第284回(9月16日)総裁選は混戦模様 新党は2・3眼レフ
 首相問責決議後、野党の審議拒否で空転した国会は8日に閉幕。政局の焦点は自民、民主の両党首選に移りました。有力な対抗馬がいない野田首相は再選確実ですが、自民党の谷垣禎一総裁は解散に追い込めず、野党7会派提出の首相問責決議案に相乗り可決し「自己矛盾」の対応をしたことで党内に不満が噴出し、出馬を断念しました。中堅・若手が支持する安倍晋三元首相、領袖クラスのベテランが推す石原伸晃幹事長、地方党員に人気がある石破茂元政調会長ら5氏が出馬、候補者の乱立で混戦模様です。世代交代の争いに加え、3党合意の谷垣路線を継承し自公民連立を目指す石原氏、大阪維新の会との連携を模索する安倍・石破両氏など総選挙後の政界再編の思惑も絡み、政策・政権枠組みを巡る論争は活発化しています。一方、大阪維新の会は9日開催の衆院選公約「維新八策」の公開討論会に政党要件の「国会議員5人」を上回る7人が出席、12日に新党「日本維新の会」を宣言しました。しかし、みんなの党との合流は否定し、安倍氏との連携を深めるなど「第3極」新党の動きは複雑で、「台風の目」は2〜3眼レフになりそうです。首相はその混迷を突き10月に臨時国会を召集、積み残した特例公債法案と衆院選挙制度改革法案を成立させて「近いうち」の公約(衆院解散)を断行すると予想されます。我々は政権奪還の総選挙をどう戦うか。新総裁選びは重要です。倍旧のご支援、ご教示をお願い申し上げます。

細野氏断念で候補1本化できず
 10日に告示された民主党代表選は21日に投開票ですが、「反野田」勢力は対抗馬を絞りきれず首相が独走しています。有力候補とされた前原誠司政調会長は3日のBS番組で、「首相は国論を二分する社会保障・税一体改革、原発再稼動をやり遂げたので支えていきたい」と真っ先に首相支持を表明。岡田克也副総理、玄葉光一郎外相らも首相を支持しました。代表選の事前説明会には対立候補の1本化を図る「民主党復活会議」の山田正彦元農相と桜井充政調会長代理のほか、細野豪志環境相、田中真紀子元外相、小沢鋭仁元環境相、原口一博元総務相の擁立を目指す取り巻き議員が出席。しかし、若手の待望論が強い細野氏と知名度の高い田中氏、前回出馬の馬淵澄夫元国交相は出馬を断念。原口、山田両氏の1本化も出来ず山田氏や桜井氏も辞退。結局、首相と原口氏、旧社会党系の赤松広隆元農相、鹿野道彦前農相の4者で争うことになり首相の再選は確実です。首相は10月早々にも細野氏らを優遇する党役員人事と内閣改造を行って総選挙態勢を固め、臨時国会を召集。地方交付税約4兆円の支出を延期するなど、予算執行に支障を来たす約38兆円の赤字国債発行に必要な特例公債法案、衆院選挙制度改革法案と大震災復興の大型補正予算案を成立させ、衆院選公約に絡めて大盤振る舞いの概算要求をした平成25年度予算案をアピール、解散を断行する構えです。ただ、12月の訪露計画が解散に微妙に影響しそうです。

ベテラン無視の党運営が不人気
 自民党の総裁選は14日に告示、26日投開票ですが、石原幹事長の出馬表明で混沌としています。谷垣総裁は再選戦略の柱に掲げた衆院解散に追い込めなかったばかりか、中小野党7会派が「3党密室談合の消費増税」と批判して提出した問責決議案に、公明党が筋を通して棄権したのとは対照的に、焦って相乗りし「自己矛盾」の対応をさらけ出したとして党内で批判が沸騰、与党も「3党合意、首相解散確約は無効になった」と解散先送りの口実に使い始めました。森喜朗元首相が7月に表明した「支持発言」を撤回、出身派閥・古賀派の古賀誠会長(元幹事長)と谷垣氏の会談でも、古賀氏から「今回は思い切って若い人に党再建の期待を持ちたい」と引導を渡され、孤立しました。元々池田勇人元首相が創始者の宏池会は、麻生太郎元首相を輩出した河野(洋平前衆院議長〉派、谷垣派の前身・加藤(紘一元幹事長〉派、古賀派に3分割、前回の総裁選で古賀、谷垣両派がよりを戻して第2派閥に復活した経緯があり、出身派閥とは名ばかり。谷垣氏は古賀氏に限らず、伊吹文明元幹事長ら派閥の領袖に人事の相談もしないで、独自の党運営を続けてきました。

明智光秀?だが選挙の顔に期待
 谷垣氏と違って石原氏は党務をベテラン議員に逐次報告するなど気くばり十分で、大阪維新の会の橋下徹大阪市長とも気脈を通じています。党内には岸田文雄国対委員長〈古賀派〉、田野瀬良太郎幹事長代行(山崎派)ら超党派で老壮青の「勁草会」を結成しており、知名度が高く「選挙の顔」に相応しいとして、期待感が持たれています。谷垣氏が20人の推薦人集めに苦労したのとは大違い。ただし、石原氏は直前まで、「谷垣氏が辞めない限り支持する」と言明してきたのに、2日の講演で「谷垣総裁を支えるために政治をやってきたのではない」と、掌を返すように発言。党内では「党運営では総裁と同様に連帯責任がある」「社長と専務が喧嘩すれば会社は潰れる」など谷垣総裁に同情論がしきり。記者会見で「党内では石原氏を明智光秀と呼んでいる」と問われた谷垣氏は「私のホームタウン・福知山(京都)の城主は光秀公でした」と答えて苦笑い。大島理森副総裁立会いで4回も1本化調整が行われましたが双方譲らず決裂、10日は涙の不出馬会見となりました。任期3年間で2人の首相を退陣に追い込み、地方選、参院補選で連戦連勝した谷垣氏は前日まで「壁を突き破る」と意欲満々だっただけに、無念さは人一倍。総裁と幹事長が総裁選を争ったのは1978年の福田赳夫総裁(首相)に大平正芳幹事長が挑戦して以来。党員の予備選挙で大敗した福田氏は本選挙を辞退しましたが、党を2分する「40日抗争」に発展。大平首相が衆参ダブル選中に死去する悲劇をたどりました。今回は谷垣氏の名誉ある撤退です。

安倍、石破両氏が2・3位連合へ
 安倍元首相は「新経済成長戦略勉強会」を5日に発足させ、中堅・若手など衆院29人、参院18人の計47人が出席。これには石破氏の出馬準備を進めている鴨下一郎元環境相らも出席しました。安倍氏は改憲、外交・安全保障など政策面で共通項があるとして、大阪維新の会と連携を深めています。総裁選は国会議員200票、党員300票で争われますが、前回の総選挙敗北で国会議員の比重が落ちたため、満遍なく地方議員の会合に顔を出している石破元政調会長が有利と見られています。安倍氏とは長老支配反対、集団的自衛権の行使容認などで一致し、決選投票になれば2,3位連合を実現する構えで、翌6日には領土問題研究会を共同で開き、両陣営の約50人が出席しました。衆院への鞍替えを念頭に出馬した林芳正政調会長代理は古賀会長や参院議員に影響のある青木幹雄元参院議員会長らに協力を要請しています。深刻なのは最大派閥の町村派。町村信孝会長〈元官房長官〉は7日、早々と総裁選公約を発表。同派顧問格の安倍氏と争えば同派は完全に分裂します。

大衆迎合・総花的公約の維新八策
 地域政党・大阪維新の会がまとめた衆院選公約の「維新八策」は@首相公選制を導入し、参院廃止を視野に衆院の優越を強化A地方交付税を廃止し消費税を地方税化B衆院の定数を240に半減し、議員歳費・政党交付金を3割削減C地方公務員の政治活動の規制強化やネットを利用した選挙活動の解禁D教育委員会制度を廃止E年金を賦課方式から積み立て方式に移行F環太平洋経済連携協定(TPP)に参加G脱原発依存態勢の構築H憲法改正発議要件を国会議員3分の2から2分の1に緩和――などが骨子。外交・安全保障分野では日米同盟を機軸に「日本の主権と領土を自力で守る防衛力と政策の整備」を明記し、沖縄・米軍普天間飛行場の移設問題では、「日本全体で沖縄負担の軽減を図るさらなるロードマップ〈工程表〉の作成」を唱えています。このように総花的スローガン、大衆迎合的〈ポピュリズム〉、突っ込み不足の内容であるため、石原自民党幹事長は「議員の数だけ減らすと言うが、バナナの叩き売りだ」と批判しました。確かに,議院内閣制の下で、副大臣、政務官など「政務3役」には約100人の政治家が公務に就いていますが、衆院定数の半減・参院廃止なら、議会の委員長ポストや委員会構成に穴が開き、立法府は機能麻痺になります。また、地方交付税を廃止すれば、地方税収の多い東京、大阪のような富裕都市と、山陰、北海道のような過疎の道・県との格差が拡大、人口の都市集中が進むでしょう。このほか、橋下大阪市長が党首なら、首相指名選挙で誰に投票するかなど、問題だらけです。

公開討論会に政党要件の7議員
 前号で紹介した通り、大阪維新の会幹事長の松井一郎大阪府知事は1日、大阪市のホテルで超党派の「道州制型統治機構研究会」リーダー格の松野頼久元官房副長官、石関貴史衆院〈民主〉、松浪健太衆院〈自民〉ら5議員と会談し「維新八策」を説明。9日の公開討論会には3氏のほか、水戸将史参院(民主)、小熊慎司、上野宏史、桜内文城各参院(みんな)の計7議員が合流を前提に出席しました。これで同会は「国会議員5人以上」という政党要件を満たし新党「日本維新の会」の結成を宣言、350人を擁立します。みんなの党(渡辺喜美代表)は「第3極」保守党の中核を目指し、過去2回の国政選挙で衆院5人、参院11人に勢力を伸ばしてきましたが、3議員が離党・維新へ合流して分裂状態に陥りました。しかし渡辺氏は、みんなの党の政策や「維新八策」は作家・堺屋太一氏が政策ブレーンであるため8月末の記者会見で、「維新八策は殆んどみんなの党のアジェンダ〈政策課題〉と重なっている。維新と決裂したわけではない。党運営の改善には日々努めている」と強気。

みんなの党母体の政党化を拒否
 渡辺氏は「前回参院選で800万票からの比例選得票を頂き、地方議員も300人に増え、実体のある政党だ」と結党以来3年間の躍進を誇り、先の内閣不信任案、首相問責決議案の7野党提案でも音頭を取りました。だが、独断的な党運営がもとで江田憲司幹事長と折り合いが悪く、代表選実施を求める党員の要望にも具体案を示さずワンマン振りが批判されていました。橋下、松井両氏とは先月20日、大阪市で会談、次期衆院選で関東以北はみんなの党が、関西以南は維新の会が、切磋琢磨して勢力を拡大して新党に合流、みんなの党を母体に「政党化」を図ろうと提案しましたが、党員拡大ばかり主張する渡辺案を橋下氏らは拒否し、公明党との選挙協力を進めています。橋下氏は「減税日本」の河村たかし名古屋市長、「中京維新の会」の大村秀章愛知県知事ら地域政党代表を公開討論会に招いたほか、東国原英夫・前宮崎県知事、中田宏・前横浜市長を目玉候補に擁立する構えで、2人も出席しました。河村、大村両氏は昨年の愛知県知事選、名古屋市長選、市議会解散の住民投票のトリプル選を戦った仲間。大阪維新の会と同様、知事と市長が一体の蜜月関係でしたが、大村氏が河村氏に無断で大阪維新の会を真似た「中京維新の会」設立を突然に発表したため、河村氏が烈火のごとく怒り、両氏の関係は冷却し亀裂が入りました。

小沢氏はオリーブの木に執心
 たちあがれ日本の平沼赳夫代表が画策する「石原新党」は、石原慎太郎都知事が大阪に出向き、支援の挨拶をするなど良好な関係ですが、石原氏は「尖閣で手一杯。周りの人が言ってくれるのはありがた迷惑だ」と政党の合流には静観の姿勢です。「国民の生活が第一」新党の小沢一郎代表は大阪維新の会にしきりと秋波を送りましたが、小沢嫌いの松井幹事長が接触を断っています。小沢氏は次期衆院選に100人の候補を擁立、一大勢力を築き上げれば、イタリア中道左派連合の「オリーブの木」に習い、地域政党など新党連携の中核に坐ろうとしています。このように雨後の竹の子のように各地で芽を出し、第3極新党の構築は活発ですが、主導権争いが激しく、台風の眼となる司令塔が不在で2・3眼レフの状態。この分では、やがて国民に見放されるでしょう。ともかく、衆院選に勝利すれば自民党の政権奪還は確実です。問題は議員200票の行方。国会議員だけの決選投票になれば5候補と推薦人各20人、選挙管理委員11人の計116票を差し引くと84票の争奪戦となり、23位連携の仕方によって簡単に逆転し次期首相が誕生します。気が抜けません。