第302回(6月16日)アベノミクス第3弾 決選まで1か月余
 安倍首相は6月初旬、横浜市で開かれた第5回アフリカ開発会議(TYCAD5)の議長を務め、「アフリカを世界成長の原動力に変身」との横浜宣言を採択、7日に来日したフランスのオランド大統領とは日仏の原発技術協力に合意するなど、6月も活発な経済外交を展開しました。国会は26日に閉幕しますが、首相は5日に都内で講演し、アベノミクス「第3の矢」として「国家戦略特区」構想など経済成長戦略を発表。これを国民にアピールし、23日の都議選、7月21日の参院選に向け、ダブル選挙の臨戦態勢を固めました。第3の矢は1人当たりの国民総所得(GNI)を「10年後に150万円以上増やす」という目標を掲げており、池田勇人元首相の「所得倍増計画」にあやかったものです。さらに「第4の矢」として経済財政諮問会議がまとめた財政再建の中期計画を「骨太方針」に盛り込みました。来年4月からの消費増税を実施するか否かは、6〜8月期の経済指標が判断基準となります。しかし、5月下旬以降、投機筋の思惑買いから円・株式の相場が乱高下を続け、円高による輸入食料品が値上がりするなど懸念材料が続出中。政府自民党は折角景気が上昇した中で、国民生活をどう守り参院選を勝利するか。正念場に立たされています。ご支援ください。

インフラ整備や人材育成を支援
 TYCAD5は6月1〜3日間、アフリカ51カ国の首脳が参加して横浜市で開かれ、「アフリカ大陸を世界成長の原動力に変身させる」との目標を掲げる「横浜宣言2013」を採択して閉幕しました。宣言は@成長基盤を強化するためハード・人的・知的インフラに焦点を当てるA農業と関連ビジネスの拡大はアフリカの自律的経済成長に不可欠B安保理を含む国連諸組織を早急に改革する決意を再確認Cアフリカの気候変動の深刻な影響を認識し、持続可能・強靭な成長を追求する――などを骨子とし、インフラ整備や人材育成、経済の多角化、民間セクター主導の成長促進などを通じて貧困を減らし、裾野の広い中間層創出を後押しする決意を表明しました。TYCADは冷戦後90年代に細川護煕政権から5年おきに首脳を日本に呼び寄せる形で開催され、今回は5回目。日本の国連安保理常任理事国入りの支持を期待する外交的思惑も重なり、20年間にわたり幅広い援助を続けてきました。

現地では中国の植民地主義警戒  
 「成長はアフリカにあり。伸びるアフリカに投資すべきは今。平和と安定は成長の前提条件。日本はただ資源を採掘し日本に持ち込むようなことはしない。経済成長に繋がるようアフリカを支援する」――首相は1日の全体会合で各国首脳らを前にこう約束し、アフリカ大陸で最近急速に存在感を高めている中国、韓国を牽制しました。中国の習近平国家主席が初外遊にアフリカを選んだように、アフリカは石油や天然ガス、レアアースなど資源が豊富で、サハラ砂漠以南は2000年代に年平均5%を超える経済成長を遂げてきました。そこに目をつけた中国は2000年から11年までに750億ドル(約7・5兆円)の開発資金を提供したと言われます。その結果、エジプトをはじめ、内陸部でも中国車が氾濫していますが、中国は資本投下と同時に企業・従業員もセットで送り込み、至る所にチャイナタウンを形成するなど、地元の雇用には結びつかず、アフリカ側は「中国は1次産品を取って工業製品を我々に売る。これは経済力を背景とした植民地主義の本質」と警戒しています。そこで安倍首相は「5年間で最大約320億ドル(3・2兆円)の官民支援」を約束し、中国のような経済侵略的な上下関係ではなく、互恵的な支援関係を構築しようと懸命です。

日仏が次世代原子炉開発で合意
 首相は7日、オランド大統領との日仏首脳会談で、次世代の原子炉である研究中の「高速炉」など原子力分野の技術開発について、包括的な協力を進めることで合意。中韓両国が追い上げてくる原発分野での技術的優位性を誇示し、新興国への原発売り込みでの協調を確認しました。また、武器輸出3原則の緩和を踏まえた武器の共同開発でも合意しました。このように首相は政権掌握後、半年の間にロシア、中東、ミャンマーなどを立て続けに訪問、TYCADでは首脳会談を10件もこなしたうえ、日仏首脳会談も実現するなどトップセールスの経済外交を展開してきました。17,18両日は英国での主要国首脳会議(G8)に出席します。国会は26日に閉幕しますが、7月21日参院選の前哨戦となる都議選は6月14日に告示され自民59、民主44、維新34、公明23など253人が立候補。23日の投票日に向け、42選挙区で127議席を争います。都議選の結果がもろに参院選に影響するため、各党はダブル選挙にしのぎを削っています。安倍首相は5日、都内の講演でアベノミクスの第3の矢、成長戦略の実現により、10年後には国民総所得(GNI)が年3%を上回る伸びとなり、1人当たりのGNIを現在の水準から150万円以上増やすとの目標を掲げました。

新特区に国際ビジネス都市作る
 「停滞の20年から回復の10年」への経済再生と財政健全化を両立させる構想で、成長戦略に関する講演は4,5月に続き、5日が「第3弾」。目玉は「国家戦略特区」を創設し世界中から技術、人、資金(投資)が集結した国際ビジネス都市を作る方針を打ち出しました。この特区内では建物の容積率、外国人医師の診療許可、インターナショナルスクールの設置要件などに規制を大幅に緩和し、ロンドンやニューヨークに匹敵する国際的なビジネス環境を作る考えです。このほか@インターネットによる薬販売の原則解禁A3年間で民間投資を年間70兆円に回復B2020年までにインフラ輸出を30兆円に拡大、外国企業の対日直接投資残高を35兆円に拡大、農産物・食品輸出額を1兆円に増大C10年間でPFI事業などを12兆円規模に拡大、高効率の石炭火力発電や風力・太陽光発電などに30兆円規模の投資D電力システム改革の実現――などを挙げています。PFI事業とは、インフラ(社会基盤)整備の方向として、老朽化で大規模な改修が必要とされる首都高速道路の更新などのため、民間の資金や経営ノウハウを導入する方式で、「PFI方式」と呼んでいます。今後10年間で、過去10年の実績の3倍に当たる12兆円のPFI事業を実施する予定です。

洋上風力発電・養殖は長崎先行
 首相の講演は政府の産業競争力会議が同夕にまとめた成長戦略が素案ですが、この中で首相は@浮体式洋上風力発電を18年ごろまでに商業化させるA農水産物輸出の関連でマグロ、ウナギの養殖にも力を入れる――など長崎県が先行的に取り組んでいる事業を強調しました。障害物のない洋上は強い風が吹き発電効率が高いので、私の郷里・五島列島は文化遺産の早期登録を目指し、観光目的の電気自動車(EV)の普及に乗り出し、環境省は昨年8月末、その電源に五島列島・椛島で「浮体式洋上風力発電」の実験に着手しました。
世界のクロマグロの7〜8割は日本で消費されており、蓄養国の欧州や北アフリカ諸国では巻き網漁法で産卵前の幼魚まで漁獲するため、資源の枯渇が懸念されています。ウナギも台湾、中国などの稚魚乱獲によって近年不漁が続き、土用の丑の日は品薄。長崎県・対馬の浅茅湾、雲仙市の橘湾ではハマチ(1〜3歳魚)、ヒラマサ(2歳魚)、シマアジ(1〜2歳魚)、トラフグ(2歳魚)の捕獲稚魚を育てる養殖が盛んで島の基幹産業になっています。ウナギも産卵からの完全養殖に一応成功していますが、産卵技術は未確定。マグロ、ウナギの資源が枯渇しないよう私は早急に完全養殖技術の確立を推進したいと努力しています。

成長戦略の3弾放ち参院選突入
  首相は4月19日の記者会見で、保育所定員40万人増など「女性の活躍」を第1弾。5月17日の講演で、農業の生産・加工・販売の6次産業化など「世界で勝つ」を第2弾。6月5日の講演で、12兆円規模の民間資金活用の「民間活力の爆発」を第3弾としてぶち上げました。さらに首相は同6日の経済財政諮問会議で「経済再生10年のシナリオを描いてもらった」という「骨太の方針」とともに同14日、これらの成長戦略を閣議決定しました。これで「大胆な金融緩和」「機動的な財政出動」「民間活力導入による成長戦略」と言うアベノミスクの3本の矢は放たれ、参院選に突入しました。昨年の総選挙で躍進した日本維新の会は橋下徹共同代表の「従軍慰安婦発言」で大阪市議会が問責決議案を上程し否決されたものの、神通力は薄れ、訪米計画が挫折するなど「四面楚歌」で人気は急落。民主党も支持率は低迷し、自民党だけが順調な戦いを進めています。首相も慎重で、「農地の大規模化」などは農協(JA)の反発を意識して「株式会社の農業への全面参入」などの具体策には触れていません。しかし、5月下旬から円・株式市場は乱高下を繰り返し、円高による輸入食料品が値上がりするなど不安材料も出ており、マスメディアは「経済評論家は『成長戦略のメニューが小粒で、日本が抱える課題に取り組んでいない』と厳しい評価をしている」(朝日)と報じるなど、批判的論評を載せ始めています。参院選に何卒、絶大なご支援をお願い申し上げます。