第289回〈12月1日〉「北村の政治活動」統合版案内 総合リード
 慌ただしい師走の総選挙を迎え、国民の皆様には大変ご迷惑をおかけしています。前号でお断りした通り、公選法に触れる恐れもあり、公示後はHPを自粛しますが、予告したように、私が国会会期末の連日、衆院の農林水産、国土交通両委員会で質問した議事録の要約を別稿の「北村の政治活動」統合版として掲載しました。11月8日の農水委は諫早湾干拓事業について福岡高裁の開門判決をあっさり受け入れた菅前首相の誤った判断と責任を追及。9日の国土交通委ではシャドウキャビネットの一員である自民党の国土交通部会長として党を代表し、エレベーター事故、山岳遭難、JAL優遇の航空行政など6項目にわたり厳しく質しました。総選挙で政権奪回の暁にはシャドウの”影”部分が外れることを期待して国会活動を続けています。かなりの長文ですが、ぜひご一読下さるようお願い申し上げます。

北村の政治活動第280回〈12月1日=統合版@〉諫早干拓で菅前首相の参考人招致要求
 政府は福岡高裁の判決を受け、来年12月に諫早湾干拓の開門調査に踏み切るが、干拓地では環境に配慮した大規模農業が軌道に乗りつつあり、長崎県漁業者の怒りが高まっている。菅前首相が地元の理解を得ることなく、科学的、客観的根拠もなく判決を受け入れたことがいさかいの原因だ。私は@既に諫早干拓事業は完成し防災、農業、漁業に効果が発揮されているA国のアセス準備書、評価書の結果、有明海の再生に開門が繋がらないことは明らかB政府方針が出て2年経つが有明海の再生シナリオは一切聞かされていないC諫早湾干拓は有明海全体の2%の面積だが、潮流、潮位、水質など様々な要因の影響を調べていないD様々なシュミレーションや調査が途中段階で多くの課題が残っているE多額国税投入の摩訶不思議淡水化だ――などを指摘し、開門の影響を抽出する科学的な分析手法が確立していない点を厳しく追及した。誤った判断で上告を断念した菅元首相の責任は重大であるため、菅氏を参考人として当委員会に招致するよう要求した。これに対し、郡司彰農水相は[菅首相の下で高裁判決が確定したのは事実だがその評価は私から述べることではない。高裁判決が示した日にちまでに行政の連続性でやるべきことをやらせて頂きたい」と述べるだけで、前向きな答弁は全くなかった。
<北村が同委員会で質問した1問1答の要旨は次の通り。>

カキ・アサリ養殖進む干拓地
北村  郡司農水相は11月4日の長崎訪問の際、地元への回答資料の中で、福岡高裁判決の受け入れ理由として、長年のいさかいに終止符を打つ、有明海の再生を目指すことを総合的に判断して上告せず、開門判決を受け入れたと述べた。地域防災、農業、諫早湾干拓事業の完成に向けて、一緒になって長年苦労してきた国と県、事業施工地域の方々が、なぜ争うことになったのか。終止符を打つと言うが、干拓事業が無駄な公共事業の典型との観点から、地域の皆さんの理解を一切得ることなく、科学的、客観的な根拠も現実的な理解も伴わない菅前首相が、判決を受け入れたのが新たないさかいの原因になっていることに他ならない。是非、菅議員(前首相)を参考人として当委員会に招致してほしい。諫早干拓事業は既に完成し、地元は安全、安心な生活を享受。干拓地では大規模な、環境に配慮した農業が行われ、輸出も出来ている。干拓で閉められた漁業環境に合うカキ、アサリなどの養殖に取り組み、「華漣」という日本一の養殖ガキが生産できるまでになった。これを全て失うような開門をなぜ受け入れたか。菅前首相の誤った判断による国の責任と私は考える。
郡司彰農水相 菅首相当時、知事の質問状に対する回答は「高裁判決を重く受け止め、長年にわたる争いに終止符を打ち、解決の方向性を早急に提示することが内閣の責務である。有明海の再生を目指す観点から総合的に判断して上告しないと決定した」との内容だ。ご指摘のように菅首相の下で高裁判決が確定したのは事実だが、その評価について私から述べることではない。しっかり受け止め高裁判決が示している日にちまでに行政としてやるべきことをやらねばならないと言うのが私の立場。行政の連続性で、やらせて頂きたい。

制限開門が適当と振興局長
北村 政府の方針が出て2年経つが、有明海の再生シナリオは一切聞かされていない。開門すればどういう手順で再生が果たせるのか。4日の説明ではケース3−2〈制限開門〉について、諫早湾の奥の方のアサリ漁やカキ養殖等に影響を及ぼす可能性があるとの説明があった。資料を見ても潮流の変化によって養殖いかだの安定性が低下し、ストレスによる成長阻害、養殖ガキの脱落等が発生する。アサリの大量斃死に及ぶ泥の推積などが明らかになり、濁りによって多くの魚介類に悪い影響があると示されている。平成14年の短期開門調査では、濁りを防ぐ汚濁防止膜が排水門の前にありながら効果がなく、アサリが斃死しカキの成長を阻害する危険性があるなど全く対策になっていない。開門しても開門の影響をどう調べるのか。諫早湾干拓は有明海全体の2%の面積でしかないが、潮流、潮位、水質など様々な要因の影響が調べられていない。開門の影響を抽出する科学的な分析手法が確立しているのかいないのか。判決を受け入れる以上、判断の根拠としてのシナリオが必要だ。
實重重実農林振興局長 環境アセスメント〈影響評価〉を行ってきたが、ケース1や2と言った全面開門の方は防災上、営農上、特にご指摘の漁業上の影響が大きいということで、ケース3−2の制限開門のほうが適当と考えている。この場合、諫早湾の排水門周辺や調整池が魚介類の産卵や稚魚の成育の場になることが期待でき、アセスにも記載されている。濁りの発生は開門操作を1ヶ月かけ、長期間、慎重に行う。汚濁防止膜も漁業者と相談し、最も効果のある仕方を考えたい。生物・生態系は複雑な要因で成り立つので、制限開門に伴う変化について、有明海周辺の約百カ所の地点で本年から調査したいと思っており、物理的、科学的、生物的な色々の要因につき追跡データを収集、分析し公開したい。有明海再生では漁業振興のための覆砂や海底耕うん等の振興策を充実させる。

開門で再生との錯覚を国が正せ
北村 国のアセス準備書、評価書の結果、有明海の再生に開門が繋がらないことが明らかになっている。環境省の調査では潮の満ち引きの幅、潮汐振幅は18・6年周期の月の引力の変化による影響を受け、開門しなくても今後2015年に向けて潮汐振幅が増大し、有明海の湾奥の貧酸素水域を緩和できることが示唆された。これを中村知事が指摘し、農水相も聞いている通りだ。開門急先鋒の特定非営利法人・有明海再生機構の中間まとめでは、湾奥の流速の変化に関しては湾奥部の地形変化の影響が最も大きく、諫早湾潮受け堤防の影響はほとんどないとの結果を示している。さらに、独立行政法人の西海区水産研究所によれば、貧酸素水域は有明海の奥と諫早湾で同時に別々に発生しているとされ、直接関係がないことが明らかになった。国自身が小長井・大浦訴訟で、諫早干拓事業と有明海の異変とは因果関係がないと主張してきた。開門すれば有明海は再生するとの錯覚を国が責任を持って正すのが農水相の仕事だ。科学的知見を踏まえ、開門しないで有明海再生へのスタートを開門原告団58人と真摯に話し合うべきではないか。
郡司農水相 諫早、長崎の方々の思いを汲み取った発言を聞かせて頂いた。知事からも同じ話を聞いた。幾つかの裁判もまた行われている。しかし、福岡高裁の裁判は決着を見た形になっているので、司法の判断で来年12月には開門を行うことを国が受け入れたところから、物事を見なければいけない立場で進めていることをご理解頂きたい。防災上、営農上、漁業の問題に関しても多大な影響を及ぼすことが予測される。そのことを行政として看過してはならない。被災、被害が改めて出ない道を探らせて頂きたい。
北村 農水相は4日、長崎でも開門判決期限の25年12月に開門すると言ったが、地元の理解も協力も得られていない。アセス準備書に対する長崎県の質問にも、まともに回答していないというのが私の認識だ。しかし、今回、排水、塩害、潮風等漁業被害に関する新たなシュミレーションを含めて必要な検討を行うと言うのを聞いた。適切かどうかの検証も必要だし、シュミレーション結果を反映しない不適切な対策なら、さらに災害を引き起こす危険性が高い。そうなると地元の理解が得られず、開門も出来ない。今なお不十分なアセスの手続きを一方的に進めず、準備書の段階からやり直すべきだ。
實重農村振興局長 アセスは23年10月に準備書、本年8月の評価書と充実してきて、4日の地元関係者との意見交換を踏まえ、法令に準拠した手続きに従い、農水相意見というスケジュールになっている。評価書の公表は環境に対する影響評価の1つの区切りで、遡って〈やり直しを〉行うことは困難だ。環境アセスを受けて、具体的な対策工事をどうしていくかは、地元関係者と意見交換しながら、さらに詰めていくと考える。さらにシュミレーションや計算、分析し、海水淡水化案の詳細な内容、計画などを詰めていく。関係者との対話を深めながら充実していきたいと考えている。

多額国税で摩訶不思議淡水化
北村 福岡高裁の開門判決は国と58人の原告の間の民事訴訟であり、これに関わらない地元の皆を国の負けた訴訟の責任の犠牲にすることは許されない。今厳しい財政事情の中で2500億円もの事業費で諫早湾を締め切り淡水湖にし、そこにまた海水を入れて、その海水を淡水化するという、真に摩訶不思議な海水淡水化だ。そこに多額の国税、国民の税金を使わせて頂くと言う。長崎県民にとっても非常に残念な状況だ。私は真水に恵まれない五島列島に育ち、30年前から海水の淡水化による簡易水道を維持してきた。淡水化は逆浸透膜を使うが、海水淡水化は電気を飲むようなもの。電力の節約を望む折、大規模な農業用水を確保するには膨大な電気料金が掛かる。施設整備は国が責任を持つとしても、土地改良区や営農経営体がこの電気料金と有料の農業用水を使うことになりはしないか心配だ。菅前首相は有明海再生特別措置法に違背した責めを負うべきだ。 
梶原康弘大臣政務官 福岡高裁の判決、開門は国の責務であり、長崎の皆さんのご懸念をいかになくしていくか、全力で取り組んで行きたいと思う。開門に伴う費用は国が全面的に負担していくし、開門調査の結果をしっかり有明海の再生に役立てて行きたい。
實重農村振興局長 有明海・八代海等再生特別措置法を新たに制定して頂いたところだが、その総合調査評価委員会が設置された。この委員会で従来からの原因調査に加えて、再生像の提示、再生手順を今後、審議していくことになっている。