第279回(7月1日)解散は政界再編序曲 造反で民主は分裂
 野田首相が政治生命を懸ける消費増税関連法案は6月26日に衆院を通過しましたが、小沢グループを中心に57人が反対し民主党は分裂状態。小沢一郎元代表が新党結成の動きを強めました。政府与党は同法案や重要法案の成立を期して、会期を9月8日まで79日間も大幅延長、輿石東幹事長は党内融和を最優先して造反者の処分は先送りし首相の衆院解散権も封じようと苦慮しています。しかし、自民党は昨年、菅前政権を退陣に追い込んだと同様、今年も予算執行に必要な「特例公債法案」を解散カードに使う戦略です。ねじれ状態の参院審議は難航し野党が内閣不信任案を提出すれば、小沢グループも倒閣に加担する気配が濃厚。自民党の谷垣禎一総裁は法案協力の前提に“ケジメ”をつけるよう「解散の確約」を迫りましたが、優柔不断のドジョウ首相が果たして「伝家の宝刀」を抜けるのか。「決める政治ができない」野田政権に国民の不満は鬱積、既成政党への不信が高まっています。衆院解散―総選挙となれば、民主党の分裂選挙、第3極新党を目指す「大阪維新の会」の国政進出など政界再編の動きが絡み、政局はまさに灼熱地獄。政権崩壊、政界再編の序曲となります。私は政治の信頼回復に粉骨砕身しています。どうかご支援下さい。

重要法案成立せず政権立ち往生
 「党代表選後に『ノーサイドにしよう』と言った思いは変わらない。皆で心と力を合わせて、様々な困難に立ち向かう政党でありたい。党を割るなんて毛頭考えていない」――首相は6月20日の民主党両院議員懇談会で、消費税率引き上げを柱とする社会保障・税一体化関連法案の衆院採決に向けて協力を訴えました。79日間の会期延長は関連法案の成立を確実にするためと、9月の民主党代表選、自民党総裁選に重ならない範囲で大幅に延長したものです。しかし、26日の同法案採決では小沢氏、鳩山元首相を含む57人が反対、16人が欠席・棄権し造反。自民党の中川秀直元幹事長も欠席しました。与党の勢力は国民新党を加え292人。民主党から54人以上が離党すると少数与党に転落し、予算案はもとより内閣不信任案を単独で否決出来なくなります。小沢グループの造反は49人ですが、既に43人が離党同意書を小沢氏に提出済みといいます。新党を結成し新党きづなと連携、内閣不信任案か問責決議案を提出すれば、倒閣を目指す自公両党も同調せざるを得ず消費増税関連法案の成立すら危ぶまれます。小選挙区の「0増5減」と比例代表連用制を一部導入する衆院選挙制度改革の「公職選挙法改正案」、予算に必要な赤字国債を発行する「特例公債法案」、国家公務員に労働基本権を一部付与する「国家公務員制度改革関連法案」、効率的な社会保障サービスや徴税のため国民に番号を割り振る「共通番号制度関連法案(マイナンバー法案)」など重要法案も全てストップ、野田政権は立ち往生します。

特例公債法案は強い解散カード
特例公債法案の成立が8月以降に遅れると予算執行に支障をきたします。菅前首相は昨年、同法の成立と引き換えに退陣しており、自民党の町村信孝元官房長官は「特例公債法案への賛成は、成立と引き換えに首相を解散に追い込むカードに使える」と、解散の駆け引き材料に使う意向を示しました。民主党の輿石幹事長は18日の衆院選挙制度改革を巡る与野党の幹事長・書記局長会談が決裂したため、同党単独で公職選挙法改正案を提出しました。法案は@1票の格差是正のため小選挙区を5県で1減らす「0増5減」の実施A定数を45削減(小選挙区5、比例40)し、435議席にB比例定数140のうち、35議席で小選挙区比例代表連用制を導入C比例選の全国11ブロックを廃止して全国比例に――という内容。小選挙区の区割りは衆院選挙区画定審議会(区割り審)が法案施行後6ヶ月以内に首相に勧告することなどを盛り込み、解散を遅らせて時間を稼ぎ「来年夏の衆参同時選挙」を目指す、輿石氏の魂胆が見え見えです。公明党は中小政党に有利な連用制を主張してきた経緯から、「一定の評価が出来る」(斉藤鉄夫幹事長代行)と部分的に評価していますが、自民党の石原伸晃幹事長は「一方(一体改革の修正)でお願いしておいて、片側で頬をたたくやり方には憤りを覚える」と述べ、民主党案が全国比例重視の参院選挙制度に似通った点を批判。輿石氏らが画策する「自公分断−民公連携」の狙いを封じるため、自民単独で「0増5減」先行の法案提出を予定、みんなの党も支持しています。

自民案丸呑みの3党修正合意
 「国家公務員制度改革関連法案」は人員削減など民主党が「身を切る改革」などと称しながら、国家公務員に労働基本権を一部付与するもので、自民党は「支援組織の自治労など労組の影響力が強まる」として強く反対しています。26日に衆院を通過した「社会保障・税一体化改革法案」は消費増税関連と年金・子育て関連の7法案を自・公・民3党が修正・合意、さらに、自民党の対案を大幅に修正した「社会保障制度改革推進法案」を3党共同提案したものです。「社会保障・税一体化法案」は、増税時に「経済成長等に向けた施策を検討する」と明記し、景気対策を実施する方針を示し、具体的には成長戦略や事前防災・減災に役立つ分野に資金を重点的に配分するとしています。また生活必需品の税率を低く抑える「軽減税率」導入の条項も設けました。新たに作った「社会保障制度改革推進法案」では、生活保護制度の見直しを掲げ、不正に保護を受けている世帯や理由もなく就労しない事例には厳格に対処する方針を示しました。自民党原案にあった「社保制度改革国民会議」は@内閣に設置し首相任命の20委員以内で構成A委員は国会議員が就くことを妨げないB設置は施行日から1年限り――とするなどほぼ原案を丸呑み。野田政権が閣議決定した「最低保障年金制度の創設、現行後期高齢者医療制度の廃止」などは棚上げし、新設の「国民会議」で協議することになりました。他野党は「密室談合だ」と批判しています。

談合・野合の大増税と小沢氏批判
 「無原則に大増税を強行するなら談合,野合と見られて、国民の理解は得られない。一体改革ではなく純粋な大増税だ。増税前に国民との約束を実行すべきだ」――小沢元代表は6月初旬の共同通信のインタビューで、自民党との連携に踏み出した野田首相についてこう強調。増税の前提として@中央政権から地域主権への転換A社会保障改革B経済再生――の3条件を挙げました。3党が修正合意した後の19日、民主党本部で開いた政策調査会合同会議で、小沢グループは「国民と契約(衆院選マニフェスト)したことから後退している」と4時間半にわたり抗議、前原誠司政調会長が一任を取り付けると会場は怒号が飛び交い紛糾。20日の両院議員懇談会でも首相の説得に反対派は激しく異論を唱え、衆院裁決は首相が目指した21日から22日、さらに26日へ延期されました。小沢氏は21日に輿石氏と会談し、衆院の採決では反対票を投じると宣言、記者団には「『国民の生活が第一』の約束を守り、実行する選択肢はいくつかある。採決後に最善の道を選びたい」と離党・新党結成も検討していることを明言。造反後は「総選挙もかなり近いと予想される。近いうちに決断しなければならない」と語りグループの結束を固めました。新党を結成すれば総選挙で「増税・原発再稼動反対」を旗印に同じ消費増税反対の橋下徹大阪市長の「大阪維新の会」など地域政党と提携し、政界再編の中枢にのし上がろうとしています。

「小沢氏の個利個略」と菅氏批判
 「壊し屋」と呼ばれる小沢氏は、竹下派分裂後に野党提出の宮沢内閣不信任決議案に賛成票を投じ、羽田孜氏(元首相)らとともに自民党を離党して1993年6月に「新生党」を結成、7月の衆院選後に7党1会派の細川護煕政権を擁立。2番目は94年12月に新生、日本新、公明、民社各党などが合流した「新進党」を作り、97年12月の党首選で再選された直後に解党。3番目は新党「自由党」を結成、翌99年に自民党(小渕政権)と連立。2000年4月に連立を解消し、03年9月に民主党との「民・由」合併に踏み切りました。合併後は鳩山元首相、菅前首相とトロイカ体制を組み、09年の衆院選勝利で政権を奪取しましたが、政治団体「陸山会」の政治資金規正法違反に問われて以来、盟友関係の鳩山氏とは政治行動を共にしていますが菅氏とは不仲。菅氏は23日のブログで、小沢氏の新党結成の動きを「小沢氏の個利個略」と決め付け、小沢グループ議員には「小沢個人の駒として使われている。呪縛から離れて行動してほしい」と呼びかけています。

放射能怖くて逃げたと夫人告白
 小沢グループは衆院約80人、参院約30人で計110人。党内では最大勢力ですが、当選回数が少ない議員が多く、「北辰会」所属の45人は09年総選挙で初当選した小沢チルドレンたち。このうち約15人は比例単独選出で選挙基盤は不安定です。小沢氏は先の選挙戦当時、選挙担当の代表代行として陣頭指揮、資金面でも自らの「陸山会」から候補予定者91人に計4億4900万円を配分するなど全面支援、選挙活動も指導しました。しかし、新党結成には「1人1億円」が相場で、離党では政党交付金が翌年まで貰えず、台所は厳しい状態。おまけに、民主党が小泉政権同様、離党者の穴埋めに「刺客」を送り込むことは必定で、カリスマ性の薄れた小沢氏を頼っても、再選できる保証はありません。そうした最中、小沢氏夫人が昨年、支援者に宛てた手紙の中で、「未曾有の大震災にあって本来政治家が真っ先に立ち上がらなければならない筈ですが、実は、小沢は放射能が怖くて、秘書と一緒に逃げ出しました。一番苦しい時に見捨てて逃げ出した小沢を見て、岩手や日本のためになる人間ではないとわかり、離婚いたししました」と延々11枚にわたり告白したことが明るみに出、民主党内に波紋を広げました。野田首相周辺が「これでは輿石幹事長もかばいきれないだろう」と述べているのに対し、新党結成に向かう小沢グループは「事実無根。手紙を使った執行部側の切り崩し工作ではないか」と怒っています。

夏に話し合い解散か、自爆解散
消費増税法案は民主党が一枚岩なら何とか成立する見通しでしたが、このように党内では「骨肉の争い」が勃発、分裂状態では参院審議が難航。ましてや、自公両党の協力が得られていない他の法案は全く見通しが立っていません。衆院採決後の民主党三役会議は造反の処分を首相と輿石幹事長に一任しましたが、首相は「党内ルールに則り厳正に対応したい」と述べるだけで処分内容には触れずじまい。党の分裂回避を最優先する輿石幹事長は、過去の処分では法案に対する造反で処分した事例がないことから、「除籍よりは軽い処分とし、増税法案の参院採決が終わるまで処分を先送りする」考えのようです。処分が離党勧告や党員資格停止なら9月代表選に参加できなくなり、首相にとって有利です。   しかし、29日の2度にわたる輿石・小沢会談で、小沢氏は「参議院でも強行採決で通すなら、党の枠を超えて直接国民に訴えていく」と述べ、衆議院の民主党会派を離脱するか、離党する考えを示して物別れ。 7月初旬の再会談に結論を持ち越しました。 谷垣総裁は「民主党は求心力、団結力を失い、政権担当能力がない」と批判、「誰が同志か敵か、(造反の)ケジメをつけないと参院審議に応じられない」と“小沢切り”を強く求め、「何一つ決められない政治」の現状を慨嘆していますが、野田首相は谷垣氏との党首会談による「話し合い解散」か、止むにやまれず8月にも「自爆解散」に追い込まれるか、予断を許しません。梅雨空の西日本は鉄砲水に襲われました。政界も夏の豪雨に見舞われそうです。