第294回(2月16日)岩戸に次ぐ景気 安倍政権に期待高まる
13・1兆円の大型補正予算案は14日に衆院を通過、論戦の舞台は参院に移り、下旬に成立の見通しです。首相は21日に訪米、日米首脳会談で緊迫した北東アジア情勢、環太平洋経済連携協定(TPP)問題を協議します。春闘たけなわですが、経済再生に向けてロケットスタートを切った安倍政権は「3本の矢」の政策が国民に理解され、岩戸景気に次ぐ12週連続の株価上昇と円安で自動車など輸出主体の企業も業績回復の兆しにあります。労働界でも「60万人の雇用創設」(首相)と賃金引上げの期待感が高まってきました。しかし、1月末に東シナ海で中国軍艦が海自護衛艦に射撃管制レーダーを照射し、一触即発の事態を招き、北朝鮮が3度目の核実験を強行するなど北東アジアの危機対応が重大な局面を迎えました。また、中国の大気汚染が偏西風に乗って春先には九州など西日本を襲うと予想されます。国会では民主党が公取委員長人事に反対し、3月の日銀総裁・副総裁の国会承認人事が危ぶまれています。私は政調副会長として、先に閣議決定した13年度予算案の月末提出に向け、緊迫国会での対応を検討しています。さらなるご教唆をお願い申し上げます。

アベノリスク、先祖帰りと批判
 首相は所信表明演説で、当面は「経済再生」「震災復興」「外交・安全保障」に絞り込み、「強い日本を作る」と強調しました。これに対し、代表質問の海江田万里民主党代表は「族議員が跳梁跋扈する利益誘導政治、弱肉強食を生む新自由主義的な経済政策が復活した」と追及。野党各党は国会審議やNHKテレビ討論などを通じ、「大盤振る舞い予算の結果、国の借金(国債発行額)は25年度末に750兆円に達する」「アベノミクスではなくアベノリスクだ」「一括交付金を廃止し、ひも付き補助金を復活させた」「人からコンクリートへ転換し、公共投資バラマキの先祖帰りだ」「ゼネコン優先、賃金後追いだ」と厳しく批判しました。それでも首相は7〜12日の衆院予算委で、補正で示した機動的な財政政策、大胆な金融緩和、民間投資喚起の成長戦略――の「3本の矢」のアベノミクスで経済は再生に向かっていると自信を示しました。確かに、株価は1月末に1万2千円近く回復して岩戸景気の再来を思わせ、円安も90円台半ばに達し、輸出主体の製造業に好影響を与えています。

 公選法改正や国会承認人事停滞
 安倍内閣は民主党政権が政治主導の象徴とした「政務三役会議」を取りやめ、各省庁事務次官の記者会見を復活して脱官僚を見直し、自民党も月内に「国土強靭化基本法案」を再提出、大胆な防災・減災事業や高速道路の整備を進めるなど、夏の参院選に向けアベノミクスを盛んにアピール中。この調子でいけば7月参院選の勝利は間違いないところです。
しかし、安倍政権の前途は内外ともに多難です。自公民3党が今国会での実現を約束した衆院定数削減の協議が進まず、国会承認人事も停滞しています。政府は8日、衆参両院議運委理事会に14機関41人分の国会同意人事を一括して提示しました。だが、公正取引委員会の委員長に杉本和行みずほ総研理事長(元財務事務次官)を充てる人事案を読売が7日付朝刊のトップ記事で報じたことで、民主党が提示を拒否、理事会を途中退席しました。これは、07年当時の西岡武夫参院議運委員長(民主)が「事前報道で人事案が既成事実化することは避けよう」と提案、笹川堯衆院議運委員長(自民)との間で合意した「事前に報道された人事案は認めない」との事前報道ルールがあるためです。参院で第一党の輿石東民主党参院議員会長は7日、同ルールをたてに拒否しました。ただし、例外規定で野田前首相に任命された田中俊一原子力規制委員長ら3機関計14人の国会同意人事は、14,15両日の衆参両院本会議で承認されました。

渡辺氏が日銀に官僚天下り反対
  杉本公取委員長の人事は自公が参院で過半数に10議席足りないため、みんなの党(12議席)、日本維新の会(3議席)、新党改革(2議席)の野党3党に働きかけて国会同意を取り付ける構えですが、杉本氏は野田政権が内定した置き土産人事であることから、民主党は最終的に承認する見通しです。しかし、経済・金融政策の要となる日銀人事は、08年3月に武藤敏郎副総裁(元財務事務次官)の総裁昇格人事に民主党が不同意を示して流産しました。今回は山口広秀、西村清彦両副総裁が3月19日に任期満了になるのに合わせ、4月8日まで任期がある白川方明日銀総裁が5日、「一緒に辞めたい」との意向を首相に伝えました。首相は1日の参院代表質問で「出身母体を問わず、デフレ脱却に向け金融政策で私の考えを理解し、確固たる決意と能力で取り組む人を人選する」と答えましたが、後任には武藤氏ら元財務官僚が多く候補に上っていることに、渡辺喜美みんなの党代表が「マクロ経済学の博士で英語が堪能、危機管理能力のあること」を条件に挙げ、官僚天下りに反対しているため、国会承認は難航が予想されます。

レーダー照射で軍事衝突の危機
 こうした中、中国海軍のフリゲート艦が尖閣近海の東シナ海で1月30日、海上自衛隊護衛艦「ゆうだち」に対し、射撃用の火器管制レーダーを3キロの距離から照射(ロックオン)しました。同月19日にも海自護衛艦「おおなみ」に搭載し、数キロ離れて飛行中のヘリコプターに対して同じく照射し、あわや軍事衝突の危機を招くところでした。日本政府は慎重調査のうえ6日後に抗議したのに対し、中国外務省の副報道局長は「全くのでっち上げだ」と否定談話を発表。その中で、「一方的に虚偽の状況を発表し、日本政府高官が無責任な発言を行った。『中国脅威論』をあおって国際世論を誤った方向に導いた」と日本が中国のイメージダウンを狙ったと非難しました。このような豹変ぶりを見ると、中国が国連安保理の常任理事国であることを疑いたくなります。おまけに中国は火力発電や工場の燃料に石炭を消費するため、大量の微粒子PM2・5が大気を汚染して北京市民が健康を害され、天安門広場は視界真っ暗。春先には偏西風に乗って九州や四国に飛来するそうで迷惑千万です。 

尖閣諸島とTPPをバーターか
 一方、北朝鮮の金正恩第1書紀は1月27日、「国の安全と自主権を守って行くうえで国家的重大措置を講じる決心」をしたと表明。12日に豊渓里で第3回地下核実験を行いました。核兵器はプルトニウムではなく初めて濃縮ウランを使った小型・軽量化の「強化原爆」と見られ、昨年12月に実験した長距離弾道ミサイルに載せれば米本土に到達するもので、中距離ミサイルのノドンの弾頭に装備すれば日本全土が射程に入ります。北朝鮮は2国間の対米交渉を引き出すため相変わらず危険な「瀬戸際外交」を仕掛けています。このため、月末の日米首脳会談では@集団的自衛権の行使A日本版の国家安全保障会議(NSC)創設B自衛隊を「国防軍」に名称変更――など安倍首相が持論の憲法改正に関わる問題を含めた「日米同盟の進化」がメーンテーマになりそうです。だがTPPに執念を燃やすオバマ大統領は米軍事費削減や尖閣諸島防衛とTPPをバーター取引にして日本のTPP参加を迫ることも予想されます。自民党が7,8両日に開いた「外交・経済連携調査会(衛藤征士郎会長)には約90人が詰めかけ、農協(JA) 関係者が見守る中、「政府からTPP 参加の具体的メリットの説明が無い」「今参加して(有利なルールに)抜本的に変えられるとは思わない」など慎重意見が続出、日米会談で首相が前向きな発言をしないようクギを刺しました。

民主改革で暦代首相の責任追及
 ところで、民主党の改革創生本部(本部長・海江田万里代表)は8日、衆院選大敗の理由を「トップによる失敗の連鎖が続き、期待外れの政権とのイメージを与え続けた」と、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦の歴代3首相の責任を厳しく指摘する党改革の原案をまとめました。鳩山政権で幹事長を務めた小沢一郎氏(現生活の党代表)に対しても「政治とカネに関する党のクリーンなイメージの損失は甚大であった」と言及。特に野田前首相については「(昨年11月の)解散時期を見誤り、年末繁忙期の商店主からは怒りの声が上がり、年内の予算編成を放棄したことで、業種団体が雪崩を打って自民党になびいた」と名指しで批判しました。この衆院選総括は24日の党大会で採択しますが、どぎつい野田、小沢両氏批判のくだりには反対意見が出て、削除し修正しました。同党は1月末に開いた「党綱領検討委員会」(委員長・細野豪志幹事長)でも、「保守と言っていい」(細野氏)との穏健保守の内容の素案に対し、「中道」「リベラル」などの表現を入れるべきだとの意見が出て1時間も論争を続けるなど、野党転落後も組合系と保守系議員との路線対立が続いています。

自民派閥活況、青年局が最大勢力
 これとは対照的に、衆院選に大勝して政権復帰した自民党は、各派閥が膨らみ活況を呈しています。町村信孝元官房長官率いる町村派は最大派閥の80人、額賀福志郎元財務相の額賀派は50人、岸田文雄外相の岸田派40人、麻生太郎副総理・財務相の麻生派34人、二階俊博元経産相の二階派8人、石原伸晃環境相の石原派7人、大島理森元副総裁の大島派は12人。石破茂幹事長を支持する無派閥議員37人も「無派閥連絡会」と称し、石破派?の総会(代理8人出席を加えると45人)を開きました。各派閥は先月末から一斉に定例総会を開いています。各派が一致して定例総会を木曜に開くのは、2足のわらじを穿かないよう相互監視するためです。「脱派閥」を唱える菅義偉官房長官は記者会見で「安倍内閣は閣僚(人事)を含め派閥には全く相談なし。かつての弊害は無い」と派閥復活を否定しましたが、これら派閥領袖の有力者が次期総裁選ではポスト安倍を争うのは間違いないでしょう。

進む参院選対策、候補絞り込み
 注目されるのは、党青年局(小泉進次郎局長)が45歳以下の議員82人を集めて毎週金曜に昼食会を開いて結束、各派を上回る大勢力を築いていることです。青年局は大震災以来、毎月11日に被災地を訪ねて現地の要望や不満を聴取。小泉局長は12日の衆院予算委で、普段は出番の少ない谷垣禎一法相にまで住宅問題で土地収用や被災者土地の所有権問題を質すなど、関係閣僚全員に復興の加速を迫りました。若手の中から着実に次期リーダーが育っています。首相は小泉政権を真似、閣僚ら政務三役を全国に派遣し、農業、福祉などをテーマに対話集会「車座ふるさとトーク」を開きます。17日に徳島県で初会合を開き、参院選に向け地方重視の姿勢をアピールします。さて、各党の参院選対策はどうか。自民党は2人を擁立する選挙区を東京(改選数5)に絞り、改選数4の神奈川、大阪、改選数3の埼玉、千葉、愛知での複数擁立を断念しました。安倍首相は1月、「受け身ではダメだ。どんどん出すように」と選対幹部にハッパをかけましたが、連立の公明党との競合を最小限にし、「共倒れを避け、確実に1人を拾う」との石破幹事長の方針に沿って判断したものです。

維新・みんな合流抜き候補調整
 民主党は6年前に参院第1党に躍り出ましたが、3年前の複数擁立が党内対立を生んだことから、複数区は東京だけに限る意向です。地方政党が原点の日本維新の会は、衆院予算委で東国原英夫・元宮崎県知事ら知事、市長、区長の首長経験者5人を質問に立て、国会論戦でデビューしましたが、参院選ではみんなの党と選挙協力を進めています。両党は衆院選で競合して第3極の票が割れた反省に立ち、改選数3以上の選挙区で候補者調整を協議、行政改革など10項目で政策合意しました。ただし、みんなの渡辺代表は「維新とは政策で根本的な隔たりがある」と朝日のインタビューで両党の合流を否定しています。このように国際情勢が緊迫し国会論戦が高まる中でも、各党は参院大決戦の準備に急ピッチです。