第311回(11月1日)景気好循環を確約 野党連携出来ず低調
 安倍首相は10月15日に開幕した臨時国会の所信表明演説で、道半ばのデフレ脱却を「意志の力」で乗り切り、税制・予算・金融・規制改革のあらゆる施策を総動員し、賃上げと雇用拡大の経済再生を果たし「景気の好循環」を実現すると確約しました。具体的には産業競争力強化法案、国家戦略特区法案、特定秘密保護法案、農地法改正案など重要法案のほか、国家安全保障会議(日本版NSC)創設関連法案など前国会積み残し法案の成立を目指します。野党は衆参両院の代表質問と予算委質疑で、「東電福島原発の汚染水漏洩をアンダーコントロールと言う首相発言は軽い」(民主)、「TPP交渉で農産品重要5項目を守る約束は反故にされた」(共産)など激しく追及しました。幸い野党は連携が出来ずバラバラな追及で迫力に欠けました。しかし会期はわずか53日間で、14年度予算編成を年末に控え大幅な会期延長は難しく、10本以上の重要法案を成立させるのは容易ではありません。米国債が史上初めて不履行(デフォルト)となる財政・金融危機はぎりぎりの16日、上下両院が先送り案を可決して日本への影響が薄れ、安倍外交の懸念は軽減されました。私は党の政調副会長で文科行政を担当、衆院消費者問題特別委の筆頭理事を拝命、「国民生活の安全」と取り組んでいます。厳しい政局ですが一層のご支援、ご教唆をお願い申し上げます。

チャレンジ精神で「決める政治」
 「(アベノミクスの)『3本の矢』は世界の空気を一変させたが、デフレ脱却は未だ道半ば。被災地の復興なくして日本の再生なし。実行なくして成長なし。『決める政治』で国民の負託にしっかり応えていこう」――首相は15日の所信表敬演説で明治維新の啓蒙思想家・中村正直の『西国立志伝』を引用して『意志の力』を強調。24分にわたり復興加速化、長引くデフレからの脱却、経済再生、財政再建、社会保障制度改革、教育再生、安全・安心な社会構築、地域活性化、外交・安保政策の立て直し――など今国会で成立を目指す政策課題を羅列し意志の力で乗り切る決意を表明しました。重要法案は前記のほか社会保障制度改革のプログラム法案、国家公務員制度改革関連法案と前国会で廃案又は継続審議となった電気事業法改正案、生活保護法改正案があります。成長戦略の実行では、「失敗を恐れて何もしないのは最低だ」とのホンダ創業者・本田宗一郎氏のチャレンジャー精神をもとに「長引くデフレの呪縛から解き放ち、起業・創業の精神に満ち溢れた国を取り戻し、若者が活躍し、女性が輝く社会を作り上げる」と述べ、ベンチャー起業の応援を確約しました。

規制緩和の戦略特区で外資導入
 「Japan is back。 Buy my abenomics」(日本は戻ってきた。私のアベノミクスは買いだ)――首相は国連総会に出席した9月26日、米ニューヨーク証券取引所で講演し、「お金は儲かるところへ流れる。極めてシビアだ」と前置きした上、日本への投資を呼びかけました。首相は10月18日、日本経済再生本部の会合で、「世界と戦える国際都市の形成、国際的イノベーション拠点の整備に必要な規制・制度改革事項の検討方針を整理できた」と述べ、国家戦略特区法案の早急な取りまとめを指示しました。特区は海外からの投資を念頭に地域限定で大胆な規制緩和を行うもので、成長戦略の柱に位置づけています。規制改革項目では20年東京五輪に向け、容積率や土地利用規制を緩和して都心部のマンションや高層ビルの開発を促し、来日する外国人向けの宿泊施設に、賃貸住宅や古民家を転用しやすくするため、旅館業法の特例を認めることにしています。焦点とされた雇用特区は外国企業や新興企業が進出しやすくするよう@労使間で解雇条件を事前に契約書面で決める「解雇ルールの明確化」A有期契約で5年間働いた労働者が、無期契約を結べる権利をあらかじめ放棄できる「有効雇用の特例」B一定水準以上の収入がある人の残業代をゼロに出来る「労働時間ルールの特例」――の3項目でしたが、「労働者の権利保護を根本から覆す内容で、雇用特区ならぬ解雇特区だ」との批判が出されたため雇用項目は見送りました。

最長10年刑罰の特定秘密保護法
 マスメディアを含め野党、日本弁護士連、日本ペンクラブなどが反対しているのが特定秘密保護法案。菅政権当時、中国漁船が海保の監視船に体当たりした情報を政府当局が秘匿しようとしたのに対し、海保職員がネットのツイッターに映像入りで載せたことから、菅・野田両政権が機密保全の強化を図り、立法措置を検討したのが出発点です。安倍首相は10月17日の参院本会議で、「外国との情報共有は、情報が各国で保全されていることが前提だ。秘密保全に関する法制の整備は喫緊の課題」と答弁し、「過去15年間で公務員による主要な情報漏洩事件を5件把握している。大変遺憾だ」と述べました。確かに北朝鮮の核開発やテロなどで圧倒的な情報量を持つ米政府は、日本の機密保全に不信感を抱いています。政府は外交・安保政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)が各国から必要な情報を得るため、NSC関連法案を衆院の「国家安全保障特別委員会」(額賀福志郎委員長)に提出しましたが、司令塔に不可欠な機密保全態勢を強化する特定秘密保護法案も集中審議ができる同委にかけて成立を目指します。同法案は有識者会議が防衛、外交、スパイ防止、テロ対策の4分野をチェックし「特定秘密」とそれを取り扱う人を指定。情報漏洩者に米軍の機密漏洩並みに最長10年の刑罰を科し、重罰化を図る内容です。これまでは自衛隊法の防衛秘密漏洩に5年以下、国家公務員に1年以下の刑罰を科していました。

報道・取材の自由は処罰しない
これに対し、公明党は憲法21条で保障された基本的人権の「表現に自由」「国民の知る権利」に不可欠な「報道の自由」「取材の自由」への配慮を法案に明記するよう要求。政府自民党は「正当」な業務なら処罰はしないことで受け入れました。しかし、野党は「日本版NSCの創設は嘘八百の戦勝報道で日本を破局に追い込んだ大本営発表と同じ。積極的平和主義を唱え、集団的自衛権の解釈改憲を目指す首相の狙い通りだ」、「東電福島第一原発の汚染水漏洩事故もテロ対策の特定秘密になりかねない。情報秘匿で首相の汚染水コントロール発言をごまかす手段だ」、「特高警察は戦時中、スパイ活動に睨みを効かせたがデートも出来ない警職法の再来だ」、「市民の自由と権利を骨抜きにする官僚を守るための官僚保護法案」、「国民の目、耳、口を塞ぎ、米国と一緒に『海外で戦争をする国』を作るもの」――と猛反発し、成立を阻止する構えです。中曽根政権当時、自民党が提案した「国家機密法案」は野党の反対で廃案に追い込まれました。今回も成立は険しい見通しにあります。

PP で223品の関税撤廃検討
年内妥結が目標の環太平洋連携協定(TPP)交渉は極めて秘密裏に進行していますが、野党は秘密保護法が成立すれば、さらに交渉内容が秘匿されると懸念しています。首相は衆院の代表質問で、「選挙公約は違えてはならない。守るべきものは守り、攻めるべきものを攻め、国益を追求する政府方針に何ら変更はない」と答弁。コメ、麦、牛馬肉、乳製品、甘味資源作物――の重要農産物5項目の聖域を守り抜くと明言しました。しかし、5項目には関税上の分類で586品目あり、うち調製品、加工品ではコメに米粉を使った団子など24品目、麦にはうどん、ケーキミックスなど32品目、牛馬肉には牛タン、ハム・ベーコンなど47品目、乳製品はアイスクリームなど31品目、甘味資源はチューインガムなど89品目の計223品目があります。TPP 交渉で各国は95%以上の関税撤廃を要求していますが、政府自民党はこれら223品目を中心に関税を撤廃しても、生産農家への直接の打撃は小さいと判断、水面下で農業団体に打診しています。これには農業団体が「公約違反だ」と強く反発。自民党内でも「586品目は全部守って当たり前だ」と不満が高まっています。12月7〜9日にシンガポールで開く閣僚会合が年内妥結の大きなヤマ場になりそうです。

先送りでオバマ氏の求心力低下
 首相の向こうを張って「オバマミクス」と呼ばれる国民皆保険の医療保険制度改革(オバマケア)に躓いたオバマ米政権は、来年1月15日まで暫定予算編成の先送りと、2月初旬まで債務上限の引き上げを認める時限措置で急場をしのぎました。だが、「大きな政府」を求める民主党と「小さな政府」にこだわる「茶会運動」が主力の共和党の対立は、来年秋の中間選挙に向けて益々先鋭化。オバマ氏の求心力に陰りが生じています。アベノミクスの第1の矢「積極的財政」、第2の矢「大胆な金融」でロケットスタートし、景気好循環の道筋を固めた安倍政権ですが、第3の矢「成長戦略」を問う臨時国会では国家戦略特区や原発再稼動、特定秘密保護、TPP 交渉などを巡って野党の厳しい攻勢を受け、どれだけの法案を成立できるか。一寸でも油断すると立ち往生し、自転車操業的な、不安定な政局運営に陥り、苦境に立たされそうです。我々も背水の陣で安倍政権を支えていきます。