第241回(12月1日)死に体内閣露呈 2閣僚に問責決議
 政府民主党は11月26日にようやく平成22年度補正予算の成立にこぎつけ、同23年度予算編成に全力を挙げています。これは、北朝鮮の韓国砲撃という緊急事態で与野党が一時休戦した結果によるものです。自民党は柳田稔法相が失言で詰め腹を切らされて辞任した後も、尖閣諸島沖事件の対応不備などを理由に仙谷由人官房長官、馬淵澄夫国交相の問責決議案を参院に提出、補正成立直後に可決しました。11月1日の衆院予算委では仙谷、柳田両相と北沢俊美防衛相、岡崎トミ子国家公安委員長、蓮舫行政刷新担当相の5閣僚が相次ぐ失言などで謝罪するという、前代未聞の体たらくを演じました。問責ドミノを恐れた菅政権は野党の審議拒否も考慮し重要法案の郵政改革法案、労働者派遣改正法案、政治主導確立法案を継続審議として成立を断念、国会は3日の会期を延長せず、早仕舞いします。一連の国会運営の失態が菅政権に与えたダメージは大きく、内閣支持率が危険水域に落ちた菅首相は後継難から総辞職もできず、さりとて衆院解散もできず末期症状を呈しています。自民党はますます有利な政局を迎えました。お蔭様で、去る21日の「北村誠吾を励ます会」は盛大に行われました。皆様のご支援に謹んで心からお礼申し上げます。

国会軽視発言で柳田法相更迭
 「法相とはいいですね。(答弁で)2つ覚えておけばいいんだから。『個別事情については答えを差し控える』『法と証拠に基づき適切にやっている』です。分からなかったらこれを言う」――。柳田氏は14日、地元・広島市の法相就任を祝う会でこう述べ、会場を湧かせました。柳田氏は事実、国会で33回もこの答弁で切り抜けています。自民党の石破茂政調会長は直ちに記者会見で「国会軽視、言語道断の発言。職を辞して頂くのが国家のためだ」と批判、17日の参院予算委では同党の衛藤晟一氏が「歴代法相に対する冒涜」と辞任を迫り、脇雅史参院国対委員長が「問責決議案を出す」と民主党に通告しました。柳田氏は東大工学部を中退して寿司職人を4年間修業、再入学して卒業後に神戸製鋼所勤務、旧民社党から政界入りした変わり種。20年間の議員活動で法務関係を担当した経験がなく、輿石東参院議員会長の推薦で法相に起用された際には「何で俺が」と漏らしたほどで、みんなの党の渡辺喜美代表は「首相の任命責任も問われるべきだ」と批判しました。柳田氏は「ジョーク混じりの発言だった。今後も真摯な答弁で頑張りたい」と何度も謝罪し続投の意向を強く表明しましたが、問責決議案が可決されると補正予算案審議が大幅に遅れるため、首相から辞表を提出するよう詰め腹を切らされ、事実上、更迭されました。

自衛隊を「暴力装置」呼ばわり
 柳田法相更迭の流れを加速させたのは公明党ですが、柳田法相更迭後も野党の追及は厳しく、与党側が求めた補正予算案の24日採決を拒否、@小沢一郎民主党元代表の証人喚問A中国漁船衝突事件の流出映像の公開B政治的発言をする部外者を自衛隊行事に呼ばないとした防衛次官通達の撤回―−を要求。さらに仙谷、馬淵両相の問責決議案を参院に提出しました。特に仙谷官房長官は国会内でのマスコミ写真撮影を「盗撮」と表現したり、18日の参院予算委の集中審議で世耕弘成氏が次官通達の政治的中立問題で質問したのに対し、「暴力装置でもある自衛隊。ある種の軍事組織だからシビリアンコントロール(文民統制)が利かなければならない」と、レーニン革命当時のはやり言葉で自衛隊違憲論者が使った“暴力装置”を発言したためヤジで騒然。仙谷氏は「法律用語としては不適当で撤回し、実力組織と言い換える」と自衛隊に謝罪、首相も「内閣の責任者として自衛隊の皆さんのプライドを傷つけたことをお詫びする」と謝罪しましたが、仙谷氏と尖閣事件の映像流出などで批判された馬淵氏は、柳田氏に次ぐ標的として問責決議の対象にされました。

韓国砲撃にも危機管理感欠落
 そこに降って湧いたのが23日の北朝鮮軍による韓国北西部・延坪島の砲撃事件です。政府は同日午後2時半過ぎの砲撃開始から約6時間後に関係閣僚会議を開催しましたが、首相は記者団に「非常に大変なことになった。情報を収集し米韓両国と緊密な協議をしたい」と述べるだけで、統合幕僚会議議長らが出席する安全保障会議は開きませんでした。今回の砲撃が日本周辺有事に関する周辺事態法の事態には該当しないと甘く判断したからです。自民党の谷垣禎一総裁は「危機管理の緊張感が欠落している。対岸の火事と見て、迅速対応できなかったのではないか」と記者会見で語り、石破政調会長も「即座に安保会議を召集しないと制服組の意見を聞けない」と批判しました。小野寺五典外交部会長は谷垣総裁に「危機管理担当の仙谷氏の問責決議案提出を今は避けるべきだ」と進言、自民党は25日に衆参両院予算委の集中審議を開き政府の対応の遅れを追及することにしました。問責決議の提出で補正予算案の採決が遅れることは、景気対策重視の公明党が嫌い、国民に与える影響も大きいことから自民党内にも迷いがありました。そこで、党首会談の結果、与野党の攻防は非常事態下で“暗黙の休戦”とし補正予算案の採決は26日に決しました。

問責ドミノ恐れ会期延長せず
 予算案は衆院通過後30日で自然成立し、参院の採決で否決された場合でも憲法の衆院優越規定により成立することになっています。補正予算案は26日午後の参院予算委で野党の反対多数で否決、同日夜の参院本会議でも11票差で否決されましたが、その直後の両院協議会で意見が一致せず、衆院の議決が優先されて成立しました。補正予算が衆院優先規定で成立するのは昨年5月以来で計8回目。一方、仙谷、馬淵両相の問責決議案は同夜の参院本会議で社民党を除く野党の賛成多数で可決されましたが、衆院と違って辞任の法的根拠がないため、菅首相は両相を続投させる方針です。自民党は防衛次官の通達問題などで批判を浴びた北沢俊美防衛相、議員活動の範囲を超えて国会内でファッション誌の撮影を行った蓮舫行政刷新担当相、北朝鮮の韓国砲撃当日に警察庁に登庁せず議員宿舎で待機した岡崎トミ子国家公安委員長らの問責決議案を続々繰り出し、補正予算審議を遅らせる戦術を練っていました。首相も「問責ドミノ」を警戒しつつ、2週間程度の会期延長は避けられないと覚悟していましたが、補正が遅れずに成立、小沢氏の証人喚問も拒否し、3日の会期末に店仕舞いが出来ると胸をなで下ろしたようです。安倍元首相は「政府内では北の韓国砲撃を『神風が吹いた』と喜んでいる。とんでもない」と怒りを表しました。

通常国会も審議拒否で足並み
 しかし、過去に問責決議を受けた額賀福志郎防衛長官、福田康夫首相、麻生首相の3氏はいずれも、問責決議の可決後、次の国会まで続投することが出来ず、辞任に追い込まれています。防衛庁の備品納入を巡る背任事件の責任を問われた額賀氏は、当時野党だった菅氏から厳しい辞任要求を受け1カ月後に辞任。福田内閣は3カ月後に総辞職。麻生氏は1週間後に衆院を解散しました。自民党は仙谷、馬淵両相が所管する委員会の審議は拒否、両相を更迭しない場合は次期通常国会でも審議拒否を続ける方針で、他野党もほぼ足並みを揃えています。参院は定数242ですが野党は無所属を含め132議席で過半数の121議席を上回ります。みんなの党は「両相所管の審議には応じない」と自民に同調、公明党も国会対応で自民党と歩調を合わせる方針です。だが、共産党(6議席)は「審議拒否はしない」とし、民主党との連立を解消した社民党(4議席)も国民新党の誘いを受けて部分連立を志向し、自民党とは一線を画そうとしています。そこで民主党は「ねじれ国会」のキャスティングボートを握る公明党(衆参ともに21議席)との連携を模索しました。

公明党に部分連合の秋波送る
  特に公明党が来年4月の統一地方選に専念するため、早期解散を避けたがっているのを見極め、補正予算に公明党の施策を取り込むなどパーシャル(部分)連合を懸命に働きかけ、盛んに秋波を送っていました。ところが、公明党内では「菅政権は拙劣な外交を続けており、問責決議案が可決されても首相には解散する体力のない」との見方が強まり、柳田氏の更迭要求ばかりか、仙谷、馬淵両相の問責決議案にも賛成するなど、対決姿勢を強めています。補正予算の成立以外、今国会で成立した政府提出法案は僅か30%台で成果はゼロ。それでも首相は8日の衆院予算委で「物事が進んでいる限りは石にかじりついても頑張りたい」と述べ、27日昼の鳩山前首相との懇談では「支持率が1%になっても辞めない」と政権維持に意欲を示したと言われます。しかし、政治評論家の後藤謙次元共同通信編集局長らが「問責ドミノで菅政権は終わりの始まり。低空飛行に入った」と評するように追い込まれ、「もはやレームダック(死に体)」(谷垣総裁)でしかありません。

改造・解散・総辞職の3選択肢
 管政権が来年度予算と関連法案を次期通常国会で成立させ、起死回生を目指すには@年内に大幅な内閣改造A衆院解散・総選挙B内閣総辞職――の3通りが想定されます。しかし、仙谷官房長官は“陰の総理”と言われる実力者で、実質的に内閣の司令塔です。仙谷氏の防波堤として柳田氏を更迭したわけで、仙谷氏を辞任させれば政権の屋台骨は大きく揺らぎます。内閣支持率のつるべ落とし的急落と並行して、民主党の支持率も9月から40%→34%→29%と、じりじりと下がり、自民党には2・8ポイント差まで迫られています。解散・総選挙をすれば、昨年の麻生内閣と同様に政権交代は必至で、怖くて衆院解散には踏み切れないでしょう。また総辞職となれば、自民党の安倍、福田、麻生の3内閣が連続して1年前後で退陣、政権交代後の鳩山内閣も9カ月弱しか持たず国際信用が丸潰れになっているうえ、後継者難は深刻。加えて民主党が野党時代に「国民の審判を受けない政権のたらい回し」と自民党を批判した言葉が跳ね返り、短命政権で終わる可能性大です。結局は政権を失うため衆院解散はできず、解散に追い込まれる総辞職も出来ず、全く指導力を発揮できない菅首相が居座るという国民にとっては最悪な事態が続きそうです。

小沢“闇将軍”政界再編に動く
 唯一の支持率を回復策は、小沢氏の国会招致という「脱小沢」カードでしたが、これも断念、カードを放棄しました。逆に小沢氏を支持する衆院当選1回議員約70人で作る「一新会倶楽部」は25日、政治資金規正法に基づく政治団体に衣替えし、名称も北極星を意味する「北辰会」と改め、設立総会を開きました。最高顧問に就任した小沢氏は「常在戦場だ。勉強することで、政治家としての本分を果たすことが大切」と激励、毎週木曜日昼に定例会を設定し他派との掛け持ちを排除しました。小沢氏は山岡賢次副代表、細野豪志前幹事長代理、松野頼久前官房副長官ら側近や新人議員と居酒屋で頻繁に会食しており、支持率が低下した菅内閣を横目に、「ポスト菅」の主導権争いに転じたものと見られます。小沢氏は自らの資金管理団体「陸山会」の事件を巡り、東京第5検察審査会の議決で強制起訴されますが、刑事被告人としてその公判を戦いながら、”闇将軍“らしく次の衆院選挙後に起きるであろう政界再編成を睨み、その中軸に坐ろうと動き出している模様です。

政権奪回目指し統一地方選へ
 28日投開票の沖縄県知事選は、現職の仲井真弘多氏(無=公明、みんなの党推薦)が普天間基地の国外移設を唱えた新人の前宜野湾市長・伊波洋一氏(無=共産、社民、国民新、新党日本推薦)を破り再選されました。仲井真氏は鳩山前内閣の迷走を怒り、選挙戦で基地の県外移設を唱えましたが、自民党政権当時は条件付の辺野古移設容認派であり、河村健夫選挙対策局長らが応援演説に駆けつけるなど自民党沖縄県連が支援してきました。基地問題は私が委員長を務める衆院沖縄北方問題特別委で審議されますが、政府が沖縄の基地負担軽減策や米軍施設の跡地利用、地域振興策で具体的将来展望を示せば、十分協議に乗ってくると期待されます。和歌山、愛媛両県知事選でも、先の福岡市長選に次いで自民党の推薦候補が勝利し、来春の東京都知事選など統一地方選に弾みをつけました。自民党は10月20日、「公約作成委員会」の初会合を開き、年内に公約を策定する方針を決めています。自民党の都道府県議は昨年末時点で1277人と民主党の429人を圧倒していますが、昨年の衆院選で野党に転落した我が党にとって地方議会での勢力維持は至上命題。石破茂政調会長は同日の会合で、「統一選で議席を失えば、衆院選など絶対に勝てない。党の防衛を賭けた戦いだ」とハッパをかけました。公約には民主党との差別化を図るため、農家の戸別所得補償など同党の看板政策に反対する論点を明記する方針です。このように自民党は政権奪回のワンステップ・統一地方選にも馬力をかけています。ご支援ください。