第234回(8月16日)辞任要求の集中砲火 初の衆参論戦
  猛暑お見舞い申し上げます。菅政権初の衆参両院予算委員会は2〜5日の4日間開かれましたが、首相は野党の挑発に乗らず、消費税など重要な政策についても「財政再建は一歩たりとも引くつもりはない」などと曖昧な答弁に終始しました。これは、8月末に迫った米軍普天間飛行場の辺野古移設の場所・工法を巡る日米合意や9月14日に確定した民主党代表選を無事乗り切るため、意図的に低姿勢を貫いたもので、ねじれ国会では「与野党の合意形成に努める」ことを繰り返し強調し、本格的論戦は秋の臨時国会に先送りしました。参院選の敗北を総括する民主党両院議員総会で、辞任要求の集中砲火を浴びた首相は「党代表選で皆さんに判断(審判)を頂く」と最後に出馬表明して逃げ切りました。代表選は小沢、鳩山両グループが連携するか、それとも鳩山Gが分裂・草刈り場になるかが勝敗の分かれ目です。対岸が火だるまで、一層の猛暑を感じますが、私は元気いっぱい国政に励んでいます。皆さんのご健勝を祈るとともに変わらぬご支援をお願い申し上げます。

西岡参院議長に自民白紙投票
 7月30日開幕の臨時国会は、民主党の西岡武夫議運委員長を参院議長に、自民党の尾辻秀久参院議員会長を同副議長に選出、2日から4日間の衆参予算委質疑を展開して8日に閉会しました。自民党は議長ポスト獲得を目指し、野党7党の合意形成を図りましたが、公明党など一部野党が「慣例通り、議長は比較第1党の民主党、副議長は第2党の自民党から出すべきだ」と主張して西岡氏を支持、自民、たちあがれ、新党改革の3党が敢えて議長には白票を投じました。委員長ポストの配分は、参院選前が民主党9,自民党6,公明党2でしたが、自民党の要求で国会運営の要である議運委員長ポストを民主党が明け渡したため、民主党9,自民党7,公明党1になりました。議運委は本会議の日取りや法案審議の優先度を決める関門で、本会議は議長の職権で開けますが、議運委員長が反対すれば混乱は必至です。「ねじれ国会」は自公政権下の2007年に続き、戦後5回目になりますが、参院の17常任委員会のうち、与党が過半数割れになった委員会は、参院選前の6に対し、今回は16に増え、委員の半数が出席しなければ委員会審議に入れません。野党が反対する法案は委員会審議中から滞る可能性が強く、郵政改革法案など重要法案が掛かる秋の臨時国会は早くも波乱が予想されます。

首相低姿勢、部分連合に期待
  このため、民主党は、「野党の皆さんに謙虚に対応」(枝野幸男幹事長)、「しっかり頭を下げ、円満な国会運営に努める」(樽床伸二国対委員長)とひたすら低姿勢ですが、法案が参院で否決された場合、憲法規定の「60日後に衆院で3分の2以上の賛成で再可決すれば成立」との「60日ルール」がなかなか適用できない現状にあります。衆院は現在欠員2で、慣例で議決に加わらない議長を除けば、3分の2は318議席。与党は現在民主・無所属クラブが307,国民新・新党日本4の計311で、あと7議席足りません。そこで、菅首相は国会開会日の30日に異例にも記者会見し、「ねじれ国会をマイナスばかりに捕らえず、与野党が合意する政策は実行が可能になると前向きに受け止めたい。案件ごとに丁寧に説明し、議論したい」「財政再建はどの政党が政権を担当しようと避けて通れない大きな課題だ。まずは我が党の考えをまとめて、超党派の話し合いの場が可能かどうか検討したい」と述べ、政策のパーシャル連合(部分連合)推進に期待感を示しました。枝野幹事長も98年のねじれ国会が紛糾した際、小渕政権が民主党提出の金融再生法案を丸飲みして収拾したことを引き合いに、合意形成・話し合い決着の審議を強調しています。

1党欠けても野党戦線は崩壊
  しかし、野党共闘にも不利な点があります。参院の勢力分野は民主・新緑風会106,国民新3の与党計109に対し、自民83,公明19,みんな11,共産6、たちあがれ日本・新党改革5,社民・護憲連合4、無所属5の野党計133ですが、「1党でも欠けると、野党戦線が崩れて与党が有利になる」(川崎二郎国対委員長)、「野党7党が揃ってこそねじれが起きる。だが、何でも共闘というのは難しい。案件ごとだ」(谷川秀善参院幹事長)と自民党幹部が口を揃えるように、無所属を除く参院での野党会派は計128で、過半数の122議席を6議席上回っています。共産と社民・護憲連合は計10議席あって、自民党とは外交・安全保障など政策面での隔たりが大きく、法案の賛否で一致した行動は取りづらい状況にあります。従って、谷垣自民党総裁も開会日の両院議員総会で、国会運営や政策実現に主導権を握る決意を表明しつつも、「『日銀総裁が空席でも知ったことか』という国会運営をして良いはずがない」と述べ、是々非々の態度で責任ある行動を取り、政府・与党に対峙する姿勢を明確にしました。これは民主党が08年のねじれ国会で日銀総裁人事に同意せず、戦後初の空席に追い込んだ悪しき前例を懸念し、述べたものです。

検察審の議決見守る小沢陣営
  菅代表の任期切れに伴う民主党代表選は9月14日に決定。8年ぶりに衆参国会議員413人と地方議員、それに5月末現在の党員(約5万2千人)・サポーター(約30万人)によるポイント制の投票で争われます。続投の意思を表明した菅首相には、前原誠司国交相、野田佳彦財務相、岡田克也外相、玄葉光一郎改革相、長妻昭厚生労働相らがいち早く支持を表明、仙谷由人官房長官、枝野幹事長も前原グループに所属しており、閣僚・党執行部の大半は首相支持で固まっています。しかし、小沢一郎前幹事長の陣営は東京第5検察審査会の第2回議決が代表選後に出される見通しになったため、小沢氏自身に出馬を求める声は高まらず、海江田万里衆院財務金融委員長ら“だミー”候補の擁立を模索中です。海江田氏は3日、衆院議長公邸で作家・辻井喬氏の講演会を開き、横路孝弘、江田五月衆参両議長、荒井聡国家戦略相、小沢氏側近の松木謙公国対筆頭副委員長らが出席しました。さる4月に小沢氏を「起訴適当」と議決した第5検察審査委員11人のうち、5人は31日に任期終了し8月1日に入れ替わったばかり。2度目の議決で11人中8人以上が「起訴すべきだ」と判断すれば、小沢氏は強制的に起訴されるわけで、それまで小沢氏は動くに動けず、代表選に出馬し勝利しても、党内で除名運動が起きかねない状況にあります。

連携か分裂か?鳩山Gが鍵握る
  首相は無事再選を果たし、9月20〜22日に米国で開かれる「国連ミレニアム開発目標サミット」と23日から始まる国連総会の一般討論演説に意欲を見せていますが、小沢、鳩山両グループの戦略が読めず苦慮しています。鳩山前首相は「菅首相は代わったばかりだ。しっかりやって欲しいと現時点では思っている」と“現時点では”の留保付きで続投支持を表明していますが、鳩山グループ幹部の小沢鋭仁環境相は2日、「21世紀国家モデル研究会」を発足させ、国会議員40人と代理出席を含め67人が参加、これにも松木謙公氏は出席しました。小沢Gの150人と鳩山Gの60人が連携すれば代表選の大勢は一挙に決しますが、鳩山Gが分裂し「草刈り場」になれば首相の思う坪です。鳩山氏の側近・松野頼久前官房副長官は7月末、小沢氏支持議員の会合に出席し、「小沢氏の代表選出馬が望ましい」と主張。8月19日に鳩山Gが軽井沢で開く研修会への小沢G参加を呼びかけています。一方、6月の代表戦に出馬した樽床国対委員長は3日夜、勉強会を発足させ、小沢氏側近の樋高剛衆院議員ら20人が出席、会長に樽床氏、会長代行に三井辨雄国対委員長代理、幹事長に松本剛明衆院議運委員長を充てました。松野頼久氏はこれにも参加しています。樽床、三井、樋高、松本4氏に細野豪志幹事長代理、松井孝治前官房副長官、伴野豊衆院議員を加えた7氏は、今回引退した高嶋良充前参院幹事長が「7人の侍」と名付けた小沢氏側近グループ。渡部恒三元衆院副議長命名の反小沢「7奉行」に対抗する若侍たちです。川端達夫文科相ら旧民主党系Gも独自候補を擁立する構えを見せています。

総括の両院総会で退陣論噴出
  このように非主流派の「反菅」運動は活発化しています。参院選の敗北を総括する民主党両院議員総会は7月29日、2時間に渡り開かれ、首相の責任論が火を吹き首相は針のむしろに座らせられました。首相は冒頭、消費税率引き上げを巡り「不用意な発言で皆さんに重い選挙を強いた」と陳謝しましたが、出席者からは「最高司令官が戦争で大敗北した責任を取るのは当たり前だ。秋の臨時国会で(参院に)首相問責決議案が出たら可決される。内閣は死に体。首相をあまり代えたくないのが国民の声だが、さりとて内閣を支持していない」(川上義博氏=参)、「54議席を目標に44議席。幹事長が他党と連携すると言って足を引っ張った。辞任すべきだ。首相自身が責任を取るのは当然」(中津川博郷氏=衆)、「唐突は消費税だけでなく、いきなり政策が降ってくる。官僚的になった」(前川清成氏=参)など小沢Gから首相退陣論が噴出しました。だが、最後は9月の党代表選まで現執行部体制を継続し「9月に党内の審判を仰ぐ」ことが了承されました。執行部が提出した参院選の総括文書は消費税での首相発言が「国民に唐突感を与えた」ことを第一の敗因に挙げ、参院選公約が不明確で衆院選政権公約(マニフェスト)の約束を放棄したとの誤解を生じたことも敗因であると率直に分析しています。

「解散で信問い直す」谷垣総裁
  だが、子ども手当や高速道路の無料化などバラマキ政策は財源不足が明確になり、事実上破綻していることを国民は見抜いており、鳩山前首相と小沢氏のトップ2の「政治とカネ」問題や米軍普天間飛行場移設の迷走劇に国民が呆れたことが敗因であるのに、総括文書はほとんど言及していません。菅政権は小沢グループを刺激するのは避け、忍の一字・低姿勢で代表選まで逃げ切ろうとしています。自民党は2日からの衆参予算委で谷垣総裁、石破茂政調会長が陣頭に立ち、@民主党マニフェストの虚構性A鳩山、小沢両氏の「政治とカネ」問題Bブレ発言の多い首相の政治姿勢C景気回復と財政健全化D米軍普天間飛行場移設問題――など山積する政策課題を徹底追及、「衆院解散で信を問い直すべきだ」と迫りました。また、自民党が秋の臨時国会に提出する財政健全化責任法案には、「与野党協議会の設置が明記されている」とし、対応姿勢を質したところ、首相は「大変重要な提案だと聞いている。真摯に受け止め、前向きに検討するよう指示したい」と答えました。予算編成のヤマ場に開く秋の国会は攻撃材料が豊富で、一大決戦場になると予想されます。なお、自民党は11日、初めて投票により参院議員会長選挙を行った結果、中曽根弘文前外相と谷川秀善参院幹事長が同数の得票となり、くじ引きで中曽根氏が会長に選ばれました。