第272回(3月16日)憶測呼ぶ極秘会談 話し合い解散へ
 谷垣禎一自民党総裁と野田首相が2月25日、都内ホテルで極秘会談したことは政界に衝撃を与えました。両者とも会談を否定していますが、会談では消費増税関連法案の成否と衆院解散・総選挙の時期が焦点となり、「話し合い解散」で合意したと憶測されています。民主党の小沢一郎元代表ら消費増税反対派は倒閣機運を盛り上げ、蚊帳の外に置かれた公明党は焦り、自民党内でも谷垣総裁の独走を批判するなど波紋を広げています。12年度予算案の衆院通過は3月8日に遅れ、年度内成立が難しく、暫定予算案編成が取りざたされています。与野党包囲網に苦吟する首相。党の支持率低迷に苦悩する谷垣総裁。両者は9月に総裁選、代表選を迎えます。「話し合い」で消費増税法案が成立し、谷垣氏が強く迫ってきた解散が実現すれば、小沢グループが大量に造反しても無駄な抵抗で、野田政権は安泰。増税法成立直後の総選挙で、自民党が第1党に復帰すれば谷垣氏の続投も可能です。両者の思惑が一致し局面打開に「話し合い解散」で合意したとしても不思議はありません。自民、民主両党の連携が大連立に発展すれば、一挙に政界再編が進みます。5日のロシア大統領選ではプーチン首相が大統領に返り咲き、北方領土交渉に弾みがつきそうです。米朝協議の結果、6カ国協議も再開の兆しとなりました。世界が大きく動く中で内政、外交の課題が国会審議に押し寄せています。さらなるご支援、ご叱正をお願い申し上げます。

解散抑制し迫力欠けた党首討論
 「会っていません」(首相)、「決して会っていない。自宅にいた」(谷垣総裁)――25日の極秘会談をすっぱ抜かれた両者は懸命に否定しました。確かに各紙の「首相動静」には「同日午後、都内のホテルオークラの日本料理店で藤村修官房長官と昼食、夜は公邸」としか載っていません。だが、昔から大物政治家たちが料亭にセットされた会合を抜け出し、別室で極秘会談を開いていたのは政界の常識。入り口の多いホテルで総理番記者を欺くのは簡単です。まして、消費増税の与野党協議を「密室の談合」と拒否してきた谷垣氏は、口が裂けても「話し合い解散」の密談に応じたとは言えません。29日の党首討論で谷垣氏はなぜか、「消費増税はマニフェスト(政権公約)違反」を理由に攻め続けてきた解散要求を極力抑制、最後にとってつけたように解散を迫り、やや迫力に欠ける討論でした。消費増税についても、首相の質問に答える形で基礎年金の国庫負担財源確保のための消費増税の必要性に言及、自民党が12年度予算案の対案に「将来の償還財源を明確にした上で赤字国債を発行」と明記した点でも、首相が「償還財源は消費税か」と迫ると、谷垣氏は「その通りだ」と呼吸を合わせ、極秘会談を再確認するようなやり取りに終始しました。

「第3極」選挙態勢を整う前解散
 首相も「社会保障・税の一体改革」素案の決定には論議を尽くし100人以上が賛成した点を挙げ、3月中の党内了承手続き、閣議決定の際に反対かあったとしても「51対49で決めたら、しっかり野党と協議する」と述べ、反対派の除名など厳しい処分を辞さない姿勢を示しました。このように党首討論は極秘会談内容のすり合わせと腹の探り合いに終わりました。「話し合い解散」は昨年11月、石原伸晃幹事長が言及し、批判されましたが、自民党は消費税率10%を先の参院選公約に掲げるなど増税の必要性を認めており、話し合い解散なら増税が「争点」になることも避けられ、むしろ国民の不満は野田政権に向かうとの判断があります。森喜朗、安部晋三両元首相らは消費増税法案への賛成と引き換えに総選挙を迫るべきだと「話し合い」に前向きです。橋下徹大阪市長率いる「大阪維新の会」など「第3極」が選挙態勢を整える前に衆院選を戦った方が得策との考えもあり、小沢グループが造反すれば分裂選挙となり、「小沢氏抜き大連立も組める」と歓迎しています。しかし、山本一太前参院政審会長は首相に小沢グループの反対派を抑えて自民と提携できる胆力はないと見て、参院で首相問責決議案などを可決して政権を揺さぶる作戦です。

小沢外し濃厚、公明も寝耳に水
 「2人が会ってもいい結果は出ない。何でこそこそ会うのか。真剣に話題にする必要のない程度のことだ」――。小沢元代表は3日のテレビ東京番組で、極秘会談を静観する姿勢を示しました。だが、政治資金規正法違反事件の4月判決で無罪を勝ち取り、求心力を回復して9月代表選に臨む戦略を描く小沢氏にとっては予想外の会談でした。小沢氏に近い輿石東幹事長が石原自民党幹事長に「極秘会談はあったのか」と事実を確かめたほど。おまけに岡田克也副総理が自民党最大派閥を率いる町村信孝元官房長官と2日に会談し、消費増税関連法案への協力を要請していたことも分かり、野田政権首脳の「小沢氏外し」が濃厚になりました。一方、「寝耳に水」の両党接近に、公明党は1日の常任役員会で情報収集に奔走した幹部らが意見交換するなど疑心暗鬼ムード。07年の福田康夫元首相と小沢元民主党代表が「大連立構想」を練った時でも、事前に大田昭宏代表に連絡があったが、今回は山口那津男代表に谷垣氏から何のサウンドもなかったと、党幹部は憤っています。

解散時期巡り3党間で駆け引き
 話し合い解散が実現すれば、公明党が求める小選挙区比例代表連用制など選挙制度の抜本改革が先送りされます。同党は消費増税の是非を争点とした衆院選は避けたい方針で、山口代表は6日の記者会見で、「政権運営、政策の是非で国民の信を問うべきだ」と話し合い解散に反対しました。谷垣総裁は自公両党内に広がった「密室談合」批判の火消しに大童ですが、話し合い解散の成否は増税関連法案の「成立前か後か」が最大の焦点。谷垣氏が主張した成立前の解散なら、地域政党の国政進出の準備態勢は整わず、公明党が目指す会期末の今夏総選挙が実現し、谷垣氏の続投につながります。逆に成立後の解散だと、民主党は総選挙の前提となる「1票の格差」是正の遅れなどを理由に、選挙制度改革の法制化を優先させるべきだと主張、解散は臨時国会、次期通常国会まで先送りされて消費増税のホトボリを冷まし、来年の衆参同時選挙を狙うことにもなりかねません。こうした中で、衆院議員150人が参加した超党派の「衆院選挙制度の抜本改革を目指す議連」(代表世話人=加藤紘一自民党元幹事長,渡部恒三民主党最高顧問)は先月23日、@次期衆院選で中選挙区制を導入A比例代表制を廃止――などの方針をまとめ、早期法制化の動きを強めました。石原自民党幹事長は4日の地方公演で、「小選挙区制は死票(が多い)問題や、競争が(党内で)起きない問題もあり、議員の質の劣化が問題だ」と指摘、同議連に入会したことを明らかにしたうえ、「中選挙区に戻すべきだ」と強調しました。中選挙区制は公明党も選択肢の1つに挙げていることから、石原発言は同党に配慮したものと見られます。このように自・公・民3党間では解散時期を巡る駆け引きが3月いっぱい続くと見られます。