第285回(10月1日)首相続投、安倍総裁 話し合い解散か
 自民、民主のダブル党首選は、混戦の末、安倍晋三元首相が自民党総裁に再選、民主党は野田佳彦首相が圧勝し、政権続投が決まりました。政局の焦点は解散時期が絡む臨時国会の与野党攻防に移ります。地域政党から国政政党に脱皮した「日本維新の会」(代表・橋下徹大阪市長)は次期衆院選に350人の候補を擁立し、過半数を制すると豪語していますが、選挙公約は「衆院議員の半減」など中長期と当面の政策課題が、ごちゃ混ぜのポピュリズム(大衆迎合)的スローガンばかり。各紙世論調査が50%と報じた浮動票の行方は全く読めません。首相は内閣改造・党役員人事で選挙態勢を固めたうえ、民衆を扇動する「橋下劇場」の開演前に、機先を制して衆院解散を断行すると見られます。また、野党は先の首相問責決議が臨時国会でも有効であるとし、冒頭から審議拒否する構えなので、緊急を要する特例公債法案、衆院選挙制度改革法案などを成立させるため、「話し合い解散」も選択肢に入ると考えられます。尖閣諸島、竹島の領土問題で緊張を高めている中・韓両国は、タカ派の自民党総裁が再選されたことに一層警戒を強め外交攻勢を仕掛けてくると思われます。解散の秋風が吹く激動政局ですが、さらなるご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

意地悪質問乗切り基本政策一致
 「体調不良で5年前に退陣したことをお詫びする。震災復興、領土を断固守る決意で出馬した」(安倍氏)、「大震災・原発事故・財政・安保。全ての危機管理に万全を期したい」(石破氏)、「古里を、1次産業を守り、周辺諸国の主権侵害から日本を守る」(石原氏)、「官僚、留学、外相など多年の経験を生かし、凛として力強い日本を作りたい」(町村氏)「一番若いがオバマ大統領と同い年。発信力、機動力で経済再生を成し遂げたい」(林氏)――。-告示の翌15日に日本記者クラブで開いた公開討論会では@首相を辞めた安倍氏がなぜ再挑戦するかA石破氏はなぜ党を出たり、入ったりしたかB政治経歴の長い町村氏がなぜ今頃、派閥を割ってまで出馬するのかC石原氏は明智光秀と呼ばれながら、出馬する理由は何かD参院議員の林氏は衆院で首班指名が受けられないのになぜ立つか――など意地悪質問が浴びせられましたが、5氏はうまく質問を切り抜けました。しかし、石破氏が「特例公債法案と衆院選挙制度改革法案の審議には協力する」と柔軟姿勢を示したほかは、次期国会で解散に追い込むことと領土・主権、外交・安保、デフレ脱却、TPPには慎重姿勢――などの基本政策で足並みを揃えました。安倍晋三元首相は祖父が岸信介元首相で父・晋太郎氏は元幹事長、石破氏の父・二朗元鳥取県知事は参院議員に転じて自治相、町村信孝元官房長官の父・金五元北海道知事も同じ政界に移り元自治相。石原伸晃幹事長の父・慎太郎都知事も運輸相など閣僚経験者。林芳正政調会長代理の父・義郎氏は元蔵相で石原都知事、海部俊樹元首相と3人で89年の総裁選を争った因縁があり、候補者全員が2・3世議員でした。いずれも伝統保守政治家の家系に育ち、掲げる政策に共通項があるのは当然です。

決選投票でタカ派安倍氏再登板
 町村氏は街頭演説中の18日、体調を崩して検査入院し、ハンディを背負いました。自民党総裁選で接戦を抜け出し、政権奪回後の首相に返り咲く切符を掴んだのは安倍氏です。26日の投開票は国会議員198票、党員票300票、計498票で争われた結果、地方党員の圧倒的支持を得て石破氏が計199票(議員34票・党員165票)を集めてトップ,次いで安倍氏が141票(議員54票・党員87票)、石原氏96票(議員58票・党員38票)、町村氏34票(議員27票・党員7票)、林氏27票(議員24票・党員3票)の順でしたが、いずれも過半数の249票に届かず、国会議員だけによる決選投票に持ち込まれました。衆参両院議員の決選投票では、投票総数198票(棄権1票)のうち、安倍氏が108票、石破氏89票で、2位以下の各陣営票を集めて議員票を倍増させた安倍氏が第25代総裁に選ばれました。党の支持率が低迷を続ける中、尖閣諸島、竹島問題などで中・韓両国の攻勢が強まり、政治の課題は、国民生活の不安解消に絞られています。石破氏が党員票の55%を集めたのは、防衛相経験者で安全保障・危機管理に強く、前政調会長として経済再生など政策にも明るいタカ派であったからです。しかし、タカ派のイメージは安倍氏の方がより強く次期衆院選の「顔」に相応しいとして各派議員の支持を集めました。

石破幹事長ら均衡重視の人事
 決選投票は40年ぶり。しかも、逆転勝利は石橋湛山氏が祖父の岸信介氏を破った1956年以来、56年ぶりです。再登板に当たり安倍氏は党員票の過半数を取った石破氏について「党内で高い支持を得た。事実上、党の軸として国会、次期衆院選で大活躍をしてもらいたい」と述べ、石破氏を党の要の幹事長に。副総裁は中国と接点を持つ高村正彦元外相、総務会長には町村派の中で安倍氏を積極的に支援した細田博之元幹事長、政調会長には安倍氏の選対本部長を務めた甘利明元経産相、国対委員長に浜田靖一国対委員長代理(元防衛相)、幹事長代行には安倍氏に近い菅義偉元総務相を起用しました。安倍政権発足当時は側近を重用し過ぎて「お友達内閣」と揶揄されましたが、今回はバランス重視の人事です。 

3候補揃って首相責任・政策追求
 民主党の代表選は、告示日の9月10日、都内のホテルで共同記者会見し首相に立ち向かう3氏が党分裂を巡り激論を戦わせ、同12日には日本記者クラブでの公開討論会で政策論争を展開しました。合同記者会見で、鹿野道彦元農相は、約70人も離党したことについて、「統治がしっかりしていない政党は信頼を取り戻せない。責任を取る政治文化が必要だ」と首相を批判。原口一博元総務相は「党は分裂、離党、除名を繰り返し、政治への信頼を失わせた責任は極めて大きい。お詫びします」と首相に当てつけがましく頭を下げました。赤松広隆元農相も「衆院任期は4年。政権公約もその中できちっとやり切れるようにがんばるのが大原則だ」と「反野田」候補はこぞって首相を攻め立てました。公開討論会では原発再稼動、社会保障・税一体改革、環太平洋経済連携協定(TPP〉などを巡って「20年後、30年後の原発ゼロは現状維持に他ならない。一体改革の(国民)負託は受けていない」(原口氏)、「TPPはほとんど中身が開示されていない。一体改革は増税だけが先行している」(赤松氏)、「子ども政策の財源手当てが重要」(鹿野氏)など首相攻撃に終始しました。

近く内閣改造、党首会談に意欲
 首相の公務の都合で4候補の揃い踏みは16日のフジ、NHKの報道番組で終わりました。この番組で原口氏が、首相の政治生命が懸かる「社会保障・税一体改革」について、「3党合意は崩れている」と指摘した上、「より大きな非自民の連立政権を作るべきだ」と持論を展開すると、首相は「その連立政権はどういうイメージか」と気色ばんで質す険悪な場面もありました。次の出演を待ちながらこのシーンを見ていた自民党の5総裁候補は「これで1つの党でやって行けるか国民は不安だ。解散しかない」と呆れ、冷笑しました。21日の投開票の結果、野田首相は党員・サポート票296P、地方党員票93Pで計389ポイント。国会議員218人分を加えた合計は過半数の616を上回る818ポイントを獲得して圧勝。2位以下の合計票は原口氏の154P,赤松氏の123P,鹿野氏の113Pの順でした。だが、党員・サポートの投票率は最低の33%、国会議員の欠席は5人で無効票は6票といずれも過去最低を記録し、党の衰退が浮き彫り。16日のTV番組で首相は「自民党の5候補は3党合意を守ると言っている。3党合意を再確認して、スケジュール感を腹合わせするところからスタートしたい」と述べ、自民党総裁選後の党首会談を呼びかけました。党首会談には自民党の5候補はもとより、公明党の山口那津男代表も応じる姿勢であり、特例公債法成立などの「話し合い解散」に発展する可能性があります。

輿石・細野両氏に論功行賞人事
 また、党の一体感を保てなかった反省に立ち、再選後の記者会見では「気を引き締め、政権、党運営に当たるため、チーム力を強化する」と述べ、国連総会に出発する直前の24日に党役員人事を断行。輿石東幹事長を再任、幹事長代行に安住淳財務相、政調会長に細野豪志環境相を抜擢、国対委員長に山井和則国対副委員長を昇格させました。細野氏は中堅・若手の人望が厚く代表選の有力候補と目されていたのを、輿石氏が出馬を思い止まらせました。ゆえに輿石、細野両氏の党3役処遇には論功行賞の意味合いかあります。輿石氏の幹事長再任は「離党予備軍」から9人が離党するだけでも連立与党が過半数を割り、内閣不信任案で解散に追い込まれるため,党内融和の輿石氏に続投を懇請したもの。山井氏は首相と同じ松下政経塾出身で安住氏とも良く、野党との調整能力が買われました。しかし、輿石氏は消費増税の3党合意に消極的だったし、参院議員会長兼任の立場から、両院で民主党惨敗を避けるには来年夏の衆参ダブル選挙しかないと硬く信じています。首相もTV番組で、自民党が首相問責決議に賛成したことに「強い違和感」を示し、「近いうち」約束を再考する考えを示唆しており、話し合い解散が不調に終わることも想定されます。

重厚布陣、反野田勢も取り込む
 首相は「適材適所の内閣改造も行う」と記者会見で述べており、米国から帰国後の1日に中幅改造を断行。岡田克也副総理の留任を軸に、前原誠司政調会長、樽床伸二幹事長代行、城島光力国対委員長ら野田政権を支えてきた幹部を重要ポストに配置する方針です。また、総選挙に弱い「反野田」勢も副大臣、政務官に起用、「離党予備軍」の動きを封じる考えです。10月召集の臨時国会で首相は、総選挙を意識し欲張って編成する大型補正予算案の成立と大震災復興や子ども手当て増額など100兆円突破の概算要求を求めた平成25年度予算案編成に意欲的です。だが、野党は審議拒否を絡め断固阻止する構えなので、国会召集を見送るとの観測も出ています。政府は14日、エネルギー・環境会議(議長・古川元久国家戦略相)を開き、「2030年代に原発稼動ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」との目標を掲げたエネルギー戦略を決定しました。ところが、大綱で使用済み核燃料の再処理事業を継続すると謳ったほか、翌15日には枝野幸男経産相が東日本大震災後の工事を中断した青森県の電源開発大間原発と中国電力島根原発3号機の建設再開・稼動を事実上、容認する考えを三村申吾青森県知事らに伝え、政策の混迷を露呈しました。

矛盾の「30年原発ゼロ」徹底追及
 建設を再開する原発は50年代まで稼動できることになり、「30年代に原発ゼロ」のエネルギー戦略とは明らかに矛盾します。首相は離党予備軍の動きを恐れ、国民世論を意識して原発ゼロの方針を打ち出しましたが、政策は破綻し、野党はもとより他の3候補も新エネ政策を批判しました。安倍氏は総裁就任後、「強い日本を取り戻し、新しい自民党を作り、政権を奪還する」と決意を表明しました。臨時国会で自民党は野田政権の政策矛盾をとことん追及し、秋までに衆院解散に追い込む構えですが、総選挙中の政治空白を狙って中国が尖閣諸島に武力行使を仕掛けないとも限りません。私は島嶼防衛と領土・主権の擁護に格段の意を注ぎつつ、精力的に国会活動を続け、総選挙の決戦に臨む覚悟です。