は昨年2月からベトナムを皮切りに1年がかりでASEAN10カ国を相次いで訪問し、この首脳会議で一連の外交を締めくくりました。首相は12日から15日までブルネイ、フィリピン、インドネシアなど各国首脳と個別会談。13日に首相官邸で開いた夕食会では中国の防空識別圏設定を容認しない考えを伝え、協力を要請しました。ASEAN諸国内には中国と経済関係が密接な国もあるため、共同声明で中国を名指しての非難は避けましたが、中国が11月下旬に初の空母「遼寧」を南シナ海に派遣、同海にも防空識別圏を設定する姿勢を示して領土問題で威嚇、15日に月探査衛星の打ち上げに成功したことから、各国は中国を牽制する日本に期待をかけているようです。

残虐な血の粛清に日米韓緊張
「国家転覆陰謀(クーデター)の重大犯罪を犯した」「陰謀家で犬にも劣る醜悪で人間のクズだ」――北朝鮮の国営放送はASEAN特別首脳会議のさなかの12日、北朝鮮の金正恩第一書記の叔父でNO.2 の張成沢元国防副委員長が死刑判決を受け、直後に処刑されたと発表しました。処刑は機関銃か火炎放射器を使ったと伝えられます。中国は黙認していますが、米国は血の粛清を「極端な残虐さ」と非難、韓国は「恐怖政治は両刃の剣」と受け止め、暴走を警戒しています。張氏処刑の背景には、@正恩氏肝いりの首都整備を張氏が妨害したA2009年のデノミ(通貨呼称単位の変更)での経済混乱を張氏が裏で操ったB経済開放路線の張氏は中国に接近し過ぎ、党内派閥を作ったC中国が庇護している正恩氏の腹違いの兄・金正男氏に資金援助を続け、正恩政権の転覆を図った――など色々取り沙汰されていますが、金一家のロイヤルファミリーが血筋、血縁のみを信じ、人民軍幹部の強硬派に頼って恐怖政治で権力基盤を固めようとしたことは間違いないでしょう。

タイミングよいNSCと秘密法
金正日総書記の死去から同17日で2年。1年前の同12日には長距離弾道ミサイルを発射し強硬路線を示しました。脱北者によると「穏健派の除去を狙った強硬派のクーデター」と言うように、北朝鮮人民軍が暴走し、第3回核実験を強行する可能性があると見て、韓国は直ちに国家安保政策調整会議を開きました。日本も拉致問題や今後の日朝関係を懸念し米韓両国と密接に連携、情報を取りながら対策を練っています。その意味で野党の猛反対を退け、日本版NSC法、特定秘密保護法が前国会で成立したことはグッドタイミングでした。米国が中国の海空軍力増強に対し、太平洋配備の海軍艦艇数を現在の5割から2020年には6割に増加させる方針を決めたのに合わせ、日本も外交・安保政策の司令塔である国家安全保障会議(日本版NSC)が発足した12月4日、新設の「4大臣会合」(首相、官房長官、外相、防衛相)で中国の防空識別圏(ADIZ)問題を協議、同22日のNSCと持ち回り閣議で、南スーダンでPKO活動を展開中の韓国軍に銃弾1万発を無償で譲与することを決めました。野党は「文民統制に反し、武器3原則の理念をないがしろにする行為だ」と反発、閉会中審査を要求しています。NSC事務局となる「国家安全保障局」(初代局長は谷内正太郎内閣官房参与=元外務次官)は間もなく発足、尖閣諸島での武力衝突、北朝鮮の弾道ミサイル発射など挑発的な非常事態に即応できる態勢を検討します。

離島防衛強化の中期防・防衛大綱
政府は12月17日、今回初めて策定した外交・安保政策の包括的な指針「国家安全保障戦略」、今後10年程度の防衛力整備の指針となる「改定防衛大綱」、「次期中期防衛力整備計画」(中期防)の3防衛策を閣議決定しました。「積極的平和主義」のもと愛国心も盛り込み、近い将来の集団的自衛権の行使容認、武器輸出3原則の見直しも視野に「統合機動防衛力」を整備するもの。中期防は2014年度からの5年間で予算総額は3期ぶりに増額して24 兆6700億円程度を上限としました。計画内容は、@米軍が沖縄に配備した新型輸送機オスプレイ17機を自衛隊にも導入A離島防衛強化のため無人偵察機3機、水陸両用車52両を新規購入B大砲を備え、戦車と比べて軽量で空輸もできる機動戦闘車99両を整備C将来42機の導入計画がある最新鋭ステルス戦闘機F35について、次期中期防の期間中に28機を先行購入D空中給油機も現行の4機に3機を追加――など離島の防衛を重視し、領土・領海の警戒監視体制強化のため、沖縄・那覇基地にE2C早期警戒機の部隊を新たに編成し、F15戦闘機の部隊を1個飛行隊から2個飛行隊に拡充。新型の早期警戒機4機も購入し、現行のE2Cの後継機と位置づけます。陸上自衛隊の編成も見直し、離島に武装漁民などが不法上陸する事態を想定し、奪還できる水陸両用部隊を創設。部隊をより機動的に運用する複数の「機動師団」や「機動旅団」を新設。北朝鮮の核・ミサイル開発の動きを睨みイージス艦も2隻追加し8隻態勢にし「敵基地攻撃能力」の強化も図ります。

15ヶ月予算で景気好循環図る
通常国会は1月24日にも開会の予定ですが、アベノミクス第3弾の成長戦略が賃上げに繋がり、好循環を図れるかどうか。14年度予算案と税制改正案を巡る与野党攻防が焦点になります。通常国会冒頭に早期成立を目指す13年度補正予算案は14年度予算と合わせた「15ヶ月予算」として編成、@中小企業の設備投資支援促進A東京五輪関連B農地集約化や中小企業の資金繰り支援C女性・若者の雇用拡大、待機児童対策D東日本大震災の復旧・復興E復興特別法人税の1年前倒し廃止の穴埋めF学校耐震化や老朽化道路・橋の補修G低所得者への現金給付H中所得者への児童手当上乗せH地方交付税交付金手当て――など国の支出を5兆4654億円計上。12年度の剰余金があるほか、13年度の税収増も見込まれるため、新たな国債(借金)発行は行いません。4月の消費増税による景気の落ち込みや駆け込み需要とその反動減の緩和に備え、切れ目ない好景気の持続を狙っています。

企業優遇税制は賃上げのテコ
税制改正は、4月から8%へアップする消費増税が低所得者に負担を強いる逆進性であり、かつ、社会保障に充当する目的税であるため、財源確保を重点に高収入者の給与所得控除が2段階で縮小され増税。年収1千万円超の人は、16年はそのままで17年から3万円の負担増。1千5百万円超の人は16年から7万円、17年から11万円の負担増となります。軽自動車やバイクの保有者が年1回払う軽自動車税は普通車の自動車税の4分の1以下と低いため、15年4月以降に買う軽自動車(自家用)は1・5倍の1万800円に、50CC以下の原付バイクは2倍の2千円にそれぞれ上がります。資本金が1億円超の大企業は現在、取引先の接待やお歳暮、お中元などの交際費は認められていませんが、14年4月以降、飲食接待に使う交際費の50%を経費に使うことが出来、その分法人税を減らすことが可能になります。ただし、先進国間で最も高いとされる法人税の実効税率引き下げは「引き続き検討」との表現にとどめ、公明党との折衝が難航した庶民が期待する食料品などの軽減税率制度は「必要な財源を確保しつつ税率10%のアップ時に導入する」とし、14年度末まで結論を先送りしました。復興特別法人税の前倒し廃止や企業優遇税制は、政府が政労使協議で要請した賃上げのテコの役割を果たし、景気の好循環を生み出す狙いがあります。

野党は増税ダブルパンチと反対
このように税制改正には賃上げと消費需要の拡大を目指す“金の卵”の狙いがありますが、野党各党は「法人税を払えるのは3割の大企業で、7割の中小企業に恩恵はなく賃上げには向かわない」「220兆円と言われる大企業の内部留保を高めるだけで、設備投資は期待できず、景気にプラス効果はない」として春闘の激化を予想。特に70〜74歳の医療費を2月以降2割に引き上げ、年金受給者の所得控除の削減などもあることから、高齢者や弱者には増税のダブルパンチになると強く反対しています。24日に閣議決定した14年度予算案は一般会計の歳出が95兆8823億円(概算要求99兆円)で100兆円突破寸前の過去最大。公共事業や社会保障など政策経費は72・6兆円で前年度より約2・2兆円増。消費増税に備え先端医療の開発など成長分野、景気下支えの公共事業や橋・道路など巨大地震に備えインフラ整備に重点配分しました。それでも、日銀の12月短観で大企業は4期連続改善され、景気回復に伴う法人税収の増加や消費増税により、14年度税収が50兆円前後と13年度当初の43・1兆円と比べて大きく伸びる見通しとなったため、新国債の発行額(借金)を41兆円とし、前年度より1兆円以上減らしました。国債発行額はリーマン・ショック後の09年度予算から6年連続で40兆円を超え、借金体質は変わりませんが、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字は13年度当初より4〜5兆円減る見通しです。

辺野古決着し首相が靖国参拝
  安倍政権の今後を占う上で、注目されるのは12日告示、19日投開票の名護市長選の行方。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に強く反対する現職の稲嶺進市長に対し、容認派が推す末松文信県議と、容認を明言する保守系の島袋吉和前市長が出馬を表明し三つ巴の戦いが予想されました。しかし、@石破幹事長が「県外移設」を衆院選公約に掲げた自民党県連を説得し、「県内移設」を認めさせたA首相が沖縄振興策や基地負担軽減策などに毎年3千億円台の大盤振る舞いの予算を示し、仲井真弘多沖縄県知事が27  日、移設に必要な辺野古沿岸埋め立てを承認したBこれを島袋前市長が評価して出馬を辞退した――で保守系一本化が図られました。首相は韓国軍に銃弾を無償譲与しても韓国が良い反応を示さないことで関係改善を諦め、辺野古の決着で日米同盟が深化したと判断、中韓両国との首脳会談が遠ざかることも承知のうえ、靖国参拝を断行したと見られます。ところが、米国は「近隣諸国との緊張を悪化させたことに失望した」と異例の声明を発表。山口那津男公明党代表も批判しました。中村法道知事が再選を目指す長崎県知事選は2月2日投票。医療法人「徳洲会」から5千万円を受け取った問題で引責辞任した猪瀬直樹都知事の後任都知事選は1月23日告示、2月9日投票に決定、与野党が候補を選考中です。