第250回(4月16日)大連立が加速 復旧に決死の自衛隊
 巨大地震、大津波、炉心溶融の3重苦。加えて燃料・食料・医療不足に風評被害の5重・6重苦。1ヶ月を経ても東日本大震災の爪痕は悲惨で福島原発の放射能汚染が収束せず、日本列島は戦後最大の国難に見舞われています。劣悪な環境の被災地で10万7千人の自衛隊は3万人近い死者・行方不明者の捜索と遺体収容、原発の冷却放水、水・食料の供給など過酷な作業に決死で取り組み国民に大いに感謝されました。防衛省の副大臣、政務官を勤めた私は精鋭の活躍を誇りに思い、不眠不休の活動に深い敬意を表しています。世界が注視するなか、原発大国のフランス大統領が急遽来日、同大統領が議長を勤める6月サミットでは福島原発事故が主要議題に確定しました。自民党は他党にさきがけ巨大地震災害緊急対策をまとめ、災害復旧に全力を挙げています。野党の全面協力で11年度予算が年度内成立した菅政権は、遅まきながら「復興構想会議」を立ち上げ、防災復興府の設置や震災国債の発行など復興基本法案と補正予算案の策定に着手しました。首相は国難克服に野党協力を懸命に求め、政界では「大連立」の動きが加速しています。しかし、三陸沖は日本の食卓の4割を賄う漁場で基本産業の漁業を再興するのが喫緊の課題。大打撃を受けた小型漁船を整備するため、私は自民党の水産部会長を2度務めた経験を生かし、日本海、太平洋の2ルートから小型漁船を東北3県に供給する計画を推進しています。お蔭様で統一地方選前半戦は自民党が善戦、県連会長の面目を保ちました。さらにご支援をお願い申し上げます。

冷やしと封じ込めのジレンマ
 規制値を超えた水を飲み続けると子供は甲状腺癌にかかるヨウ素131。汚染野菜を食べ続けると体内に30年も蓄積され癌に冒されるセシウム137――。東電は事故3週間後の4月2日、これら高濃度の放射能汚染水が2号機取水口付近の作業用ピット(穴)壁面の亀裂から海に流れ出ているのが分かったと発表しました。政府は福島県産のホウレン草や原乳の摂取規制を解除しようとした矢先、今度は海産物にも被害が出る恐れがあるとして対策に大童。東電は廃炉の方針を決めたものの、原発事故の鉄則である「停止」「冷やし」「封じ込め」のうち、海洋汚染を「封じ込め」ようと原子炉の放水を止めれば、燃料棒を「冷や」せず空焚き状態になって再び水素爆発や核融合の臨界を起こしかねず、トレードオフ(二律背反)のジレンマに苦悩し続けています。サルコジ仏大統領は3月末、米スリーマイル島や旧ソ連のチェルノブイリの原発事故で現地対策に協力した仏原子力大手アレバのロベルジョン最高経営者とともに来日、「事故対策への技術支援」を表明、防御服1万着、放射線測定車2台、遠隔操作ロボットなどを日本側に提供しました。米仏両国は事故救済の協力に積極的です。

原発への信頼回復に米仏躍起
 菅首相と会談したサルコジ大統領は、5月に議長国としてフランスで開くサミット(G8)では福島原発事故を主要議題とし、菅首相からの報告を受けて国際的な原発の安全基準を年内に設けることで合意しました。オバマ米大統領も3月末、エネルギー安全保障に関する演説で、2025年までに石油の輸入を3分の2に減らす目標を発表、福島原発事故に関連して「安全ならば、地球温暖化対策に大きく寄与することを留意しなければならない。日本から学んだ教訓を採り入れる」と述べ、米国内原発の安全性再評価を進め、次世代原発を推進する方針を強調しました。米仏両国が事故後、直ちに日本に救援の手を差し伸べたのはなぜか。米国は世界1、仏は第2位、日本は第3位の原発保有国で、フランスは電力の8割を原発に依存しています。化石燃料がもたらす地球温暖化を防止し、低炭素社会を目指すには太陽光、風・水力、地熱など自然エネルギーやバイオ燃料などクリーンエネルギーの利用拡大が最善ですが、当面は原子力を「つなぎ」エネルギーとして開発、新興国へのプラント輸出に力を入れており、菅首相もベトナムへトップセールスをしていました。ところが、事故以来、中国が原発計画の見直しを検討するなど新興国が慎重姿勢に転じています。原発への信頼を維持するためにも福島原発の復旧は緊急の課題であるわけです。

チェルノブイリと同じレベル7
 にもかかわらず、東電は「想定を大きく超える津波だった」と釈明、命がけの冷却放水は自衛官や警察、消防官に全面お任せ。「ロボット先進国」でありながら遠隔操作用ロボットの装備を怠っていました。「見えない人類の敵、放射能」被曝者の戦いを65年も見続けた私は、直ちに「線量計」を取り寄せ警戒しています。それなのに、東電は関連会社の作業員に線量計すら全員に持たさず、危険作業に従事させるという杜撰な危機管理でした。おまけに、メガロフロート(浮きドック)まで利用しても高濃度放射能汚染水の「玉突き排水」が処理できず、挙げ句には低レベルだと称し、漁業者や諸外国にも知らせずヨウ素やセシウム入り汚染水7千4百万トンを外洋に垂れ流しました。韓国が直ちに抗議しましたが、刑事事件で告訴されても仕方のない暴挙であり、人災です。さらに、情報を小出し発表して評判が悪かった経産省原子力安全委・保安院は、地震1ヶ月後の12日になってようやく、「原発事故はチェルノブイリと同じレベル7(深刻な事故)であった」と認めました。

安全神話押し付けの東電に怒り
 保安院は原子炉建屋が水素爆発を起こした初期段階では「レベル4」と過小評価をしていましたが、内外から隠蔽体質を厳しく問われ、具体的数値を発表したものです。これまでに放出された放射能物質の量は3万テラ・ベクレルと言う途方もない数値。テラはゼロが16桁並ぶ1兆倍で京と呼ぶ単位ですから、最悪の事故であったわけです。核危機に敏感な各国大使館は日本政府の発表を信用せず、いち早く避難警告を出し、在留外国人の30万人以上が数日内に退避していました。農水産物の風評被害は国内だけでなく海外輸出にも響き、観光地の不振を招いています。東電は「安全神話」で地元を説き伏せ、6機も原発を押し付け、生まれる電力は首都圏の発展に寄与させ、事故が起きれば強制疎開と農水産物の出荷規制で大損害を与えました。しかも、「汚染が収束するのを待って廃炉にする」と平気で唱え、美しく豊かだった農漁村を廃墟と化し、生活まで奪おうとしています。踏んだり蹴ったりの仕打ちに県民の怒りは頂点に達しています。東電の経営責任、事故責任は極めて重く、厳しく問われなければなりません。それと対照的なのが自衛隊の活躍でした。

自衛隊と米軍連携で同盟深化
 総定員の半分近い10万6900人、航空機539機、艦船53隻が被災地に派遣され、冬将軍が居座る寒天下の屋外天幕で仮眠を取りつつ、乾パンやレトルト食品で飢えをしのぎ、行方不明者の捜索、遺体収容、瓦礫の撤去、食品・飲料水の補給など過酷な作業を黙々と続けています。これと連携した米軍の「トモダチ作戦」も総力を挙げ、陸海空と海兵隊の4軍で1万6千人、航空機113機、原子力空母ロナルド・レーガンを含むー艦船12隻が参加し、自衛隊との協力で1日から3日までに沿岸部を集中捜索し、約400遺体を収容しました。鳩山前首相から「勉強の結果、抑止力として必要と分かった」「あれは方便だった」と普天間飛行場移設で妄言を浴びせられた米海兵隊ですが、活躍は目覚しく地方自治体から絶縁した孤立集落もへリで空から見つけ出して救援物資を投下するなど、掃討作戦で鍛えた百戦錬磨の腕で大活躍。民主党政権の拙劣外交でギクシャクした日米関係でしたが、自衛隊と米軍の連携プレーで60年安保半世紀を経た日米同盟は予期せぬ深化の実績を挙げています。今回の巨大地震で死者約7400人、不明者約9千人、避難者約6万9千人と最大の被災者を出した宮城県の村井嘉浩知事は、防大卒で陸自東北方面航空隊のヘリ・パイロットを経て県議も経験。県と自衛隊の太いパイプを活かし復旧作業は万全の態勢で臨んでいます。

11年予算と繋ぎ法年度内成立
 さて、過去最大92兆円の11年度予算案は3月29日の参院本会議で否決されたものの、憲法の衆院優先規定で年度内に成立。予算関連法案も同31日の参院本会議で、牛肉など415品目の輸入品にかかる税金を軽減する改正関税法案、一括交付金を導入する改正内閣府設置法案、自治体に配分する地方交付税額を定める改正地方交付税法案など6本が成立しました。予算関連法案の「本体」が成立しないため、3月末で切れる法律の効力を一定期間延ばす「つなぎ法案」も、@子ども手当(中学生まで月額1万3千円)の支給を6ヶ月間延長A税の免税措置の3ヶ月延長――など3本が成立しました。在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)に関する新しい特別協定も承認されました。自公両党が反対した子ども手当つなぎ法案は、同日午前の参院厚生労働委員会の採決で可否同数となり、委員長(民主)の決定で可決。参院本会議では民主、国民新両党に加え、野党の共産、社民、みんなの3党、無所属の議員が賛成しましたが、国民新の議員が採決直前に退席したため、これまた可否同数。憲法の規定で西岡武夫議長が可決と決め、成立しました。

大震災で予算組替え政権救う
 しかし、38兆円超の巨額赤字国債を発行するうえ、財投特会や外為特会などから計2・5兆円を繰り入れて計40兆円超の歳入を確保するための特例公債法案は、自公両党の反対で未だ衆院を通過していません。政府は税収や短期証券の発行などで3カ月程度はしのげますが、今国会中に成立しないと公務員給与が払えないなど財政は破綻します。自公両党の反対理由は、財源を無視した民主党衆院選マニフェストのバラマキ4K政策が野放図な歳出増をもたらしたとし、これを見直すべきだと主張しているからです。これに対し、民主党の岡田克也幹事長は子ども手当や高速道路の無料化、農業の個別所得補償などマニフェスト予算の全面見直しに応じる柔軟姿勢を示し、新年度から3歳未満児に限り7千円上積みする子ども手当法案を撤回、増額分の2100億円を震災の復興財源に回す方針を野党に伝えました。東日本大震災によって予算の組み替えは必至の情勢。むしろ管政権は大震災に救われました。

第1次補正は4兆円超規模
 子ども手当はつなぎ期間に自・公・民3党の修正協議がまとまらない場合は自公政権時代の児童手当に戻るため、修正協議では公明党が出した「中学生まで一律に月額1万円を支給し、所得制限を設ける」案に民主党が歩み寄る気配があります。だが、自民党は民主、公明両党の接近を防ぐため「自公案」をまとめる努力を重ねています。それよりも、国会の焦点は補正予算案の編成。直接的被害額は原発事故を除いても16〜25兆円と言われ、今月中に編成する第1次補正は4兆円超規模。5,6月には第2,3次補正を編成し総額は15兆円規模にも達すると見込まれ、政権公約の目玉政策の見直しを迫られます。民主党は3月末、自民党が提起した災害緊急対策を参考に「東日本大震災復旧復興対策基本法案」と関連法案16本をまとめました。基本法案は@防災復興府を設置し防災復興相を置くA水没や原発事故で居住不能の土地を買い上げB国が電力供給計画を策定し東電への財政支援C震災国債を発行し日銀が引き受け、法人特別税や特別消費税創設―ーー―などが骨子。関連特別法案は、住宅債務の免除促進法案、公共施設災害復旧国庫負担特例法案などです。しかし、野田佳彦財務相が1日の会見で「日銀引き受けの報道が出た瞬間(国債の)金利が上がった」と不快感を示したように、日銀引き受けは国債の暴落に繋がりかねず「禁じ手」です。「特別消費税」増税案は被災地も一律に負担増となるだけに実施は困難です。

有識者の復興構想会議で青写真
 「素晴らしい東北、日本を創るという夢を持った復興計画を進める。世界で1つのモデルになるような新たな街づくりを目指したい」――。管首相は1日の記者会見で被災地再生の構想を明らかにし、建築家の安藤忠雄氏ら有識者や県知事など被災地関係者が青写真を描く「復興構想会議」(議長・五百旗頭真防衛大学校長)を11日に立ち上げました。同会議では被災地の国有化を含めた土地利用なども議論する方針です。会見では「首長らの意見を踏まえ、山を削って高台に住所を置き、海岸沿いの水産業(会社)、漁港まで通勤する」、「植物やバイオマスを使った地域暖房を完備したエコタウンを作り、福祉都市としての性格も持たせる」などと具体的な構想を説明、「野党各党の力を借り、ともに計画を立てていく形が生まれることを切望する」と野党の協力を強く訴えました。未曾有の国難を契機に、野党の総辞職・解散要求など党内外からの「首相退陣論」が鎮静したことを奇貨として、首相は少なくとも党代表任期いっぱいの12年(平成24年)9月までは政権を担当する意欲を胸に秘め、その実績となる災害対策を仕上げるために国会の大幅延長も覚悟し、野党との「大連立」をしきりと模索しています。

大連立は“四谷怪談”が発端
 自民党の谷垣禎一総裁は3月19日、管首相から電話で「副総理兼災害担当相」の入閣要請を受け、即座に断りましたが、同30日には石破茂政調会長とともに首相を官邸に訪ね、被災3県に国費で「思いやり基金」を創設するよう提言、復興への協力姿勢を一段と強めています。自民党内でも巨大地震や原発事故の被害が甚大であることから、被災地の震災復興に積極的に関与すべきだとの気持ちが強まり、民主党との大連立構想が日増しに熱を帯びてきました。大連立の火付け役は国民新党の亀井静香代表の「救国内閣」構想。「内閣の再々改造を行い、自公両党から実力者を閣僚に起用せよ」と首相に進言したのがきっかけです。2月14日に亀井氏と自民党の野中広務、古賀誠両元幹事長、石原慎太郎都知事が東京・四谷で会談した際に「救国内閣」の話が出たことから、口の悪いマスコミは「四谷怪談」構想と呼んでいますが、我が宏池会の古賀会長は3月末の派閥総会で「復興は長期になる。まず政治の信頼回復を図るべきだ。与野党の枠を超え、総裁が『えいやっ』と方向を決めて貰いたい」と、大連立に前向き姿勢を示しました。

谷垣氏否定、歴代首相も慎重論
 谷垣氏が3月30日から総理総裁経験者を相次ぎ打診したのに対し、森喜朗氏は「我が党には色々な人材がいる」と前向きでしたが、「民主主義を非常に弱くする。全く考えられなくはないが、期限を区切らねばならない」(安倍晋三氏)、「与野党ともに協力すべきだが、その形は十分考えなければならない」(福田康夫氏)、「自民単独でやると差し支える。公明との関係を重視すべきだ」(中曽根康弘氏)、「震災対策では今でも相当協力している。パフォーマンスになってもしょうがない」(河野洋平氏)、「健全野党のあり方を発揮すべきだ」(小泉純一郎氏)、「公明党は絶対、大連立に入らないから気を付けろ」(麻生太郎氏)と歴代首相は慎重姿勢を示しました。期限を切るだけでなく「自民党から首相や主要閣僚を」(山本一太参院政審会長)と中堅・若手からは「管首相の交代が絶対条件」との声が飛び出し、一部マスコミは「谷垣首相、仙谷由人(民主党代表代行)副総理、輿石東民主党代表」などと煽り立てる記事を載せました。一方、公明党の山口那津男代表は「健全なチェックが働かなくなる」と自民党をけん制。亀井氏も自民党との大連立には反対で、下地幹郎国民新党幹事長は「大政翼賛会的な政治は支持を得られない」と批判しました。谷垣総裁も菅首相に対する不信感が強く、「政策の摺り合わせもない連立なんてのはない。野党は野党でやっていく」と否定的です。このように大連立は百家争鳴の様相を呈しています。

エコタウンに住宅債券発行を
 それよりも喫緊の課題は、壊滅的打撃を受けた東北の基幹産業である水産業を如何に早く再生させるかです。宮城県だけでも小型漁船の喪失は1万2千隻、破壊した漁船は宮城、岩手両県を中心に2・5万隻に達し、漁船保険は1千億円規模に達すると見られます。首相の「土地の買い上げ、通勤エコタウン」構想には評価できる部分もありますが、即刻着手しないと乱開発が進みます。手順としては@国が3月に発表した地価公示価格で被災地を買い上げるA産業、商業、大規模農地、道路などの区画整理を早急に策定B住宅債券を発行し、土地提供者には等価の債権証を交付するC高層のエコタウンは上層部を居住区や病院などに開放、津波災害の恐れがある3階まで防御壁を厚くし水産会社、加工場、集会所に充てるD完成後は仮設住宅居住者と債券保有者を優先的に収容する――などが考えられます。住宅債券は東京五輪当時の河野一郎建設相が生みの親。高度成長の波に乗って恩師の白濱仁吉元郵政相が建設政務次官時代に西武線など私鉄沿線で爆発的に普及しました。

地上げ業者の付け入る隙なし
公的な地価公示価格が基準なら、地上げ業者の付け入る隙もなく公平に土地収容が出来る筈です。次の緊急課題は、壊滅的打撃を受けた小型漁船の復旧策です。私の計画は着々と実行に移りつつあるので別項の「北村の政治活動」をお読み下さい。お陰様で北村のホームページは10年半の月日を重ね、250回に達しました。この5年間でもアクセス数は8万回近くを数えています。今後ともよろしくご愛読下さるようお願い申し上げます。