第314回(12月16日)秘密保護法成立 決める政治の政局運営
 与野党最大の攻防だった特定秘密保護法案は臨時国会会期末ぎりぎりの6日深夜に成立。国家安全保障会議(日本版NSC)設置法とセットで成立し、安倍政権は安保体制が万全になるとして「決める政治」の政局運営に自信を深めています。シンガポールで7〜10日間開かれた環太平洋連携協定(TPP)交渉の閣僚会合は、日本が聖域とした「農産品重要5品目」の関税や知的財産などの分野でまとまらず、年内妥結を断念しました。首相は来年4月に迫った消費税増税に向け、アベノミクス第3弾の経済成長戦略を盛り込む2014年度予算編成に全力を挙げます。しかし、中国が尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定したことで偶発的衝突を起こすリスクが高まりました。政府は4日施行のNSC設置法に基づく新設の国家安全保障局で早急に「国家安全保障戦略」を練り上げ、防衛大綱は17日に10年ぶりに改定します。私は党政調副会長として文教政策の充実、衆院消費者問題特委の筆頭理事で食品虚偽表示と取り組むなど多忙です。倍旧のご指導をお願い申し上げます。

中国の防空識別権設定に撤回要求
 「中国の力を背景とした現状変更の試みには、我が国の領土・領海・領空は毅然として守り抜くとの確固たる決意の上、毅然として冷静に対応する」――首相は11月25日の参院決算委で、中国の防空識別圏設定についてこう強調。斎木昭隆外務次官も同日、程永華駐日中国大使を外務省に呼び一切の措置を撤回するよう厳重に抗議。政府は同29日にカナダで開いた国際民間航空機関(JCAO)理事会に対応策を検討するよう提案しました。中国が同23日、防空識別圏を設定したのは東シナ海の朝鮮半島南側から台湾北側までの広範囲。目的は「国家主権と領土領空の安全を守り、飛行の秩序を維持する」としています。さらに中国の秦剛・外務省報道局長は25日、領有権を主張する南シナ海全域にも防空識別圏を設定する見通しを示唆。楊宇軍・国防省報道官は28日、記者会見で日本の撤回要求に対し、「日本が先に自国の防空識別圏を撤回すべきだ」と反論。日本が1969年に防空識別圏を設定したので、「撤回なら(日本が設定し続けた)44年間を経てから考える」と挑発しました。

日本軍機に緊急発進かけたと吹聴
  中国が設定した防空識別圏(ADIZ)には日米安保条約第5条の適用範囲である尖閣諸島はもとより、在日米軍の訓練空域と射爆撃場の3ヶ所、海底資源が豊富との予測から中韓両国が管轄権を主張する岩礁「離於島」(中国名・蘇岩礁)の上空が含まれています。米国は「一方的な行動で、地域を不安定にする挑発的行為」と非難し自省を要求。26日には最強の戦略爆撃機B52を通報せずに2機飛ばして中国を威圧、識別圏域内で1時間前後の訓練飛行を実施しました。日本は、尖閣諸島上空域内で昨年12月、中国機が初めて日本領空を侵犯、今年9月にはステルス式らしき無人偵察機が確認されたため、対中国機への緊急発進(スクランブル)を300回以上も行い、中国が防空識別圏を設定した後も自衛隊機は警戒監視活動を一層強めています。日米両国とも中国の迎撃戦闘機が設定後に緊急発進をした事実は認めていません。しかし、中国は「識別圏に入る全ての航空機を識別し種類を判別した。日米軍機にはスクランブルをかけた」と誇らしげに吹聴。最近中国と蜜月関係にある韓国は遺憾を表明して識別圏の修正を要求、8日には自国の防空識別圏を離於島や日本の防空識別圏と重なる済州島南の馬羅島、鴻島周辺の上空まで拡大したと発表しました。

東アジア安定の基盤は日米同盟
 中国が設定した識別圏の問題点は、圏内を飛行する航空機が飛行計画を中国に提出するとの指令に従わない場合、「中国の武力は防御的な緊急措置を講じる」と警告したことです。通報なく進入した場合は、あたかも中国領空を侵犯した国籍不明機と見なし、スクランブルの対象にすると威嚇したのは異例な強硬姿勢です。台湾路線を同圏域に持つ日航、全日空は中国軍機による中国領への誘導・強制着陸などを警戒、乗客の安全を重視し飛行計画の提出を進めましたが、日本政府が計画提出を拒否するよう指導したため提出を停止しました。ところが米政府は不測の事態を避けるため、航空会社が中国の定めた手続きに従うことを事実上容認しました。こうした日米の足並みの乱れが一層、中国を増長させています。バイデン米副大統領は強い懸念を中国へ伝達するため、日中韓3カ国を訪問しましたが、途中2、3両日に来日し安倍首相と対応策を協議、中国の防空識別圏は容認せず共同歩調を取ることで一致しTPP交渉も年内妥結で協力することを確認しました。共同記者会見で首相は「自衛隊と米軍の対応を一切変更せず、連帯を維持することを確認した」と述べ、バイデン副大統領も「東アジアの安定と安全の基盤は日米同盟だ」と歩調を揃えました。

偶発的な日中軍事衝突の危険性
 4日の副大統領と習近平中国国家主席の会談は、両国経済まで含む5時間半に及ぶ長時間の話し合いになりましたが、識別圏では双方譲らず平行線に終わりました。バイデン氏は「東シナ海の現状を一方的に変えようとしている」と懸念を表明、日中間で不測の事態が起きないよう、緊急時に連絡を取り合う危機管理メカニズムを日中両国で構築するよう提案しましたが、習近平氏は「正当な自衛権の行使であって、国際法や国際慣例に合致している」と述べ、防空圏の設定を取り消す考えのないことを強調しました。現在の日中の防衛当局間には、緊急時のホットラインがないため、中国の戦闘機が自国の領空と主張して尖閣諸島に接近すれば、両国の戦闘機が交錯し、偶発的な軍事衝突となる危険性があります。1931年の満州事変は関東軍が満鉄線を爆破し、中国の仕業と見せかけて軍事行動に踏み切ったのが発端。1937年に北京郊外で夜間演習をしていた支那(中国)駐屯軍が放った一発の銃声が日中戦争を勃発させました。それを思うと、一触即発の危機を迎えています。

国家安全保障戦略と防衛大綱改定
 日本版NSC設置法はこうした中国の海洋進出や北朝鮮の核問題に対応するため、外交・安保政策の司令塔にするのが狙いです。各国との情報交換を強化するため、設置法とセットで提出した特定秘密保護法案は、石破茂自民党幹事長の「デモの絶叫戦術はテロ行為と変わらない」とのブログ発言に野党が猛反発しました。しかし、首相と菅義偉官房長官は参院国家安保特別委で、第3者のチェック機関として@内閣官房に秘密指定を監視する次官級を中心とした「保全監視委員会」A内閣府に秘密指定の妥当性を監視する課長級20人規模の「情報保全監察室」B秘密文書の保存と廃棄を見分ける「独立公文書管理監」――を法施行までに設置、有識者が首相に運用基準の意見を述べる「情報保全諮問会議」も作ると表明。野党は「第3者機関とは全く違う」と反対しましたが、与党は5日午後の委員会で採決・可決。用心深く会期を2日間延長し、6日深夜の参院本会議で可決・成立させました。みんなの党の渡辺喜美代表と対立し、党決定の衆院採決を棄権した江田憲司前幹事長ら同志14人は9日、離党届を提出。民主党の細野豪志前幹事長らと新党結成に動くなど、みんなの党は分裂しました。国家安全保障会議(NSC)は4日に初会合を開き、首相、官房長官、外相、防衛相の「4者会合」に麻生太郎副総理も加わり、官邸主導で「国家安全保障戦略」の協議に入りました。年明けに内閣官房の「国家安全保障局」(谷内正太郎元外務次官が局長に内定)を新設し安保戦略を練り上げます。10年ぶりに改定する「防衛計画の大綱」に合わせた「中期防衛力整備計画」(中期防)の概要は11日に決定。尖閣諸島など南西諸島の防衛強化のためF15 戦闘機2飛行隊増強、弾道ミサイル防衛の強化、空中給油機・小型護衛艦の増強、ゲリラ・特殊部隊とサイバー攻撃への対応も盛って防衛体制を強化しました。「国家安全保障戦略」、「改定防衛大綱」、「中期防」は17日に閣議決定します。

公共事業など経済対策5・5兆円
 このほか、民間主導の持続的な成長の実現と再生を目指す産業競争力強化法、大規模災害への備えやインフラ老朽化対策を定めた国土強靭化基本法、一定の所得がある高齢者に「応分の負担」を求める社会保障制度見直しプログラム(工程)法、東電福島第一原発事故で生じた損害賠償請求権の時効を3年から10年に延長する特例法、改正生活保護法と生活困窮者自立支援法など重要法案が続々会期末に成立。国家戦略特区法と改正独占禁止法は、いずれも民主党の水岡俊一内閣委員長と大久保勉経済産行委員長が両法案を審議する委員会を開かなかったため、両委員長の解任決議案を与党の賛成多数で可決、5日未明の本会議で成立させました。多少荒っぽい国会運営ですが、首相が「決める政治」を断行するため、綱渡り国会では止むを得ない戦略です。政府は5日の臨時閣議で,@復興・防災・安全対策の加速に3・1兆円(復興特別法人税廃止の減収手当分8千億円を含む)A競争力強化策に1・4兆円B低所得者、子育て世帯支援に6千億円D女性・若者・高齢者・障害者向け施策に3千億円――の計約5・5兆円の経済対策を決めました。これには20年開催の東京五輪の道路交通網整備や産業振興の公共事業も含まれています。

補正決定し大詰めの予算編成
  7〜10日間にシンガポールで開催したTPP交渉閣僚会合には、初期の舌癌治療で欠席した甘利担当相に代わって、西村康稔内閣府副大臣(衆院議員=元通産官僚)が出席し、聖域は「1ミリも譲らない」と頑張りましたが、米豪などが全面撤廃を求める農産物の「関税」と、新興国が優遇策を主張する「知的財産」、「国有企業」の3分野で会議は難航、来年1月に再会合を開くことで越年しました。国債発行を見送った5兆円規模の13年度補正予算案と、軽自動車税の増税や消費税率が15年10月に10%へ引き上げる際の軽減税率導入を明記した14年度税制改正大綱は12日に閣議決定。いよいよ大詰めの予算編成に入ります。