第313回(12月1日)会期延長視野に綱渡り 秘密保護法攻防
 早くも慌ただしい師走。1年を振り返ると九州の豪雨、関東・東北の竜巻被害、伊豆大島の土石流災害など12個の台風が襲い、多くの死傷者と家屋倒壊が相次ぎました。フィリピンのレイテ島では季節外れの巨大台風に見舞われ、日本人約100人を含む約4千人の死者と950万人の被災者が出ています。世界規模の化石燃料消費で二酸化炭素が急増、地球の温暖化に伴う異常気象が進んだのが原因です。日本は京都議定書で目標にした温室効果ガスの6%削減は達成できる見通しですが、全国の原発が稼動停止し、割高な液化天然ガス(LNG)を使う火力発電所をフル稼働させ、電気代の高騰とともに温暖化傾向を助長しました。首相の「段階的脱原発、原発技術の輸出」方針も化石燃料の抑制を狙っています。ところが、小泉元首相が「原発即ゼロ」を発言し永田町で波紋を描きました。政府がセットで提出した特定秘密保護法案は修正して11月26日に衆院を通過、国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案は首尾よく翌日に成立し12月4日に施行されます。だが、秘密保護法案は野党の反対が強く、6日の会期末ぎりぎりまで激しい攻防が続きそうです。政府与党は産業競争力強化法案などを含め重要法案の成立を期し、短期の会期延長も視野に入れ、最大の努力を続けており綱渡りの国会です。一層のご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

高支持率だが主要市長選は敗北
 内閣府が11月14日に発表した7〜9月期の国内総生産(GDP)速報値は前期比0・5%増、実質成長率が年率換算で1・9%増と4期連続でプラスを確保。米国の金融緩和が長期化するとの予測から円相場は1ドル100円台に下落。円安による輸出拡大を好感して日経平均株価は半年ぶりに1万5千円台を回復しました。安倍政権が誕生して12月26日で満1年ですが、アベノミクス経済政策への期待感から内閣支持率は依然50〜60%台を維持しています。しかし、消費の鈍化、輸出の停滞で成長率は伸び率が前期より半減しています。任期満了に伴う11月17日の福島市長選は、無所属で新人の小林香・元環境省東北地方環境事務所長が自民、社民推薦で4選を目指した現職の瀬戸孝則氏を破って初当選しました。東電福島第一原発事故後の4月以降、郡山、いわき、二本松市を含め福島県内4大都市の全てで現職が落選のドミノ。いずれも原発事故による被災者や避難者を多く受け入れた地域で除染や復興の遅れに住民の強い不満が反映されたと見られます。自民党推薦候補は10月以降、東京の武蔵野市、奈良県天理市、神奈川県川崎市、埼玉県越谷市で敗北しており、各地の民意には変化の兆しが現れています。それだけに首相は成長戦略の加速に懸命です。

脱デフレに政労使で賃上げ促進
国の借金は1000兆円、14年度予算の概算要求は99兆円と巨大規模ですが、首相は来年4月からの消費増税前に、賃上げで個人消費を活性化させ、デフレ脱却を完了させる方針。10月1日の閣議では「企業が賃上げの姿勢を確実に示す」との条件付きで復興特別法人税の前倒し廃止など5兆円規模の経済政策をまとめました。甘利明経済再生相は同19日の閣僚懇談会で、経済対策を@競争力強化策A女性、若者向けの施策B復旧防災、安全対策――の3分野に絞り、各閣僚が具体的内容を詰めるよう協力を要請しました。13年度税収が当初見込みの43兆960億円より2兆円増え、45兆円台に達する見通しになったことと、12年度予算の剰余金も2・4兆円近くあって、東日本大震災の復興財源を賄えることから、麻生太郎財務相は同日の記者会見で、「(消費税)増税をお願いしながら国債を新たに発行するのはいかがなものか」と述べ、1月の通常国会に提出する13年度補正予算案の財源には新たな国債は発行しない方針を発表しました。経団連が11月13日に発表した大手企業のボーナスの第1回集計は、平均妥結額が昨冬比5・79%増の89万2121円となりました。
しかし、財政出動に伴う公共投資、個人消費や輸出、企業の設備投資など民間に期待した部門は今年前半から大きく失速しています。経団連は同22日、首相官邸で開いた「政労使協議」で、会員企業へ賃上げを促す方針を明記した文書を提出しました。来春闘で5年ぶりに1%以上のベアを要求する連合の古賀伸明会長も同21日、「デフレ脱却には非正規や中小企業の格差是正が極めて重要。賃金引き上げは当然」と述べ、非正規労働者の時給を30円、月給ペースで約5千円アップし、定期昇給や正社員への転換を促す考えを示しました。

反対激化の中、4党が修正協議
 さて、与党ペースで進んだ国会は、安全保障の機密情報を外部に漏らした国家公務員らに罰則を強化する「特定秘密保護法案」の審議が大詰めを迎えています。マスコミでは東京新聞が反対の急先鋒で日弁連や文化団体も反対。田原総一朗、田勢康弘、鳥越俊太郎氏らテレビキャスターが11月20日、同法案の「廃案を求めるメディア関係者総決起集会」を開催、秘密法反対ネットなど5市民団体も22〜23日、東京・日比谷公園で1万人集会を開くなど、慎重審議や廃案を求める運動を展開しました。政府と自公の与党は今国会の成立を目指し、同法案に前向きな日本維新の会、みんなの党と個別に修正協議を開きました。論点は「特定秘密の指定範囲」「運用をチェックする第三者機関の設置」「報道の自由確保」の3つ。同法案は前回のHPで詳述した通り、漏らすと最高懲役10年の厳罰を科す特定秘密の対象として@防衛A外交Bスパイ活動防止Cテロリズム防止――の4項目を定め、条文に36の「その他」と言う言葉が盛り込まれています。秘密指定期間は5年としながら何度でも更新でき、30年を超えた場合も内閣の承認があれば指定し続けられるとしています。

60年解除に後退・改悪と野党
 みんなの党は同19日の修正協議で、首相が特定秘密の指定基準を作成し、実際に指定する場合も首相の同意を義務付けるなど「首相主導」を明確にするよう要求した結果、政府が恣意的に特定秘密の指定や解除をしないよう、首相自らが「第三者機関的な役割」を担うことで合意。36項目の「その他」についても外交、スパイ活動防止、テロ防止の3項目について、「その他の重要な情報」という表現を削ることで合意しました。日本維新の会は修正協議で与党が特定秘密を指定するのは「全ての行政機関の長」としたのに対し、「外務・防衛の長に限定すべきだ」、「第3者のチェック機関を設置」、「秘密事項は60年で指定解除」などと主張しました。結局、同21日の4党最終協議では、与党とみんなの党の合意事項に加え、特定秘密の指定期間を、「情報源に関する情報や暗号など7項目を除き、60年で原則指定解除」に差し替え、「チェック機関の設置を検討する」などの最終案をまとめました。共産、社民両党は「修正どころか後退・改悪。暗黒政治だ」と猛反対。維新の会の橋下徹大阪市長もこれまで、秘密の指定期間を「30年で例外なく全面公開」とし、範囲も「防衛関連に限る維新の当初案が最低でも必要だ」と主張してきたため、同党内では「譲歩し過ぎ」との不満が募り修正案を過半数多数の採決でようやく了承。慎重審議を唱えて委員会、本会議ともに採決を退席。修正案は26日、自公みんなの3党賛成で衆院を通過しました。

第三者チェック機関求める民主
民主党が提出した対案は@秘密指定の基準を定めて、適正かどうかを判断する第三者機関「情報適正管理委員会」を内閣府に設置A同委は原子力規制委や公正取引委と同じ独立性の高い組織とするB特定秘密の指定が30年を超える場合は第三者委員会の承認を義務付けるC罰則の最高10年は5年に引き下げる――などを主な内容とし、修正しなければ徹底抗戦の構えです。みんなの党も民主党同様、最長30年での解除を求めていました。一方、国会改革を巡る与野党の実務者協議は同18日に初会合を開き、各党の改革案が出揃いました。自公両党が最優先に掲げた首相、閣僚の出席制限に対する野党側の反対は強く、党首討論の充実についても、生活の党は週1回1時間程度討論するよう主張。同党と共産、社民、新党改革の4党は、討論への参加資格が衆参いずれかで10人以上の議席を持つ会派という申し合わせの廃止を提案。通年国会は民主、みんな、生活、改革4党が求めました。

違憲状態判決受け抜本改革協議
 最高裁は同20日、昨年末の衆院選は1票の価値が不平等だと2弁護士グループが求めた訴訟に「選挙は違憲状態だった」との判決を下しました。判決は衆院解散間際に0増5減の選挙制度改革関連法や今年6月に成立した区割り改定法で、最大格差が2倍未満(1・998倍)に収まった点を「一定の前進」と評価しています。違憲状態の判決は2011年に次いで2度目ですが、この時は各都道府県にあらかじめ1議席を配分する「1人別枠方式」の廃止を求めており、今回の判決でも「国会は構造的な問題を最終的に解決する取り組みを続ける必要がある」とし、今後の国勢調査の結果次第で区割り改定をするよう求めています。民主党の野田佳彦前首相は昨年11月の安倍自民党総裁との党首討論で「国会も身を切る改革が必要だ」とし、定数削減を衆院解散の条件として提案、自公民3党は今年の通常国会までに法改正を行うことで合意しました。しかし、小選挙区の山梨、福井、徳島、高知、佐賀5県の削減が実現しただけ。石破茂自民党幹事長は「妥当な判決だ」と真摯に受け止め、22日に自公民3党幹事長会談を開き@小選挙区比例代表併用制は維持A定数削減を検討――を基本に協議するよう他野党に呼びかけました。2015年実施の国勢調査(結果は16年2月)に向け抜本的改革案をまとめる方針です。だが、広島高裁岡山支部が28日、7月参院選の岡山選挙区選挙は憲法違反で「無効」の判決を下し再び厳しい局面を迎えました。

ケネディ大使は日米同盟の追い風
 11月22日はジョン・F・ケネディ米大統領が凶弾に倒れて50年。愛娘のキャロラインさんが駐日大使として15日に来日しました。弁護士で、過去に叔父のエドワード・K氏と来日した際は広島の原爆被災地を視察した大変な親日家。日米間には米軍普天間飛行場の辺野古移設、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉など日米の課題は山積しており、首相は世界的な知名度を誇る「セレブ大使」が、「日米同盟の追い風になる」と期待し、20日に儀装馬車で皇居を訪問、陛下に信任状を奉呈した直後のケネディ大使を官邸に招き昼食をともにし、日米同盟の進化などを話し合いました。中国が突如、尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定し、緊張が高まっています。27日に成立した日本版NSC設置法案はこうした中国の海洋進出や北朝鮮の核問題に対応するため、官邸主導で外交・安保政策を強化するのが狙いです。中核は首相、官房長官、外相、防衛相の「4者会合」。内閣官房に「国家安全保障局」を新設し、外務、防衛両省などから約60人を出向させて首相をサポートします。初代局長には第1次安倍内閣を外務次官として支えた谷内正太郎内閣官房参与が内定。首相はNSC設置に合わせ各国と情報を交換するには、秘密を保全する保護法案の今国会成立が不可欠であるとし同法案と産業特区法案など重要法案を成立させるため短期間の会期延長も止むを得ないと考えています。しかし、来年度予算編成や税制改正作業は既に始まっています。首相は重要法案処理と会期延長をどう裁くか。まさに正念場です。