第293回(2月1日) 今月内に予算編成 ASEAN外交で中国牽制 
 安倍首相は1月28日招集の通常国会に13・1兆円の大型補正予算案を提出。所信表明演説では「大胆な金融緩和、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の『3本の矢』を推進する」と経済再生、震災復興の“アベノミクス”政策を重ねて訴えました。公共事業重視の緊急経済対策は総事業費20・2兆円にのぼり、補正から本予算まで切れ目ない15ヶ月予算の編成です。13年度予算案は29日に閣議決定し、一般会計は実質的に過去最大の92・6兆円で2月中に提出します。日銀は政府に協力、同月21〜22日の金融政策決定会合で、「出来るだけ早く2%の物価上昇率の達成を目標とする」との共同文書をまとめ安倍政権と取り交わしました。首相は16日から東南ア諸国連合(ASEAN)3カ国を訪問しましたが、これは海洋権益を求めて東シナ海や南シナ海の島々の領有権を主張する中国をけん制したものです。2月には訪米しオバマ大統領との会談で日米同盟の修復・進化を協議します。私は党役員として政調副会長のほか、副幹事長、組織運動本部長代理、下水道・浄化槽対策特別委員長も新たに拝命しました。参院選対策にも力を入れ、農林行政、国土強靱化対策、税制改正など予算編成に連日追われています。さらなるご支援をお願い申し上げます。

総額13・1兆円の補正予算案
 1月28日召集の通常国会は6月26日までの150日間。会期延長がなければ7月21日に参院選の決戦が戦われます。首相は初日の所信表明演説で、「喫緊の課題を経済再生、震災復興、外交・安全保障に絞り込み全力で対応する」とデフレ脱却の決意を表明しました。所信表明は通常、臨時国会や特別国会の冒頭に行われますが、昨年末の特別国会が総選挙後の首相指名だけの短期間だったため行うもの。施政方針演説は2月下旬に13年度予算案を提出した後に行う予定です。1つの国会で両演説を行うのは73〜74年の田中角栄首相以来。安倍内閣は1月11日、国や自治体などを合わせた事業費が20・2兆円に上る「日本経済再生の緊急経済対策」を閣議決定。このうち国が今年度に支出する10・3兆円に、基礎年金の国庫負担分などで2・8兆円を加えた総額13・1兆円に上る補正予算案を国会に提出しました。補正予算案は4・7兆円を公共事業費に充て、@復興・防災対策A成長による富の創出B暮らしの安心・地域活性化――の3分野に配分されます。財源のうち税収の不足分は建設国債を5・2兆円発行して賄いますが、今年度の借金(国債発行額)は民主党政権がルール化した「44兆円以下」から約50兆円にかなり膨らみます。これはリーマン・ショック後に麻生内閣が大型補正予算を組んだ09年度に並び、今年度予算の歳出総額は103・4兆円に膨らみ、予算ベースでは11年度の107・5兆円に次ぐ規模になりました。

富裕者に増税、企業に法人減税
 13年度当初予算の一般会計は過去最大だった12年度の92・9兆円を若干下回りますが、補正予算に景気対策費10兆円を盛り込んだことから、15か月予算で見ると過去最大になります。補正、本予算を合わせた公共事業費も10兆円に達します。自・公の与党は24日、13年度税制改正大綱を決定しました。14年4月から消費税を8%に上げるのに合わせ、裕福な人の所得税と相続税を増やす代わりに贈与税の減税も用意、企業向けには景気を優先し、法人税を減税するなど色々配慮しています。具体的には@所得税の最高税率は現在、課税所得1800万円超は40%だが、4千万円超を45%に引き上げるA相続税は「基礎控除」を4割少なくして課税対象者を増やすとともに、現在、遺産額3億円超に50%かかる最高税率に加え、新たに6億円超を55%に引き上げるB贈与税は祖父母がまとめて孫に教育資金を贈る場合、孫1人当たり1500万円までは贈与税が非課税になる制度を作るC年末に終わる住宅ローン減税を4年間延長、所得税・住民税は現在の最大200万円から最大400万円に拡大。被災地向けは最大360万円から最大600万円に上乗せするD前年より賃金やボーナスを増やした企業は増やした人件費の1割分を法人税から差し引くE中小企業の交際費は年600万円(1割は自己負担)まで「経費」扱いだが、この上限を800万円まで引き上げて自己負担なしに減税F法人税から差し引ける研究開発費は現在2割までだが、3割までとし、新たに機械や装備の購入額の3%を設備投資減税として新設――など幅広い内容です。

軽減税率は10%段階から目指す
 しかし、肝心の軽減税率は、公明党が低所得者層に“逆進性”の強い消費増税救済策として「8%への引き上げ段階から食料品など生活必需品に適用」と主張したのに対し、自民党は「導入に必要なインボイス(明細書)の整備や周知期間が足らず社会が混乱する」と10%に引き上げる段階からの実施を主張。結局、大綱は「10%への引き上げ時に導入を目指す」とし、8%段階から低所得者1人あたり年間1万円を配る方針です。一方、自動車業界が廃止を求めた自動車関連税のうち自動車取得税は、14年4月に一旦減税したうえ、15年10月に廃止することを決めましたが、自動車重量税は減税に止めました。大綱案は同税について「道路の維持管理や防災・減災の財源に位置づける」と、道路特定財源を示唆する表現であったため自民党内で批判が噴出、従来通り一般財源化することが決まりました。

5原則の安倍ドクトリンを発表
 首相は16日からの初外遊にベトナム、タイ、インドネシアのASEAN3カ国を選びました。ASEANは祖父の岸信介元首相が初外遊し、インドネシアのスカルノ元大統領らと友好な関係を築いた地域。1977年には恩師の福田赳夫元首相がフィリピンで対東南ア外交の基本方針「福田ドクトリン」を打ち出しました。06〜7年の第1次安倍内閣では当時の麻生太郎外相が東南アから中・東欧に至る地域を「自由と繁栄の弧」と位置づけ、民主主義への移行や経済発展を支え、安倍政権が「中国包囲網」を形成する構想を進めた地帯。今回も3カ国首脳との会談では、経済の連携、エネルギー開発、安全保障面の協力などアジア外交の基本的考えを表明しましたが、アルジェリアの人質事件でユドヨノ・インドネシア大統領との会談を最後に晩餐会などの日程を取りやめ帰国、外交演説は幻に終わりました。だが記者会見では「安倍ドクトリン」を念頭にASEAN外交の戦略的な5原則を発表しました。それは@自由や民主主義、基本的人権など普遍的価値の拡大A力ではなく法が支配する自由で開かれた海洋は公共の財産B貿易や投資の流れを進め、日本とASEANがともに繁栄C文化のつながりの充実D未来を担う世代の交流促進――で海洋進出を進める中国を牽制しました。

日米ガイドライン、中期防改定
 価値観を訴えた首相のASEAN外交に先立ち、麻生副総理が年明け早々にミャンマーを訪問、3月末までに約500億円の円借款を確約、岸田文雄外相も10日、フィリピン外相と会談し海洋協力を確認しています。首相は23日からスイス・ダボスで開く世界経済フォーラム年次総会にも出席の意欲を見せましたが、国会召集の都合で見合わせました。1月訪米はオバマ米大統領の多忙を理由に断念、2月後半に行う予定ですが、日米首脳会談では環太平洋経済連携協定(TPP)への参加が焦点になります。しかし、農協(JR)などが強く反対、自民党内で慎重論が高まっているため、参加の意思表示は避け、集団的自衛権の行使容認を視野に、97年以来の「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の再改定に踏み切る考えです。再改定の理由は中国の軍拡や尖閣諸島を巡る日中間の緊張、北朝鮮の核・ミサイルへの対応などです。小野寺五典防衛相に指示し16日に日米の外務・防衛担当者が東京で協議を開始したほか、18日にワシントンで開いた日米外相会議でも日米同盟強化策をテーマに協議しました。席上、クリントン国務長官は尖閣諸島について、「日本の施政権を損なおうとするいかなる一方的な行為、行動に反対する」と述べ、中国をけん制しました。ところが、中国外務省の泰剛報道局長は20日、「物事の是非をわきまえていない。言動を慎むべきだ」と直ちに反論する談話を発表。尖閣問題は米中関係にエスカレートしました。

森喜朗・露特使が3島返還構想
 首相は尖閣諸島や中国の軍拡に対応「領土、領海、領空を守り抜く」とし、日本の減り続けた防衛予算を増額するため、民主党政権下の2010年末にまとめた「動的防衛力」の防衛計画大綱と中期防衛力整備計画(中期防)の年内見直し作業を指示し、25日の閣議で防衛大綱の見直しと中期防の廃止を決めました。防衛省は13年度予算案の概算要求で1万8000人の自衛官増員を求めましたが、27日の閣僚折衝で287人の増員に決定、それでも200人以上の増加は20年ぶりです。防衛関係費は自民党国防部会の決議もあって前年度比1200億円の増額を求めていましたが、12年度当初比400億円増の4兆7500億円に決まりました。補正予算にはPAC 3ミサイル購入やF15戦闘機4機の改修などに605億円、大規模災害用の輸送ヘリ1機、救難ヘリ2機、無線交信機の更新などに503億円が盛り込まれました。一方、首相特使として2月下旬に訪露する森喜朗元首相は9日、BSフジの番組で、北方領土問題について「(露が)簡単に返すとは思わない。現実的なことを考えた方がいい」と述べ、択捉島と国後島の間に国境線を引き3島返還で解決を図る考えを示唆しました。

拉致解決の使命達成に首相意欲
 返還論には日本政府が主張する4島即時、プーチン大統領の言う歯舞、色丹の2島、これに国後を加えた3島、中ソがダマンスキー島の紛争を解決した時を参考に、歯舞・色丹・国後に択捉の5分の1を加えた「面積2分の1」の4選択肢があり、森氏提案は面積2分の1案に近いもの。首相は拉致問題に入れ込んでいます。小泉純一郎元首相の訪朝に官房副長官として随行、拉致問題を進展させた首相は、14日放送の政府広報ラジオ番組で「(被害者家族の)皆さんが、ご自身の手で子どもたちを抱きしめる日がやってくるまで、私の使命は終わらない」と語り、首相再登板を決意した理由の1つに拉致解決を挙げました。さらに「全ての生存者の即時帰国、安否不明者に関する真相究明、実行犯の引渡し、この3点(の完遂)が拉致問題の解決だ。政府の基本方針にしたい」と使命達成に熱意を示しました。このように、内政より先に安倍外交が本格化しましたが、尖閣諸島問題は依然「波高し」。それに予期せぬアルジェリアの多数人質犠牲事件が勃発。野党は衆院の代表質問で錯綜する情報を収拾できなかった政府を厳しく追及しました。首相は「卑劣なテロと断固戦う」決意を表明し事件を徹底検証したうえ、第1次安倍内閣から意欲を示してきた日本版の国家安全保障会議(NSC)を創設する構えです。自民党内では在外邦人救出に関する自衛隊法改正の動きが急速に高まり、国際社会と連携した危機管理のあり方が検討されています。