第242回(12月16日)妄言迷走内閣 民主党分裂の様相
 菅政権は8日で発足後半年が過ぎました。しかし、6月の所信表明演説で唱えた「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」の実現はどこへやら。円高、デフレ圧力は深刻で暗い年の瀬です。「1にも、2にも、3にも雇用」の掛け声も空しく、完全失業率は5%台と大卒予定者の就職戦線は10年前の氷河期を上回る厳しさ。政治主導を強調するあまり役人の全面協力は期待薄で、来年度予算編成もままならず、何をやりたいのか国民にはさっぱり分からず、「有言実行内閣」どころか「妄言迷走内閣」の様相を深めています。補正予算がやっと成立というねじれ臨時国会の怖さから、首相は公明党とのパーシャル(部分)連合を諦め、通常国会では「衆院再可決」を目指し、懲りずに政策では水と油の社民党と縁りを戻すことに懸命。参院で首相問責決議案が早期に可決されれば国会の空転は確実で、政権を投げ出す以外にありません。12日の茨城県議選は自民党が過半数を制し、来年4月の統一地方選に弾みがつきました。民主党は「菅―小沢」対立が激化し、党分裂の危機を孕み、内閣支持率は20%台の危険水域に落ちました。万策尽きた菅内閣は断末魔の悲鳴を上げています。解散・総選挙近しの政局ですが、ご支援、ご叱声をお願い申し上げます。

閣外協力で政策毎に部分連合
 「政権運営がしっかり進められる体制を作るよう全力を挙げたい。社民党、国民新党との関係をより緊密かつ戦略的に捉えて協働していく」――。菅首相は6日、社民党の福島瑞穂党首らと会談した後の記者会見でこう語りました。社民党との会談では、11年度予算編成に向け両党幹事長らによる協議を開始、継続審議の労働者派遣法改正案と郵政改革法案について通常国会で成立を期することで合意しました。首相は衆院で法案の再可決が可能な憲法規定「60日ルール」に必要な3分の2以上の議席確保を睨み、与党の国民新党に加え、社民党の閣外協力で政策ごとに連携するパーシャル連合を目指したものです。しかし、この「復縁」話には難題が潜んでいます。福島氏は5月に沖縄県の米軍普天間飛行場移設に反対し、鳩山前首相から消費者相を罷免され連立を解消しました。外交・安全保障政策では全くの水と油で、今回も民主党が「防衛計画の大綱」に武器輸出3原則の見直しを明記しようとしているのに対し、福島氏は「3原則堅持は社民党の背骨だ。見直せば『死の商人』加担になる。大綱に盛り込むなら政権との距離を考える」と述べ、沖縄県知事選で仲井真弘多知事が普天間の県外移設を唱えて再選されたことから、5月の「日米合意見直し」を強く要請しました。法人税率の引き下げにも財界奉仕と猛反対しています。

公明に振られ社民に復縁迫る
 11年度予算案は憲法の規定で衆院通過後30日後に「自然成立」しますが、予算関連法案は参院で否決されると成立しません。参院で否決された法案や参院送付後60日を経過しても採決できない法案は衆院に差し戻し、3分の2以上の多数で再可決すれば成立します。それゆえ、民主党は先の臨時国会で衆院に21議席保有する公明党に接近し、政策面での部分連合・連立を実現しようと補正予算では公明党の要望を聞き入れるなど盛んに秋波を送りました。だが、公明党は柳田稔法相の国会軽視発言を厳しく追及、仙谷由人官房長官、馬淵澄夫国交相の問責決議案にも賛成・可決させるなどむしろ対決色を強めています。この流れに怒りを顕わにしたのが郵政改革法案の成立を「1丁目1番地」とする国民新党の亀井静香代表。臨時国会を1週間程度延長するよう求めましたが、民主党が応じないため与党内に不協和音が生じました。結局、1日夜の菅・亀井電話会談で「通常国会で予算案の成立後、4月中に郵政改革法案の成立を目指す」ことで一致。それには社民党の協力が何よりも必要と、菅首相は切羽詰まって福島氏に党首会談を持ちかけたものです。

社民6議席、後は無所属頼り
 首相は党首会談で、社民党が来春の統一地方選を戦う上で大きな実績となる労働者派遣法改正案を早期成立させるとの餌を与え、かつて連立を組んだ社民党の協力を確実にし、将来の統一会派結成や連立政権復帰も視野に入れているようですが、社民党の衆院勢力はたった6議席でしかなく頼り甲斐のない存在です。社民党が連携する場合の衆参両院の会派構成を見ると、衆院(定数480議席=議長を除く3分の2の「再可決ライン」319)は、与党の民主・無所属ク307(議長は除く),国民新・新党日4,社民・市民連合6=計317議席。野党は自民・無所属の会117,公明21,共産9,みんな5,立ちあがれ3,国益と国民生活を守る会2=計157。無所属5。欠員1。再可決には2議席不足し残りは無所属の票が頼り。参院(定数242=議長を除く過半数は121)は、与党の民主・新緑風会106,国民新3、社民・護憲連合4=計113議席。野党は自民83,公明19,みんな11共産6、たちあがれ・新党改革5=計124。無所属5。参院は社民党と連携しても過半数に足りません。民主党内では「政策で食い違う社民党より公明党か立ちあがれ日本の方がベター。自民党と大連立を考えるべきだ」との声が起きています。

渡辺読売主筆が大連立再仲介
 自民・民主の大連立構想は、渡辺恒雄読売新聞G会長・主筆と森喜朗元首相の仲立ちで、小沢一郎元代表が福田康夫元首相と合意しながら、民主党内の反発に逢って潰れ、代表を辞任したいきさつがあります。政治の閉塞感が高まる中で、自民党内でも依然大連立に関心が持たれており、谷垣総裁は8日、渡辺氏と約1時間会談し、局面打開について意見を交換しました。だが、谷垣氏は連立話の有無について記者会見ではノーコメントで「大連立は、よくよくの大義名分がなければ出来ない」と慎重姿勢を示しました。一方の石破茂政調会長は都内の講演で、「小沢グループを除いた民主党と組むことはあり得ない話ではない」と前向きに述べつつ、「(民主党の)マニフェストを全部替え、すぐ選挙をやって信任を得ないと政権は正当性を持ち得ない」と政界再編を条件に付けました。しかし、菅首相は記者会見で社民党以外の連立について、「機会があれば他グループとも話し合いたい」と述べ、公明党との部分連合も引き続き模索する姿勢を示しながら、自民党との大連立については「国民が『止むを得ないと思う』前提条件がなければ難しい」と否定しました。

改造・解散・脱小沢の3選択肢
 自民党など野党は、「臨時国会で見送った小沢氏の証人喚問実現。同国会で問責決議案が可決された仙谷官房長官、馬淵国交相を罷免しない限り、両相所管委員会の審議拒否」の戦術で、通常国会冒頭から菅政権を追い詰める構えです。これに対し、首相が描く政権基盤構築のシナリオは@人心一新のため通常国会前に内閣改造A予算・関連法の成立後に衆院・解散総選挙B再度「脱小沢カード」を切る――の3通りです。首相は内閣の司令塔・仙谷氏を更迭すれば屋台骨がぐらつき求心力が薄れるため、両氏の続投を記者会見で言明しました。だが@の改造は不可避です。仙谷氏が前原グループの重鎮であるため、前原誠司外相を官房長官に横滑りさせて背後から仙谷氏が操る説が浮上中です。あるいは菅首相と関係良好な江田五月前参院議長か岡田幹事長を官房長官に充て、幹事長後任に細野豪志幹事長代理の昇格と山岡賢次副代表ら小沢氏側近を閣内に抱き込む――との予想もマスコミでは噂されています。でも、3権の長の経験者が入閣する話は前代未聞であり得ません。

やる気満々で菅降ろし仕掛け
  「中国のケ少平氏は自分と同じ68歳の時、文化大革命で地方に飛ばされていた。それに比べれば自分はまだましだ」――。小沢氏は6日、支持者の会合でやる気満々の姿勢を見せ、翌7日の党中堅議員との会食では、「茨城県議選は大惨敗する。そうなれば地方が火を噴く」と12日の同選挙惨敗を予測しました。国会招致問題が燻っているため首相に揺さぶりを掛けて牽制し、じわっと「菅降ろし」を仕掛けたわけです。民主党は茨城県議選で倍以上の23候補を立てながら、小沢氏予言通り現有の6議席維持に止まり惨敗。雪崩を打って4月の統一地方選で敗北し国会が行き詰まれば、解散・総選挙しても勝ち目はありません。討ち死に覚悟で破れかぶれの選挙戦に打って出るか。首相はAの解散でリスクを背負うより、Bの「小沢切り」のカードに着手したようです。首相は8日、岡田克也幹事長と小沢氏問題を協議した結果、衆院政治倫理審査会の幹事会で招致議決を行う強行策で一致しました。首相は就任時と代表選後の「脱小沢」人事で「クリーン政治」を印象づけ、2度も内閣支持率のV字回復に成功しました。政権基盤固めには招致実現で「政治とカネ」問題に対する国民や野党の批判に正面から対応するのが得策と判断したものです。

国会招致は人民裁判と猛反発
 国会招致には輿石東参院議員会長をはじめ、小沢グループが「司法の場に任せるべきで、人民裁判だ」と猛反発、茨城県議選の敗北について逆に両院議員総会を早急に開き執行部の責任を問うべきだと署名運動を開始。小沢Gの当選1回議員で作る「北辰会」代表13人は10日、岡田幹事長に国会招致断念を求めて抗議しました。結局、13日の役員会は幹事長一任を決め、岡田氏が小沢説得に当たりますが、小沢氏は政倫審で議決されても出席は任意のため拒否する態度です。仮に岡田幹事長が小沢氏を離党勧告あるいは除名処分にすれば小沢Gの一部は同調し離党する構えで、その場合は政党助成金申請締め切りの関係から年内にも党は分裂します。小沢氏支持の議員約70人は先月末、菅政権が進める「環太平洋経済連名協定(TPP)に反対する議員連盟を設立。鳩山前首相、山岡副代表、原口一博前総務相らが出席し、議連会長代理の田中真紀子元外相は「(内閣を)大改造すべきだ。出来なければ総辞職だ」と逆に内閣刷新を求めました。政界再編の動きも活発です。

両陣営が大連立・再編に動く
 小沢氏は8日夜、都内のすし屋で、鳩山前首相の呼びかけで弟の鳩山邦夫元総務相(無所属)、舛添要一新党改革代表との4者会談を開き、連立政権の枠組みや政権再編などを話し合いました。その舛添氏は9日夜、都内ホテルで菅首相とも会食、首相から国会運営での協力を求められるという売れっ子ぶり。舛添氏は小党代表の座より来春の都知事選出場に意欲を燃やし、八方美人で政界を泳ぐ構えのようです。首相は森前首相や渡辺主筆に近い立ちあがれ日本の与謝野馨共同代表とも会談しています。このように予算編成の最大ヤマ場に大連立騒ぎが起きるなど民主党内の対立抗争は一段と深まり、亀裂が拡大しました。予算編成は16日にも政府税制改正大綱、24日に政府予算案の決定を目指しています。基本方針は歳出総額を92兆円前後とし、国債費を除いた歳出の大枠を71兆円に抑え、新規国債発行額は44兆円を上限としています。予算の目玉は企業向けに産業空洞化防止のため法人税の実効税率を5%引き下げ、これで生じる資金を設備投資や雇用拡大に向ける。国民向けには子ども手当の7千円引き上げですが、財源捻出に四苦八苦。党内抗争で各省庁役人も仕事に身が入らず、政府与党の調整が難航して年内編成は危ぶまれています。

場当たり・ダッチロール内閣
 菅内閣は成長戦略で、「2020年度までの平均名目成長率3%、実質成長率2%とする」という目標を掲げ、「法人税率引き下げ」「総合特区・都市政策」など13施策を達成する方針で@環境・エネルギーA健康B観光・地域活性化Cインフラ輸出などアジアとの連携D技術革新E雇用・人材――を重点に掲げて参院選を戦いました。しかし、円高・デフレは益々進行、失業者が街に溢れ、中央と地方の格差が拡大しています。不況で税収増は期待できず、第2弾の「事業仕分け」でも財源を捻出できず、マニフェスト(政権公約)に掲げた政策は「有言実行」ではなく「妄言不実行」になっています。まさに「場当たり」、「ダッチロ−ル」(迷走)内閣です。子ども手当は、かろうじて3歳未満児を持つ世帯に限り、月額1万3千円から2万円に引き上げますが、2500億円の必要財源は統一地方選に配慮し公約の配偶者控除廃止は取りやめ、高所得者向け給与所得控除の縮小や相続税を増税する方針です。給与所得控除は上限を年収1千5百万円に設定、一般サラリーマンより高額な報酬の企業役員など年収が2千万円を超える場合は負担が年20万円ぐらい増える仕組みになり、所得税の増税は消費面に翳りをもたらしそうです。相続税は基礎控除の定額部分を現在の5千万円から3千万円(プラス法定相続人分600万円=3人なら1千8百万円)に引き下げ、50%の最高税率を5%引き上げる方向で調整を進めています。

今までは仮免許と無責任発言
  法人税率は日・米40%台、仏30%台、独・英・中・韓20台%と国際的に見ても高率であるため、海外の対日投資家が減少するばかりか、日本企業の海外移転・産業空洞化が進んでおり、自民党は公約に20台へ引き下げを掲げています。産業界や経済産業省は5%引き下げを求めましたが、これだと国の税収は約1兆4千億〜2兆1千億円減るため、野田佳彦財務相は引き下げ幅を2〜3%に圧縮すると抵抗、最終的には首相決断で5%に決定しました。税収減を補う措置として、企業の設備投資を促す減価償却制度を縮小、企業が赤字を翌年度以降の黒字と相殺できる繰越欠損金制度の利用も制限するなど企業向け減税措置を大幅見直し、国と地方合わせ約8500億円分が企業負担となりますが、これに相続税の増税分を充てても財源は約3900億円の穴が空く計算です。財界は「これでは経済活性化に繋がらない」と不満を述べています。政府税調は地球温暖化対策税(環境税)を導入、原油や天然ガス、石炭などの化石燃料課税を5割程度引き上げて約2千4百億円の税収を確保する考えを固めました。このように目玉政策でさえも財源難を打開できず予算編成が難航する中、首相は12日夜「今までは仮免許。これから頑張る」と支援者交流会で気の抜けた無責任発言をし、読売がコラムで「仮免なら政権の迷走も不思議ではない」と酷評。野党は「政権担当の資格がない」(谷垣総裁)、「慣らし運転で国民に被害を与えるなら代わって貰いたい」(漆原良夫公明党国対委員長)と退陣要求を強めています。