第280回(7月16日)断末魔の民主党 どう動く小沢新党
 民主党の分裂により消費増税関連法案の参院審議は大幅に遅れ、特別委での実質審議は18日以降に持ち越されました。衆院採決で造反した小沢一郎元代表グループの49人は11日に新党を結成。同じ造反の鳩山元首相グループら中間派は増税反対の研究会を設置、3党合意案の修正を迫るなど党中党の活動を続け、離党予備軍の様相です。自公両党執行部は民主党の体たらくに怒り、首相が統治力を発揮できない場合は3党合意を破棄することも念頭に、予算執行に不可欠な特例公債法案を人質に早期解散に追い込む方針です。こうした中で、東電福島原発事故を検証する国会の事故調査委員会は5日、「事故は自然災害でなく『人災』である」との報告書を衆参両議長に提出、野党が衆参予算委で厳しく追及しました。ロシアは北方領土交渉で日本をけん制しています。「貧すれば鈍する」で野田政権は危急存亡・断末魔の窮態です。マスコミは話し合い解散による10月総選挙を予想していますが、自民党は政権奪回のチャンス。絶大なご支援、ご叱声をお願い申し上げます。

離党予備軍の鳩山系が消費税研
 増税関連法案の衆院採決に反対した民主党議員は57人で、うち43人は小沢グループ。同グループ゚の6人が欠席・棄権しました。造反した小沢グループの衆院37人と参院12人、計49人は党の処分前に離党、11日に小沢新党の「国民の生活が第一」党を旗揚げ、@地域主権への転換A社会保障改革B経済再生――を掲げ、消費増税阻止に向かいました。党執行部は小沢氏ら37人を除籍(除名)、参院12人の離党を承認、同じく造反の鳩山元首相は最も重い党員資格停止6ヶ月に、他は2ヶ月、欠席・棄権者12人は厳重注意以下の処分としました。民主党の創始者で本家を自認する鳩山氏がこの処分に反発したため、党倫理委員会は「処分に大差があるのはバランスを欠く」と答申、常任幹事会は鳩山氏の処分を半分の3ヶ月に軽減しました。鳩山グループはなおも不満とし、23人による消費増税反対の「消費税研究会」を5日に発足、「現政権は自民党野田派」だと非難し3党合意の修正を迫っています。野田政権は小沢新党が分離しても、きわどい議席差で衆院の過半数を維持、少数与党に転落することは辛くも免れました。だが、小沢新党と小沢陣営の一翼である「新党きづな」の9人と「新党大地・真民主」の3人が共同で内閣不信任案を提出し、離党予備軍の鳩山系から15人が造反して賛成に回れば、不信任案は可決されます。

七夕に「お叱り受ける」と輿石氏
 民主党の旗は日の丸を縦に2つ重ねた図柄ですが、今にして思えば、重なる部分がいかにも不安定で、将来の分裂を暗示していました。同党が分裂したのは、自民党のように政策審議会を経て総務会で決定した政策には重い党議拘束をかけ、違反者は厳重に処分する――との党議決定の手段が欠落している上、党内融和を目指す輿石東幹事長が厳罰処分を否定し、造反を助長したからです。小沢氏は「国民への約束(政権公約)を守らなければならない」ことを理由に離党しましたが、当の輿石氏は7日、名古屋市の同党参院議員の会合で、「今日は七夕です。年1回、舞姫と彦星が天の川で出会う。それに比べ民主党は別れてしまう。『お前は何をやっているのか』と、お叱りが集中しているようにも思える」と照れながら釈明をしました。しかし、小沢氏(岩手4区)と地元が同じの階猛元総務政務官(岩手1区)、辻恵議員(大阪17区)は離党発表後に離党届を取り下げ、沖縄の瑞慶覧長敏議員も新党入りを拒否し無所属で残留するなど、小沢系は乱れました。階、辻両氏は弁護士で「陸山会事件」の公判対策を手がけた、かつての側近。黄川田徹議員(岩手3区)も離党を拒み、「小沢王国」の金城湯池だった岩手県の選挙基盤にも亀裂が走っています。

オリーブの木まね政党連携目指す
 前号でも述べたように、小沢氏の神通力は失せた上、新党立ち上げは「1人1億円」が相場。政党交付金は來年春まで貰えず、会派に届く立法事務費だけで党の運営はできません。最近母親から18億円の株贈与を受け、約24億円の預金を持つ盟友の鳩山元首相から融資を受けるとの噂がもっぱらです。民主党の支持母体・連合の古賀伸明会長は小沢氏らの集団離党に不快感を示し、「(新党に)参加しない人と参加した人とでは、(協力)関係は異なる可能性はある」 と小沢新党への支援を見送る意向を明らかにしました。小沢氏は「消費増税反対、原発再稼動反対」を唱える橋下徹大阪市長に接近して、「中央集権から地域主権へ」のエールを送り、「大阪維新の会」など地域政党とイタリアの中道左派連合の「オリーブの木」のような政党連携を目指していますが、橋下氏は小沢新党とは距離を置こうとし、第3極新党を画策する石原慎太郎都知事は小沢氏を嫌い、小沢新党については「ざまー見ろ。ガラガラポンだ」と述べて政界再編を歓迎。小沢氏の連携工作は絶望的です。

小沢「有言不実行」に国民期待薄
 小沢氏の政策にはブレがあります。「消費増税はしないとの約束は堅持すべきだ。公約違反は許せない」が小沢新党の旗印ですが、細川政権当時、7%の国民福祉税を真っ先に唱えたのが新生党代表幹事の小沢氏。鳩山政権当時はガソリン税特例措置を廃止して国民に還元しガソリン代を値下げすると公約しながら、予算編成時に見送るよう横槍を入れたのも小沢幹事長。今回は3党合意を「野合・談合だ」と批判しましたが、民主党代表当時は福田康夫首相と「大連立で合意」し、全党の反対に遭って挫折しています。「これですっきりした」(藤井裕久税調会長)、「国民生活第1は理念であって政策ではない」(仙谷由人政調会長代理)など党幹部は離党大歓迎です。各紙の世論調査では「有言不実行」の小沢氏に不信感を示し8割が小沢新党に期待しないと答えています。これには小沢新党の代表代行に就任した山岡賢次元前国家公安委員長が、民放テレビなどで、「8割が反対でも16%が賛成なら、自民、民主と同程度の支持率があるということだ」と強気で反論しています。

自助・公助は自公に助け求める意
 学者はどう見ているか。川人貞史東大教授は3日の読売紙上で、「小沢グループは党内で主導権を握るチャンスを失い.『死に体』になった。支持基盤の弱い議員たちも党内に残れば落選する。離党以外に生き残る選択肢はなかった」と指摘。「党内対立は衆院選のマニフェストをどこまで守るかにあったが、政権公約は金科玉条ではなく、公約修正の合意が得られればやってもいい」と小沢氏を批判、「分裂を招いたのは党綱領がなく、(思想信条や政策路線が)バラバラだったことも要因だ」と解説。「野田政権は自公両党への依存度を高めることになろう」と予測しています。自民党の茂木敏充政調会長は「わが党の目指す社会保障改革は自助・公助・共助だが、民主党のそれは自民、公明両党に助けを求めることだ」と痛烈に皮肉りました。御厨貴東大名誉教授も同日の読売紙面で、「離党劇は小沢氏にとって、この20年の総決算と言え、局地戦での勝利だ。ただ、今までと違って展望がなく、小沢新党の賞味期限は案外早いだろう」と冒頭に述べ、「小沢氏はこれまで自分の政治状況が作れなくなるとそこから飛び出し、それなりに大義名分があったが、今回は明らかに政局しか考えていない」と断じ、「小沢氏を軸とした政界再編はない」と予言しています。

慌てて会見場のスローガン外す
 さて、参院は6日の本会議で消費増税関連法案を審議する社会保障・税一体化特別委員会の設置を自公民3党の賛成で議決。委員長に民主党の高橋千秋広報委員長を互選し、関連8法案は11日と13日の本会議で趣旨説明と質疑が行われました。小沢系の造反・離党により、衆院の原口一博総務、小林興起法務、東祥三安保、村井宗明災害対策特別の4委員長が辞任。後任に武正公一元外務副大臣、鉢呂吉雄前経産相、笹木竜三前文科副大臣、馬淵澄夫元国交相がそれぞれ選出され、中津川博郷拉致問題、青木愛消費者問題の両特別委員長も交代。本会議場の座席も変更されるなど、院の構成が大幅に変わりました。それに、衆院で9、12日、参院で10日に予算委集中審議が行われ、増税の実質審議は18日以降に持ち越されました。離党した小沢グループは11日の結党大会で「増税大魔王から政権奪還。国民生活第一。ガンバロ−」と拳を突き上げ叫びましたが、皮肉にも民主党の政策理念をそのまま新党名にしたため、民主党執行部は慌てて会見場のボードに掲げていた「国民生活第一」のスローガン取り外しにかかり、12日に両院議員総会、13日に全国幹事長会議を開くなど結束固めに躍起。もはや民主党は断末魔(御厨氏)の呻きです。

原発・ヘリ・北方領土など難題続出
 関電の大飯原発3号機が1年3ヶ月ぶりに起動したのは1日、5日には国会の東電原発事故調査委(黒川清委員長)が、@自然災害ではなく規制当局や東電の安全対策の意図的な先送りが招いた「人災」だA東電と規制当局の関係が逆転し、原子力安全の監督機能が崩壊B首相官邸の直接指示で東電の現場が混乱――など政府には厳しい7項目の報告書を衆参両議長に提出。大飯起動後の首相官邸は60年安保以来のデモに包まれました。全国では10万人が参加したといいますが、組織的なデモと違って、子どもの健康を案ずる主婦の参加が目立ちました。他にも米国がモロッコとフロリダで今年、墜落事故を起こした米海兵隊のオスプレイ(垂直離着陸ヘリ)を山口県岩国基地で訓練するため1日に海上搬送を開始、10月に沖縄普天間基地への配備を決めたことで沖縄、山口は反対運動で騒然。メドベージェフ露首相が3日、国後島を再訪して北方領土交渉をけん制。おまけに野田首相が7日、人気取りに尖閣の3島を国が購入すると発表したことに中国、台湾が抗議。中国の漁業監視船3隻が11日、尖閣周辺海域で領海を侵犯しましたが、海上保安庁の退去要求に対し、中国側は「正当な公務執行だ。妨害するな。直ちに中国領海から離れよ」と逆に開き直り、「中国固有の領土」と主張しました。このように、消費増税以外にも外交・安保の新たな課題が続出。9日から3日間の衆参予算委員会の質疑は野党の攻勢が白熱化しました。

報道は10月話し合い解散予測
 野田首相を解散に追い込むことが最大の総裁再選戦略とする谷垣禎一自民党総裁は7日、那覇市の党会合で、鳩山氏らが3党合意の修正を画策しているのに対し、「3党合意の基礎にある信頼関係を壊すことが起きれば、我々も色々考えなければならない」と述べ、内閣不信任決議案(衆院)や首相問責決議案(参院)の提出を検討している考えを明らかにしました。谷垣氏は9日、衆院予算委のトップバッターに立ち、「後ろから鉄砲を撃たれたように見える」と鳩山氏らの動きを、首相のガバナビリティ不足と厳しく追及、後続の議員も原発再稼動やオスプレイなど事故防止、外交・安保問題で徹底追及。小沢新党も「反増税・反原発」で初めて野党質問を展開しました。マスコミは3党合意を「擬似大連立」などと冷やかしましたが、自民党は政策のパーシャル(部分)連合は組んだものの特例公債法案など他の法案では対決姿勢を強めています。特に小沢新党や鳩山系が修正論議で審議を妨害する場合は、会期末に首相問責決議案を提出・可決し、参院審議をストップさせる考えです。マスコミは、9月の民主党代表選、自民党総裁選は若干延期し、10月に「話し合い解散」があると予測、選挙取材態勢に入りました。見苦しい権力闘争で日に日に求心力が薄れる首相ですが、自公両党にもたれかかりつつ、最後の力を振り絞って、続投する構えです。