第245回(2月1日)与野党協議は解散前提 国会論戦開始
 150日間の通常国会が1月24日に開幕、菅政権が「平成の開国」に掲げた「消費増税と社会保障の一体改革」「農業改革と環太平洋連携協定(TPP)参加」の2大政策と、「政治とカネ」問題を巡り、与野党が激しい論戦を展開しています。首相は「安心できる社会保障制度のあり方と持続可能な財源について、国民的議論を高めたい」とし、自公両党に深いパイプを持つ与謝野馨たちあがれ党前共同代表を経済財政相に一本釣りしました。だが、与謝野氏は鳩山前首相を「平成の脱税王」と批判したこともあって民主党内で軋轢が生じ、自民党離党の際は除名処分を受けているなど野党の反発も強い。与野党協議の場づくりは至難の業で、11年度予算案の年度内成立は困難視されます。今春学卒の就職率は68・8%と超氷河期。中央と地方の所得格差は増大し、羅針盤なき菅内閣の政権運営に失望して今春闘は国民の怒りが爆発しそうです。その民意は4月の統一地方選に反映されるでしょう。自民党は今国会の会期中に内閣総辞職か衆院解散・総選挙に追い込む覚悟です。まさに常在戦場ですがさらなるご支援、ご叱声を賜りますようお願い申し上げます。

消増税と社会保障の一体改革
 「国づくりの理念は、@平成の開国A最小不幸社会の実現B条理をただす政治――の3つ」――。菅首相は24日の施政方針演説で、冒頭に3つの理念を挙げ、元気な日本の復活を目指す「平成の開国」の2大政策に、「消費増税と社会保障の一体改革」と「TPP参加」を提唱。最後に「国民は国会に建設的な議論をし、結論を出すことを求めている。その期待に応えようではありませんか」と締めくくり、「熟議の国会」、「与野党協議」を呼びかけました。消費税を含む税制改革は、改正所得税法の付則で2011年度までに法を整備することになっているため、自公両党が与野党協議を唱えてきました。首相はこれ幸いとばかり、「各党が提案する通り議論を始めよう」と呼びかけたものです。これに対し、みんなの党の渡辺喜美代表は「抱きつき戦術」と冷やかし、自民党の谷垣禎一総裁は「ばらまくだけばらまいて、国民に負担をお願いする耳の痛い話は超党派でやりましょうと言うのは虫の良い話」と批判。26日の代表質問では子ども手当など4Kバラマキ政策と、それを実現できなかったマニフェスト(政権公約)違反を逐一やり玉に挙げ、「国民の信を問うことをもって首相の覚悟と受け止め、税制抜本改革の与野党協議に真摯、積極的に参加したい」と明言。与野党協議の前提条件に「解散」を掲げ、公約違反の謝罪を求めました。

与謝野氏は「平成の議席泥棒」
 消費税増税の司令塔になる与謝野氏に対しては、与野党内外から批判が高まっています。
「自民党の衆院比例代表で当選した与謝野氏が民主党内閣に入るなら、議員辞職すべきだ」(谷垣総裁)。「与謝野氏は『平成の議席泥棒』だ」(石原伸晃幹事長)、「与謝野氏の祖母・晶子さんは『君死にたまふことなかれ』と詠んだが、孫は『君血迷うことなかれ』だ」(小池百合子総務会長)、「菅首相はばかだ。与謝野氏一人を捕まえて、民主党内に80人ぐらい敵を作った」(自民党幹部)と一斉に批判しました。同じ衆院東京1区で与謝野氏と争い続けている海江田万里氏は経財相ポストを与謝野氏に奪われ、玉突き人事で経済産業相に就任しましたが、改造後の記者会見で、「人生は不条理だ」と不満を隠さず、西岡武夫参院議長も「選挙区が同じ人を内閣に並べて、首相は小選挙区の民意をどう考えているのか」と、再び首相を批判しました。与謝野氏は昨年2月の衆院予算委で鳩山氏を「平成の脱税王」と呼び、「民主党は政治に対する哲学や思想がない。政治人生の全てを賭けた最後の闘いだ」と言って自民党離党後の昨年4月、同志とたちあがれ日本を旗揚げしました。与謝野氏の発言に整合性がなく、民主党内の見る目は冷ややかで、同氏は孤立を深めています。

高い見識と志、三顧の礼で歓迎
 首相は与謝野氏の孤立を防ぐため、同氏の麻生高校後輩で日銀に勤務したことがある津村啓介・総括副幹事長に、「副大臣、政務官がやれないサポートを任せるので、秘書官になったつもりで支えてくれ」とナビゲーター役を任命。再改造後の記者会見でも、「与謝野氏は自民党政権時代に『安心社会実現会議』を作り、社会保障のあり方、財源を検討した中心メンバーだ。この問題では政党間で共通認識がある。与謝野氏に責任者になって貰ったことは、内閣改造の大きな性格の表れだ」と持ち上げ、代表質問の答弁でも、「社会保障改革の高い見識と志を持っている。三顧の礼を以てお迎えした」と訴えました。しかし、与謝野氏は記者団に「与野党の話し合いはいつ始まってもいいが、政府案をベースに議論したいという野党の考えに沿うなら、少し時間がかかる」と説明しました。財源問題がネックになるからです。民主党は衆院選マニフェストに年金制度改革の見直し案として、消費税を財源とする「全額税方式」の「最低保障年金」(月額7万円)を創設すると唱えてきました。与謝野氏は「新しい方式に移行するには30年、40年かかる。(税方式でなく)国民が慣れ親しんできた社会保障方式で改革することが合理的だ」と反対しています。

4月と5月、二段構えの道筋
 自公政権時代の与謝野氏が議論に参加した「社会保障国民会議」の試算では、高齢化に伴って増え続ける医療や介護費に加えて、年金を民主党の税方式にすれば、2025年度には消費税率を9〜13%幅も引き上げなければならないと弾いていたからです。民主党が政権公約に掲げた16.8兆円の無駄削減による財源捻出案は3・9兆円しか生み出せず既に破綻。年金に至っては法律で決まっている基礎年金の2分の1の国庫負担を「埋蔵金」で凌いでいる有様です。与謝野氏が「まず政府案策定を」と唱えるのは、野党攻勢に堪える案を提示しないと野党は乗ってこず、超党派の協議は開けないとの判断によるもの。首相も21日、「政府・与党社会保障改革検討本部」会合の冒頭、「30年、50年経ったとき、あの2011年から持続可能な新社会保障制度の改革が進み始めたと言われる結果を出して欲しい」と述べ、4月までに社会保障改革のたたき台を作り、6月に消費増税を含めた一体的改革案をまとめる「二段構え」の道筋を示しました。

今年は解散総選挙に追い込む
 社会保障と税改革を煮詰める段取りを「二段構え」にした背景には、@首相の消費増税発言が敗因になった昨夏参院選の苦い経験から、本格的与野党協議を5月以降に先送りするA4月までに医療・介護・年金など社会保障改革案を作成し、必要財源を試算するB消費増税論議を4月統一地方選後にすれば野党も応じやすい――との判断があるものと、朝日は見ています。首相や岡田幹事長ら執行部は、「ねじれ国会」を乗り切るには予算案を多少修正しても、社会保障や税制改革を糸口に与野党連携を睨み、「熟議国会」で超党派の協議を重ねたいと考え、「案作成の段階から超党派協議の進め方を含めて野党のご意見を伺いたい」とひたすら低姿勢です。これには公明党を連立に取り込みたい狙いがあります。
何しろ消費税は、大平内閣が売上税、中曽根内閣が一般消費税をそれぞれ提唱しながら失敗、竹下内閣でようやく成立し、今の体系が実現しました。菅首相にしても「1内閣1仕事」で、歴史に残る社会保障制度と財源を生み出す消費増税を実現し、「平成の開国」の礎を築きたいとの野心が感じられます。しかし、谷垣総裁は23日の党大会で「今年は解散・総選挙に追い込む」と宣言し、対決姿勢を一段と強めており、妥協の余地はありません。

藤井官房副長官も証人喚問へ
 今国会のもう1つの焦点は、小沢一郎元民主党代表の国会招致です。国会開幕前を目指した衆院政治倫理審査会(政倫審)への出席は小沢氏が拒否したため、岡田幹事長は政倫審への招致を断念。小沢氏が31日政治資金規正法違反事件で「強制起訴」された為 国会招致問題は、今後証人喚問や離党勧告、除名など処分問題に移りました。岡田執行部は国会前の人事で、処分決定の常任幹事会メンバーの党副代表を2人から6人に増やし、小沢氏と距離を置く鉢呂吉雄氏らを起用、衆院予算委も小沢氏に近い委員を含む21人を差し替えました。
このため民主党大会や両院議員総会では「小沢氏を敵だと思っているのか」など激しい執行部批判が噴出しました。自民党は「政倫審への出席を議決しても拘束力がないため、民主党の単なるパフォーマンス」と見て、虚偽証言には偽証罪が問われる証人喚問をあくまでも要求してきました。証人喚問は全会一致が原則であるため、国民新党、社民党などは反対です。証人喚問が想定されるのは、予算案が@衆院予算委での審議入りA衆院通過直前B参院採決の直前C参院で関連法案採決の直前――など4ケースがあります。このほか、「政治とカネ」問題の決着には、小沢氏の議員辞職決議案の提出や藤井裕久官房副長官を証人喚問に呼び、小沢氏が自由党の党首だった2003年の自由党と民主党が合併する直前に、「当時の幹事長だった藤井氏に計16億円を支給した問題」を質す戦術もあります。与謝野、藤井両氏の入閣は菅首相の肝いり人事ですが、とんだ火種を抱え込んだようです。