第301回(6月1日)慰安婦発言で選挙協力解消 成長戦略が鍵
 平成25年度予算が成立し、各党の攻防は6月23日の東京都議選、7月21日の参院選に突入しました。参院選の争点は憲法改正と経済再生ですが、日本維新の会の橋下徹共同代表の「従軍慰安婦発言」で野党の結集が乱れています。安倍首相はその隙に乗じダブル選に連勝し長期安定政権を築こうと、決意を固めています。「大胆な金融」、「積極的な財政」のアベノミクスの2本の矢が功を奏して好景気が持続、自動車、電機などの輸出企業を始め、不動産業、証券業は利益増に沸いています。しかし企業は定昇より賞与の一時金アップで春闘を乗り切り、下請け企業従業員の不満が大きいうえ、原油、小麦、食用油などが円安で値上がりし庶民の暮らしを圧迫しています。それだけに、残る1本の矢「成長戦略」をいかに国民にアピールするかが懸案事項。首相は先のミャンマー訪問まで経済外交でトップセールスを展開、5月17日には成長戦略の第2弾として農業・食文化、放送・動画、鉄道・電力、医療・防災などの各種インフラをパッケージで輸出する方針を発表しました。政府自民党は総力を挙げて今月中に成長戦略の骨太方針を取りまとめますが、私も党政調副会長として戦略構築に努力しています。一層のご指導ご支援をお願い申し上げます。

都議選、参院選まで50日の攻防
 第2の矢に相当する公共事業費約5・3兆円を含む一般会計約92・6兆円という過去最大規模の25年度予算案は5月15日、参院本会議で否決されたものの、衆院優位の憲法規定で成立。共通番号制度関連法案(マイナンバー法案)も24日に成立しました。残る焦点は「0増5減」の区割り法案(公選法改正案)ですが、この法案も90日ルールによって成立が見えており、各党は都議選、参院選のダブル選にダッシュしています。会期延長がなければ参院選は7月4日公示、21日に投開票で残りわずか50日間の攻防です。予算成立後、首相は記者団に「株価も1万5千円、順調に金融緩和の成果が出た。経済がいい状態になってきたと実感して頂ける状況を作って行きたい」と強調、5月18日の九州を皮切りに全国行脚を始めました。参院選は定数242の半数が改選され121議席の争奪戦。改選前の議席は自民84、公明19で与党系103。与党が63議席以上を獲得すれば、過半数を確保して衆参のねじれを解消できます。改憲に必要な3分の2 の議席は162で、96条の緩和に賛成する日本維新の会や条件付賛成のみんなの党がどこまで議席を伸ばすかが焦点。現在の立候補予定者は、自民79(選挙区49、比例区30)、公明11(同4,7)、民主53(同33,20)、共産51(同46、5)、維新37(同11、26)、みんな22(同7,15)、生活10(同4,6)、社民7(同4、3)、みどり風5(同3,2)、新党大地1(同1、0)、新党改革0――です。

維新、みんなの亀裂は漁夫の利
 石破茂幹事長は15日の都内講演で、「自民党は何が変わったのか問われるのが参院選だ」と述べ、安倍人気を生かして比例区の公認を若干増やす考え。公認には首相の昭恵夫人が推薦する歌手なども含まれます。逆に民主党は「総選挙反省会」でも敗北の総括が十分に出来ず候補を絞り込みました。一方、維新とみんなは都議選、参院選での選挙協力を話し合ってきましたが、橋下氏の「従軍慰安婦発言」を受けて両党関係は急速に冷え込み、みんなの渡辺喜美代表は16日、参院議員総会で「このままだと維新と一緒に沈む」と述べ、維新との連携を解消、一旦成立した都議選1〜3人区での両党候補者の相互推薦も見合わすことになりました。選挙協力の不調は総選挙に次いで2度目。石原慎太郎共同代表も橋下氏の発言に「世界観、歴史観が無い」と批判。おまけに17日の維新の代議士会で西村真吾衆院議員が橋下氏を支援し「韓国人の売春婦はうようよ居る」と発言、除名されるなど維新の会は内部分裂を起こし改憲勢力になるどころか石原氏の言う「賞味期限切れ」の状態。維新、みんなの亀裂で「漁夫の利」を占める民主党は2人区の議席獲得を目指しています。

都議会第1党奪回を目指す自民
 参院選の前哨戦となる東京都議選は6月14日に告示され、23日の投開票に向け首都決戦に突入します。今年は4年毎の都議選と3年毎の参院選が重なる12年に1度の節目の年。42選挙区の定数127に対し、前回2009年の221人を上回る250人前後が立候補すると見られ、激戦模様です。2001年は小泉ブームを背景に都議選に勝利し参院選で大勝したことから、安倍政権はアベノミクスのブームに乗って前回民主党に敗れて失った「自公で過半数」と「都議会第1党の座」を奪回して都政での影響力を高め、ダブル選でも勝利しようと、政党別では最多の57人の公認を決め、さらに数人の追加を目指しています。前回圧勝し初の第1党になった民主党は、政権交代で弱気になり、前回より4人少ない44人が立候補。公明党は23人を立て全員当選を目指します。日本維新の会は民主党を離党した3人だけが現職ですが、影響力がある石原前都知事、橋下大阪市長の両共同代表を2枚看板に、前市長や前市議会議長、タレントら35人を擁立。現有1議席のみんなの党も22人を公認。共産は42全選挙区で擁立、生活の党も3人立てるなど、第3極政党も動きは活発です。

農地の集積・集約化で所得倍増
 「行動なくして成長なし。世界中どこへでも出かけ、トップセールスを進めたい」――。安倍首相は17日、有識者の提言組織「日本アカデメィア」(共同塾頭・牛尾治朗氏ら)で講演。「世界で買って、家計が潤う」をキーワードに、鉄道などインフラ輸出や農業の国際競争力強化、観光立国などを柱に第2弾の成長戦略を発表しました。首相は24〜26日に企業トップ約40人を引き連れて投資拡大が見込めるミャンマーを訪問、経済などの法制整備や経済特区などのインフラ開発、総額910億円の政府開発援助(ODA)など支援の倍増を表明し、トップセールスを展開。27日に来日したインドのシン首相とはアラブ首長国連邦、トルコと同様、日本から原発を輸出する原子力協定締結を加速する事で合意しました。第2弾戦略では設備投資をリーマン・ショック以前の年間70兆円台に回復する目標を掲げたほか、環太平洋経済連携協定(TPP)参加への農協(JA)の反発を意識して、第2弾の大きな柱に「攻めの農業」を挙げ、現在4500億円程度の農産物や食品の輸出額を1兆円規模に倍増する目標を提示。さらに農業を観光業や福祉産業と結びつけ生産・加工・販売を一手に推進する多面的農業の「6次産業化」を目指し、農地の集積・集約化で「10年間に農業・農村全体の所得を倍増する」と確約しました。これらの実現のためには各都道府県に公的法人の「農地集積バンク」を作って農地を集約、大規模な生産が出来るようにし、2月に政府と民間で作った「ファンド」の資金を活用、農家の食品加工を支援する考えを示しています。21日には「農林水産業・地域の活力創造本部」の初会合を開き、農業の強化策を論議しました。

自信喪失から日本を解放と首相
 首相は講演で、「1〜3月の国内総生産(GDP)は年率3・5%成長になった。この動きを力強い成長軌道に乗せていく」と述べ、チェンジ、オープン、イノベーション(技術革新)の3つを挙げてその要は「行動」だとし、「長引くデフレと自信喪失から日本を解き放つのが私の仕事」と胸を張りました。民間投資を喚起する成長戦略として医療・介護、食文化、宇宙、防災、エコシティーを加えたインフラシステムの輸出戦略を打ち立て、現在10兆円のセールスを2020年までに30兆円に拡大する方針を明示しました。このほか、@国立8大学で今後3年間に教員の1500人程度を世界中の優秀な研究者に置き換えて外国人教授を倍増A今後3年間を「集中投資促進期間」と位置づけ、税制・予算・金融・規制改革・制度整備を総動員し、年間70兆円規模の設備投資を回復B年間800万人前後の外国人旅行者を2000万人に増やす観光立国型にし、ASEAN(東南ア諸国連合)などからの観光客にビザ発給用件を緩和C放送コンテンツ(番組)・アニメなどの海外売込みを支援し、複雑な権利処理を一元的に管理する窓口機関を整備、5年後までに3倍近く売り上げる――など、日本文化を海外に売り込む「クールジャパン」にも目配りし、「強い経済あっての外交、安全保障、社会保障だ」と述べ、成長戦略の軸足を経済政策に置きました。

各層の支持狙う第1〜3弾戦略
 首相は4月19日の記者会見で第1弾の成長戦略を発表、5年間で保育所の定員を40万人分増やす「待機児童解消加速化プラン」や「3年間の育児休業」、「女性を管理職に大幅登用」、「健康長寿社会の創造」など主として「女性の社会進出」と「働きやすい環境整備」を.ぶち上げました。これは女性や若者など無党派層を意識したものです。第2弾は企業、農業など従来の自民党支持者にアピール。第3弾は特区構想などで地方自治体の支持を得ようとしています。産業競争力会議(議長・首相)は同17日、東京都、大阪府・市、愛知県の3大都市圏などで大胆な規制緩和を行う「国家戦略特区」を設置、民間活力を最大限活用してアベノミクスの牽引役にする構想を打ち出しました。戦略特区は外国人が暮らしやすい環境を整え、法人税を軽くして大都市圏を世界一ビジネスしやすい都市に変貌させるのが目的です。2003年に始まった構造改革特区構想は現在も存続していますが、規制緩和には中央省庁が消極的であるため、首相のトップダウンで官僚の抵抗を排除しようとするもので、6月5日に発表する第3弾の目玉にする方針です。戦略時区には猪瀬直樹都知事がいち早く賛同しており、首相は6月17,18日に英国のロンドンで開くG8サミット(主要8か国首脳会議)でお披露目し、国際公約とする考えです。

効果的骨太方針が参院選占う鍵
 財界は4年ぶりに1ドル=100円超の円安ドル高、日経平均株価も1万5000円超と急上昇したことで、アベノミクスに期待感を強めています。だが、円安・ドル高、株価急上昇で、投資マネーが国債から株へ移ったため、長期金利が上昇(国債は下落)傾向にあり、住宅ローンの金利なども上がるなど景気への影響が懸念されています。民間が期待する効果的な骨太方針が策定できるか。この夏の好景気持続が参院選の勝敗を占う鍵となります。