北村からのメッセージ

 

 第24回(8月16日) 渇水列島と飲料水 民営化指向の改正水道法

 残暑お見舞い申し上げます。異常渇水で東海や四国、関東で取水制限が始まるなど、世界一豊かで美味い日本の水がピンチに立たされています。11日に首都圏などで少しのお湿りはありましたが、関東の水瓶・矢木沢ダムは白い腹を見せ、利根川水系の8つのダムも水量が50%前後に落ちたままです。朝日の「天声人語」は「1キロのコメを作るには4500キロの水を使う。毎日食べる野菜も水の塊だ」と渇水の夏に警告を発しました。

 水問題を考える

 生命の源である水が枯渇したうえ、森林の乱開発、廃棄物の投棄などで水質汚染が進むようでは、低迷する景気以上に国民の不安が募ります。長崎県は諫早干拓という大きな水問題を抱えていますが、今回は飲み水を中心に貴重な水資源の問題を考えてみましょう。

 改正水道法が成立

 私の所属する衆院厚生労働委員会は前通常国会で改正水道法を可決、成立させました。改正法は、経営難に陥っている市町村公営水道の業務委託範囲を大幅に拡大するとともに、水質保全のため小型の貯水槽にも規制をかけ、事業体に管理責任を持たせることが主な内容です。具体的な規制内容は市町村の条例に盛り込まれ、改正法は来年春にも施行されます。柱の1つである業務委託の拡大は、水道事業の民営化を指向したものといえます。

 費用負担で料金値上げ

 水道は市町村公営の独立採算が原則ですが、ダム建設の費用負担や浄水処理コスト、配水管の老朽化対策などで経営は苦しくなる一方。全国約2千ある公営水道事業体は目立たぬよう料金を値上げしています。でも家計の消費支出に占める水道料金の割合は、人口5万人以上の都市で0・7%程度です。電気の2・7%、ガスの1・8%に比べ割安です。

 民営化へ一歩前進

 しかし、外国に比べると、東京はニューヨークの2倍、ロンドンの1・5倍と高いようで、「負担、経費を積み上げる原価決定方式では料金は安くならない。競争意識の民営化が望ましい」との、水道民営化論議が高まっています。そこで法改正では、従来の検針や料金徴収などの外部委託に加え、浄水場の運転など技術管理も委託できるようにし、民営化へ一歩近づけました。朝日新聞によると、民営化を期待するフランスのオンデオ、ビベンディ、英国のテームズウオーターといった水道の有力企業が日本に受け皿を作り、浄水場の運転などへの参入を狙っているそうです。

 英、仏の2方式

 同紙が紹介した斎藤博康・日水コンサルタント海外本部顧問によると、水道民営化では、フランスのように役所が浄水場や配水管などの施設を保有して最終責任を持ち、運営を競争入札で民間に任せる公設民営化と、施設まで売却する英国型の完全民営化があります。英国の方式は、経営に追い詰められた事業体を救うため、浄水場などの施設建設資金の調達を第一目的として完全民営化したもので、20世紀初頭の約2千事業者が10社程度に再編されています。日本でも非効率な運営をやめ、経営規模を大きくするため、水系別か、地域ブロック別に電力会社並みの10社ぐらいに広域統合すべきだとの意見があります。

 安全に住民の不安

 とは言うものの、不採算地域を引受ける民間企業があるのか、安全第一の水を提供する公共性を民間が守れるかなど、解決すべき課題は山ほどあります。特に水道の水源環境は全国的に悪化しており、従来の浄水処理では汚れが取れず、消費者は不安を感じています。
加えて、マンションや飲食店を含む雑居ビルの貯水槽にネズミの死骸が浮いていたり、ひどく汚れていて「水道水を安心して飲めない」といった住民の苦情が寄せられています。

 アメとムチの改正法

 こうした中で改正法は、業務委託の緩和という“アメ”に対し、小型貯水槽を規制対象に加える“ムチ”も用意し、水道水の水質管理を強めました。従来の水道法では、容量が10立方メートルを超える大型貯水槽は年1回の清掃と第三者の検査が義務づけられていたのに対し、小型貯水槽は、何の規制もなく野放し状態に置かれてきました。このため、半数以上の小型貯水槽が清掃されないまま放置ざれているといいます。

 大家任せで野放し

 これは厚生労働省内に、零細な施設に法の網の目をかぶせるのは厳しすぎるとの考えがあり、市町村などの水道事業体が小型貯水槽に水を送り、料金を徴収すれば「後はマンションの大家任せ」という、これまでの運営を容認してきたからです。小型は20世帯以下規模のマンションに多く、全国で80万箇所もあり、2千―3千万人が利用しています。

 指導、勧告の条例づくり

 しかし、改正水道法は、容量10立方メートル以下の小型貯水槽にも、水道事業体に対し「第一義的な責任がある」とし、一定の管理責任を担わせました。これを元に各県で条例づくりが進行します。条例づくりでは、住民から小型貯水槽の汚れについて問い合わせがある場合、水道事業体が保健所と協力し水質検査をし、その情報を住民に提供したり、大家へ改善を勧告し、大家が改善を怠る時には給水を停止するなど、助言、指導、勧告、事業停止などができるように検討が進んでいます。

 課題は水源の汚染

 このように水道法改正では、末端蛇口での水質汚染に歯止めが掛かりますが、最大の課題は水源の汚染をどう食い止めるかにあります。水源の河川や湖沼、地下水の汚染がひどく、清流といえば高知県の四万十川ぐらいしか呼べなくなりました。「国敗れて山河あり」と廃墟の中で国民に親しまれた全国の美しい清流は、高度成長期の工場廃水で醜く汚れ、地域によっては魚も棲めなくなりました。流域ばかりでなく山間部でも産業廃棄物処分場の不備や不法投棄で有害物質が漏れ出し、ダムや湖、井戸にまで流れ込んでいます。

 産廃、農薬、鉛管の害

 産業廃棄物のほか、農薬に含まれる有害物質や動物の糞に混じる病原性微生物などの汚染もひどく、5年前には埼玉県越生町で約9千人が塩素消毒でも死なない原虫による集団下痢を起こしました。浄水場の取水口のすぐ上に下水処理の放水口が同居するケースもあります。未だに全国で多数残っている水道鉛管から溶け出す鉛も体内での蓄積性があり、乳児の知能障害、成人の生殖機能不全などの弊害を起こす恐れが指摘されています。

 コスト高の高速浄水

 浄水処理方式を挙げると、水質のよかった戦前は微生物利用の緩速濾過方式、戦後は凝集剤を使う急速濾過方式、最近は水源の汚染で高速浄水処理方式が主流となっています。急速濾過は土や粘土、大腸菌を凝集剤で沈殿させ、砂の層で濾過して塩素消毒する仕組み。高速浄水処理は、生活排水に有機物や農薬などが多量に含まれる現状に対応して登場しました。これは電気でオゾンを発生させて有機物質を分解し、活性炭で化学物質を吸収させる方式です。だが、この方式は維持・管理費用がかさみ、水道料金値上げに結びつきます。

 縦割り、地域割の弊害

 問題は、水道が厚生労働、下水と河川管理が国土交通、環境、農林水産、経済産業の各省に別れ縦割り行政になっていることと、自治体が地域割りで水の利権が対立していることです。国民の生命や農作物の生育に関わる水の行政は、一元的に処理されなければなりません。私は所属する衆院厚労、農水両委員会で水問題と真剣に取り組みたいと思います。

 “湯水のごとく”贅沢

 それにしても列島渇水は困ったことです。94年には西日本を中心に水不足が深刻化し、福岡市では約300日間の給水制限で市民が苦しみました。日本人は古来から“湯水のごとく”水を使う贅沢な習慣があり一朝一夕には改まりません。OL、女高生が登校前に洗髪する「朝シャン」やシャワーを使うのは日常となり、節水などは毛頭考えられません

 洗面器一杯の水

 フランスでミネラルウオーターや香水がはやるのは、硬水が多く、まずくて飲めない事情と、中世以来節水に心がけ、洗面器一杯の水で体を拭いていたから香水が必需品になった、と昔聞かされました。また、東南アジアの一部では、「一流ホテルでもオンザロックは飲むな。氷に雑菌が入っていて危ない」と忠告されます。その点、日本は恵まれています。

 二段方式の節水対策

 ダム建設の中止が叫ばれる今日、少雨傾向が強まっていることは皮肉な現象ですが、世界的な異常気象によりお隣り中国などでは砂漠化が進んでいます。日本でも産業排水を循環させて再利用したり、雨水を水洗トイレや冷却用水として使う公共施設や企業が増えていますが、安全な飲み水と、風呂・洗濯など生活用水や工業用水とを区別してサービスする水利用の二段方式も節水対策として検討する時期にきているようです。