北村からのメッセージ

 

 第31回(12月1日) やり繰り予算編成 小泉ポンドも浮上

 早くも師走、激動の年でした。臨時国会は12月7日に閉幕予定で我々政治家は15ヶ月にまたがる第2次補正予算案と来年度予算案の編成に忙殺されています。小泉内閣は構造改革の中で最も難しいとされた道路4公団の民営化など主要7つの特殊法人改革に道筋を付け、ひとまず難関を突破しました。しかし、不況下のマイナス成長で税収は落ち込み、国の台所は火の車。“大晦(おおつごもり)は合わぬ算用”で、へそくり財源を使うなどやり繰り算段中です。財政難で年を越すのは容易ではありません。構造改革と景気浮揚を両立させて、国債発行額「30兆円枠」を堅持できるのか。小泉政権はまさに正念場です。

 落ち込む税収

 小泉首相は11月21日の与党党首会談で、今年度の第2次補正予算案を年明けの通常国会冒頭で処理する方針を正式に表明しました。「首相は7特殊法人の改革と、自民党内抵抗勢力が強く要求した景気浮揚の第2次補正とを、バーター取り引きした」と、マスコミは報じましたが、首相は構造改革と景気対策の同時達成という困難な2兎を追いつつ、短期決戦で難局を乗り切る決意を固めたものです。だが、来年度の税収見通しは今夏の概算要求段階より2兆8千億円は落ち込む見通しで、財源の捻出は四苦八苦の状態。そこで、業績のよい携帯電話の電波利用権を有料化する案や「小泉ポンド」構想が浮上しています。

 NTT株売却

 第2次補正予算の事業規模は4兆円程度で、1次補正と合わせると8兆円程度になる見通しです。2次の国費投入額(真水)は2兆5千億円で、財源には本来、国債償還に充てる国債整理基金特別会計からNTT株210万株の売却収入分を活用します。この特会は“へそくり”のようなもの。この特会活用で、首相がこだわってきた今年度国債発行額の30兆円枠は維持できる形です。首相は「30兆円枠を守る補正予算を編成することでデフレスパイラルを阻止し、内容も構造改革に資するものにしたい」と張り切っています。

 堀内総務会長私案

 国債整理基金特別会計は、国債、借入金などの償還、利払い、割引料などの財源を確保する会計で、一般会計などから毎年、資金が繰り入れられています。首相がこの特別会計に着目したのは、私が所属する宏池会会長の堀内光雄党総務会長が来年の通常国会へ提出を検討している、時限立法の「財政運営に必要な財源確保特別措置法(仮称・財確法)」案にヒントを得たものと思われます。堀内私案は、特殊法人の収益金や資産売却利益などを国庫納付させるための具体案で、総額10兆7千億円の税外収入増を見込んでいます。

 携帯電話で5兆円

 その内訳は@政府が保有するNTT、日本たばこ、電源開発の3社株式の売却益約4兆円A石油公団が保有する優良子会社の株式売却益約5千億円B大阪万博の跡地公園を整備・運営する認可法人「日本万博記念協会」の民営化による国の持ち分益5百億円の回収C日本中央競馬界(JRA)収益の臨時交付金1千億円――のほか、携帯電話の電波利用権を競争入札で販売、5兆円の収入を上げることを見込んでいます。現在、通信用の電波は割当制で、通信会社は年間数十億円の電波利用料しか支払っていません。これを英独などのように入札制に切り替え、両国同様4−5兆円の収入を確保しようとするものです。

 競馬収益も柱の1つ

 確かにJRAは売り上げの1割と利益の半分を国庫納付金として納めており、税外収入の柱の1つです。だが、この不景気で競馬収益が伸び悩む中で、1千億円もの臨時納付金を納めることが出来るかどうか。電波利用権も競争入札で高騰すれば通信会社の経営を圧迫、通信料金に跳ね返ってくる恐れもあります。また、政府がNTT株などを大量に放出すれば、相場全体に悪影響を及ぼしかねないし、国有地の民間売却も96年の2千6百億円をピークに減少しており税外収入は期待できないーーなど色々な問題が生じてきます。

 発泡酒、たばこも

 政府は手っ取り早い税収増を睨み、発泡酒やワインの酒税引き上げやたばこの増税も検討中ですが、いずれも消費不況をさらに悪化させる要因となりかねず財務省も苦慮しているところです。そこに浮上したのが、経済評論家が提唱した「小泉ボンド(国債)」構想です。これは、国有財産の売却益や特殊法人改革を進めた結果生まれる資金を償還財源に充て、使途を構造改革分野に限定するなど、従来型とは違った特別な国債です。償還期間を通常の建設国債の60年に比べ、極端に短い5年程度とする案が出ています。短期間での全額償還を政府が保証することで、国債増発が市場に及ぼす影響を最小限に抑えられます。

 へそくりの基金特会

 小泉ボンドは、国債発行額30兆円の枠外に位置付けるのが狙いです。今年度の第1次補正で国債発行額は30兆円丁度となり、第2次補正も仮借金の要素がある“へそくり”(基金特会)のNTT株売却益を充てることで「30兆円以下に抑制」する方針は堅持できました。しかし、12月上旬に発表される7−9月期の国内総生産(GDP)は2期連続のマイナス成長が確実です。自民党内からは「雇用中心の第1次補正をやっても地方の雇用は非常に厳しい」「従来型の公共事業に予算を回さないというが、効果的な景気浮揚策があるのか」「過疎地は悲鳴を上げている。30兆円枠に止めるべきではない」との不満が高まっています。

 地方切り捨ては排除

 来年度税収がさらに落ち込むと想定される中で景気浮揚を図れば、30兆円枠突破は必至となりますが、小泉ポンドを発行すれば30兆円枠堅持との整合性が保てることになり、ポンドへの期待感が高まっています。小泉首相は、第2次補正予算を従来型の公共事業ではなく、電線の地中化や過疎地での光ファイバー敷設、福祉施設など「構造改革を促進する公共事業」に重点配分する考えです。この姿勢は来年度の予算編成でも貫き、都市再生、環境対策、IT(情報技術)振興など構造改革の重点7分野に厚く配分する方針です。構造改革最優先の構えは評価しますが、地方切り捨ての政策は断じて許せません。年末まで長丁場の予算折衝が続きますが、私は地元の声を十分に反映できるよう頑張ってまいります。