第262回(10月16日)復興増税は難航か 荒れ模様の臨時国会
 野田政権は10月20日に開会予定の臨時国会に12兆円規模の第3次補正予算案を提出するとともに史上最大の100兆円に迫る12年度予算案の年内編成に全力を挙げようとしています。このため、自公両党に第3次補正の復興増税案で合意を取り付けようと歩み寄っていますが、自公両党は「事前の談合」を拒否。むしろ、6日から刑事裁判が始まった民主党の小沢一郎元代表を国会の証人喚問に呼び出して政治責任を糾弾、早期解散・総選挙に追い込もうと対決姿勢を強めています。一方、首相は11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までに、関税を原則撤廃する環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加について決断を迫られており、18日の訪韓で日韓経済連携協定(EPA)の推進を李明博大統領に求め、アジア全体をカバーするTPPへの参加につなげたい考えです。だが、JAなど農業団体は「農漁業が崩壊してしまう」と反発、鹿野道彦農相ら慎重派が党内に多く意見集約は困難。復興増税も小沢陣営が猛反対で首相が「安全運転」に心がけても臨時国会は荒れ模様となりそうです。一層のご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

来年度予算編成遅れ査定困難
政府は復興増税案の策定と並行して大震災対応で約1ヶ月遅れた12年度予算編成作業を急ピッチで進めています。9月30日に出揃った概算要求の一般会計総額は98兆円を超え、要求ベースでは今年度の96・7兆円を上回り、過去最大となりました。野田首相は財務相当時に「財政再建は至上命題」とし、概算要求基準を例年とは異なる「2段階方式」とするよう指示しました。これにより来年度予算は、震災復興費を別枠とし、国債費を除いた歳出は71兆円以下、新規国債の発行額は44兆円以下に抑える方針です。予算編成要綱では@1兆円規模の社会保障費の伸びは容認するA社会保障の伸びは公共事業など他の経費を削って賄う――などを盛り込み、社会保障費と削りにくい地方交付税を除いた歳出は、今年度当初予算と同様に、各省庁に要求額を一律で1割程度減らすことを求めていました。ところが、首相は東日本大震災の復興費要求は「青天井でもいい」と、上限を設けないことを表明。国交省が東北地方の沿岸道路整備や高台への集団移転などで計1・1兆円、環境省が除染作業や瓦礫処理で計約9千億円を求めるなど要求が膨れ上がりました。

19年ぶり陸自109人増要求
復興費は既に第1,2次補正で計6兆円を計上。第3次補正には9・1兆円を盛り込む方向で、これに12年度の要求の3・4兆円を加えると計18・5兆円となり、政府試算の当初5年間の復興費19兆円はほとんど消化してしまう計算です。その一方で、7千億円の特別枠「日本再生重点化措置」を設定した結果、各省の要望額もインフラ関係や再生可能エネルギー導入など計2兆円程度に達しています。このほか防衛省は原子力災害体制を強化するため、19年ぶりに陸上自衛隊の109人増を要求、文科省は被災地の大学に通う外国人留学生への奨励費に10億円を要求するなど復興費要求は膨らむばかり。与党の歳出増圧力も高まる中で、安住淳財務相は「通常とは全く違う要素で膨らむのは多少やむを得ないが、出せないものは出せない。12月にかけ鬼となって頑張る」と強気ですが予算査定は難航しそうです。同時に政府は「社会保障と税の一体化」法案を次期通常国会に提出すると約束。消費税は10%への増税を目指しており、野党折衝は容易ではありません。

自民、3党協議は談合と拒否
 政府は7日の閣議で、大震災復興策や円高対策を盛り込んだ12兆円規模の第3次補正予算案の基本方針(概要)を決定、今月内に開く臨時国会に提出する方針です。これは、6日の自公民3党協議で、自民党の石原伸晃幹事長が「閣議決定もしない予算案を国会提出前に協議するのは談合だ」と主張、党首会談も拒否したのを受けて、政府与党が急遽、基本方針を決めたもので、野田首相は7日、共産、社民、たちあがれ日本の3党首と会談、予算案への協力を要請しました。第3次補正予算案の中身は、前号のHPで詳しく述べたので重複は避けますが、震災関係経費に9・1兆円を計上、このうち製造業支援の立地補助金など1・9兆円は円高対策です。首相は震災復興財源に充てる臨時増税の11・2兆円には触れず、税外収入の7兆円を当て込んだ9・2兆円の数値を明記することを決定しました。日本たばこ産業(JT)の政府保有株の全売却など税外収入が7兆円に達すれば増税額を2兆円圧縮するとして、総額を9・2兆円とした9月27日の発表にこだわったものです。埋蔵金の活用を主張する前原誠司政調会長は民主党内の反対論を意識し、「税外収入を政府税調案5兆円から上積みして総額7兆円にすれば、結果として総額は9・2兆円になる」と説明。藤村修官房長官も「当初の税外収入は5兆円でスタート。10年間のトータルで7兆円確保は必ずやるとの目標。増税法案はあくまで11・2兆円の規模」と述べています。

国家権力乱用と小沢氏検察批判
 そうした中、小沢元代表を被告とする刑事裁判が6日に東京地裁で始まりました。9月26日には小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡る政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で衆院議員・石川知裕被告ら元秘書3人が有罪判決を受けたばかり。裁判では小沢氏が虚偽記載で3被告と共謀があったかどうかが最大の争点。小沢氏は初公判の罪状認否で、「虚偽記載には当たらない。まして私が共謀したことは断じてない」と無罪を訴え、「検察の対応は、特定の意図により国家権力を乱用した。私を政治的、社会的に抹殺するのが目的だったと推認できる。日本憲政史上の一大汚点だ。国民から何も負託されていない検察・法務官僚が土足で議会制民主主義を踏みにじり、公然と国民の主権を冒涜、侵害した」と激烈な検察批判を展開。その後の記者会見でも8分間にわたる法廷で述べた検察批判を改めて再読し、質問もクラブ代表の新聞・テレビ各1社とフリーの計4人に2問ずつに限定。社会の関心を集めた問題の土地購入資金4億円の原資については、「私のお金です」と1言答えただけで居丈高な会見に終始、「世論調査が必ずしも国民の意見を代表しているとは思わない。頑張ってくれという大勢の方もいる」とインターネットの投稿配信サービス「ニコニコ動画」の記者に対しては笑顔で答え、多くのマスメディアには敵対しました。

小沢マネー4億は候補者に分配
 自民党の石波茂・前政調会長は3被告有罪判決の翌27日、衆院予算委で小沢氏の政治資金問題について、「平成21年(09年)の総選挙で4億4千万円が小沢氏の系列の候補者に配られた」と指摘、「審判は次の総選挙で間違いなく下される」と追求。これについて、朝日の星浩編集委員は2日のコラムで概略次のように解説しています。「09年夏の総選挙を仕切った小沢氏は、民主党の立候補予定者91人に陸山会から総額4億4900万円を提供。89人が500万円、2人が200万円だった。その一覧表は総務省のHPで見られる。総選挙では91人のうち、88人が当選。小沢氏側は『この資金が民主党の圧勝、政権交代につながった』という。菅前首相は『党の公認料とは別に、自分の勢力を増やすために配っている。政治はカネと数という小沢流の手法だ』と批判。親小沢・反小沢の対立が深まる一因となった。小沢マネーを受け取った議員たちの中には、元秘書3人の有罪判決で『支持者に叱られた。小沢氏に返金したい』と先輩に相談した若手議員もいる。民主党候補に敗れた自民党前職も、『次の総選挙では、疑惑の小沢マネーをもらった政治家として徹底攻撃をする』と述べており、石破氏の『審判は総選挙で』発言は、小沢マネーの影響におののく民主党とリベンジに燃える自民党の心境を映し出したものだ」と述べました。その小沢氏は記者会見後、「左尿管結石」で緊急入院。菅氏は四国お遍路の旅に出ています。

三権分立理由に証人喚問を拒否
  確かに、先の総選挙で小沢チルドレンの政治素人集団に敗れた我々仲間は「増税で民主党に歩み寄るより、早期解散に追い込むべきだ」と臨戦態勢を固めているのは事実。問題なのは小沢氏が「三権分立」を理由に国会の証人喚問や政倫審出席を拒否している点です。
「野党の証人喚問要求に対し、国会での説明責任を果たす考えはあるか」と、記者会見で問われた小沢氏は「君は三権分立をどう考えているの?司法の公判が進んでいる時、立法、府が色々議論すべきだと思っているの?よく勉強して筋道立てた質問をして下さい」と逆ギレの高飛車、傲慢な答弁で質問を封じ、逃げ切りました。野田首相も先月末から、「裁判が始まろうという時に立法府での議論は影響がある。十分検討しなければ」と国会答弁を繰り返してきました。しかし、偽証罪など強制力を持つ証人喚問や書類提出要求の根拠となる国会の国政調査権は憲法で定められたもの。野党は「国会で説明責任を果たすのは当然。次の国会で実施すべきだ」(谷垣禎一自民党総裁)、「裁判での主張と、国会での説明責任は両立する」(山口那津男公明党代表)、「疑惑は国会で晴らせという政治倫理綱領を政倫審とともに策定した生みの親は小沢氏だ」(市田忠義共産党書記局長)と批判を強め、臨時国会では第3次補正案や復興増税とともに、小沢氏の政治責任を徹底追及する方針です。


自民人事刷新し臨時国会で対決
臨時国会は首相が18.19日の訪韓から帰国した後の20日に召集されますが、第3次補正予算案の攻防に加え、継続審議の郵政改革法案や同じく総人件費の引き下げ幅を7・8%とする国家公務員給与削減法案など問題法案が山積しています。谷垣総裁は、民主党との全面対決を主張する派閥領袖に配慮し、役員人事を刷新しました。新体制は民主、公明両党との3党協議を重視する大島理森副総裁と石原幹事長を留任させる一方、額賀派の茂木敏充元金融相を政調会長に、町村派の塩谷立元文科相を総務会長に、古賀派の岸田文雄元消費者相を国対委員長に起用しました。参院も中曽根弘文参院議員会長が参院幹事長に推した鴻池祥肇元防衛相(麻生派)に対し、町村、額賀、古賀3派の領袖が反発、否決されたため、溝手顕正元国家委員長(古賀派)に差し替えました。山本一太参院政審会長(無派閥)も岩城光英元官房副長官(町村派)と交代しました。執行部から外れた石破前政調会長は次の総裁選への再出馬を目指し、額賀派には戻らず派閥横断型の政策勉強会を発足させる予定。これには同じく執行部を外れた小坂憲次前参院幹事長や鴨下一郎前政調会長代理らが参加します。マスコミは「派閥抗争の再現なら党支持率は回復できない」と指摘していますが、自民党は最終的に第3次補正には協力しても、葉たばこ農家に打撃を与えるたばこ増税には反対するなど修正し、臨時国会では対決姿勢を強めて対峙する方針です。