第290回〈12月17日〉自公圧勝し安倍政権 大型補正編成へ
 自民党は12月16日の総選挙で単独過半数どころか、自公両党で3分の2以上の325議席を獲得して圧勝、3年3か月ぶりに政権を奪還しました。安倍晋三総裁は26日召集の特別国会で首相指名を受け、同日中にも自公再連立の第2次安倍内閣を発足させます。安倍政権は衆院選公約(マニフェスト)通り、民主党のバラマキ政策を改め、機動的・弾力的な経済財政運営で名目3%以上の経済成長を達成、東日本大震災の教訓を生かし、事前防災・減災の強くてしなやかな「国土強靭化」を実施する方針です。第3極を目指した2眼レフの日本維新の会〈石原慎太郎代表〉と日本未来の党(小沢一郎代表)は明暗を分け、維新は第3党に浮上、約60議席を擁していた未来は9議席へと激減しました。選挙互助会・駆け込み寺とされた第3極やミニ政党は、民主党幹部が揶揄した通り、「打ち上げ花火」に終わったようです。沈没に向かうタイタニック号〈民主党〉から逃れたはずの救命ボートが舵やエンジン〈政策や強いリーダー〉が無い「狸の泥舟」だったからです。安倍首相は年明けにかけ大型補正予算案と13年度予算案を編成、1月下旬に訪米し日米首脳会談で民主党政権が傷つけた日米同盟関係を修復する考えです。来年夏には政界再編を占う参院選の本格決選を迎えます。党の国交部会長である私はシャドーキャビネット(影の内閣)の1員として政策立案に努めてきましたが、衆院5回生ともなれば”影“の取れる入閣適齢期。何卒来年も、倍旧のご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

北ミサイル打ち上げが追い風
 「さっさと打ち上げてくれるといいんですが」との藤村修官房長官の選挙区・吹田市での失言に対し、安倍総裁は「ミサイル発射の自制を求めている時に、この官房長官で日本は守れない」と辞任を求め、石破茂幹事長も「恐ろしい政権だ」と厳しく批判しました。ところが北朝鮮は12日、藤村氏の願いに応えるかのように、事実上の長距離弾道弾ミサイルを発射。中国も翌13日、国家海洋局のプロペラ機がパトロールと称し尖閣諸島の領空を侵犯しました。これで東アジアの安全保障環境の厳しさが浮き彫りになり、安全保障が総選挙の焦点に急浮上しました。民主党の公約は「北朝鮮による拉致事件の解決に全力を尽くし、核・ミサイル問題に全力で対処」と型通りで、ミサイル防衛システムを含む自衛隊の装備や米軍との連携について具体論は示していません。これに対し、自民党の公約は「対北朝鮮(制裁)措置の継続」に加え、@即応性や実効性の高い弾道ミサイル防衛システムの配備A海洋での防衛体制強化のため自衛隊や海上保安庁の人員・装備・予算を拡充B集団自衛権の憲法解釈や日米防衛協力ガイドラインの見直し――など具体策を明確に記載しています。この政権公約に国民の支持は高まり、それまで安倍総裁の登板を「右傾化」とはやしてきた他党も押し黙り、自民党圧勝に向けてさらに追い風が強まったと言えます。

3%経済成長で日本取り戻す
 それにしても、藤村官房長官、城島光力財務相、田中真紀子文科相、樽床伸二総務相、中塚一宏金融相、三井辨雄厚労相、小平忠正国家公安委員長、国民新党幹事長の下地幹郎郵政改革相と現職の8閣僚が落選したのは現憲法下では最多。仙谷由人副代表(元官房長官)も落選、民主党は230議席から57議席に激減し壊滅的打撃を受けました。12政党が最多の 1504人を擁立した総選挙で、自民党は「日本を取り戻す」スローガンのもと、明快な政策をアピールしました。それは@成長分野への資源配分や規制緩和で技術革新を促すA大胆な金融緩和策で名目3%以上の経済成長を達成B民主党のバラマキ予算、生活保護、公務員人件費等を見直し、特例公債を減額C同時に真に効果のある経済対策を実施するため、成長分野と即効性のある補正予算と連動した来年度予算案を編成D大胆な金融緩和で市場に強烈なメッセージを与え、日銀の独立性を確保しつつ政策目標を政府と日銀で共有。日銀に明確な説明責任を求めるETPP〈環太平洋経済連携協定〉は「聖域なき関税撤廃」を前提にする限りは反対――などの経済政策と、外交防衛ではF日米同盟の信頼回復・強化でアジア太平洋の安定を確保し集団的自衛権の一部行使を可能とする「安全保障基本法」を制定G海外で軍として扱われている自衛隊の国内での矛盾を回避するため、憲法に軍〈国防軍〉として明確に位置付けるHわが国の主権、領土・領海を断固として守るための法律・体制を整備する――などを挙げて戦いました。

増税・脱原発・TPPが3争点
 今回の総選挙は庶民の財布に響く消費増税、子どもの健康に関わる原発、農業に影響するTPPの3項目を争点に争われました。わが党は未来の子供たちへの責任として、増え続ける社会保障費を賄うため税と一体改革に関する3党合意に基づき、2014年4月に予定されている消費税引上げ(5%→8%)を来年秋に最終判断します。当然、消費税の使途は年金・医療・介護の社会保障費及び少子化対策費に限定。もちろん、低所得者への配慮は不可欠で、食料品等に対する複数の軽減税率の導入を検討します。消費増税までは大胆な経済対策等を実施するとともに、民主党政権のバラマキ施策で膨らんだ歳出や公務員人件費を削減、生活保護の見直しなども断行。先に設置された国民会議では、来年8月を目途に社会保障制度改革について結論を出します。原発問題は3年間、再生可能エネルギーや省エネ等を最大限導入。原発の再稼働については安全第一の原則の下、原子力規制委員会で安全性を専門的に判断し3年以内に順次結論を出し、中長期的エネルギー政策として、遅くとも10年以内に将来にわたって持続可能な「電源構成のベストミックス」を確立します。

ミニ政党は大衆迎合無免許運転
 無様な政権運営を指摘された菅直人前首相は「仮免許運転中だ」と開き直り、政界を唖然とさせましたが、雨後の筍のように乱立したミニ政党はもっとひどく、いずれも無免許運転です。ミニ政党は共産、社民の左派政党とともに一致して争点の3課題の全てに反対しました。党の綱領も理念も持たないミニ政党は大衆迎合〈ポピュリズム〉的政策を唱えることで、集票能力を高めようとしたからです。消費税は大平内閣が一般消費税導入を唱えただけで1979年10月の衆院選で過半数割れ、89年4月に消費税3%を導入した竹下内閣が退陣し同7月の参院選で後継の宇野内閣が大敗、消費税率を5%に引き上げた橋本内閣が97年7月の参院選で惨敗し退陣――など歴代内閣にとって鬼門です。10%への消費増税論者だった小沢氏はその鬼門を十分に承知しており「景気回復が先」と増税に反対し、民主党をぶっ壊して「国民の生活が第一」党を設立。さらに、急ごしらえの「減税日本・反TPP・脱原発」党(河村たかし名古屋市長、亀井静香元金融相らが設立)や生活第一の分身「きずな」党(内山晃代表)、「みどりの風」党〈谷岡郁子共同代表〉など脱原発で一致する小政党を糾合し「日本未来の党」を立ち上げました。これは、持論のイタリア中道左翼連合「オリーブの木」の連携を模索したもので、相変わらずの“闇将軍”ぶり。嘉田由紀子滋賀県知事を傀儡の党首に担ぎ、無党派層の半数を占める女性票に照準を合わせました。

維新、みんなと合流ならず競合
 このため、小沢氏は「1兵卒で働く」と無役でありながら、民主党の政権公約に盛り込んだものの実現しなかった「子ども手当て」月2万6千円の年額31万2千円を選挙公約に謳うなど小沢ペース。「卒原発」を唱える嘉田代表が記者会見で原発再稼動を容認するかのような発言をするなど「党内不一致」が露呈。当選圏が絡んだ比例代表名簿の上位を巡っても、嘉田代表周辺と小沢氏サイドが暗闘して公示の手続きが遅れ、中央選管に迷惑をかけるという醜態を演じました。一方、第3極の主役と見られた日本維新の会も複雑な軌跡をたどりました。「アジェンダ〈理念〉と政策が一致する。東はみんな、西は維新で議席を占めよう」と言う「みんなの党」の渡辺喜美代表と当初は良く、合流話が進みましたが、競合選挙区が19区もあり調整不能。減税を主張する「減税党」〈代表河村名古屋市長〉との合併話も、消費増税11%まで認める橋下徹大阪市長との間で政策が水と油。おまけに石原前都知事が代表の「太陽の党」と合流したものの太陽の党の前身の「たちあがれ日本」〈平沼赳夫代表〉が維新の会の脱原発方針に横槍を入れ、あいまいな表現に修正されました。このため、既成政党をオセロゲームのように覆すことはできませんでした。

舵とエンジンなく野合ミニ政党
 このように、慌ただしい離合集散の末、野合した第3極を目指す政党は「舵となる政策」も「エンジンとなる牽引車〈者〉」も不在で 国民に愛想を尽かされ、支持を失いました。ミニ政党は脱原発を唱えるだけで、その結果生まれる産業の空洞化、電気料金が3割も値上がりし家計を直撃することには「頬冠り」で何の処方箋も示していません。国民生活や経済活動にとって、エネルギーの安定確保は不可欠。脱原発・反原発・卒原発と言葉遊びしている場合ではなく、原発ゼロを扇動的に言うのは全く無責任です。いずれ、日本維新の会は分裂して元の「維新の会」と「たちあがれ」に戻り、未来の党も空中分解して小沢チルドレン残党中心の「生活第一」に先祖帰りし、社民などとの連携を含めた「オリーブの木」構築に望みを託すでしょう。自公合わせて3分の2議席を制した安倍総裁は自公連立政権の復活に加え、通常国会では3党合意に見られたように政策ごとに民主党と部分(パーシャル)連合を組んで難局を突破するか、憲法の規定で参院が否決した法案を衆院で再可決・成立させる強硬手段を取るか、など色々な選択肢があります。一時、安倍氏が模索した「自公プラス維新」の組み合わせは、維新との政策面で一致する部分の連合に終わりそうです。

勝ち馬に乗る心理が雪崩現象
 期待外れの民主政権に対する国民の白けムードから、投票率は前回を10%下回る59%でしたが、既成政党と第3極政党は40〜50 %の無党派・浮動票を巡り激しい争奪戦を演じた末、自民党が圧勝しました。選挙にはアンダードッグ効果(アナウンス効果)と言って「負け犬にしてはいけないとの判官贔屓の気持」に頼り、相手候補が油断している隙に乗じて自陣営を引き締めて逆転を狙う手法。もう一つはバンドワゴン効果といって、行列先頭の楽隊車が奏でるバンドに従う「勝ち馬に乗る心理」が 雪崩現象を起こすという2通りがあります。2つの効果が選挙終盤でどのように表れたか分析する必要がありますが、第3極政党の消長は小選挙区制の欠点である“死に票”を嫌う民意の行方が左右したものと見られます。さて、安倍総裁は26日、一気に党役員・組閣人事を断行しますが、石破幹事長の続投、菅義偉元総務総相を官房長官に内定、麻生元首相らも起用するなど重厚な布陣を検討しています。総選挙の結果、12党が獲得した議席数(カッコ内は公示前勢力)は次の通りです。
自民294(118)、民主57(230)、日本維新54(11)、公明31(21)、日本未来9(61)、みんな18(8)、共産8(9)、社民2(5)、国民新1(3)、新党大地1(3)、新党日本0(1)、新党改革0(0)、無所属5(9)、計480(479に欠員1)