第283回(9月1日)10〜11月解散か 領土防衛で緊迫
 今国会はいよいよ8日の会期末まで1週間余。首相は自民党に示した「近いうちに信を問うとの解散確約を守らず、秋の臨時国会に先送りし、予算執行に必要な特例公債法案や1票の格差是正の衆院選挙制度改革法案を成立させようと躍起。自公両党は解散先送りに強く反発、首相問責決議案を参院に提出・可決し、内閣提出法案の審議を拒否しようと対決姿勢を強めました。一方、読売の世論調査で「大阪維新の会」が民主党を上回る政党支持率を示したため、小沢チルドレンなど再選に自信のない1回生議員が「駆け込み寺」のように地域政党を頼り、地域政党も離党者5人以上を勧誘して政党要件を満たそうと活発に動いています。総選挙での壊滅を恐れる野田政権は、対抗勢力の芽を早めに潰す構えであり、政界では10〜11月解散のムードが高まってきました。こうした日本政治の混迷、日米同盟の弱体化を見透かしたように、露中韓3国が国後島、尖閣諸島、竹島などの領土問題で圧力をかけ、国会で激しい論議を呼びました。私も18・9の両日、超党派議員の尖閣戦没者洋上慰霊祭に参加しましたが、尖閣近海は波高し。緊迫感が漂い防衛の重要性を肌身に感じました。残暑厳しい折ですが、さらにご支援、ご教示をお願い申し上げます。

外交姿勢、危機管理を徹底追及
 国民がロンドン五輪観戦で寝不足な中、露・中・韓3国は、野田政権が周辺国に気配りばかり示す「配慮外交」を続けている隙に乗じて、メドベージェフ露首相が国後島を訪問、李明博韓国大統領が竹島を日帰り上陸し別件では天皇陛下に謝罪を要求、香港の活動家14人が尖閣諸島に不法上陸し、強制送還されると中国各地で反日デモが起きた――など、3国は領土・主権問題で強硬姿勢を示し、北東アジアの情勢は一挙に緊迫しました。自民党は16日、外交部会と領土特命委員会の合同会議を開き、「野田政権は歴史上に汚点を残した。国家主権を守れない愚行である。外交基本姿勢の欠如、危機管理・国家観の欠落だ」と指摘し「関係機関の連携や警備人員の手当てなど警備体制の緊急見直しと法制整備、南西諸島の防衛強化策」などを政府に申し入れ23日からの衆参両院予算委の集中審議で徹底的に政府を追及しました。=別稿「北村の政治活動」で詳報したので是非お読み下さい。

解散先送りに抗議し首相問責決議
 民主党は特例公債法案と衆院選挙制度改革関連法案の衆院審議入りを強行、28日の衆院本会議では自民欠席のまま特例公債法案を、全野党欠席の中で衆院選挙関連法案を可決、参院に送りました。民主党幹部は「1日も早い1票の格差是正で(最高裁判決の)『違憲状態』を解消しないと現実的な解散・総選挙はできない」と野党の反対姿勢を国民に訴えました。廃案になって臨時国会に再提出すれば、それだけ解散の時期が先送りされるわけで、野党の責任におっ被せる思惑がありあり。「0増5減」の1票格差是正法案を切り離して単独で提出、先行成立を主張したのは自民党です。自公両党は、今国会での衆院解散に応じず、政権担当・国家運営能力のない野田政権に対して29日、首相問責決議案を参院に提出して可決、審議拒否に入りました。このため、赤字国債発行の特例公債法案、公選法関連法案など内閣提出法案は廃案・先送りとなり、法案の成立率は史上最低になりそうです。

代表選に反野田勢力が対抗馬
 さて、9月末は自民、民主両党の党首選が行われます。前号でお知らせした通り、民主党代表選は、有力対抗馬の前原誠司政調会長や岡田克也副総理、玄葉光一郎外相らが、次期衆院選の惨敗を見越し、就任早々引責辞任してはたまらないとばかり、今回はパス。早々と野田首相の再選支持を表明、無風選挙と見られていました。だが、「反野田」勢力の鳩山・菅両元首相、鹿野道彦前農相ら各グループは、対立候補擁立を念頭に「民主党復活会議」を結成するなど動き出しました。小沢一郎元代表に近く、消費増税法案の衆院採決で造反した山田正彦元農相らが呼びかけ人。荒井聰元国家戦略相(菅G)、篠原孝元農水副大臣(鹿野G)や同じ造反組で当選1回議員の勉強会「真の一体改革を実現する一期生の会」(代表世話人・福田衣里子氏)に参加を求めています。山田、福田両氏は長崎県が選挙区。消費増税、原発再稼働、環太平洋経済連携協定(TPP)など首相肝いりの政策に批判的な議員を集めて,首相に対抗しようとし、鳩山氏が支援していますが、対立候補は決まっていません。 

幹事長人事が森氏引退置き土産
 読売の世論調査で政党支持率は自民21%、維新の会16%、民主11%と出たため、マスメディアは、「自民、民主両党の支持率が低下した中で、衆院選を戦えば民主党は壊滅、自民党も過半数どころか、比較第1党になるのが精一杯。谷垣総裁は生真面目だが、『選挙の顔』には役不足で第3極新党が台頭しかねない」などと報じ、各党の若手議員には総選挙の厭戦気分が漂っています。だが、谷垣氏は地方首長選挙で連戦連勝、民主党政権の2首相を退陣に追い込んだ実績がある上、党独自の調査では次期衆院選で自民党は220議席以上を確保できるほど回復が見込まれ9月の総裁再選に自信を深めています。さらに助け舟を出したのが引退を明言した森喜朗元首相。党内では「世代交代は日本の政治のためにも望ましい」〈山本一太前参院政審会長〉と歓迎する声も上がっていますが、森氏は谷垣氏の再選戦略である解散確約が取れずに総選挙先送りになっても、「昔から解散と公定歩合は嘘をついてもかまわない」と確約問題を無視して谷垣氏の続投を支持、代わりに総裁選に意欲を示す町村信孝元官房長官は幹事長として処遇するよう谷垣氏を説得したようです。

「ポスト谷垣狙い安倍氏ら出馬か」
 町村氏(会長)と第3極新党を目指す安倍晋三元首相(町村派相談役)は“犬猿の仲”。同派の総裁選出馬を巡り確執を続けており、派の分裂を避けるためにも旧福田派の後見人として、幹事長人事を置き土産に引退する決意を固め、「総選挙で比較第1党が首相、第2党が副総理に就任すればよい」と進言したようです。これには首相の後ろ盾である藤井裕久民主党税調会長も読売のインタビューで「現実的な案だ」と賛同しています。しかし、問責決議では、「自公民3党の合意」を批判する中小7野党提出の決議案に、公明党が「筋が通らない」と採決を棄権したにも拘わらず、自民党が相乗りしたことで、各派から問責対応に批判が出ました。解散に追い込めなかった谷垣氏に対する不満は強く、大阪維新の会と連携を強める安倍元首相は28日、森元首相と会い、「党内の中堅・若手から出馬を求める声が相次いでいる」と述べ、総裁選出馬の意向を伝えました。町村氏や石破茂前政調会長、衆院へ鞍替えを目指す林芳正政調会長代理らも出馬に意欲満々。「谷垣氏支持」を表明していた石原伸晃幹事長も「適宜適切に対処する」と記者会見で答え、局面次第では手を上げると予想されます。大阪維新の会代表の橋下徹大阪市長は「大阪都」構想実現の前提となる大都市地域特別区設置法が29日に成立したのを踏まえ、衆院選公約「維新八策」への賛否を問う公開討論会を9日に開きます。これには松野頼久元官房副長官(民主)、松浪健太、谷畑孝両衆院議員(自民)、桜内文城、小熊慎司両参院議員(みんな)ら政党要件を満たすに必要な国会議員5人以上と、「減税日本」の河村たかし名古屋市長、「中京維新の会」の大村秀章愛知県知事ら地域政党代表が参加、政策討論に加わる予定。橋下氏は東国原英夫・前宮崎県知事、中田宏・前横浜市長を目玉候補に擁立する構えで、2人も出席します。

新幹線諫早―長崎ルートが起工式
 ところで、九州新幹線長崎〈西九州〉ルートの諫早―長崎間21キロの起工式が8月18日、長崎市で行われました。おめでとうございます。長崎ルートの基本計画が決定したのは1972年で40年を経てルート全線が着工したことになります。博多―長崎を結ぶ同ルート143キロの所要時間は最速で現行の特急より28分短縮され、1時間20分となります。長崎ルートは既に着工している武雄温泉−諫早間45キロを含め、2022年度に全線開通する予定です。新鳥栖―武雄温泉間51キロは在来線を活用し、武雄温泉―長崎間66キロは通常の新幹線と同じ「フル規格」で整備されます。このため線路幅が違う新幹線と在来線の双方を走行できる軌間可変電車〈フリーゲージトレイン〉を国内で初めて導入します。総工費約5000億円のうち、諫早―長崎間は、在来線一部区間の複線化を含めて約2100億円です。約350人が出席した起工式で.羽田雄一郎国交相は「九州と関西方面との結び付きがより強固になると期待する」と挨拶、中村法道長崎県知事は「交流人口の飛躍的な拡大が期待できる。魅力的な街づくりに取り組みたい」と述べました。政府は長崎、北海道、北陸の3ルート決定に当たり@安定的な財源確保A収支採算性B費用を上回る投資効果C営業主体のJRの同意D並行在来線の経営をJRから切り離すことへの地元自治体の同意――を着工5条件としましたが、新鳥栖―武雄温泉間は大半が高架化されておらず、踏切が約90箇所もあり、安全の確保もこれまた極めて重要です。