第281回(8月1日)激動のお盆政局 ドラマは参院で始まる
 十分な審議時間を取った消費増税法案は、お盆前にも成立の見通しでしたが、やや雲行きが怪しくなってきました。混迷の原因は@離党ドミノが続き民主党の崩壊現象に歯止めが掛からないA増税・脱原発・オスプレイの逆風3点セットが吹き国民不満が増大B解散時期を巡る与野党駆け引きが活発化してきた――などです。離党予備軍の大将・鳩山由紀夫元首相は3党合意の修正を求め、反原発集会にも参加するなど「野田降ろし」運動を展開、増税法案採決前に内閣不信任案が提出されれば再造反し兼ねない不穏な形勢。党分裂の総選挙では勝ち目がないと思う野田首相は、特例公債法案や公選法改正案など重要法案に加え、大震災復興に向け大規模補正予算案を秋の臨時国会に提出、極力解散を先送りして人気回復を図ろうと懸命です。これには自民党の谷垣禎一総裁が「あれもこれもやると言わず、顔を洗って出直すべきだ」と不快感を示し、総裁再選戦略である採決直後の解散・総選挙を強く迫っています。伊吹文明元幹事長は「ドラマは参院で始まる」と不気味な予言をしていますが、国民がロンドン五輪に沸いている間に、お盆政局は激動しそうです。

盛り沢山な懸案並べ解散先送り
 消費増税が柱の社会保障・税一体改革関連法案は、7月19日の参院特別委で実質審議入りし比較的順調に審議を重ねており、自公両党の執行部は、衆院の審議時間129時間の7〜8割としても、お盆入り前には可決・成立できるとの読みから、成立後は直ちに衆院を解散、国民に信を問うべきだと主張しています。だが、野田首相は増税だけでなく予算執行に支障をきたさないよう赤字国債の発行を認める特例公債法案、1票の格差を是正する「0増5減」などの公選法改正案、自衛隊が離れた場所の民間人を助ける「駆けつけ警護」が可能なPKO 協力法改正案も自公両党の協力を得て今国会中に成立させ、秋の臨時国会に選挙目当ての大盤振る舞い補正予算案を提出して国民の支持を取り付けたいと懸命です。出来るだけ解散を先送りしたい野田首相は3党協議の苦労も知らぬ気に、さらに持論である集団的自衛権の政府解釈見直し、石原慎太郎都知事の向こうを張って尖閣諸島の国有化などにも言及。自民党が早期成立のため31日に要求した特別委の中央公聴会開催も8月6,7日に延期しました。石原伸晃幹事長は「首相は欲張りだ」と怒り、谷垣総裁も「補正予算や特例公債法案までやろうというのはむさぼりだ。顔を洗って出直せと言いたい。首相がこんな状態を続けるなら、一体改革の成立前でも内閣不信任決議案を出して衆院解散を迫ることもためらわない」とカンカン。大森理森副総裁は「ロンドン五輪が閉幕したら行動を起こす」と宣言。3党合意の立役者・伊吹元幹事長も伊吹派総会で、「参院は当然通してもらえると勘違いしている。場合によっては参院の出口(採決)までに重大な決意をしなければならない」と否決も示唆、「ドラマは参院で始まる」と警告しています。

「白蟻退治が白蟻に」と鳩山氏
 「増税だけでなくTPP、原発再起動、米軍輸送機オスプレイ配備問題で賛成できない人は潜在的にいる」――鳩山氏は18日のインターネット番組で、歯止めが掛からない離党組を庇ってこう首相を批判しました。17日に舟山康江、谷岡郁子、行田邦子の3女性参院議員が原発再稼動や環太平洋連携協定(TPP)に反対して離党し「みどりの風」会派を結成、18日には中津川博郷衆院議員が 尖閣諸島問題で不適切発言をした丹羽宇一郎駐中国大使を更迭しなかったことを不満に離党するなど、離党ドミノが続いていたからです。輿石東幹事長は「崖っ淵に立っている危機的状況を共有しなければ国民の信を問う前に政権が崩壊する」と記者会見で述べて深刻な表情。しかし、党員資格が停止され9月の代表選に出馬できない鳩山氏は同番組で「代表選でどういう人材を擁立し、民主党の原点を取り戻す可能性があるのか試したい」と公然と「野田降ろし」を宣言。さらに20日夕、首相官邸を取り巻く原発再稼動に抗議するデモにも参加してデモ隊と握手。「首相を経験し官邸に居た側として皆さんの声を官邸に伝え、政治の流れを変える役割を果たそうと思って来た」と拡声機で訴えたため、同党の城島光力国対委員長が「首相経験者が(デモに)出るとはいかがなものか」と記者会見で苦言を呈しました。それでも鳩山氏は21日、選挙区で、「(09年衆院選で)『白蟻退治をやろう』と首相が一番強く主張した。ミイラ取りがミイラになるように、白蟻退治隊が白蟻になったと思える」と重ねて首相を批判しました。

小沢新党の音頭で不信任案可決
 総理経験者と言うより野党首脳を思わす鳩山氏の言動に、政界は唖然としていますが、これには、自民党が元冬季五輪のメダリストを次期衆院選の対立候補として鳩山氏の選挙区の北海道9区に擁立、「新党大地・真民主」の鈴木宗男代表が知人で歌手の松山千春氏を同区での擁立を検討していることに鳩山氏が危機感を強め、ポピユリズム(大衆迎合)的政策を訴え、選挙区の関心を引こうとしている魂胆がありあり。それにしても、3人の離党で参院第1会派の民主党は88人に減って自民党との差は2人になり、第2会派への転落は時間の問題。自民党と勢力が逆転すれば、慣例で第1会派から選出される参院議長の交代を、秋の臨時国会で自民党が要求できます。だが、衆院では小沢新党(略称=生活党)37人に友党「新党きづな」9人をプラスしそれに社民党の6人が加われば52人となり、内閣不信任決議案の提出に必要な51人を超えます。自公両党が採決後に提出予定の同決議案を先に提出して増税法案を阻止する構えで、野党と鳩山グループの15人が造反すれば不信任決議案は可決され、首相は衆院解散か、内閣総辞職のいずれかに追い込まれます。

逆風3点セットで政治不信増大
 しかし、野田政権には「3点セットの逆風」が吹き募り、各紙の世論調査で内閣支持率は軒並み20%台を割って危険水域。消費増税に国民の理解は深まっても「総論賛成、各論反対」で税率アップの時期、軽減税率の内容などで不満が大きく、いざ総選挙となれば増税阻止勢力に票を奪われかねません。1年3か月ぶりに稼動を再開した関電大飯原発についても、@福島の事故を「人災」とした国会東電原発事故調査委の報告A子供の健康を気遣う主婦B電気料金値上げに反発――など国民の不満が増大、毎週金曜日の首相官邸を取り巻くデモには作家の大江健三郎、作曲家の坂本龍一両氏らも参加し、12〜17万人に膨れ上がっています。23日に米軍岩国基地(山口)に陸揚げされた米海兵隊のオスプレイ(垂直離着陸ヘリ)12機は点検・整備、試験飛行の上、10月に沖縄県の米軍普天間飛行場に配備、本格運用を開始します。現行のCH46ヘリは50年を経て老朽化しており、速度も速く航続距離にも優れた新機種に更新、アジア・太平洋の抑止力維持に役立てるもの。

橋下氏に醜聞、新党も前途多難
  だが、過去4回の墜落事故で計32人が死亡し、評論家当時の森本敏防衛相がTV朝日の“朝まで生テレビ”で「未亡人製造機」と揶揄したほど物騒。今年もモロッコや米国のフロリダで墜落事故が起きているため、配備される人口密集地の普天間や国内6ルートの低空飛行訓練地域では危険だとし、沖縄、山口や全国の関連地元では猛反対運動が起きています。これだけ政治不信が高まる中で総選挙をやれば民主党の惨敗は必至。自民党内でも、読売が先日発表した世論調査では同党の政党支持率が政権交代以来最低の14%で、15%の民主党よりも劣っていたことに衝撃を受け、選挙を回避したい空気が漂っています。とりわけ、小沢新党は既に各選挙区に散り、増税・原発・TPP反対の街頭演説を展開中です。小沢氏が橋下徹大阪市長の「大阪維新の会」、河村たかし名古屋市長の「減税日本」など地域政党やみんなの党などと「オリーブの木」の連携を目指し、「政治刷新」を唱えて選挙に臨めば、50%超の無党派層が“大化け”する可能性もあります。ただし橋下氏が女性スキャンダルを雑誌に取り上げられて釈明に追われたように何が起きるかわかりません。

即解散か同時選は首相決断待ち
  そこで輿石幹事長が画策するように9月の代表選は「野田再選」を暗黙了解し、来年夏の衆参同時選挙が現実味を帯びてきます。次期総選挙への不出馬を表明した森喜朗元首相が、記者会見で谷垣総裁支持を表明、「谷垣再選」の強い味方となりました。だが、組織の面で同時選や都議選のトリプル選挙を嫌う公明党は早期解散の旗を簡単に降ろしません。支持母体の創価学会には中小零細企業者が多く、消費増税に反対しているため、同党は3党合意で本格的な低所得者対策として「軽減税率」と減税や現金支給の「給付つき税額控除」の検討を明記させ、「軽減税率」は第1段階の税率8%アップの時から実施するよう国会で迫っています。自民党執行部がブラフをかけた法案否決の強硬路線と、公明党の解散至上主義について自公党首会談などでどう間合いを詰めるか。首相は19日夜、自民党の逢沢一郎元国対委員長ら松下政経塾の同期生と都内ホテルで会食、「ボコボコにされながらも頑張っている」と本音を漏らしたそうですが、背水の陣でどう決断を下すか見もの。いずれにしても天下分け目の戦いは目前です。倍旧のご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。