第257回(8月1日)総辞職か自爆解散 脱原発で民主混乱
 延長国会の残る会期は1カ月。7月25日に第2次補正予算が成立、首相が「退陣3条件」に挙げた公債特例法案、再生可能エネルギー特措法案も8月中旬に成立の見通しで、盆明けにも民主党執行部が目指す党代表選を実施する段取りが整います。しかし、菅首相は性懲りもなく、具体的道筋を示さないまま「脱原発」の方針を示し、延命への執念を燃やしています。これが閣内の亀裂を拡大、民主党内若手・中堅32人が15日、首相の即時退陣を求める署名運動を開始しました。国会でも野党が首相発言を厳しく追及。自民党の谷垣禎一総裁は「朝令暮改の場当たり的エネルギー政策」と批判、とことん菅政権を追い詰める構えです。悪あがきの菅首相が月末に「自爆解散・総選挙」を断行しても、分裂選挙では敗退するだけ。新連立を組もうにも、党内はもとより他党も“裸の王様”を首相指名で推すことはあり得ません。自民党は国難の最中、政治への信頼回復のため、努力と妥協を重ねて多くの重要法案を成立させてきました。代表選で新政権が誕生すれば政策面で連携し大震災復興のメドが立つまで協力しますが、解散なら受けて立ち、圧勝して一気に政権を奪還します。緊迫の8月ですが、変わらぬご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

朝令暮改の場当たり政策で延命
 「退陣表明の総理が大きな政策変更を伴う問題で、国民不安を利用して延命を図ろうとする。国民不在のパフォーマンスだ。朝令暮改の場当たり的政策では電力不足に対する国民生活の不安と混乱を助長するだけだ」――。谷垣総裁は13日の記者会見でこっぴどく批判しました。首相が同日の緊急記者会見で、「原発に依存しない社会を目指すべきだと考えるに至った。計画的、段階的に原発依存度を下げ、将来は原発なしでもやっていける社会を実現していく」と「脱原発」を表明したからです。谷垣氏は「エネルギー政策について政府・与党内での議論もない。脱原発への代替案やプロセスの提示もない。電力安定確保の具体的説明もない。民主主義と法のプロセスを無視した菅総理の独断発言だ。産業界の悲痛な声が聞こえる。海外流出による産業空洞化がギリギリのところへ来ている。自民党はその不信を除き、電力供給の安定確保を図り、国民生活と経済活動の不安を払拭していく」とブチ挙げ、野党はこれらの点を第2次補正予算審議の国会で一斉に追及しました。

「脱原発」は原発輸出と矛盾
 15日の閣僚懇談会でも首相発言を巡り、閣僚から「内閣の考えか、総理の思いなのか」との質問が続出。首相は「3月11日以降、国会や国際会議で述べた事柄について、総合的な整理をして自分の考えを述べた」と説明しましたが、中野寛成国家公安委員長が「重大な発言をする時は事前に閣僚に説明してほしい」と要望するなど閣議は白けムード。首相は衆参両院の予算委でも、「脱原発」方針は「政府見解でなく個人の考えの披瀝」と釈明しましたが、21日の参院予算委で、「脱原発」発言と首相がトップセールスで受注したベトナムへの原発輸出との整合性を追求されると、「今回の事故を受けて、もう一度きちんとした議論が為されなければならない段階に来ている」と相手国を惑わす苦しい答弁で逃げました。だが、原発輸出は新成長戦略の柱として菅政権が力を注いできたテーマの一つ。海江田万里経済産業相は「(受注した)ベトナム、トルコなどには、しっかり特使を派遣して説明してくる必要がある」と答弁し、首相とは逆に原発輸出に積極姿勢を見せました。でも、特使派遣に両国は、日本との「優先輸出の合意」に対し警戒感を示し始めています。

鴻毛より軽い首相発言と経産相
首相の九電玄海原発などの対応に不満を募らせ、辞意を表明している海江田氏はこの日、左手に「忍」と書いて質疑に臨み、自民党議員から首相の「脱原発」発言について聞かれると、「内閣で一致した言葉でないなら一私人の言葉だ。それは『鴻毛』(羽毛)より軽い。内閣が一致しての発言なら(中国・山東省の)『泰山』より重い。総理発言は泰山より重くあって欲しい」と、中国の歴史家・司馬遷の言葉を引用して、皮肉たっぷりに首相を批判しました。首相発言に対し、民主党の樽床、野田グループなどの若手・中堅議員32人は15日、菅首相の即時退陣を求める決起集会を国会内で開き、退陣要求の署名活動を始めました。呼び掛け人の吉良州司衆院議員は「思いつきの政策で日本の経済を破壊させかねない首相にこれ以上、続けて貰うわけにはいかない」と強調、同じく長島昭久衆院議員も「首相は閣僚と一体になって国政に当たる統治の基本原則をぶち壊した。党執行部は太陽政策だが、我々は北風政策で行く」と述べ、記者団に「集団離党を突きつけて退陣を迫ることも含め、あらゆる手段を検討する」との決意を表明。出席議員からは「代表選前に緊急両院議員総会を開き、代表のリコール規定を設けるべきだ」との意見も出されました。

なでしこにあやかり続投意欲
 首相を絶えず援護し自民党議員を総務政務官に一本釣りするよう進言した国民新党の亀井静香代表は、首相との「郵政改革法案審議促進」の約束が一向に果たされないことに焦り、連立離脱の脅しを掛けています。こうした四面楚歌の中でも首相は19日、サッカー女子W杯で優勝した日本代表を首相官邸に招いて一人一人握手。その日の衆院予算委では、「なでしこジャパンの行動に、私もやるべきことがある限りは諦めないで頑張らなければならないと感じた」と強調、閣議で検討を指示した第3次補正予算案編成についても、「出来れば与野党共同で仕上げていきたい」と述べ、大震災復興の本格的な第3次補正予算の成立まで「ネバー・ギブアップ」の精神で政権運営に当たる意欲をアピールしました。同予算委で自民党の古屋圭司氏は、菅首相の資金管理団体「草志会」が日本人拉致事件の容疑者の親族が関係する政治団体「政権交代を目指す市民の会」(相模原市)に政治献金をしていた問題について、「市民の会」ら3団体に対し、首相だけでなく民主党議員らが総額2億500万円の献金をしていたと指摘。21日の参院予算委でも同党の山谷えり子氏が献金問題を追及して審議が中断、第2次補正予算の成立が3日間遅れました。3月11日の国会で、首相は韓国人関係金融機関元理事からの政治献金問題で窮地に立たされていた時に東日本大震災が発生、前原誠司前外相と同様の引責辞任から辛くも逃れていました。

早期復興図り2次補正を可決
このように首相につきまとう献金問題は退陣と切り離せない命取りの問題ですが、自民党は早期復旧・復興には第2次補正予算の早期成立が必要と判断、追及の矛を収め25日に成立させました。第2次補正予算は被災者の「二重債務」や生活再建支援補助、原発事故関連、復旧・復興予備費、地方交付税など総額約2億円。財源は決算剰余金の流用などで賄いました。自民党は大震災の早期復興には第2次補正で17兆円規模の予算が必要と強く主張しましたが、この要求を入れて、臨時国会に提出の第3次補正予算案は10兆円規模になると見られます。菅政権は26日、復旧・復興の総事業費を10年間で23兆円と見積もり、当初の5年間でインフラ復旧や被災者の生活再建費などに19兆円を使う計画を決定しました。既に1次、2次補正予算で手当てした6・1兆円を除く12・9兆円のうち、約10兆円を復興債の発行、残りを歳出削減と国有財産売却などで賄い、復興債の返済財源には12年度から臨時増税に踏み切る方針で、増税期間は「5年を基本に10年以内」としています。増税は政府税調で検討しますが、納税額に一定率を上乗せする定率増税とし所得税、法人税を中心に相続税、たばこ税を組み合わせる案が浮上しています。しかし、民主党内で10兆円と明記する増税に反対論が続出、復興対策本部(本部長・菅首相)が29日に正式決定した案は「集中復興期間を踏まえて検討する」との文言にとどめ、復興債の発行以外は具体的な数値を示さず、3次補正編成時まで先送りしました。

3次補正重ねて指示、続投意欲
首相は第3次補正予算の編成に加え、来年度予算の概算要求にも執着していますが、枝野幸男官房長官は21日の記者会見で、「常識的に判断すれば結論は明らかだ。例年に比べ遅れるが、来年1月の予算審議に影響を与えないよう(新政権が)編成するとの合意は出来ている」と述べ、退陣表明した首相が主導するべきでないとの認識を示しました。枝野発言に反発してか、首相は26日の閣議で第2次補正の成立を感謝したうえ、「震災復興の第3次補正の骨格を早急にまとめる」よう重ねて指示、続投に向けて閣内を引き締めました。野党も早期復興のために、惜しみなく積極的に協力しています。国と都道府県が折半負担する「被害者生活再建支援金」について東日本大震災に限り国の負担を8割に引き上げる特例法は、25日に全会一致で成立。自民など5野党が提出した、福島第1原発事故被災者への「賠償金の半分超を国が仮払いする法案」と、同事故の賠償責任は「国にもある」と明記した東電への「賠償支援機構法案」も8月上旬に成立の見通しとなりました。


見通し甘い政権公約を率直謝罪
2次補正と並ぶ「再生可能エネルギー特措法案」、赤字国債発行のための「特例公債法案」は、首相の「退陣3条件」法案ですが、いずれも調整は難航気味です。自民党は民主党マフェスト(政権公約)の中心である子ども手当など「バラマキ4K」の誤りを認め、撤回することを同法案への協力の前提にしていましたが、民主党の岡田克也幹事長は21日の記者会見で09年衆院選の政権公約について、「政策の必要性と実現の見通しについて検討が不十分だった。見通しの甘さを国民に率直にお詫びしたい」との文書を発表し公式の場で陳謝。首相も国会答弁で同様に謝罪しました。だが、党代表として政権公約を掲げて政権交代を実現した鳩山由紀夫前首相は「特例公債のために命のように大切なものを投げ出した。政権交代の魂を売り飛ばしてはならない」と批判、子ども手当などの政権公約を主導した小沢グループも怒り心頭です。小沢一郎元代表は28日、フリー記者との会見で「もう一度、内閣不信任案を出すべきか」と聞かれ、「執行部はお盆前に辞めると言うが、首相が辞めないなら、民主党議員全体が深刻に考え、決断すべきだ」と述べ、党として同決議案提出を検討する考えを示唆しました。首相側近の北沢俊美防衛相も岡田氏を「原理主義者が急に謝罪主義者になっても成果が上がらんなあ」と記者会見で揶揄するなど、民主党内では批判が噴出しています。それでも民主党執行部は、子ども手当で所得制限に応じるなど自公両党に歩み寄り、公明党の坂口力元厚労相の試案に沿った解決を目指しています。

公明案丸呑み子供手当て決着へ
自・公・民3党の実務者協議で22日に示した民主党案は、支給額も坂口案を丸呑みし、3歳未満と第3子以降は現行の1万3千円より手厚く1万5千円。中学生は第3子以降も含め1万円としました。所得制限は民主党が1800万円以上と主張していたものを、坂口案の「年収1200万円以上」とほぼ同じ年収1000万円以上に改めましたが、所得制限を受ける世帯にも手当を9千円に減額して支給する案を示しました。子ども手当の導入とセットで年少扶養控除が廃止された影響で、年収1200万〜1300万円の世帯で年間12万円の負担増になる点を配慮したものです。これで「社会全体で子育てする。子どもを親の所得で区別しない」という民主党の理念は守られる上、制限の対象は全体の5%程度に収まり、党内向け説明も容易になります。これには自公両党が「民主党案は本当の意味での所得制限にならない」と難色を示したため、民主党は山口那津男公明党代表案を受けて「860万円以上」(税引き前年収で1150万円)の譲歩案を再提出しました。しかし、自公両党内に異論が多く調整は難航しています。公約の主要政策見直しについて、みんなの党の渡辺喜美代表は「マニフェスト詐欺だ。もう一度、政権選択のやり直しをするのが筋」と批判、谷垣総裁も22日の総務会で「政権公約の子ども手当法案を撤回するなら、国民に信を問うべきだ」と早期解散を促し、石原伸晃幹事長も26日の記者会見で、「ゾンビ内閣には鉄槌を下さねばならない」と首相問責決議案の参院提出を示唆しました。

解散備え日本再興の自民公約
 菅首相は26日の国会で「解散・総選挙は2年後の衆参ダブル選挙でいいと思う」と述べ、早期解散を重ねて否定しましたが、いつ伝家の宝刀を抜くか分かりません。首相の「自爆的解散」に備え、自民党の国家戦略本部は20日、次期衆院選の政権公約の骨格となる報告書「日本再興」を発表しました。@成長戦略A社会保障・財政・雇用B地域活性化C国土保全・交通D外交・安全保障E教育――の6分科会がまとめたもので、エネルギー政策では、「再生可能エネルギーで原子力の発電量をカバーするのは難しい」と明記し、既存原発の稼働維持を打ち出しています。大震災を受けて、民主党の「コンクリートから人へ」の公共投資削減を、「国民の安全・安心確保が難しくなる」と批判し、「日本海国土軸の形成」に向けた公共事業の確保も訴えています。税制では、昨年の参院選公約と同様、「消費税率は当面10%とし、社会保障に全額充てる」を掲げています。体たらくの菅政権に国民の不満・不信は爆発寸前で、「総選挙なら自民圧勝」との分析も一部にありますが、当面は和戦両様の構えで復興に全力を尽くし、自民党の支持率回復に努めているところです。