第233回(8月1日)民主党内抗争激化 小党は連携活発化
 参院選で大敗した菅政権は7月30日に臨時国会を召集。参院正副議長の選出と衆参両院予算委を4日間開くだけで6日に閉幕、概算要求基準(シーリング)に基づき2011年度予算編成に着手しました。民主党内では参院選の敗因を巡り小沢グループが枝野幸男幹事長らの責任を追及すれば、すかさずアンチ小沢陣営が小沢一郎前執行部の選挙戦術に誤りがあったと応酬するなど党内抗争が激化、9月中旬に行う代表選は険しい様相を深めています。ただ、第5検察審査会が小沢氏の「強制起訴」という2度目の議決を下せば、厳しい世論の批判を招くことから、小沢陣営は慎重な動きを見せています。首相は困難な国会運営を予測し政策の部分連合を模索していますが、政局のキャスティングボートを握ろうとする躍進・みんなの党はこれを拒否。連立与党の国民新党も連立を離脱した社民党と「政策協議会」を設置、立ちあがれ新党と新党改革が統一会派を結成するなど連携の動きが活発化しました。自民党は民主党代表選のお家騒動をじっくり見守り、重要法案のかかる秋の臨時国会で戦端を開く構えです。変わらぬご支援、ご叱正をお願い申し上げます。

国家戦略室を助言機関に格下げ
  政府は7月27日、「各省1律1割削減」のシーリングを決め、8月末までに各省が予算要求するなど、11年度予算編成作業を本格的にスタートさせました。昨年一旦廃止したシーリングを復活させたのは、鳩山前政権で予算が膨張した反省を踏まえたことと、前国会で「政治主導確保法案」が成立せず国家戦略室を予算編成の中核とする「局」への格上げが実現しなかったためです。同室は予算編成から外し首相の助言機関(シンクタンク)に格下げされましたが、同室の創設に深く関わった松井孝治前官房副長官(政調副会長)は「官房長官が財務相、党政調会長と予算編成するなら、財務省主導の自民党内閣と同じだ」と再考を求めました。だが、首相は「官邸主導で予算編成することに変わりはない」とし、国家戦略局に代わり経済・財政政策を協議する「新司令塔」的組織を内閣官房に設置しました。政府は既に財政再建の道筋を示した中期財政フレームで、国の一般歳出に地方交付税を加えた基礎的財政収支(プライマリーバランス)の対象となる歳出を10年度当初予算の規模と同じ約71兆円に抑えるとともに、新規の赤字国債の発行を約44兆円に抑える目標を打ち出しています。シーリングはこの基本方針に沿って提出されました。

結局は財務省の官主導編成か
 自民党時代のシーリングは、省庁や政策ごとに一定の要求の上限額を設け、さらに重要施策に予算を多く配分する重点枠を別途設ける手法を取っていましたが、民主党は「閣僚別」に要求枠を設け、各大臣に自分の役所の予算査定を行わせる方針です。だが、高齢化で社会保障費は1・3兆円増えるうえ、子ども手当や農家の戸別補償制度などで数兆円規模の歳出増が見込まれており、予算要求で減額要求する省は一つもなさそうです。民主党からはバラマキ政策用に2兆円の特別枠が要求されましたが、政府は成長分野に重点投資する「元気な日本復活特別枠」を「1兆円を相当程度に超える」規模で設定、その配分先は公開で行う「政策コンテスト」などを経て、最終的には首相が決定することにしました。しかし、10年度予算の実態を見ても、歳出総額92兆円のうち税収は37兆円だけで、税外収入をかき集めても不足する44兆円は国債発行に頼るしかありません。おまけに国と地方を合わせた長期債務は862兆円でGDPの181%。国民1人当たり160万円の借金で、このまま放置すればギリシャの二の舞いになるとして、首相は選挙中に消費税率引き上げに言及しました。11年度も税収と歳出のギャップは数兆円に達すると見られ、結局は財務省が厳しく査定し、官主導の予算編成となりそうです。自民党は財源無き予算編成を厳しく追及する方針です。

8年ぶりサポーター参加代表選
9月中旬予定の民主党代表選は任期満了に伴う選挙で、2002年以来8年ぶりの党員・サポーターが参加する本格的な選挙になります。自民党が総裁選実施前の2年間、年額4000円の党費を納入して投票権を得るのと違って、民主党の党員は年間6000円の党費を払って投票権と党広報誌を毎月2回受け取ります。だが、サポーターは2000年から18歳以上を対象に年会費2000円を納入すれば、投票資格だけが得られることになりました。同党の衆参両院議員412人が投票する1票は2ポイントに換算され、地方議員の100ポイントはその割合によって各候補に配分され、党員・サポーターには300の小選挙区ごとに計300ポイントが与えられ、各選挙区を制した候補がこの1ポイントを獲得する仕組みです。このため、各グループは昨年から納入期限の5月末までサポーター集めに懸命な努力を続けました。サポーター集めは小沢氏が幹事長を務めた当時が最も多く、小沢氏側近はその票が小沢氏側に流れると見て、「選挙で大敗したのに首相、幹事長が責任を取らないのは認められない」と、対抗馬擁立に意欲を示しています。

小沢氏万死に値、離党勧告を
7月16日に党本部で開いた参院選総括の政調拡大役員会では、小沢氏サイドから「(菅首相の)消費税の話が突然出て、有権者に罵倒された」、「何故首相が勝手な発言を繰り返したのか」など首相批判が相次ぎ、大勝した09年衆院選政権公約(マニフェスト)を修正して臨んだことに参院選の敗因があるとし、参院選マニフェストを引き続き政権運営の指針とすることに異論が出されたそうです。しかし、民主党静岡県連会長の牧野聖修衆院議員は「選挙責任者だった小沢前幹事長の責任は重い。万死に値する罪だ。政治とカネの問題もあり、執行部は即刻、議員辞職勧告か離党勧告すべきだ」と訴えました。記者団には「余力を1人区に回せば良かった」と述べ、2人区の多くに2人の候補を擁立した小沢氏の参院選戦略が大敗の原因だったとの見方を示しました。渡部恒三元衆院副議長も同日、小沢氏が検察審査会の議決で「強制起訴」になった場合について「起訴されれば最高裁で無罪が判明するまで休むしかない」と記者団に述べました。同党の倫理規則では、過去に刑事責任を問われたり、不祥事を起こした議員は除籍処分とした例が多いものの、今年起訴された石川知裕衆院議員は処分せず、離党届を受理しています。前原国交相は「通常国会の時には(小沢氏)自ら、衆院政治倫理審査会に出て説明しても構わないと言っていた。潔白を証明するならしっかり説明責任を果たして頂くべきだ」と記者会見で語りました。

改造・党役員人事で首相続投
「強制起訴」なら、小沢氏自らの出馬は困難視され、小沢グループはその場合、「“ダミー”候補を立てて戦う」との主戦論に傾いていますが、首相支持グループは「再選後に、落選した千葉景子法相の後継など内閣改造・党役員人事を決めて再出発する」と首相続投の戦略を描いており、両派の対立・不協和音は深まるばかり。問題は首相がねじれ国会をどう乗り切れるかです。策士・亀井静香国民党代表は「1丁目1番地」の郵政改革法案の成立と、与党国会運営の中軸を押さえようと素早く動き出しました。国民新党の下地幹郎幹事長は7月14日、社民党の重野安正幹事長と会談し、衆参両院での統一会派を正式に提案しました。下地氏は@労働者派遣法改正案成立A郵政改革法案成立B沖縄の米軍普天間飛行場移設問題で「県外・国外移転」に努力――の3項目で政策合意する案を提示、重野氏は消費税増税、憲法審査会始動、国会議員定数削減の3点に反対することを合意に追加するよう求めました。だが、社民党は15日の常任幹事会で検討した結果、沖縄県選出の照屋寛徳国対委員長が「普天間の県内移設を容認している国民新党と組んだら、11月の沖縄知事選は戦えない。統一会派を組むなら、沖縄県連は中央との関係を凍結する」と主張したため、「衆院では拒否、参院では前向きに検討」との方針を決めました。

社民党に拒否された亀井戦略
 衆院の会派は民主党307,社民党7,国民新党・新党日本4で、3会派を合わせると318議席。慣例で採決に加わらない横路孝弘議長と欠員2を除くと、参院で再可決できる「60日ルール」の「3分の2」の議席が確保できます。最優先課題の郵政改革法案を成立させようとする亀井静香代表らしい戦略です。これを先読みした照屋氏は「3分の2を取るための数合わせに加わるべきでない」と反発し、結局、重野氏は同日の下地氏との再会談で、予算や法案について意見交換する「政策協議会」の設置と、定期的な党首・幹事長会談を開催することで基本的に合意しました。自民、公明、みんなの党も国会共闘の動きを始めました。3党の幹事長、国対委員長は15日、都内のホテルで会談し、公平・公正な国会運営を衆参両議長や民主党に求めるほか、参院正副議長や議運委員長などの人選は参院側の判断に委ねることを申し合わせました。また、予算委の開催に加え閣僚の委員会出席を求め、豪雨災害、口蹄疫、米軍普天間飛行場移設などの問題で本格的な論戦を挑もうとしましたが、与党は紛糾を恐れて衆参予算委を2日ずつ開き、6日に閉会します。

立ちあがれ・改革が統一会派
 一方、立ちあがれ日本の平沼赳夫代表と新党改革の舛添要一代表は15日、参院で統一会派「たちあがれ日本・新党改革」を結成すると発表しました。新会派は立ちあがれ日本の藤井孝男氏ら3人と、新党改革の舛添氏ら2人の計5人となり、通常国会では参院本会議の代表質問が可能になります。このように野党は結束を固め、民主党との対決姿勢を強めていますが、民主党も公明党、みんなの党との連立組み替え、または消費税で自民党、公務員改革でみんなの党、子ども手当で公明党、と政策ごとの部分連合(パーシャル連合)を必死で模索しています。社民党は参院選で議席を減らしたうえ、辻元清美前国土交通副大臣が27日に離党を表明したことで、福島瑞穂党首ら執行部の責任論が浮上しています。8月は普天間飛行場の移設問題も日米折衝の大詰めを迎えており、今後の政局は波乱含みの展開が予想されます。