第274回(4月16日)メイストーム襲う 党首会談を打診
 日本列島は4月上旬、「超大型台風」並みの暴風雨に襲われ、交通は麻痺し36都府県で死者3人を含む340人の死傷者が出ました。4〜5月にかけて列島を襲う低気圧をメイ・ストーム(五月の嵐)と呼びます。ストームは激しさを加え、政界でも荒れ狂っています。政府は3月30日、消費増税関連法案を国会に提出しましたが、小沢一郎元民主党代表グループの政務三役ら4人が法案の閣議決定に反発して辞表を提出、29人が党の役職を辞任、1人が離党。国民新党も亀井静香代表が連立解消を宣言して離党、同党は分裂するなど政府与党は「溶解」寸前です。消費増税に政治生命を懸ける野田首相や岡田克也副総理は法案の早期成立を目指し4月中の審議入りを望んでいますが、輿石東幹事長ら執行部内には「これ以上対立が激化しては」と慎重論が多く早くも継続審議とし臨時国会に先送りする構えを見せています。自民党は@小沢切りA衆院解散時期の明確化B輿石氏による党内取りまとめ――を3条件に消費増税法案への協力姿勢を示すなど駆け引きが活発化しています。視界不良で混迷を深める政局ですが倍旧のご支援、ご叱責をお願い申し上げます。

増税法案の審議入りで党内対立
 「提出をした以上は、今国会中に政府与党一体となって全力で成立を期す。決断の政治、ぶれない政治、微動だにしない政治、逃げない政治、先送りしない政治だ」――首相は3月30日の記者会見で、消費増税法案の早期成立への決意を強調、「大局に立つなら、野党と政策のスクラムを組むことは十分可能」と語り、野党に改めて協力を呼びかけました。首相周辺は、「逆進性」の強い消費税率引き上げには、低所得者対策の制度設計や、税と社会保険料の徴収を一体的に扱う「歳入庁」のあり方など検討課題をこなすのに3週間近くも掛かるとし、大型連休前の4月下旬に審議入りを検討しています。岡田副総理はNHK番組で「5月なんて考えているわけではない」と早期の審議入りを表明。しかし、党執行部は衆院の採決時期が早まれば、首相と小沢グループの対立抗争が一層深まり、収拾困難になるため慎重。輿石幹事長は郵政民営化法改正案や同党最大の支持母体・連合が強く要望する労働基本権付与の国家公務員制度改革関連法案の処理などを挙げ、「先に出たものを先行するのがものの順序だ」と言明、消費増税法案は連休明けの5月中旬以降でもいいとの考えです。逆に公明党の山口那津男代表は民放番組で「4月中にも審議に入る努力をすべきだ」と述べ、同法案を精力的に審議して否決し早期解散へ追い込む姿勢を強めました。

重要法案山積、委員会も未決定
 12年度予算は5日夕に成立し後半国会に入りました。前号で述べた通り予算と切り離した特例公債法案、「交付国債」発行と低所得者の基礎年金に加算措置の国民年金法改正案、衆院の「1票の格差」是正などの公職選挙法改正案、共済・厚生両年金統合の被用者年金一元化法案、後期高齢者医療制度廃止法案など重要法案が山積。これら法案の審議順番も、肝心の消費増税関連法案を審議する委員会も定まっていません。村山内閣当時の1994年に5%への消費税率引き上げ法案を審議した際は、特別委員会を設置し衆院だけで約36時間も掛けましたが、特別委を設置すれば国民年金法改正案など社会保障関連法案も一体で審議される可能性が強まり、衆院通過には1ヶ月前後が必要となり、会期延長は必至な情勢です。このため、政府与党内には折角、特別委を設置しても社会保障の審議が優先されるとし、税制と社会保障は既存の常任委員会で審議した方がいいとの意見があります。

政務三役4人が辞任、1人離党
 「今これほどの大増税をやるべき時なのか。国民に負担を頂く前にやるべきことがある」――。小沢元代表は野田政権が消費増税関連法案を国会に提出した翌日、宮崎市の会合でこう批判しました。小沢氏は読売のインタビューで、@大改革なくして増税なしA社会保障の充実なくして増税なしB経済の再生なくして増税なし――と唱え、「民主党政権に対する厳しい国民の意識を謙虚に受け止めないと民主党はなくなってしまう」と危機感を訴えました。同時に元代表に近い黄川田徹総務,牧義夫厚生労働、森裕子文部科学の3副大臣と主浜了総務政務官が辞表を提出。小沢グループ幹部の鈴木克昌幹事長代理、樋高剛総括副幹事長や広報副委員長ら29人が党役職を辞任、1人が離党しました。岡田副総理は仙台市の講演で、「小沢氏は反対と言うが、究極の反対ではない。(細川政権が掲げた)国民福祉税7%など、もっと上げると言ってきた」と述べ、反対派との接点を探る考えを示し、党執行部も政務三役の辞任を認めず慰留しましたが、自公両党が「閣内不統一だ。辞任を認めない限り法案審議に応じない」と主張したため黄川田氏ら4人の辞任を了承しました。

解任は無効、クーデターと亀井氏
 そこへ降ってわいたのが国民新党(所属議員8人)のお家騒動。亀井静香代表が消費増税法案の閣議決定を不満として連立解消を宣言したのに対し、自見金融相が閣議で法案に署名。連立維持派の下地幹事長ら6人は5日夜、議員総会を開き、亀井代表と亀井亜紀子政調会長を欠席のまま解任しました。自公民3党共同提案の郵政民営化法改正案の趣旨説明が6日に迫る中、自民党が「連立詐欺政権は相手にできない」(山本一太前参院政調会長)として審議拒否の姿勢を見せたため、同改正案の成立を確実にしようと、「役員は所属する国会議員の総会において選出する」とした党規約5条に基づき、議員総会で異例の解任決議に踏み切ったものです。郵政改革は同党の「1丁目、1番地」の政策。それを3党だけの協議で改正案を提出したことが亀井氏にとっては面白くないし、「消費増税反対」は先の政権交代で民主、社民、国民新の3党が連立した際の合意文書にもあり、譲れない一線でした。「代表の決定に従うのは当然で、解任は無効だ」(亀井代表)、「6人の会議は有志議員懇談会で、代表が招集したものでない。クーデターだ」(亜紀子政調会長)とカンカン。

自見代表が4項目で連立合意
連立維持派は6日、「代表に自見庄三郎、副代表に松下忠洋、代表代行兼幹事長に下地幹郎、政調会長に浜田和幸」各氏らの新役員人事を総務省に届け出て受理され、直後に野田首相は自見代表と会談し、@東日本大震災からの復興A日本経済再生B社会保障改革C郵政法案の成立――など4項目の連立合意文書に署名しました。亀井前代表と亀井亜紀子前政調会長は直ちに離党し、泥沼化した抗争は決着しました。亀井氏は「(見ていろ)永田町の景色は変わるぞ」と記者団に語り、石原慎太郎都知事らとの「第3極」新党構想に活路を開こうとしており、同日夜には石原氏や、たちあがれ日本の平沼赳夫代表、園田博之  幹事長と都内で会談しました。だが、手勢を失った亀井氏の存在感が薄れたと見てか、石原氏は同日、都庁での記者会見で、「仲間に追い出されて、自業自得じゃないかな。私は国民新党と何の関わりもない」と突き放しました。一方、民主党内では外交顧問の鳩山元首相が6〜8日にイランを訪問し、アフマディネジャド大統領と核開発問題で意見交換しことが波紋を描いています。日本は欧米諸国と協議してイランに制裁圧力を強めていた矢先。政府は不用意発言をしないよう、イラン訪問の中止を要請していました。首相は5日の参院予算委で「国際社会がどう対応するか微妙なタイミングだ。わが国の国際協調の立場と整合的でなければならない」と懸念を表明、外務省も「首相経験者が軽率な言動をすれば日本外交に悪影響を及ぼす」と心配していました。

政府与党はメルトダウン状態
ところが案の定、イラン大統領府は「鳩山氏が会談で、国際原子力機関(IAEA)がイランなど特定国に二重基準的な対応を取っているのは不公平だと述べ(IAEAを批判し)た」と発表。鳩山氏は帰国後、「完全に捏造で、大変遺憾だ」と訂正を申し入れる考えを記者団に示しましたが後の祭り。鳩山氏は普天間飛行場移設問題で「最低でも県外」とか抑止力に関する自分の発言を「あれは方便でした」と言い放ち、度重なる迷走発言で外交を危うくした人物。「個人の立場の議員外交」と強弁しても、安倍晋三元首相が言うように「イランの思惑にまんまと乗せられた」ことに間違いないでしょう。このように同党内は「二元外交」の元首相や、小沢元代表グループのように分裂を辞さぬ構えの増税反対強硬派、小沢鋭仁元環境相・馬渕澄夫元国交相らの景気弾力条項を守る条件闘争派、前原誠司政調会長らの増税推進派が入り乱れて、政府与党全体が東電福島原発事故のようなメルトダウン(溶融)状態に陥っています。このため、首相は野党が求めた消費増税法案の閣議決定などの手続きを踏んだことを強調し、党首会談の開催を要求。不退転の決意を示す消費増税法案や特例公債法案など重要4法案について今国会での成立に向けた協力を要請する方針でした。会談では自公両党が「国債発行額を過小に見せる粉飾だ」と反対する年金交付国債の発行を撤回し、穴埋めにつなぎ国債の追加発行を認める補正予算案を編成する妥協策も用意していました。しかし、自公両党は対決ムード緩和の宣伝材料に使われるのを警戒して談合的な会談を拒否。11日の党首討論は逆に対決ムードを盛り上げました。

石原氏が増税賛成の3条件提示
自民党内でも協力論や増税反対への慎重論が出てきました。石原伸晃幹事長は1日、奈良市での講演で、消費増税法案に賛成する条件として、@首相が法案反対の小沢元代表らと決別するA解散時期を明確にするB輿石幹事長が党内を取りまとめる――を約束するよう求めました。石破茂前政調会長も2日のTBS番組で「私の考えと全く一緒だ」と石原氏提言の3条件に賛意を表明、安倍元首相は同日のBS朝日番組で「話し合い解散しか解散に持ち込む道はない」と述べ、石原発言に同調する姿勢を示しました。党内では協力条件として「1票の格差是正」で衆院小選挙区の「0増5減」達成と、民主党がマニフェストに掲げた最低保障年金創設の撤廃などを求めています。谷垣氏の基本戦略は「野田政権を早期解散に追い込み、9月総裁選で再選を果たす」の解散一辺倒ですが、自民党内では2月の谷垣氏と首相の「極秘会談」は談合だったと若手が反発し、「ポスト谷垣」を目指す動きが活発化しています。マスコミは上記の石原、石破、安倍氏に加え、町村信孝元官房長官、林芳正元防衛相(参院)を総裁候補に挙げ、5氏の言動と側近の動静を注視しています。

自民が7項目の総選挙公約決定
自民党は8日、被災地仙台で全国政調会長会議を開き、迫る総選挙の公約原案を発表しました。公約は先の参院選同様、「当面10%」の消費増税と財政再建に取り組む姿勢を明記し、@日本の再出発=憲法改正で自衛権を明記し自衛隊を自衛軍と位置づけ、改正発議要件を衆参の過半数に緩和A復興の加速・事前防災=減災の戦略的な国家機能など集中・分散化B将来への投資=政府日銀の物価目標2%協定でデフレ・円高脱却、法人税の大胆な引き下げC自助を共助・公助が補う社会作り=現行年金制度の基本堅持と低年金対策、バラマキを排した少子化対策D地方の重視・地域の再生=経済活性化と雇用増に2兆円の交付金創設、地方公務員を含む総人件費2割削減E自立した日本・多面的安全保障=集団的自衛権行使が可能な安全保障基本法制定、主権と領土を守る国内法整備F政治・行政改革=政府に「行政改革推進会議」を設置――の7項目です。今後の参院では、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射の推移を見ながら、問題発言の多い田中直紀防衛相の問責決議案を自公両党で提出する構えで、その雲行き次第ではますます解散風が強まると予想されます。