第247回(3月1日)総辞職かダブル選か 政党崩壊の序曲
 11年度予算案は1日未明の本会議で可決、ようやく衆議院を通過しましたが、赤字国債発行の特例公債法案など予算関連法案の成立は全く見通しが立たず、国会の与野党攻防は一層激化しています。その最中、党員資格を停止された民主党の小沢一郎元代表を支持する衆院議員16人が会派離脱届けを提出して反旗を翻せば、菅首相は解散カードをちらつかせて対抗するなど党内抗争はさらに深刻。まさに「政党崩壊の序曲」(谷垣禎一自民党総裁)の様相です。政権の体をなさない菅内閣に国民は呆れ、各紙の調査は支持率20%以下に暴落しました。中東各地の動乱による原油高騰、世界的な食料高騰などで国民不安は増大していますが、経団連の米倉弘昌会長は民主党若手の造反に「予算を通さなきゃいけない時期に与党議員として無責任極まる」とし、解散論には「国民が税金を払っていながら、国民のために何もしない。給料泥棒のようなものだ」と痛烈に批判しました。クビを差し出し関連法案の成立を図り総辞職するか。それとも破れかぶれの解散で4月の統一地方選とのダブル選挙に突入か。ついに3月危機が訪れました。さらなるご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

地盤持たない16少年漂流記
 「民主党の姿とはかけ離れた菅政権にはもう黙っていられない。無原則に政策の修正を繰り返す菅政権に正当性はない。しかし、党を捨てるつもりはない。マニフェストの実現に取り組む我々こそが、真の民主党であるからだ」――。これは「民主党政権交代に責任を持つ会」(渡辺浩一郎会長)が2月17日、横路孝弘衆院議長に提出した民主党会派からの離脱願いに付けた「約束を果たす民主党への回帰宣言」の要旨です。渡辺氏ら16人は、2009年衆院選の比例単独で立候補し、当選した議員たち。当時の衆院比例名簿は、党代表代行として選挙担当だった小沢氏がほぼ一手に作成したもので、渡辺氏が比例東京ブロック29位、会長代行の豊田潤多郎氏が比例近畿の51位、幹事長の笠原多見子氏が比例東海の34位など下位当選組が大半。「地盤も持たない16少年漂流記だ」と執行部から揶揄されています。内閣支持率が低迷する管政権の下では、次期衆院選で生き残ることは困難。かといって党を飛び出せば公認が得られず、党分裂も視野に入れれば小沢元代表に忠誠を誓って存在感をアピールした方が得策と判断したものです。東京・赤坂に同会の事務所を構え週1回集まるなど、事態が長期化すると見て倒閣運動に踏み切りました。

小沢軍団の「菅包囲網」強まる
 岡田克也幹事長は「同じ民主党に属しながら会派離脱は出来ないし、党規約上有効ではない」と受理せず、記者会見では「パフォーマンスといわれても仕方ない。(処分には)目くじらを立てるほどでもない」と至って冷静。首相も「マニフェストの見直しは、先の党大会で承認された。全く理解できない行動だ」と批判しました。しかし、岡田氏ら執行部が特例公債法案など予算関連法案の成立が困難な情勢の下で、衆院「3分の2」の多数で再可決を目指し、社民党6議席の抱き込みに懸命な最中の社民党より遙かに多い身内議員による造反劇です。社民党幹部は「足下がぐらつく状態では協議打ち切りだ」と政策協議から撤退しました。おまけに、小沢氏に近い中山義活経産政務官や松原仁衆院議員ら有志が18日、枝野幸男官房長官に「09年マニフェストへの原点回帰の要請」の要望書を手渡し、小沢氏側近の松木謙公農水政務官氏は23日、小沢氏の処分と「環太平洋経済連携協定(TPP)への参加」に反対して政務官の辞表を提出、「菅包囲網」を強めました。

中間派「ポスト菅」で揺さぶり
 小沢軍団の三井弁雄国交副大臣、樋高剛環境政務官ら約10議員も国会内で協議し「菅首相による解散は阻止しなければならない」との考えで一致、五月雨式に松木氏に同調する構えです。桜井充財務副大臣、松井孝冶前官房副長官ら中間派も会合を開き政権批判を強め、民主党代表選で菅氏と戦った樽床伸二衆院国家基本政策委員は菅退陣の可能性に言及し「ポスト菅」に動き出しました。このように小沢軍団以外の勢力からも、菅政権を揺さぶる動きが続出しています。さらに民主党の有力幹部が公明党の幹部に「首相のクビを代えてもいい。何とかならないか」と予算案と関連法案の年度内成立を要請したとの噂が広まり、首相官邸に衝撃を与えました。これには自民党の大島理森副総裁が18日、「トップを代えれば話し合いの余地はある」と同調の気配を示し、谷垣総裁は「菅内閣はガバナビリティ(統治能力)を完全に喪失し、政権政党は崩壊の序曲にある」と批判しました。

3首脳の体たらくで末期症状
 「民主党政権は外交・安保にしっかりした海図を持っていない」――。公明党の山口那津男代表も23日の党首討論で、鳩山前首相の米軍普天間飛行場の移設を巡る「方便発言」を取り上げ、対決姿勢を強めました。首相は「報道を見て驚いた」と相づちを打ちましたが、「方便発言」は北沢俊美防衛相も16日の衆院予算委で「理解できない。私の人生でも1,2を争う衝撃的な言葉だった」と苦り切って答弁をしたほどの妄言。地元紙の誘導質問に答えたといえ、鳩山氏が移設理由に「米海兵隊の抑止力を掲げたのは『(嘘も)方便』だった」と発言したことは野党の集中批判を浴びました。「政治とカネ」の小沢氏、「放言連発」の鳩山氏、「統治能力喪失」の菅氏、3首脳の体たらくに民主政権は末期症状。それでも首相は18日夜、記者団に「クビを代えたら賛成するとか、しないとか、そういう古い政治に戻る気は更々ない」と強調。これまで封印してきた解散については「国民にとって何が一番重要なのか、必要なのかを考えて行動する」と繰り返し、解散は否定せず、退陣論に対抗し解散カードを切る姿勢をちらつかせました。首相の解散示唆に「16漂流団」はたちまち怯え、執行部が22日に下した小沢氏処分にも目立った抗議は控えました。

3選択肢あるが解散は困難視
 首相の選択肢は@クビを差し出して予算関連法案を成立させ、これを花道に退陣(総辞職)するAヤケクソといわれても解散で民意を問うB中央突破の出たとこ勝負で居座る――の3通りです。しかし,執行部が公明党抱き込みに失敗して社民党に秋波を送ったとたん、小沢軍団若手の造反騒ぎに水を差されて社民協力は頓挫。その挙げ句、2党抱き込みの「二股作戦」に愛想を尽かした公明、社民両党が20日、予算案と特例公債法案に反対する姿勢を明確に打ち出したため、@の予算花道退陣は消えました。Aの解散も容易じゃありません。自民党など野党は最も効果的な時期を選んで衆院に内閣不信任案、参院に首相問責決議案を提出する構えですが、小沢軍団の議員がまとまって造反すれば、与党多数の衆院でも不信任案はたちどころに可決され、総辞職か解散に追い込まれます。参院での問責決議が可決されれば審議がストップし、国会は空転します。首相が解散を匂わせたのは、不信任案や問責決議案が可決された場合を想定し、反対閣僚を罷免してでも解散に踏み切る決意を内外に示したものです。だが、「バカ野郎解散」をやったワンマン宰相の吉田茂元首相ですら、政権末期は緒方竹虎副総理らの反対に遭って総辞職し、保守合同に道を開きました。前原グループに属し、首相を支持する仙谷由人代表代行も「解散すれば、また政権交代になる」ことを恐れ、羽交い締めにし座敷牢に入れてでも、解散詔書には署名させない態度です。そして「ポスト菅」を目指し前原誠司外相の擁立に動き出しました。

忍の一字で6月まで居座るか
 玄葉光一郎政調会長も「菅さんで解散はない。安心して欲しい」と浮き足立つ若手議員にブレーキをかけています。そうなると、菅首相はBの居座り作戦に出るしか手はありません。首相は21日の衆院予算委で自民党の武部勤元幹事長が、小泉元首相の「郵政解散」を引き合いに、「首相の椅子にしがみついているだけだ」と解散に踏み切るよう挑発したのに対し、「格好をつければ強いリーダーだとは思わない。やるべきことをやるのが強いリーダーだ」と語気を強め続投宣言をしました。首相は23日の党首討論でも、自民党が提出予定の予算組み替え動議について、「丸呑みできる案を是非出して頂きたい」と呼びかけて与野党協議の姿勢堅持を強調。予算関連法案の成立が2,3ヶ月遅れてもその間は当面の税収入で賄い、6月まで「消費増税と社会保障の一体改革」、「TPPへの参加」など新公約に掲げた政策推進に全力で取り組み、それを阻む党内勢力や野党には世論の批判を向けさせて忍の一字で政局を乗り切り、その成果を示し国民に信を問おうとしています。枝野官房長官も「憲法に定められた首相の任期、党代表の任期の中で、国民に課せられた課題を前進させる責任を全うする」と記者団に語り、首相の退陣を懸命に否定しています。

丸呑み出来ぬ劇薬入り組替え案
 しかし、自民党が24日にまとめた予算組み替え案は、@子ども手当、農家の個別所得補償、高校無償化、高速道路無料化のいわゆる民主党の「バラマキ4K」施策予算の削除(2・6兆円)と、公務員人件費削減(1・5兆円)などで計5・3兆円を浮かせるAこのうち2・2兆円を児童手当の拡充、防衛費上積み、公共事業費などに振り向けるB差額の3・1兆円で予算総額を圧縮する――という内容で、総額は89・3兆円の対案です。つまり、政府予算案を換骨奪胎して民主党のマニフェストを完全破綻させるもので、小沢軍団は了承せず、丸呑みすれば下痢を起こす劇薬入りの組み替え案で与野党協議は不可能です。このように「菅包囲網」が形成される中で、小沢氏に近い原口一博前総務相が月刊誌に「分党」論を発表。「管政権は打倒せねばならない」という過激なタイトルだっただけに、民主党内で波紋を広げました。分党論は「政権交代の原点に回帰しようとする民主党Aと民主党Bに袂を分かたねばならない」とし、菅首相を支える勢力を「B」と位置づけ、自らは「A」に入って勢力拡大を図る考えを示したという単純な内容で、原口氏は記者団に「民主党を分党しようとか、同志を捨てようとかは全く思っていない」と強調しました。

地域政党と連携目指す原口氏
 だが、21日には小沢氏や都知事選出馬が取りざたされる東国原英夫前宮崎県知事と会い、同夜は菅首相とも会食するなど活発に行動中です。原口氏は23日、全国の地域政党との連携を目指した「日本維新の会」の連合体設立を呼び掛け、松原仁議員らも24日、「東京維新の会」を立ち上げました。原口氏は地域政党を起こした「減税日本」の河村たかし名古屋市長、「大阪維新の会」の橋下徹大阪府知事らとも接触、4月の統一地方選に向けて地域政党との連携を強めるための協力を要請しています。市長当選後真っ先に小沢氏と会談した河村氏は「小沢さんとは新進党以来の、なぎゃあ(長い)付き合いだで」と、小沢・原口氏らとの連携に乗り気ですが、「維新の会」元祖の橋下氏は統一地方選で大阪府議選や大阪市議選で民主党議員候補と火花を散らす関係から、原口氏ら民主党とは一線を画そうとしています。24日の民主党代議士会は、執行部が作成した、首相夫人伸子さんが党をアピールする漫画を巡り、「我々は伸子さんを広告塔に決めた覚えはない。無駄なカネを使うな」と小沢氏支持派か抗議、これにヤジと罵声が飛び交って騒然。「学級崩壊だ」と自嘲の声が漏れました。予算そっちのけで小沢軍団VS菅陣営のチキンレースが続いています。