第298回(4月16日)早急に第3の矢構築 物価高で消費低迷
 量的・質的に大胆な金融緩和、大型補正予算など積極財政――アベノミクスの2本の矢がシナジー(相乗)効果を生んで、株価が高値を維持し春闘も好調。日本列島は例年より早い桜前線の通過で明るい春を迎えています。しかし、消費増税が1年後に迫った4月というのに、円安・ドル高の影響で輸入する燃料、穀物が高騰して電気、ガス、小麦などの料金が上昇。日銀の「毎年2%の物価上昇」目標と8%への消費増税を合わせると諸物価は2年後に4%上がるとマスコミは予測しています。一時的「駆け込み消費」も予想されますが、大企業が折角、賃上げ、ボーナス増に応じても社員は貯金に回し、ベアが望めない中小企業の社員は負担増に直面し生活不安が増大、逆に消費が冷え込むことも想定されます。中国包囲網の「価値観外交」を展開し順風万帆の安倍政権ですが、第3の矢の経済再生・成長戦略を早急に構築し、公約の60万人雇用を創出しないと夏の参院選は苦しい戦いです。国会では衆院再可決も視野に入れた「0増5減」法案の攻防が続いています。ご支援下さい。

アメとムチ税制改正、人事は否決
 3月末の国会は、日銀人事とは裏腹に人事院人事官、会計検査院検査官の同意人事が参院で否決されました。だが、暫定予算と日切れ法案の13年度税制改正関連法は年度内に成立、13年度本予算案は16日に衆院通過の予定です。税制改正は@住宅ローン減税を13年度末から4年延長A祖父母が孫に教育資金をまとめて贈与した場合、1500万円まで贈与税を非課税B従業員給与を増やした企業の法人税を給与増加分の10%減税する制度を新設C企業の設備投資に法人税優遇措置を拡充D15年1月から所得税の最高税率を45%に引き上げE相続税は非課税となる基礎控除を縮小し最高税率を55%に引き上げる――など企業支援減税と高所得者増税のアメとムチの内容です。改正地方交付税法は、大震災復興財源確保のため国家公務員給与を平均7・8%カットしたのに足並みを揃え、地方公務員も削減するよう、交付総額を12年度より3921億円減らし、17兆624億円としました。公明党が中小企業救済のために継続を期待した金融円滑化法改正案は成立せず3月末で失効しました。

長崎4区は早岐などが3区へ「0増5減・区割り法案」成立へ
中盤国会の焦点は公職選挙法改正案の攻防に移りました。前号のHPに載せた通り、「1票の格差」が最大2・43倍だった昨年末の総選挙について、弁護士グループが無効を求めた16件の訴訟は、3月27日の仙台高裁秋田支部を最後に全ての高裁判決が出揃いました。2件は「違憲状態」でしたが、14件は「違憲」と判断。このうち2件は「違憲・無効」(やり直し)に踏み込む厳しい判決でした。安倍首相は「真摯に受け止める」とし、翌28日に衆院選挙区確定審(区割り審)が勧告した「0増5減」の区割り案に基づく衆院選挙制度改革案と比例区抜本改革の公選法改正法案を提出することで自公両党が合意。まずは「0増5減」法案の成立を急ぐ構えです。「0増5減」は山梨、福井、徳島、高知、佐賀の5県の定数をそれぞれ3から2に減らす内容で、昨年11月の国会解散の日に緊急避難的な改革として公選法が改正され、「1人別枠方式」も条文から削除されました。これで1票の格差は2倍未満に縮小しましたが、改正の適用には小選挙区の区割りを見直す必要があり、区割り審は5県を含む17都県の42選挙区の線引き変更を勧告しました。この線引き見直しで我が長崎4区は、佐世保市役所管内の早岐、三川内、宮の3区域が3区に移される見込みです。

「まず0増5減可決」に野党反対
 自公両党は「最高裁審理の始まる前に成立させるべきだ」(細田博之自民党幹事長代行)と「0増5減」案の早期成立に懸命ですが、これとは別に@衆院比例定数を30減らすA残り150議席のうち60議席を「少数政党優遇枠」とするB比例ブロックを11から8に再編する――自民党案を与党案とする合意文書を交わし、3日の与野党幹事長・書記局長会談に諮りました。しかし、民主党の細野豪志幹事長は「0増5減を通すだけでは、またすぐに2倍を超えて違憲になり、無効判決が出る可能性がある」と反発、「一人別枠方式を完全に廃止し、抜本改革の定数削減は小選挙区30、比例区50の計80議席を削減する」との対案を提示。日本維新の会、みんなの党、生活の党、共産党など他の6野党も揃って与党案に反対しました。民主党が対案を出すまでには、海江田万里代表と輿石東参院議員会長が「第三者の有識者に議論を委ねること(選挙制度審議会へ諮問)も1つの選択肢だ」と慎重論を唱えるなど執行部の意見が分かれました。維新の会も当初は「0増5減」案に賛成でしたが定数削減の確約を迫って反対に回りました。みんなの党の渡辺喜美代表は「画期的な判決だ。最高裁で違憲、無効の可能性が出てきた。衆参ダブル(選挙)を考えないといけない」と法改正よりも、むしろ、早期解散を提唱しています。「0増5減」法案は12日に国会提出され、石破幹事長は野党の反対で同法案が参院で否決される場合は、60日ルールを適用し、衆院3分の2の賛成で再議決する腹を固め、4月中に衆院通過を図る方針です。

中国包囲網の「価値観外交」展開
 首相は就任以来、ベトナム、タイ、インドネシアのASEAN3カ国、米国、モンゴルを訪問。次いで大型連休前後にはロシア・中東を相次ぎ訪問、5月以降はソウルで日中韓首脳会談、ブルネイでRCEP第1回交渉会合、ロンドンでG8サミットが予定されています。一連の外遊で首相は、アベノミクスの第3矢「経済成長戦略」の中核に環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の参加を位置づけ、これを日中韓FTA、欧州連合(EU)とのEPA、ASEANとの RCEPなど約30カ国参加のアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の包括的貿易ルール作りを狙っています。一方、中国は海洋進出、エネルギー獲得に猛攻勢をかけ、習近平国家主席が訪露の後、先月末の南アで開催の新興5カ国首脳会議でBRICS開銀の創設をリードし存在感を示しました。首相は中国包囲網で中国を牽制、自由と民主主義を共有する国と連携する「価値観外交」を展開中です。3月末のモンゴル訪問では、アルタンホヤグ首相、エルベグドルジ大統領と会談し経済連携協定(EPA)交渉の加速で一致。首相は「モンゴルは資源大国。技術力を持つ日本がこの分野で協力するのはウインウインの関係だ」とし、石炭やレアアースなどの資源開発に日本の投資を促すことやモンゴル大気汚染対策への技術協力を促進する新たな経済協力の枠組みとなる「エルチ(活力)・イニシアティブ」に合意しました。鉱物資源輸出の約9割を中国に頼るモンゴルも中国依存脱却を願っています。

日中韓、EU,RCEPに拡大
 その一方で、新体制が発足したばかりの日中韓3カ国との交流も、TPPの交渉に役立てるため重視。20〜21日にインドネシアで開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)に担当閣僚を参加させます。3月26〜28日にソウルで開かれた日中韓の自由貿易協定(FTA)の第1回交渉会合では、国有企業と民間企業との公平な競争条件について議論する「競争ルール」など7分野で分科会を設けることで合意しました。新設は税関、原産地規制、植物検疫、製品企画などで、既に決まっていた関税、投資、サービスと合わせると分科会数は10となります。韓国は中韓の2カ国によるFTA交渉を優先する構えでしたが、日本がTPP参加を表明した直後の影響もあって、ソウル会合では「韓国が日本の主張に賛同する場面が多く、中国も議論には前向きだった」と日本外務省首脳は評価しています。今後の交渉結果、工業品にかけている中韓両国の関税が下がれば日本企業にプラスとなります。日本とEUの経済連携協定(EPA)は首相が同25日、キプロス経済危機で来日を延期したEUのファンロンバイ大統領と電話会談し、4月に交渉を開始することで合意しました。TPPとは別枠の日中韓FTAに加え、東南ア諸国連合(ASEAN)10カ国、インド、豪州、ニュージーランドの計16カ国参加のRCEP第1回会合も4〜6月に開催される予定です。

消費増税で2年後4%物価上昇
 安倍政権はこのように外交で華々しくデビュー。日銀の黒田東彦新総裁は4日の金融政策決定会合で、市場に流すお金の量を2年で過去最大の130兆円増やして2倍の規模にする「量的緩和」を決定。3月の景況短観でも、自動車など大企業が円安・株高の効果で9ヶ月ぶりに改善し景気は持ち直したと発表、財界は歓迎しました。しかし、ご祝儀相場の3ヶ月が過ぎたことで、マスメディアはアベノミクスの第3の矢に絞って追及を始めています。朝日は3月末の1面トップに「日銀の試算では、消費税率が1年後8%に上がると全体の物価は2%上昇になり、15年10月に税率が10%になれば物価は1・3%上昇になる」と指摘、増税と日銀の「毎年2%の物価上昇」目標が合わさったら、色々なモノやサービスの価格は2年後に今より約4%、4年後に約10%も上がり、暮らしは大変な「負担増」になる、と警告しました。また、「かつては物価上昇を給与に反映させるベアがあったが、多くの企業がやめ、逆に人件費削減を続け、平均給与はこの10年間で10%も減った。今後、物価上昇に給与上昇が追いつかなければ、家計が苦しくなって消費が落ち込み、景気を冷え込ませる恐れもある」と予測しています。確かに円安で輸入する燃料、穀物が高騰して電気、ガス、小麦、食用油、ツナ缶などの料金が上昇。麺類は値上がりしガソリン価格も高止まりを続けています。池田勇人元首相が「国民所得倍増論」を提唱した時は物価倍増が先行、オイルショックの時も物価上昇が先回りし、給与改善は2、3年遅れています。

第3の矢・成長戦略に総力結集
 アベノミクスは、レーガン元米大統領の「レーガノミクス」をもじったものですが、政策的には日本のデフレ脱却と米国のインフレ克服は正反対。アベノミクスのスタートダッシュに、証券マンやビル・マンションなどの投機的な不動産業者は活気付き、増税前の「駆け込み消費」を煽っています。だが、一般庶民は給与が改善されても生活不安から、逆に財布の紐を引き締めて貯金するなど消費増による景気浮揚は望めず、内需低迷が予想されます。景気回復のタイムラグを埋めるには、第3の矢である成長戦略を早急に構築することが緊急課題です。首相はTPP参加に絡めて「攻めの農業」に徹し、農業輸出拡大や競争力強化に努めますが、今の経営所得安定対策(旧戸別所得補償)を14年度から「日本型直接支払制度」に変えるなど農家の減収補填策に力を入れます。また、民主党政権が休眠させた経済財政諮問会議を日本経済再生本部に復活させて司令塔とし、クリーンエネルギー創生、介護・医療、科学技術の次世代インフラ構築、新幹線・原発・環境技術の新興国輸出など多面的な経済再生策を6月までに策定する方針です。規制緩和では2日、電力会社から送配電部門を切り離す「発送電分離」策を閣議決定しました。首相は8月と9月に発表される「4〜6月期の実質経済成長率」を判断材料に来春の消費増税に踏み切るかどうかの決断を下す考えです。4月は政府与党が英知を集めて内政課題を詰める重要な時期です。

維新が参院選で改憲勢力目指す
 日本維新の会は3月30日、大阪で初の党大会を開き、「憲法改正」を前面に打ち出し、参院選で「改憲勢力の3分の2確保」を目標に掲げました。ただし、TPP参加や普天間飛行場移設の方法では自民党を評価しながら、自公の過半数は阻止、民主党との連携も排除する構えです。綱領の憲法部分は、石原慎太郎共同代表の強い意向で、「日本を孤立と軽蔑の対象に貶め、絶対平和という非現実的な共同幻想を押しつけた元凶である占領憲法を大幅に改正し、国家、民族を真の自立に導き、国家を蘇生させる」と書き改めました。松井一郎幹事長とみんなの党の江田憲司幹事長は同29日、大阪市で会談し参院選協力で、47選挙区のうち1〜3人区の計25選挙区で候補者を1本化することで合意。維新は1人区の三重、奈良、和歌山、滋賀、岡山、香川、佐賀、熊本、鹿児島の9選挙区、みんなは青森、栃木、山梨の3選挙区で擁立します。民主党は維新との選挙協力を模索していましたが、改憲など政策の違いもあって1日の役員会で選挙協力を断念。おまけに平野達男前復興相が自民票に期待をかけ無所属で出馬を決め、離党届を提出し除名処分を受けました。総選挙後の同党離党者は3人目。参院選でのダメージは大きいようです。自民党は10日、TPP参加の先行きに不安を抱く農家の不満を解消するため、参院選公約の柱に@農業を続ける意欲ある農業者に全国農地の8割を集約して効率化A農商工連携を後押しして農産品の輸出を増やす――など「農業者所得の倍増」計画を掲げることとし、検討に着手しました。