第256回(7月16日)8月末解散に執念 混乱が延命工策
 70日間延長の国会は菅政権の迷走人事で2週間空転した末、6日からようやく衆参予算委で審議入り。自民党など野党は被災地で失言を重ね引責辞任した松本龍復興相の任命責任、自民党議員を総務政務官に一本釣りした暴挙を厳しく追及、即刻退陣を迫りました。民主党内でも「一本釣りは百害あって一利なし」(仙谷由人官房副長官)、「首相は一分でも一秒でも早く辞めろ」(渡部恒三最高顧問)と批判続出し首相は完全孤立。加えて政府が運転再開を容認した玄海原発で九電幹部による「やらせメール」など電力界の悪質な隠蔽体質が発覚し海江田万里経産相が辞意を表明、全国で停止中の原発は運転再開が絶望的になりました。それでも、菅首相は国会答弁で「満身創痍だが、刀折れ、矢尽きるまでやっていきたい」と決意を表明、居座る構えです。この分では「退陣3条件」である第2次補正予算、公債特例法など3法の8月末成立の見通しは暗く、審議の遅れが逆に菅政権の延命を助けかねない情勢です。石破茂政調会長は「内閣改造で状況が変わったのだから、一事不再議ではない」とし内閣不信任案の再提出を検討していますが、果たしてこれに与党の造反組が同調するか。首相が衆院解散・総選挙で対抗するか。全く予断を許しません。断末魔の菅政権ですが不透明な政局が続きます。ご支援、ご叱正をお願い申し上げます。

満身創痍、刀折れ矢尽きるまで
 首相は審議再開の国会で続投の決意を示し、解散権をちらつかせるなど開き直った態度を表明。さらにエネルギー政策の抜本的見直しも退陣に至る「一定のメド」に加え、延命の土俵を広げようとしています。みんなの党の渡辺喜美代表が6日の衆院予算委集中審議で、「自身の信念を全うしようと思ったら国民に信を問えばいい」と迫ったのに対し、首相は「激励と受け止めた」と応じ、「満身創痍、刀折れ、矢尽きるまで、力の及ぶ限り、やるべきことをやっていきたいと改めて決意した」と続投の意欲を表明。自民党の石破茂政調会長が「首相の『一定のメド』とは、いつまでも辞めないと言っているのと同じだ」と指摘したのに対し、首相は「(私は)辞める、あるいは退陣という言葉を使ったことはない。一定のメドがついた段階で責任を譲りたいと申し上げた。第2次補正予算、特例公債法、再生可能エネルギー特措法の成立が一定のメドだ」と述べる一方、「原子力行政の方向性の検討にも入っている。私の許される範囲で全力を挙げて取り組んでいきたい」と原発を延命に利用する姿勢を示しました。渡辺代表が早期解散を求めたのは、自民、民主両党の支持率が低迷している間に総選挙があればみんなの党が躍進できると読んでいるからです。

延命に2混乱利用、政策2転3転
 「原発の政権延命利用」は2つの点から明瞭です。1つは、佐賀県の九電玄海原発の運転再開問題を県民に説明するために国が主催した6月下旬のテレビ番組で、九電幹部が再開賛成の意見を電子メールで送るよう、自社や子会社の社員らに働きかけていた「やらせメール」を共産党が暴き、鹿児島県議会や6日の衆院予算委で追及されたことです。国会では、電力界の悪質な世論操作と不祥事を隠した隠蔽体質が厳しく問われ、地元玄海町の怒りも爆発、九電の真部利応社長は辞意を表明しました。これで夏に予定した玄海原発はもとより、全国で休止中の原発の運転再開が絶望的になりました。2つ目は、首相が6月中旬に玄海原発の再稼働を「容認」しながら、7月に入ると安全性評価(ストレステスト)の実施検討を指示、「慎重」姿勢に変身するなど2転3転したことです。これは、経産省原子力安全・保安委の判断に基づき「安全宣言」を出し、玄海原発の地元を訪れた海江田氏と、再稼働を容認した岸本英雄玄海町長にとって「2階に上がって梯子を外された」も同然。海江田氏は7日の国会で玄海原発の再稼働凍結の責任を問われ「いずれ時期が来たら責任を取らせて頂く」と明言、その後の記者会見でも「退陣3条件」の3法案に加え原子力損害賠償支援機構法案が成立しそうな8月中旬にも辞任する決意を表明、岸本町長も再稼働容認を撤回しました。2つの混乱事態は首相にとって思うつぼの延命策と言えます。

バカな話と経団連会長痛烈批判
 日本にある54基の原発のうち35基が点検・休止中ですが、稼働中の残り19基(うち2基は検査運転中)も13か月以内に点検・休止が義務づけられています。欧州のストレステストは1原発の結論を出すまでに半年掛かるのがざら。政府は11日、ストレステストの統一見解を発表、安全評価は@定期検査で停止中の九電玄海原発などの運転再開を判断する「1次評価」A運転中の原発の継続・中止を判断する「2次評価」-――の2段階で行い、従来のように経産省の原子力安全・保安院だけでなく、原子力安全委も再稼動の判断に関与させ、住民の不安払拭を目指しています。菅首相と海江田氏双方の顔を立てたため、安全委の役割があいまいで、入念なシュミレーションの結果、安全性評価を下すには1原発につき半年〜1年くらいはかかりそう。電力の30%を供給してきた原発が全面ストップし、大規模停電を余儀なくされれば産業界は大打撃。産業空洞化を懸念する米倉弘昌経団連会長は「混乱したから統一見解なんて、バカな話だ」と痛烈に批判しました。

解決長期化必至で首相好都合
 このように、エネルギー政策の混迷は解決に長期化が見込まれ、延命を策す首相にとっては好都合。首相は7日の参院予算委で、「原子力エネへの依存を白紙にし、再生可能エネと省エネを大きな柱にしていくと提起している。社会のあり方を選択するので、国民の意思で決めるべき課題だ」と強調、日を追って脱原発をシングル・イシューに解散・総選挙で国民に信を問う姿勢を強く打ち出しています。「原発を巡る政府の姿勢はあまりにも唐突で混乱を助長する。重要問題で閣内不一致がある。ひどすぎる」(谷垣禎一自民党総裁)、「政府自らが積み上げてきた手続きを突如覆し、現場に混乱を与える。思いつきで社会の予見可能性を覆し、信頼を損なう不信バラマキ内閣だ」(山口那津男公明党代表)と野党党首は同日、揃って菅内閣を批判し、野党内では海江田氏への同情論が起きています。本来なら折衝で苦労した担当相の海江田氏が発表すべき「中電浜岡原発の停止要請」を、首相が緊急記者会見を開いて発表し手柄を横取り。ドービル・サミットでの「再生エネルギーの20%へ拡大」も担当の海江田氏に相談なく、同氏には“寝耳に水”の発言。ミニ内閣改造では腹心の細野豪志氏を原発担当相に抜擢、原発行政を分担させるなど、海江田経産相が首相に反発し、距離を置こうとするのは無理からぬところ。

リーダーの決断なく思いつき政策
 首相は自民党の10%アップ案に便乗して昨年の参院選で消費増税を掲げて戦い、敗れても平然。国際会議ではTPP(環太平洋経済連携協定)参加を公約しながらその後は全く政策のフォローなし。リーダーの決断はなく、思いつき、場当たり政策が常套手段。「原発は1930年代に依存率を53%に高める」と一年前に閣議決定し、ベトナムへの原発プラント輸出をトップセールスしながら、大震災後は側近を通じ、「自民党政権が電力安定供給の名の下に安全確認を怠り、原子力政策を進めたことが事故の根源だ」とのPRも始めました。前号のHPで述べた通り、首相が8月6,9日の広島、長崎「原爆忌」に出席し「脱原子力を高らかに宣言した後に衆院を解散、9月中旬に総選挙を断行する」との警戒感が政界に強まっています。だが、メディアアの内閣支持率が15〜6%を示す通り、迷走人事で菅首相の求心力は急落しており、多くの閣僚は解散詔書に署名しないでしょう。吉田ワンマン宰相でさえ、「反対閣僚を罷免し自ら多くの閣僚を兼務する」形の解散は断念しています。

上からの目線で知事らを叱責
 「(私は)九州の人間だから東北の何市がどこの県か分からない。あれが欲しいこれが欲しいはダメだぞ、知恵を出せ。知恵を出したところは助けるけど、出さない奴は助けない。それぐらいの気持ちを持って…」――。松本龍復興相は3日、視察先の岩手県庁で達増拓也知事に「上からの目線」で叱責。この後、宮城県庁では村井嘉浩知事に対し、「政府に甘えるところは甘えていい。こっちも突き放すところは突き放す。そのくらいの覚悟でやっていこう。漁港を集約するのは、県で意見集約をちゃんとやれ。しっかりやれよ。やらなかったらこっちも何もしない。知らんぞ。(応接室で4,5分待たされたのを不満に)お客さんが来る時は自分が入ってから呼べ。自衛隊上がりのあんたは、長幼の序が分かっているだろうけど。言われなくてもしっかりやれよ」と居丈高。取材陣には「今の部分はオフレコな。書いた社はこれで終わりだから」と恫喝しました。松本氏は就任時、「私の心はただ1つ。被災者に寄り添うことだけ。3月11日以来、民主も自民も公明も嫌いだ」とサングラスをかけて記者会見するなど、閣僚らしからぬ言動で注目を浴びていました。

中央集権意識の傲慢無礼な暴言
 それが視察では、政府と自治体は「上下・主従」の関係にあるような傲慢無礼な発言。民主党は2009年のマニフェストに「国と地方は対等」の関係であると「地方主権」を掲げ、地方分権を進めようとしていた矢先のこと。当然、村井宮城県知事は不快感を示し、佐藤雄平福島県知事は「(松本氏の)意識に中央集権的な考えがあったのだろう」と批判、被災地では暴言に呆れ、怒りが一気に高まりました。重大性に気づいた松本氏は5日に辞表を提出。「言葉が足りなかったり、荒かったりしたのは不適切だった。被災者の心を痛めたことをお詫びしたい。粗にして野だが卑ではない松本龍。一兵卒として復興に努力していきたい」と陳謝しました。松本氏は首相が辞任表明した直後、「首相は6月中に辞めるべきだ」と閣僚の中では真っ先に早期辞任を唱えた人。ゆえに、暴言は菅政権の弱体化を狙った意図的な発言との見方もあります。後任人事で首相は当初、被災地・宮城県選出の安住淳国対委員長や各省庁の信望が厚い仙谷由人官房副長官を念頭に打診しましたが、両者とも固辞、結局、岩手出身の平野達男内閣府副大臣(小沢グループ)を昇格させました。

執行部離反し政権は崩壊現象
 「国対の努力で初めて法律が通るのに、官邸から(松本復興相起用の)相談はなかった」、
「こんなだらしない内閣で大丈夫なのかと被災地の方々が怒っている。謙虚な姿勢が伝わって来ない。醜態が恥ずかしい」――。最重要課題の復興政策を担う閣僚人事でさえうまく運べない菅政権に対し、被災地出身の安住国対委員長は記者会見で次々に批判のトーンを上げました。渡部最高顧問も「ああいうのを大臣にした首相に一番重い責任がある。一分でも一秒でも早く辞めて・・・」と大御所の立場で任命責任を追及。全国幹事長会議では首相批判が噴出。岡田克也幹事長は11日、「お盆前に党代表選を行い、盆明けに新体制をスタートさせたい」と公言。前原誠司前外相は鳩山前首相に電話し「菅降ろし」で共闘を呼びかけました。極め付きは同党出身の西岡武夫参院議長が「擬似市民運動の野望家らしい振る舞い」「場当たり政治家」と首相をさげずみ、「民主党から衆院に内閣不信任案と参院に首相問責決議案を同時に提出」するよう呼びかけた論文を明らかにしたことです。執行部は首相から完全に離反し、もはや政府与党の体をなさず、菅政権は崩壊現象を呈しています。

被災地住民の方がストレス過剰
 東日本大震災から4カ月が過ぎても、仮設住宅は6割しか完成せず、瓦礫撤去は35%で空き地に移動したまま焼却もできない状態。冷凍庫の故障で腐敗した魚類は悪臭を放つばかりか大量の蠅が発生し、伝染病の媒介が懸念されています。津波に運ばれたヘドロの山は田畑を覆い、海底のサルモネラ菌や破傷風菌を運び、乾燥すれば粉塵となって舞い上がり、気管支炎を起こしかねないほど危険。福島県南相馬市の酪農家が出荷した牛11頭の肉から国の基準の3〜6倍に当たる放射性セシウムが検出されて不安は拡大。原子力のストレステストどころか、被災地住民のストレスは許容限度を超えています。環境相兼務の江田五月法相が片手間に環境行政を担当できるかどうか。しわ寄せは被災者が被ります。
電力ではロシアにLNG発電所建設案を「北村の政治活動」に載せました。ご一読下さい。