第273回(4月1日)消費増税法案を提出 国会さらに緊迫
 消費増税の関連法案がようやく国会に提出されたことで、国会は4月から中盤の与野党攻防に入りました。2月末の自民、民主両党主の「極秘会談」で話し合い解散が加速した政局は、3月初旬の岡田克也副総理が打診したとされる「自・民大連立」構想で緊迫の度を高めました。同構想には「小沢切り」の狙いがあり、消費増税攻防の駆け引きに利用された一面があります。民主党内の反対派は、付則の修正で関連法案の閣議決定に応じたものの、衆院本会議での採決で造反する選択肢を捨てていません。26日に小沢一郎元代表の政治資金規正法違反の裁判で無罪判決が出れば、小沢グループは小沢復権を目指し巻き返しに転じる構えで、これが衆院解散の時期に微妙に絡んできます。自民党内も「極秘会談」への反発から9月の総裁選に向けて「ポスト谷垣」の動きが活発化しています。北朝鮮が12から16日の間に事実上の弾道ミサイルである地球観測衛星の打ち上げ実験を予告し、政府はPAC3部隊を沖縄に配備し迎撃態勢を固めていますが、不測の事態が起きれば増税など内政の課題は吹っ飛びます。さらなるご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

所得制限設け「児童手当」復活
 政府・民主党が目玉政策「子ども手当」の看板を取り下げたため、自公民3党は3月15日の政調会長会談で2012年度から導入される新制度の名称を「児童手当」とし、高所得世帯には6月から所得制限を課し、1人当たり月5千円を当分の間支給することで合意。児童手当法改正案は年度内に成立しました。民主党は昨年8月、予算のばら撒き是正を求める自公両党の主張に沿って、一律支給の子ども手当てを廃止、所得制限の導入を受け入れましたが、マニフェストに掲げた看板にこだわった政府与党は「子どものための手当て」という呼称を用いた法案を提出し、こども手当てが存続するかの印象を与えていました。これに自公両党は態度を硬化させ、新手当ては一律支給ではなく、子の年齢や人数、親の所得で支給額に差をつけるよう主張してきました。合意した新児童手当は@三歳未満と第3子以降に1万5千円A三歳から小学生の第1子と第2子は月1万円B中学生は一律1万円C所得制限は夫婦と子ども2人のモデル世帯で親の年収が960万円以上――です。ただし、所得制限は無支給でなく、当分の間、子ども1人当たり月5千円を支給します。決着により半年間の特別措置だった子ども手当は児童手当が復活し、恒久制度になります。

分離した特例公債法案は人質
 改正児童手当法の成立で野田政権は1つの関門をクリアしましたが、12年度予算の年度内成立は難しく、遅れる6日間でおよそ約3兆円の暫定予算案を30日に成立させませした。赤字国債を発行するための特例公債法案、原子力規制関連法案など重要法案の見通しも立っていません。特例公債法案を予算案と切り離したのは、野田首相が命運を懸ける消費増税関連法案の審議に支障をきたし、自公両党が賛成する租税特別措置法改正案、地方税法改正案など予算関連法案の早期成立にも影響すると懸念して分離しました。だが、昨年の通常国会では自公両党が特例公債法案に反対した結果、当時の菅首相は09年総選挙のマニフェストの主要公約見直しを余儀なくされ、8月末に同法案が成立したのと引き換えに退陣しました。野党にとって約38兆円の財源確保につながる同法案の成否は、政権を揺さぶる「人質」になるものです。
基礎年金の財源に充てる年金交付国債の扱いも難航中。交付国債は基礎年金の国庫負担5割を維持するために不足分約2・6兆円を賄うもので、民主党政権はこれまで特別会計などで余った「埋蔵金」を充ててきましたが、埋蔵金による一時しのぎは限界に達し赤字国債発行を前年度同様の44兆円内に抑える必要性から苦肉の策として編み出されました。

交付国債は過少に見せる粉飾
交付国債は赤字国債に含まれないことから、公明党の山口那津男代表が2月末の記者会見で、「国債発行額を過小に見せかける粉飾だ」と批判するなど自公両党は猛反発。小沢グループの若手議員も「交付国債は消費増税が前提なので反対だ」「将来にツケを回す点では赤字国債と同じでマヤカシだ」と批判しています。このように野党ばかりか政府与党内に異論が起きています。郵政改革の与野党協議は22日、自公両党が歩み寄り、公明党提案の「郵便局と郵便事業の両会社を統合し、現行の5社から4社体制に再編」に加え、「政府出資のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の金融2社株の完全売却方針を見直す」など小泉純一郎元首相が推進した完全民営化路線を転換する内容で合意。郵政民営化法改正案を国会に共同提出しました。同案に民主党も賛成する方向で、今国会で成立する見通しです。自公合意は、焦点だった政府出資の金融2社株の扱いについて「全てを処分することを目指し、両社の経営状況、郵政事業にかかる基本的な役務の確保への影響などを勘案しつつ、できる限り早期に処分する」と明記、2社株の全株処分を「努力規定」としたのが特徴。自民党内の民営化推進派は反発しており、党内亀裂が拡大する可能性があります。法改正で凍結されていた株売却が可能で、公明党は東日本大震災の復興財源に充てたい考えです。

規制庁はサービス停める査定庁
 原子力規制関連法案は年度内に成立しなければ政府が目指す原子力規制庁の4月1日発足がずれ込みます。同庁は環境省の外局と位置づけられていますが、自民党内では公取委のような国家組織法上の「3条委員会」にすべきだとの意見がある上、国会の「東電福島原発事故調査委」が6月末に出す提言を待って法案を審議すべきだとの声も上がっており、審議は停滞しています。阪神大震災の時より大幅に遅れて2月10日に発足した復興庁(平野達男復興相)も動きが鈍く、政府は「何でも一手にこなすワンストップ・サービスの役所」を謳っていますが、参院予算委の質疑では、「サービス・ストップの官庁」だと野党議員に揶揄されています。被災地では、「災害の陳情先が1つ増えただけで、屋上屋を重ねる機構だ」と不満を漏らし、「復興庁ならぬ査定庁」だと村井嘉浩宮城県知事が批判しています。大震災後1年が経過したのに復旧は大幅に遅れ、瓦礫処理を受け入れる自治体は少なく、最終処分は6〜7%しか進んでいません。私は震災直後、十分に除染した瓦礫を津波防止の堤防、漁港整備、気仙沼市内の離島などを繋ぐ埋め立て用に活用すべきだと提言しましたが、三陸の防風林を立てる堤防土台に利用することが決まり、ほっとしています。

小沢G大量動員で消費増税抵抗
 野田政権は30日、首相が不退転の決意を示す消費増税関連法案をようやく閣議決定し、国会へ提出しました。党税調が当初にまとめた関連法案は、@消費税法改正=2014年4月から地方消費税を含む消費税率を8%へ、さらに15年4月から10%に引き上げ、消費税収入は年金、医療費、介護の社会保障給付金と少子化施策に充てるA所得税法改正=課税所得5000万円超は所得税率を45%に引き上げ、15年分以降の所得税に適用B相続税の基礎控除を引き上げて最高税率を50%から55%に引き上げ、15年1月以降に適用C付則=消費税率の引き上げ前に、名目、実質の経済成長率、物価動向など種々の経済指標を確認し経済条項を総合的に勘案、施行の停止を含め所要の措置を講ずる。また税制のさらなる改革をするため,16年度をメドに必要な法制上の措置を講ずる――が骨子でした。しかし、小沢グループが大量動員して抵抗したため、執行部は、経済状況によっては増税を見送るとする「景気弾力条項」(付則18条)に「名目の経済成長率で3%、実質2%程度」と、反対派が要求した経済成長率を明記するなどの最終修正案を提示しました。それでも事前審査は28日午前2時を過ぎてもまとまらず、執行部は合同会議を打ち切り、前原誠司政調会長に対応を一任して決着。法案は年度末ぎりぎりに閣議決定しました。反対派は無効だと反発しています。執行部が3月中決着にこだわったのは、09年度税制改正法の付則で消費増税の関連法案は11年度内に国会提出を定めているからです。

再増税、景気弾力条項など修正
 民主党合同会議での意見集約には14日から100〜140人が出席し、8日間に45時間も討議しました。増税推進派と反対派の攻防は、「再増税」「景気弾力条項」「低所得者対策」「行政改革と議員定数削減」――の4項目に絞られ、主として付則に関し意見が戦われました。小沢一郎元代表や鳩山元首相のグループは「消費増税を争点に総選挙を戦えば、民主党は壊滅する」と消費増税に反対、社会保障・税の一体改革の大綱作りでは@与野党協議A経済の好転B公務員給与の削減C国会議員定数の削減――など「身を切る改革」を先行させる4点を消費増税の前提条件につけました。そこで執行部は、「社会・政治改革」や「増税時の経済状況確認」などの解決策を付則に書き込みましたが、反対派は納得せず紛糾。自公両党が指摘した「再増税」についても時期をぼやかすよう主張しました。反対派は強硬に反対姿勢を示しておけば、法案が提出されたとしても衆院本会議で造反する選択肢が残されると踏んでおり、反対する国民新党の亀井静香代表は連立解消を表明し同党は分裂状態に陥っています。

岡田氏の大連立打診が波紋拡大
 岡田副総理は3月2日、自民党の町村信孝元官房長官、野田毅税制調査会長と国会内で相次ぎ会談、「是非ご理解いただきたい」と消費増税関連法案への協力を要請。これに対し、町村氏は「民主党が掲げる最低保障年金の創設構想には問題がある」として協力は難しいとの考えを伝え、野田氏も「マニフェストの撤回と国民へのお詫びが先だ」と難色を示しました。ところが、自民党関係者が17日、岡田氏が自民党幹部との会談で自民、民主両党の大連立を打診していたことを明らかにしたため、波紋が広がりました。岡田氏は17日、沖縄・那覇市内の記者会見で、「民・自両党が協力して合意を目指す政治が実現しない限り、既存政党は国民からますます見放される」と危機感を訴えたものの、誰に大連立を打診したかについては、「私自身は誰といつ会ったとは言わないことにしている」と煙幕を張りました。しかし、町村、岡田両氏は共に旧通産省出身で岡田氏はかつて町村氏の部下。旧大蔵省出身の野田氏も政策通で、岡田氏が自民党所属時代、年金改革などを一緒に策定した旧知の仲。菅首相退陣前の昨年6月までは、民主党幹事長などを歴任して自民党の大島理森副総裁、石原伸晃幹事長らとも会談を重ねてきました。どうやら、打診の相手は谷垣氏に近い川崎二郎元厚労相と噂されていますが、自民党幹部と深いパイプを持つ岡田氏のこと。自民幹部との会談や電話で大連立の話を切り出しても不思議はありません。

沈船に航海の余裕なしと石原氏
 岡田氏は一連の会談で消費増税関連法案や赤字国債の発行を認める特例公債法案成立への協力を要請、併せて両党幹部による公式協議の場を設けることを提案しました。公式協議はもちろん両党の大連立を視野に入れたものです。これに対し、大島副総裁ら党幹部は両法案の成立前に衆院解散・総選挙を行うよう求め、大連立の打診を断ったと言います。読売は「自民党側の反応は、『ベテラン議員には野田政権の延命に手を貸す必要はない』と慎重論が多く、党幹部の1人は『民主党の目的は、衆院解散の引き延ばしだ』と警戒を隠さない。民主党内では『消費税法案の了承手続きが行われているタイミングを捉えて自民党がリークし、混乱を狙った』との観測がささやかれ、小沢グループ幹部は『我々を離党させるのが狙いだ』と反発。『小沢切り』が目的だけに党分裂回避を行動原理とする輿石東幹事長は大連立に否定的だ」――と報じました。輿石氏は18日、訪問先の沖縄県南風原町で「党内で議論もしていないし、野田首相とも議論していない」と不快感を示し、石原氏も同日、仙台市の講演で、「いつ沈むかわからない船に乗って航海する余裕はない」と大連立論を切り捨て、藤村修官房長官は19日、「政界再編の話であり、(政策連携とは)全然違う次元の話」と否定しました。国民新党の下地幹郎幹事長も「大政党同士の小細工を使うようなやり方は、政局ありきのイメージを与え、大きなマイナスだ」と批判しています。北朝鮮の弾道ミサイル発射実験は別項HPの「北村の政治活動」をお読み下さい。