北村からのメッセージ

 

 第30回(11月16日) 豊作下の米価下落 困難な抜本改革

 実りの秋。平年作を100とすれば、2001年産米(水稲)の作柄指数は、全国平均で103の「やや良」と2年連続の豊作。長崎県は105で穀倉地帯並みの収穫が期待できます。前世紀来最悪の干ばつと米軍の空爆から逃れるアフガニスタンの避難民は、1000万個も埋設されたという地雷原をさまよいつつ毎月10万人が国境を超えています。厳冬に向かって餓死者が続出するとも心配されています。それに比べれば米作文明の「豊葦原瑞穂の国」。日本国民は恵まれています。しかし、農家は豊年満作の新嘗祭(23日=勤労感謝の日)を祝うわけにはいきません。コメの下落傾向が強まっているからです。

 5年で1兆円も割り込む

 農水省が7月に発表した「農業・食料関連産業の経済計算」によると、99年度の国内農業生産額は前年度比4・9%減の10兆4912億円と大幅に減少し、76年度以来23年ぶりに11兆円の大台を割り込んでいます。全体の7割を占める主力のコメ、野菜、畜産の生産額がいずれも前年度比マイナスとなったことが影響しています。コメは生産が増加したものの、自主流通米の価格が低迷し前年度比2・2%減の2兆5544億円になっています。農業全体の統計資料は未発表ですが同省の推計によると、出荷量に価格を掛けた稲作総出荷額は2000年産米が約1・9兆円とされ、95年産の約2・9兆円からわずか5年間で1兆円も減ったといわれています。農家やコメ流通業界の打撃は強烈です。

 コメ離れと低価格指向

 米相場の指標とされる自主流通米価格形成センターの入札価格(千銘柄平均)は、95年産米が60キロ当たり2万0204円でしたが、2000年産は同1万6084円と約2割低下したとして、読売新聞はコメ値下がりの原因について次のように報じています。「(国民のコメ離れで)消費量は年々減る傾向にあったが、最近では消費者の間に低価格指向も高まってきた。今までは生産調整で供給量を調節、価格の安定を図ってきたが、最近は百万ヘクタール近くまで生産調整を拡大しても、コメ相場は回復せず、対症療法的な対策が限界にきている」などを理由に挙げています。確かに不況下では「ササニシキ」などの高級米よりも低価格米が主婦の人気を集めるでしょう。減反政策も限界にきています。

 計画外流通米が普及

 コメの流通は、農協などが集荷する自主流通米や政府備蓄米となる「計画流通米」と、農家が農協を通さず消費者や量販店へ自由に売買する「計画外流通米」の2種類があります。読売は「かつて『計画外』は、ごく少量に止まると見られていたが、生産者から直接量販店や消費者に届く分、コストが安いため普及していった。この結果、計画流通米の比率は2000年産米で51%にまで低下している。計画流通米には安定供給に関する制約があり、計画米の競争力の低下に関しては、関係者間で不公平感が高まっている」とも報じています。

 専業農家に支援策集中
 このため、政府自民党は、コメの下落傾向を食い止めるための政策の見直しを進めており、衆院農水委員会に席を置く私もこの問題と真剣に取り組んでいます。来年度の農水予算概算要求では、小泉内閣の「重点7分野」の1つとして、地方の個性ある活性化、町作りに1136億円の増額が認められました。このうち約8割の943億円が水田農業地域の改革に当てられる予定です。また、経営所得安定対策に調査費7000万円が計上されました。農水省はこれら予算で抜本的なコメ対策を実施する方針です。同省は当初、稲作経営安定対策で稲作への依存度の高い「主業農家」への支援を増やす原資として、コメ農家の約半数を占める「副業的農家」への支援を一部減らす案を検討していました。

 農業団体は反発

 さらに「計画外流通米」に規制の網を広げることや政府備蓄米の備蓄水準見直しなどの改革案を自民党に示しています。これは武部勤農相が経済財政諮問会議で表明した「意欲と能力のある経営体に支援策を集中する農業の構造改革路線」に沿ったものです。これに対し、農業団体は「主業農家」だけのテコ入れ策に反対するとともに、農水省がコメの生産、流通などの構造改革を推し進める一方で、既存の減反政策や流通制度の再編・立て直しを図るなど、その場しのぎの“猫の目農政”を続けていると非難しています。

 農林部会で多角的討議

 このような反発を受けて、農水省は「副業的農家」の支援を削減する案を事実上断念し、抜本改革の実施を03年度以降に先送りして、当面は市場価格の反映など現行の減収補填制度の見直しなどで切り抜けようとしています。かつての政治米価決定劇のような緊迫した局面ではありませんが、自民党の農林部会ではコメの生産、流通、備蓄、補助金のあり方などを多角的に検討しているところです。稲作を主力とする農家の支援策はもとより、適正に米価を維持するため、@流通規制を極力少なくし、生産者や流通業者の自助努力を促すA政府米の備蓄水準を引き上げるーーなどが議論されています。

 農業後継者育成に努力

 生産調整で減反による遊休農地は荒廃の一途をたどっています。農地はいったん遊休化すると数年で農地性を失い、耕作地への復元には多大な投資と労力を要します。緊縮財政とはいえ、土地改良事業までが予算削減の対象にされてはたまりません。稲作への依存度が高い「主業農家」が、豊作貧乏によってコメ作りを諦めるようでは食糧の自給体制に大きく響きます。農家人口の減少に加え、農業分野の自由化で農産物の輸入が急増、農家を圧迫しています。武部農相が主張しているように、農業経営の法人化・大規模化を積極的に推進し、専業農家の後継者育成に一層努めなければならないでしょう。私は来年度予算編成に向けて党内で大いに発言しますが、皆さんの変わらぬご声援をお願い致します。