第253回(6月1日)会期延長目指す 自公が不信任案提出
 終盤国会は東日本大震災の復興基本法案、3閣僚増員の内閣法・内閣府設置法改正案、原発賠償支援関連法案、赤字国債発行の特例公債法案など重要法案を巡り与野党が激しい攻防を続けています。その一方、菅首相は日中韓首脳会談、仏ドービルのG8首脳会談など5月21日から月末まで続いた外交日程をこなすのに懸命。福島原発事故が主要議題のG8サミットでは、太陽光など再生可能エネルギー割合を20年代早期に20パーセントへ利用拡大すると国際公約し、日本での原子力国際会議の開催を提唱するなど、注目されました。各紙の内閣支持率もやや持ち直し、首相は「浜岡停止の“英断”が評価された」と錯覚し、国会は会期延長せず逃げ切り、第2次補正予算の提出を8月の臨時国会まで遅らせ、政権の延命を図ろうとしています。復旧は2カ月以上停滞、塗炭の苦しみの11万被災者と原発周辺住民の不安、不満、怒りは鬱積するばかり。これ以上の政治空白は許せません。今国会で2次補正の成立を目指す自公両党は政府が会期延長に応じない場合は内閣不信任決議案を提出し内閣総辞職か解散に追い込む構えです。民主党内では「菅降ろし」グループが決議案に同調しようと署名運動を展開、液状化が進んでいます。政局は波乱含みで緊迫しますが、一層のご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

政府与党混乱で基本法遅れる
 「いよいよ大きな法案を迅速に処理していかなければならない。全ての責任は政権与党にあることを肝に銘じなければならない」――。5月13日の民主党参院議員総会で輿石東参院議員会長は、ねじれ国会の参院で与野党対決型法案を通す難しさを強調。安住淳国対委員長も記者会見で「公債法案を認めてもらわないと国家的危機を招く。丁寧に審議を進めたい」と殊勝にも低姿勢をアピール。しかし、郵政改革法案の早期成立を求め、「連立離脱」の脅しを掛ける国民新党に配慮して同日、特別委の設置に反発する自民党などの反対を押し切って衆院郵政改革特別委員会をスタートさせ、自民、公明、共産、みんなの党が欠席する大荒れの中、連休明け国会は対決ムードで出発しました。また、震災から約70日を経た19日、ようやく政府提出の復興基本法案、3閣僚増員関連法案と自民党提出の「東日本大震災復興再生基本法案」の審議に入りました。阪神・淡路大震災では40日以内に復興対策基本法など16法が成立していたのに比べ、大幅な遅れです。これにはリーダーシップを発揮できない菅政権が「政治主導」にこだわって官僚を使いこなせず、復旧対策が後手後手に回ったこと、国民新党の亀井静香代表が野党幹部を取り込む思惑で「復興実施本部」構想を持ち回るなど、政府与党内部の混乱が提出を遅らせた原因です。

集中審議待って炉心溶融明かす
 13日の参院予算委と16日の衆院予算委での福島原発集中審議では@福島原発1号機の「ベント(排気)」が遅れた理由A首相による異例な中電浜岡原発の停止要請――などを巡り野党が徹底追及しました。野党追及の火に油を注いだのが、東電の隠蔽体質です。東電は衆参予算委の集中審議が終わるのを待って16日夕、地震直後からのデータを公表。その中で1号機に限らず2,3号機でも完全な炉心溶融(メルトダウン)は起きていたことが判明しました。津波に襲われた直後の電源停止で原子炉内の冷却水が失われた結果、1号機では核燃料が溶けて圧力容器の底の方に溜まるメルトダウンが起きているのが監視ロボットで確認され、原子炉建屋に人が入って復旧作業を始めたところ、格納容器から水が漏れて建屋地下に3千トン以上溜まっていることが発覚しました。さらに、公表データでは2号機が3月15日午後6時43分、3号機は同16日午後11時50分にいずれも圧力容器内の圧力が下がり、1号機同様のメルトダウンが起きて、その熱の影響で機器が溶けて穴が開き、破損燃料から出るテクネチウムなどの放射性物質に汚染された水が外部に漏れた可能性が指摘されました。

迷走説明に自公は不信任案提出
 おまけに、1号機の炉心を冷やす海水注入が一時中断された問題で首相と東電や原子力委員会の班目春樹委員長の発言内容が二転三転し食い違ったため、23日の衆院大震災復興特別委で自民党の谷垣禎一総裁が厳しく追及したところ、26日になって、東電は「実は吉田昌郎所長の判断で注水を継続していた」と180度異なる事実を発表しました。特に班目委員長は「(首相視察の前に)格納容器が破裂する可能性を(首相に)助言していた」と衆院予算委の質疑で答えたり、復興特別委では「私が『真水を海水に替えたら再臨界が起こる』と発言したような情報が流れたことは遺憾」などと自己弁護するような答弁ばかり繰り返したため、国民新党の亀井代表が「まだら目ならぬ、でたらめ委員長は首にしろ」と抗議する始末。谷垣総裁は「国民が正確、迅速な情報開示を求めているのに、捏造、改ざん、隠蔽、虚偽の説明をし迷走している。政府の不誠実、無責任を糺さなければならない」と内閣不信任案を提出する決意を記者会見で表明、公明党の山口那津男代表も同調する構えです。公表のデータについても周辺住民はもとより国民の間で不信感が高まっています。

水棺やめ循環注水冷却へ転換
 東電は「地震直後のデータは原発内の中央制御室にあり、電源復旧に時間が掛かったし、記録紙に放射性物質が付着しているため整理に時間が掛かった」と釈明しましたが、データを点検すれば1〜3号機のメルトダウンは一目瞭然。米国は震災直後から数日間、無人偵察機グローバルフォークを飛ばし原子炉爆発や放射能汚染の全容を探知、在日米国人を避難させ、各国もこれに同調、情報開示を避けた日本政府を一斉に批判しました。東電が「燃料棒は破損したようだ」と軽微に発表、2ヶ月も炉心溶融を秘匿したことは言語道断です。4月17日に示した工程表(ロードマップ)は、6〜9カ月で原子炉を安定させるとしましたが、炉心を冷やすシステム作りに数年を要することは必至。東電は1カ月後の5月17日、原子炉の「冠水(水棺)」は事実上断念、「循環注水冷却」に切り替える新しい工程表を発表。原子炉が完全に冷える「冷温停止」を達成する時期は、前回の工程表と同じく遅くとも来年1月としました。だが、果たしてできるかどうか。新工程表は「冷却」「放射性物質抑制」「除染・モニタリング」の3分野の対策に、「余震対策」と作業員の「環境改善」の2分野を加えました。1号機のメルトダウンが確認され想定を上回る大量の漏水が発見されたことから、格納容器を水で満たして原子炉を冷やす冠水作業を1〜3号機全てで当面見送り、代わりに汚染水を浄化して原子炉に戻す循環注水冷却を採用しました。

外洋汚染で風評被害は内外拡大
 米国のスリーマイル島事故は核燃料が溶けたものの、圧力容器内にとどまって放射性物質の放出はわずかだったと言われています。福島事故は土壌の汚染に加え、3号機取水口から外洋に流出した高濃度汚染水の250トンは、放射能が20兆ベクレルで国の基準である1年間放出量の100倍を超えており、これが黒潮に乗って太平洋に拡散する疑いが持たれ、農漁業に及ぼす被害は深刻。国内外に広まった風評被害は当分、回復する兆しはありません。東電事故損害賠償の判定指針を作る政府の原子力損害賠償紛争審査会(会長・能見善久学習院大教授)は16日、農水産物の風評被害に対する賠償とともに、避難生活で住民らが受けた精神的苦痛についても賠償することで合意しましたが当然です。一方、政府は17日の原子力対策本部(本部長・菅首相)で、「原子力被災者対応に関する当面の取組方針」を決定しました。@避難住民や農漁業、中小企業などへの賠償は今秋にも受付と支払いを始めるA仮設住宅は8月上旬までに要望のあった1万5200戸を福島県内に確保する――など8項目の工程表で、原発被災者を「国策による被害者」と、わざわざ歴代政権の責任を示唆する文言が明記され、本部会合で首相は「最後の最後まで政府の責任できちんと対応する」と強調しました。避難住民に対する賠償金の仮払いは5月中に終え、出荷制限を受けた農業者に対する仮払いも5月中に開始するよう東電に求めました。

浜岡原発停止訴え支持率回復
 「30年以内にマグニチュード8程度の地震が発生する可能性が87%ある」――として、菅首相は6日夜の記者会見で、東海地震の想定震源域である静岡県御前崎市の中電浜岡原発の全原子炉を15メートル以上の防波堤が新設できるまで停止するよう、中電に要請したと発表しました。首相には法律上、原発の停止を指示する権限がなく、運転停止で不利益を被ったとして株主から損害賠償を訴えられる可能性もありますが、中部日本にはJR新幹線、東名高速道路などの大動脈やトヨタなどの基幹産業が集中しており、首相は「国民の安全と安心を考えた。浜岡原発で重大な事故が発生した場合、日本社会全体に及ぶ甚大な影響を併せて考慮した」と強調しました。これは、海江田万里経済産業相が中電と折衝した結果の運転停止ですが、海江田氏には会見の花を持たせず、報告を受けると直ぐ緊急記者会見を開いて発表。日頃、リーダーシップ欠如を批判される首相にしては初めて国民に「自らの決断」を示したもので、各紙世論調査の内閣支持率は若干回復しました。

首相味占め発・送電分離を提唱
これに味を占めた首相は18日に再度の記者会見を開き、昨年6月に策定した政府のエネルギー政策を見直す中で、電力会社から送電部門を切り離す発・送電分離を検討すべきだとの考えを示しました。また、原子力行政の見直しにも言及、「チェック機関と電子力行政を進めていく立場の両方が同じ役所のもとに共存しているのはおかしい」として、原発を推進する経済産業省から規制や監視を担う原子力安全・保安院を分離する構想を掲げました。発送電分離は沖縄を含む10電力が地域独占している発電、送電、配電の3部門を解体し、@企業が自家発電で生み出す電力を市場に供給させるA太陽光、風・波力、地熱と言った再生可能エネルギーも自由販売させるB東電が分離した送電線や鉄塔、変圧器など送電施設を売却して賠償に充てる――などを狙いとしています。発電側は送電側と契約して電力を送り、送電網を作る投資が不必要なため新規参入がし易く、競争により電気料金が安くなると期待されます。小規模でも消費地近くで自然エネルギー発電をする地産地消の会社が生まれ易いとして欧州の主要国では1990年代以降に電力自由化が採用されてきました。自民党政権当時に日本でも検討されましたが、需給によっては電気料金にばらつきが生じ、安定供給が出来なくなると電力業界が反発し、わが国では見送られました。

徹底リストラに東電免責主張
 福島原発の3基が炉心溶融や水素爆発で原子炉、タービン建屋が壊れた頃、東電の清水正孝社長は体調を崩して入院。一時は雑誌に自殺未遂説まで流布されるほど憔悴しましたが、退院後は視察先で「土下座しろ」と避難住民から罵声を浴び、国会答弁で被告席に立たされるなど針のむしろ。ついに東電は20日、清水社長の引責辞任を発表、後任に西沢俊夫常務を昇格させました。政府は13日、東電を公的管理下に置く原発事故賠償策のスキーム(枠組み)を正式決定、同日の参院予算委で首相が「東電自身に大きな努力をして頂かないといけない。どこまで切り込むか、国民の納得が得られるか、きちんと判断してもらいたい」とリストラの徹底を求めました。これには清水氏が「社員の老後の生活資金に直結する問題であり、現時点では検討していない」と社員の退職金や企業年金の削減を否定、原子力損害賠償法3条の但し書きにある「異常に巨大な天災地変の場合は免責される」との規定を楯に賠償負担の上限設定に固執。経営陣は体を張って東電を守る構えです。

旧民社系議員が賠償で東電加担
 スキーム取りまとめの過程では東電の賠償責任、特に「免責規定」を巡って関係閣僚が対立するなど政府、民主党、東電の思惑が絡んで約1カ月迷走、法案提出が遅れています。関係閣僚会議では免責を認めていない原案に対し、日本原発(東京)に勤務した経験を持つ与謝野馨経済財政相が「3条の但し書きを適用すべきだ」と噛みついたのに対し、枝野幸男官房長官が「法改正しない限り免責条項が適用できるとは解釈できない」と反論、怒鳴り合いになりましたが枝野氏が押し切りました。また、事故前の借入金については枝野氏や仙谷由人官房副長官が、金融機関の貸し手責任を念頭に、「東電は銀行に一部債権放棄を求めるべきだ」と主張したのに対し、自見庄三郎金融相は「民間金融同士の関係なので、国が債権放棄交渉を求めることは出来ない」と反発、与謝野氏も「善意や良識に頼ったおセンチな議論でなく法的根拠に基づくべきだ」と応援しました。加えて民主党内には、旧民社党4代目の佐々木良作委員長が戦前の電産労組初代書記長を務めた闘士であった関係から、民社党系議員の多くは電力労組の支援を受けており、枠組み取りまとめの過程では東電側に加担し、政府与党内で激しい対立がありました。結局、賠償の枠組みは、東電の破綻回避を最優先して新機構によって公的資金を投入できる仕組みを作り決着しました。この結果、数兆円に上る賠償のツケは国民の税金か電力料金の値上げに跳ね返りそうです。

原発の父・中曽根氏が首相批判
 「首相の『政治決断』に一応の支持と評価はするが、関係機関や与党の了解は取ったのか。原子力を含むエネルギー問題は手続きを慎重にすべき対象だ。場当たり的な人気取り政策に終始したとの批判は免れない」――。中曽根康弘元首相は13日のサンケイ朝刊で、首相がエネルギー政策上の原発の意義を不明確にしたまま、浜岡原発の停止とエネルギー政策の白紙還元を表明したことに対し、厳しく批判しました。中曽根氏は昭和29年に渡米した際、当時のアイゼンハワー米大統領が「アトム・フォー・ピース」を提唱したのを見て、日本が敗戦から立ち直るには、エネルギーとして原子力の平和利用は避けられないと判断、社会党左派まで賛同させて昭和30年に原子力基本法を成立させ、ウラニウム235から取った235億円の開発費を国家予算に計上させるなど原発生みの親。手塚治虫の「鉄腕アトム」が原子力ブームを煽り、読売新聞を買収した元内務官僚の正力松太郎氏が原子力委員長当時の同32年に第1号原発が開所。田中角栄政権がオイルショック後の同49年に電源3法を制定してから「政治とカネ」が結び付いた原発は全国普及しました。

菅首相に引導渡す議連続々誕生
 中曽根氏はサンケイのコラムで、「エネルギーは今後、風や波や太陽光など自然力への比重を増すが、効率性などを考えると原子力に頼らざるを得ない」と指摘、エネルギー政策見直しの必要性を認めながらも、「菅政権は長期化の見方があるが、続いても2,3カ月。原発の騒ぎが収まれば外交、内政の課題山積が分かり、野党の倒閣決意と民主党内に鬱積した不満が内閣の延命を阻止する」と菅政権に引導を渡しています。こうした中、自民、民主両党の議員らが超党派の議員連盟を相次いで結成しています。17日には民主党の樽床伸二元国対委員長、松野頼久元官房副長官、自民党の菅義偉元総務相、河野太郎元幹事長代理らが呼び掛け人の「国難対処のために行動する『民主・自民』中堅若手議員連合」の初会合が国会内で開かれ、両党から109人が参加しました。菅政権の大震災対応を検証、国会が1つになって復興に当たるというもので、会期延長を求めることを決めました。代表選に出馬した経験のある樽床氏は「“菅抜き”民・自大連立」を唱えています。

急流でも馬換えよ---西岡議長
 一方、自民党の鴨下一郎元環境相や民主党の古川元久元官房副長官ら12人呼びかけの「日本の復興と未来を実現する議員連盟」も同日、150人が参加して準備会合を開き、エネルギー・経済政策、政治制度を議論することを確認しました。西岡武夫参院議長の声掛けによる「増税によらない復興財源を求める会」には中川秀直自民党元幹事長、渡辺喜美みんなの党代表ら「政界再編論者」が参加。東北の特区構想から出発した「道州制懇話会」は、小池百合子自民党総務会長、公明党の坂口力元厚労相、民主党の松原仁衆院議員らが発起人で参加予定者は120人を超えています。ほかにも2,3の超党派議連がありますが、表向き政策の研鑽を掲げながら、菅政権に反発する政界再編の動きと見られています。「反菅」の闘士・西岡議長は19日の読売朝刊に「震災発生以来、菅氏は首相としての責務を放棄し、必死さも、決意も、術もなく、『急流で馬を乗り換えるな』の危険よりも現状の危険が大きい。即刻辞任すべきだ」と寄稿。記者会見でも26日からのG8サミット前退陣を求めました。

改造、1・5補正で小幅延長狙う
 菅包囲網が強まる中で首相は21日、李明博韓国大統領、温家宝中国首相と揃い踏みで被災地を訪問した後3国首脳会談を開催、G8サミットに出席して新原子力政策をブチ挙げるなど意気盛んです。本格復興に向けた2011年度第2次補正予算案は夏以降の臨時国会に提出する方針で今国会は早仕舞する考えでしたが、野党の会期延長要求が激しいため、短期間延長し、大幅な第2次補正は先送りする1・5補正予算を提出、公債発行特例法案など重要法案を成立させる腹構えです。首相は“菅降ろし”封じの狙いから、3閣僚増の内閣改正法案を成立させ、これをバネに内閣改造に臨みたい考えですが、野党は「政権延命に利用する気か」と反発しています。この2カ月の政治空白が道路、漁港など公共施設の復旧を妨げ3陸海岸は瓦礫が積み上がったまま。地盤が74センチも沈下した宮城県石巻市は月2回の大潮の際、道路が水没して小舟で往来。出荷停止された福島県のほうれん草畑は背丈ほども伸び放題。2千億円以上集まった国民善意の義捐金も3割程度の支給。気仙沼市の漁民は6月最盛期のカツオ漁に出港出来ず被災者の不満は募るばかりです。「国会逃げ切り閉会論」に対して自民党の石原伸晃幹事長は「仮設住宅が出来ても仕事場はあるのか。生活支援はどうする。首相が本気で国会を閉じると考えるなら亡国だ。万死に値する。」と対決姿勢を強め、公明党と倒閣で足並みを揃えています。首相がどんなに延命を図ろうとも国民の信頼を失った無能な菅政権は夏までに退陣させなければなりません。