第243回(1月1日)証人喚問・更迭迫る 波乱万丈の国会
明けましておめでとうございます。政治の閉塞感を吹き飛ばし、跳躍の卯年となれるでしょうか。予算編成そっちのけで演じられた民主党茶番劇の「小沢―菅」対立抗争は越年、年明け早々に再燃します。1月24日にも召集の通常国会は、自民党など全野党が小沢一郎元民主党代表の証人喚問と参院が問責決議を可決した仙谷由人官房長官、馬淵澄夫国交相の罷免を要求、与党が応じない限り両相所管の委員会審議を拒否する構えです。早い話、官房長官が議院運営委員会に出席して行う国会召集日の伝達も出来ません。このため、菅首相は松明けにも小沢氏国会招致の決着と内閣改造を断行する腹を固めたようです。11年度予算案は何とか形だけは整えたものの、4月統一地方選の「票目当て」の政策が多く、子ども手当や基礎年金の財源は相変わらず埋蔵金に頼った綱渡り編成で、税制改正との整合性は見当たりません。自民党は予算案の矛盾点を徹底追及、衆院解散・総選挙に追い込む決意です。大波乱の国会ですが、私が委員長を務める沖縄・北方問題特別委も離島防衛など多くの懸案を抱えています。本年もよろしくご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

脱小沢カード、改造で正念場
予算編成と並行して、年の瀬いっぱい激しく繰り広げられた民主党内の抗争は、正月休戦でどうにか新年を迎えました。政党交付金の割り当てが1月1日現在の議席数で配分されるため、党分裂のタイムリミットは年末と想定されましたが、政権運営には衆院300議席以上の安定多数維持が必要不可決であり、菅、小沢の両陣営ともに政権を継続したい共通の願いから分党の危機を回避したようです。菅首相は松明け早々にも、内閣支持率回復のため「脱小沢カード」(小沢氏の国会招致)を切るか、それとも小沢グループが求める挙党態勢(内閣改造)を選択するか、まさに決断の正念場を迎えます。脱小沢カードには小沢氏を@衆院政治倫理審査会(政倫審)へ招致A衆院予算委へ証人喚問B離党勧告または除名――の3通りあります。@の政倫審への招致は小沢氏が出席を拒否する態度なので、自民党は「茶番だ。パフォーマンスはいい加減にしろ」(石原伸晃幹事長)と議決に反対、あくまで証人喚問を要求しています。議決には25委員(民主17、自民7、公明1)のうち過半数の賛成が必要です。野党が反対もしくは欠席した場合は、会長を含む民主党委員のうち4人が小沢氏支持のため議決は微妙で、委員の差し替えが必要になってきます。

司法への介入と国会招致拒否
「私の問題は司法手続きの段階に入っており、近々東京地裁で公判が始まるので政倫審に自ら出席する合理的理由はない。政倫審の審査、調査は立法府の自立的な機能であり、司法府への介入を避けるなど慎重でなければならない。刑事裁判の中で、清々粛々と闘い、潔白を証明する。今は民主党政権が初めて本格的に取り組む予算編成の真っ最中だ。国民の負託に応える国民生活第一の政策実現に全力を傾注すべき時だ」――。これが岡田幹事長に提出した小沢氏の政倫審出席拒否の文書(要旨)で、呆れ果てた内容です。政倫審は小沢氏が自民党時代、衆院議運委員長を務めていた当時に作ったもので、国会で決議すれば小沢氏自ら「出席して政治責任を果たす」と述べていました。それが17日、岡田幹事長を都内の個人事務所に呼びつけ、巌流島よろしく10分も待たせ、岡田氏の政倫審出席要求には「考え方の違いだ」と突っぱね、岡田氏が4月統一地方選や国会への影響を持ち出しても「選挙や国会運営は幹事長が責任を持ってやることだ」と高圧姿勢で通しました。

ハードル多く証人喚問困難
20日の首相と小沢氏の会談も譲らず決裂。「一兵卒の小沢氏に『分かりました』と言わせられないとは非常に情けない」(市田忠義共産党書記局長)と非難する声が野党から上がりました。このため、首相周辺から政倫審よりも一気にAの証人喚問を実現し政権浮揚を図るべきだとの声が挙がっており、みんなの党の渡辺喜美代表は「脱小沢路線でもう1回支持率を上げようと言う魂胆ありありだ」と警戒しています。証人喚問は憲法で認められた国政調査権の1つで、病気などの正当な理由がなければ出席には強制力があり、虚偽の発言は偽証罪に問われるなど政倫審より厳しい追及の場となります。だが、出席は「全会一致による議決」が慣例とされ連立与党の国民新党は反対、社民党は慎重、公明党もかつて支持母体・創価学会の池田大作名誉会長の証人喚問を迫られたいきさつから多数決には難色を示しています。また、衆院予算委の中井洽委員長は自由党時代から小沢氏と行動を共にしてきており、中井氏説得は容易でないと見られ、証人喚問にもハードルがあります。

執行部吊し上げ党大会で逆襲
小沢氏が今月にも強制起訴されることから、Bの小沢氏を党員資格停止か離党勧告、除名処分にする強硬手段もあります。だが、これには暮れに小沢グループが、両院議員総会を早急に開いて茨城県議選敗北の責任追及をするための署名運動を展開。グループの会合を頻繁に開いて結束を固めてきただけに、離党するどころか、逆に13日の民主党大会は執行部の吊し上げと挙党態勢確立大会に早変わりする可能性があります。結局、仙谷官房長官が議運委で国会召集日の伝達も出来ない現状から、菅首相は国会の開会前にも仙谷氏が兼務している法相の後任補充を兼ねて仙谷、馬淵両相の更迭など小幅改造を断行せざるを得ない状況にあります。前号で述べた通り、改造では内閣の司令塔・官房長官を重視し、前原誠司外相を横滑りさせるか、岡田幹事長の起用が有力。岡田氏は原理主義者で孤高な存在ながら政策通。「政治の世界での父は小沢氏」とかつては小沢氏を尊敬し今回も小沢氏をとことん追い詰めてはいません。当面は法廷闘争を戦う小沢氏にとって、岡田氏が内閣の要に座り、「ポスト菅」のワンポイントリリーフを狙うとしても、抵抗はなさそうです。

首相、たちあがれに連立打診
その岡田氏は22日、都内でたちあがれ日本の平沼赳夫代表、与謝野馨共同代表と会談し、連立参加を打診しました。首相も11月18日に与謝野氏と公邸で会談しており、打診工作は、平沼氏を拉致問題担当相として入閣させるか、財政再建路線で一致する与謝野氏を1本釣りして政権基盤を強化したい首相の意向を受けたものと見られます。しかし、これはとんでもない野合です。たちあがれ日本は結党趣旨で「打倒民主党」を掲げて元自民党議員で結成しており、政策面では水と油。園田博之幹事長、片山虎之助元総務相らが27日の総会で理念なき連立に反対。同党が衆参各3人の勢力では連立に参加しても与党は参院で過半数に届かないため、民主党内からも執行部批判が上がり、連立は頓挫しました。民主党の亀裂に危機感を抱いた連合の古賀伸明会長の呼び掛けで25日昼、都内のホテルで首相、小沢氏、岡田幹事長、輿石東参院議員会長、鳩山前首相の実力者会談が開かれましたが、首相と小沢氏は目も合わさず、国会招致問題も進展せず、古賀氏の仲介は不発に終わりました。民主党は27日の役員会で、小沢氏が政倫審の出席に応じない場合は、国会開会前に党として出欠の議決に踏み切ることを決めました。また、岡田幹事長はこの後の記者会見で、小沢氏が強制起訴された場合、離党勧告など何らかの処分を検討する可能性を示唆しました。
これに対し小沢氏は28日緊急記者会見を開き 国会審議が円滑に進められるなら常会(通常国会)冒頭の招致に応じてもよいと述べ(仙谷氏らの更迭を念頭に条件付きで)政倫審出席を表明しました。だが、執行部は「党決定は国会前の議決」であると文書で回答。党内の対立は野党が冷ややかに見る中、御用納めまで続きました。

統一地方選配慮予算アピール
 政府は12月24日、11年度予算案を閣議決定しました。一般会計の歳出総額は過去最高の92兆4100億円です。借金返済に充てる国債費を除く「歳出の大枠」は71兆円以下に抑え、新規国債発行も44兆円以下と、一応は目標を達成しました。しかし、2年連続で国債発行額が税収を上回る異常事態。国と地方の11年度末の長期債務は891兆円で、子ども世代に重い借金のツケを残します。政策の柱は3歳未満児を持つ世帯の子ども手当を2万円に引き上げるのと税制改正の法人税5%引き下げですが、子ども手当と並ぶマニフェストの目玉だった農家の個別所得補償制度、高速道路の無料化などには進捗度合いに違いが生じました。個別所得補償制度は10年度予算が約5千6百億円でしたが、11年度は関連事業を含め約9千億円が認められ、所得補償対象を麦や大豆の畑作物にも広げ、農家だけでなく漁業者にも制度が設けられます。高速道路の無料化は財源難のあおりで、国交省が前年度比1・5倍の1500億円を要求した高速道路会社の無料化で減る料金収入の穴埋め費用は約1200億円に抑えられました。地方交付税総額は前年度比で6900億円減の16兆7800億円ですが、企業業績の回復に伴い10年度の税収が想定より増えたことから、国から地方自治体に実際に配分される時点では前年度比4800億円増の17兆3700億円になります。野田佳彦財務相は「地域主権が民主党の1つの大きな政策」と強調、統一地方選に向けた地方への手厚い予算配分をアピールしました。

財源あさリ、またも埋蔵金頼り
税収については10年度当初予算の37・4兆円から41兆円程度に回復すると見込んでいますが、法人税実行税率の5%引き下げの影響が11年度後半から出る可能性があり、税収は下方修正を迫られる恐れもあります。国債発行に借金と税収を合わせても85兆円前後で、92兆円の歳出を賄うには7兆円前後足りません。不足分のカバーには、外為資金特会の剰余金2〜3兆円、財投特会の剰余金・積立金1兆円、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の剰余金1・2兆円、NTT株の一部売却2千億円など、またも「埋蔵金」の税外収入に頼っています。自民党は昨年末、「入るを量り、以て出るを為す=は中国の故事だが、恒久財源のない票目当ての恒久政策をマニフェスト(政権公約)で約束した民主党は、ブーメランのように財源あさりに苦しみ、やたらに国政を混乱させた」と、政府与党の予算編成を厳しく批判し、「自助、共助、公助を適正に組み合わせ、温かい社会を築く」ことを念頭に自民党独自の予算編成方針を発表しました。前号のHPでは高所得者の増税や相続税の増税など税制改正の問題点を取り上げました。自民党は予算案の審議で景気に影響を与えるこれら増税、税制改正と、子ども手当・個別所得補償・高速道路・高校授業料無償化の4Kバラマキ政策、矛盾だらけの財源対策などを徹底的に追及する方針です。