第269回(2月1日)自公、与野党協議拒否 波乱国会開幕
 1月24日に開幕した通常国会は、野田首相の施政方針演説など政府4演説に対する各党代表質問が26日から30日まで衆参両院で行われ激しい論戦を展開しました。岡田克也前幹事長を副総理兼行政改革相に起用、「2枚看板」で再出発した野田改造内閣は、「消費増税」に政権の命運を懸けていますが、自公両党が消費税論議の与野党協議を拒否する一方、与党内でも小沢一郎元代表が増税反対を公然と主張、マスコミの世論調査も内閣支持率は低迷したままです。苛立つ首相はテレビ番組や民主党大会でも「やるべきことはやり抜いて民意を問う」と解散総選挙を示唆して反対派を牽制、街頭演説を開始するなど増税PRの陣頭に立っています。また、党内や国民の理解を得るため、「1票の格差是正」など衆院選改革関連法案を消費増税前に成立させようとしていますが、公明党はじめ中小政党が強く反発、与野党協議の着地点は見出せていません。まさに野田政権は正念場。12年度予算案が衆院を通過する2月末までに1波乱ありそうです。皆様とはご無沙汰勝ちになりますが元気一杯、国政に励んでいます。一層のご支援、ご教示をお願い申し上げます。

首相、谷垣総裁が対決でゴング
 「日本再生元年となるべき本年。何よりも国政の重要課題を先送りしてきた『決められない政治』から脱却することを目指す」「今こそ政局ではなく、大局を見据えよう」――首相は東京が初冠雪した24日、開幕国会の施政方針演説でこう強調。消費増税を柱とする社会保障・税の一体改革について、消費増税や与野党協議の必要性を説いた福田康夫・麻生太郎両政権の演説を逆手にとって、与野党協議に入るよう壇上から呼びかけ、「直球勝負」(首相周辺)を挑みました。これに対し、自民党の谷垣禎一総裁は、午前の両院議員総会で、「民主党政権は(課題)を乗り越える力をもはや失っている。私も先頭に立って戦う覚悟だ」と政権奪還への決意を表明。これに先立つ22日の党大会でも谷垣総裁は「今年こそ政治決戦の年。一刻も早く『偽りの政権』に終止符を打ち政権の正当性を回復する総選挙を求める」と衆院解散・総選挙に追い込む決意を表明しています。26日の代表質問では「マニフェスト(政権公約)違反は明らか。国民に謝罪し、信を問い直すしかない。一体改革の素案は検討課題の羅列のみだ」と早期解散を迫り、厳しい対決姿勢を示しました。

選挙制度改革で民公連立示唆
 「公務員が(給与削減法案で)8%削減という時に国会議員は定数削減だけでなく、歳費削減もしっかり行うべきだ」――岡田副総理兼行政改革相は1月15日のNHK番組で強調、国会議員の歳費・議員定数・政党交付金の「三つの削減」に強い意欲を示しました。さらに、16日の都内講演では、「小選挙区中心の制度からもう少し第3党以下が一定の議席を持てる形にして、第1党と第3党が連立を組める形を考えていくのが1つの工夫かもしれない」と述べて「民公連立」を示唆、公明党にも早速、秋波を送りました。野田首相は内閣改造で、「問責決議を受けた一川保夫前防衛相と山岡賢次前消費者相の更迭」のイメージを薄めるため、消費増税、行政改革に熱心な岡田元代表にナンバー2の副総理就任を懇請し、ロシアに似た「2頭立て政権」を確立、政治生命を懸けた消費増税の今国会成立に背水の陣を敷きました。同時に小沢一郎元代表の側近だった山岡、一川両氏の後任に、やはり小沢氏に近い田中直紀氏を防衛相、松原仁氏を国家公安委員長・消費者相に、鳩山元首相グループの平野博文国対委員長を横滑りさせて文部科学相に、菅前首相側近の小川敏夫参院幹事長を文相に起用、「党内融和」にも配慮しました。だが、幹事長当時に小沢氏の党員資格停止処分を主導した岡田氏に対する小沢グループの反発は依然強いようです。

3点セットで消費増税地ならし
 岡田氏が「削減3点セット」を提示したのは、「社会保障と税の一体改革」で進める消費増税の前提として、民主党内に「自ら身を切る改革」を先行すべきだとの反対意見が多く、それを支持する世論が強いため、消費増税の地ならし策として打ち出し、歳費削減に賛成する自公両党を抱き込もうとしたものです。歳費(月額約130万円)の削減については自民党の茂木敏充政調会長が17日、「8%なんて中途半端なことではなく、昨年は4月から半年間、15%削減(月50万円)やったわけだから、これを継続する気概が与党には必要だ」と講演で述べています。しかし、民主党の輿石東幹事長は同日の記者会見で、「今一番、最優先にやらなければならないのは議員定数と国家公務員給与の削減だ」と述べ、歳費削減は不要と唱えました。政党交付金は共産党が受け取りを拒否しています。議員定数是正では2大政党と中小政党が激しく対立、与野党協議で着地点を探るのは困難です。

0増5減は自民党案を丸呑み
 民主党は18日の政治改革推進本部(本部長・樽床伸二幹事長代行)総会で、衆院の「1票の格差是正」のため山梨、福井、徳島、高知、佐賀5県で小選挙区をそれぞれ1減する「0増5減」と、比例代表の定数80削減などを盛り込んだ関連法案を正式に決定しました。「0増5減」は自民党案を丸呑みしたもの。政府与党は「0増5減」を行う衆院選挙区画定審議会設置法改正案と、定数削減を盛り込んだ公職選挙法改正案について、「一体改革の関連法案の前に出したい」とし2月中に国会提出、自民党との連携で成立させる方針です。民主党は最近、公明党に配慮して定数削減対象を比例に限定しない「定数の80削減」と表現を修正していましたが、決定案は「比例区の80削減」に戻り、衆院の定数は480議席(小選挙区300、比例180)から小選挙区「0増5減」、比例80減の計85減で395議席(小選挙区295、比例100)になる案です。中小政党に有利な「小選挙区比例代表連用制」を主張していた公明党の山口那津男代表は「あまりにも独断が過ぎる。定数削減は抜本改革で実現すべきだ。首相は与野党協議を呼び掛ける姿勢が本当にあるのか」と反発、比例30減を主張してきた自民党も民主党案を拒否する態度を示しました。

5協議提起に密室談合と拒否
 こうした中で19日、9党の幹事長・書記局長による与野党協議が国会内で開かれ、民主党の輿石幹事長は「明日の日本をどうするかという話だ」と述べ、@社会保障と税の一体改革A国家公務員の給与削減B1票の格差是正と衆院定数削減C郵政改革D労働者派遣法改正――の協議を提起しました。これに対し、自民党の石原伸晃幹事長は「国会で正々堂々と議論する。国会の外で談合は一切しない。政府与党はしっかり((消費増税関連法案を)閣議決定すべきだ」と増税協議を拒否。公明党も「民主党が従来から主張してきた年金一元化や月額7万円の最低保障年金などと一体改革案との整合性、社会保障の全体像を示すべきだ」と求め、一体改革の与野党事前協議は物別れになりました。衆院選挙制度改革については昨年11月に中断した超党派の与野党協議会を再開することで合意しました。輿石氏が「密室談合をやる気はない。国会で議論しましょう」と自公両党に配慮し増税の事前協議を見合わせたのは、自公政権時代の2005年、年金制度の抜本改革を協議する「社会保障制度改革両院合同会議」が国会に設置されオープンに議論した先例があるからです。

重要法案目白押しで激突必至
 政府与党は6月21日までの会期中に81本の法案提出を予定、東日本大震災関連の11年度第4次補正予算を2月上旬に成立させ、12年度予算案の年度内成立を目指しています。しかし、自民党はまず、外交・安保の集中審議、新閣僚の所信表明と質疑を行う各委員会開催を求め、沖縄・普天間周辺小学校の危険性を軽視するかのような発言をした田中防衛相の資質を糾す方針です。今国会には赤字国債発行のための特例公債法案など予算関連法案や消費増税法案、国民年金法改正案、継続審議の国家公務員給与削減法案、郵政改革法案など重要法案が目白押しで、与野党の激突が予想されます。政府は20日、消費増税法案を公約通りに3月末までに国会に提出するため、岡田副総理、藤村修官房長官、安住淳財務相ら関係5閣僚会合を開き、消費増税分5%を「社会保障の充実に1%、現行社会保障制度の安定化に4%を充てる」とする統一見解を決め、与党内はもとより国民に一体改革の必要性を訴えていくことで合意。再び消費増税の与野党協議を呼び掛けました。


解散示唆し党内と野党牽制
 首相は17日の記者会見で解散問題を聞かれ、「震災復興、原発事故との戦い、経済再生、行政・政治改革、一体改革をやり抜いた後しかるべき時に(解散というのは)当然あるが、やり抜いた暁に出てくる発想だ」と述べ、野党と党内反対派を牽制しました。これにはすかさず、小沢元代表が同夜、群馬県高崎市の会合で、「野田首相で解散は事実上できない。今のままでは政局が行き詰まる。どういう政治感覚か私にはわからないが、選挙管理内閣のような形になって、解散・総選挙は今年中にあると思う」と批判しました。小沢氏が会長を務める「新しい政策研究会」は党大会終了後に109人が参加して国会内で勉強会を開き、榊原英資・元大蔵省財務官から消費増税の反対論を聞き、団結を固めています。

森元首相ら協議拒否の逆風懸念
 一方、森喜朗元首相は「(消費増税と選挙制度改革で)与野党協議のテーブルをつくり、来年に衆参同時選挙をやればよい」と共同通信のインタビューに答え、自民党の石破茂前政調会長も18日、TBS番組で、「向こう(民主党)がだめだ、とあざ笑っているのではなく、国家のために協力を惜しんではならない」と協議参加を求めました。党内には「自民党は何でも反対と見られ、それが党の支持率低下にもつながっている」との批判もあり、森氏らは与野党協議の拒否論で逆風が吹くことを懸念したものです。谷垣禎一総裁は「決して党利党略で与野党協議を拒否しているわけではない。公約違反の民主党は解散で国民との信頼関係をもう一度作らないと日本の危機は救えない」と遊説先で事前協議拒否の正当性を強調していましたが、与野党協議の19日の記者会見では、「法案が提出されれば全力で与党と対峙していく」と述べ法案の提出後は積極的に審議に応じる姿勢を示しました。

郵政改革は4社体制で合意
 国民新党が「1丁目、1番地」と成立を切望する郵政改革法案は2012年4月に提出以来、継続審議が続いていますが、自公民3党が20日の実務者会議で論点整理を行った結果、成立の展望が開けてきました。政府提出法案は、ゆうちょ、かんぽの金融2社を含めた現行5社の組織形態について、持ち株会社の日本郵政と経営が悪化している郵便局・郵便事業両会社の合併による3社体制を目指しています。だが、3党協議では合併を郵便局、郵便事業の2社にとどめて持ち株会社は存続、4社体制に再編することで合意。公明党の修正案が基本で、「ねじれ国会」突破の公明党抱き込みを狙っています。政府が保有する日本郵政グループの株式売却については、「株式の早期処分努力義務」を課すと明記し、鳩山政権時代に凍結した株式売却を解除する方針で一致しました。ただし、自公政権時代に決めたゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式完全売却について、民主、公明両党は「日本郵政が3分の1程度保有し続けるべきだ」との考えで一致しましたが、自民党内に慎重論があり実務者会議で結論は出ませんでした。政府提出法案に盛り込まれたゆうちょ銀行の貯金限度額引き上げは、民間金融機関の反発を考慮し「当面引き上げない」としました。この合意で同法案審議は促進されますが、亀井静香代表は消費増税法案に反対しています。