第232回(7月16日)自民大勝・民主惨敗 政界再編の波
  6月11日の参院選は民主、国民新の連立与党が過半数を割り込んで惨敗、自民党が改選議席を大幅に超えて大勝しました。国民は10ヶ月にわたる内外政治で迷走、暴走を続けた政権運営に厳しい審判を下しました。菅首相は敗因の消費税アップに関し「十分な説明が出来なかった」と反省しつつも、続投に意欲を表明。躍進したみんなの党などとの連立組み替えや政策の部分連合などを模索し、政局を乗り切る姿勢を示しました。しかし,@8月末の米海兵隊普天間基地移設合意を巡る日米折衝A9月の民主党代表選B郵政改革など重要法案山積の臨時国会C11年度予算編成――など航路には多くの三角波が立っています。民主党内では枝野幸男幹事長らの責任を問う声が上がるなど党内抗争がさらに激化し、9月の代表選では小沢グループが対抗馬を擁立する動きが強まっています。自民党はねじれ国会で秋の臨時、来年の通常国会ともに問題法案の成立を阻み衆院解散・総選挙に追い込む方針です。伸びなかった「第3極」の新党も合従連衡を目指すと見られ、年内から政界再編のうねりは一挙に高まると予想されます。お陰様で、県連会長として長崎選挙区の金子原二郎候補を支援し大差で当選させて頂きました。皆様には厚くお礼申し上げるとともに、激動政局が続く折り、さらなるご声援、ご鞭撻を宜しくお願い申し上げます。

連立組替えなければ国会麻痺
 選挙区選73,比例選48の計121議席を巡って争われた参院選で自民党は1人区29の戦いで、21勝8敗と圧勝。改選議席(38議席)を大幅に超えて51議席に伸ばし、改選第1党になりました。民主党は首相が設定した勝敗ラインの改選議席(54議席)を下回って44議席に激減、非改選議席を含めても連立与党は過半数(122議席)を割り込み大敗、千葉景子法相も落選しました。国民が閉塞社会の中で感じた「1回だけやらせてみるか」との民意を理解できない民主政権の奢りが、墓穴を掘ったものです。自民は再生へ向けて確かな一歩を踏み出しました。与党は衆院(定数480)で311議席(民主党307,国民新党会派4)を確保しているものの、参院が否決した法案を60日後に衆院で再可決できる定数の3分の2(320)には至らず、憲法規定の「60日ルール」が適用できません。臨時国会では国民新党が「1丁目1番地」と名付ける郵政改革法案や政治主導確保法案、道路財政特措法改正案など前国会で積み残した重要法案が山積しており、躍進したみんなの党や公明党にすがって連立を組み直すか、政策のパーシャル(部分)連合に合意しないと成立は困難です。このため、枝野幹事長は選挙戦の最中からみんなの党に、「公務員制度改革や行政改革を一緒にやりたい」と盛んに秋波を送りましたが、みんなの党の渡辺喜美代表は「アジェンダ(政策課題)が違う。政治主導と言いながら官公労に支えられ、菅の草冠が取れた官(僚)主導の政権だ。顔を洗って出直せ」と拒否しました。

自民は議長や主要ポスト要求
 通常国会では、予算だけが衆院優位で30日後に自然成立しても、同様に60日ル−ルが適用できないため、予算関連法案は1本も成立出来ず、菅内閣は総辞職か解散・総選挙しか選択肢はありません。今月末に開く臨時国会を正・副議長の選出、院の構成だけの短期間にとどめ、郵政改革法案などは9月末に召集する臨時国会で処理する方針を決めたのも、こうした苦しいお家の事情によるものです。自民党は、参院議長はもとより主要ポスト獲得に向けて他野党と調整に入りました。その前に、来年度予算の概算要求、8月末に期限が来る普天間飛行場の辺野古基地移設の場所・工法に関する日米協議も締結しなければなりません。基地移設では、「最低でも県外か国外」(鳩山前首相)と沖縄地元を喜ばせた挙げ句、散々迷走の末、県民に謝罪して元の辺野古合意案に戻っただけに、地元の怒りは大きく、移設容認派の仲井真弘多沖縄県知事が11月の知事選で再選されるまで、決着は持ち越される公算が大です。予算編成では昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)で約束した子ども手当の満額支給2万6千円(5・4兆円)、米作以外の農業個別所得補償(1兆円)、高速道路の無料化(1・3兆円)などに充てる財源が無く四苦八苦しています。

財源難で消費税増税に舵切る
 子ども手当は今年度の半額支給(1万3千円)に若干上乗せし、一部は保育所整備などサービス分野に配分し雇用を拡大する考えですが、@ガソリン税など暫定税率の廃止を地球温暖化対策税(仮称)創設に振り替えるA50個所で社会実験を始めた高速料金無料化の規模を拡大B平日上限2千円への高速料金制度導入の再検討――など詰める予算の課題は山積しています。同党はバラマキ政策が歳出増の原因であることを棚上げし、税金の無駄遣い廃止で、「2010年度7・1兆円、11年度12・6兆円、12年度に16・8兆円の財源を生み出す」と公約しました。だが、事業仕分けで生み出した財源はわずか6900億円。無駄遣いの廃止でも3兆円しか捻出できず、菅首相は4年間封印したはずの消費税アップに舵を切りました。首相は自民党が選挙公約に「消費税を10%へ引き上げる」と打ち出すと、「待ってました」とばかりに飛びつき、「参院選後に超党派で本格的な議論を始めたい。自民党提案を1つの参考にしたい。公約と受け止めて結構だ」と選挙中の記者会見で語りました。これには前号でふれたとおり谷垣禎一総裁が「自民党の答案を菅(カン)ニングし、丸写しにした」と怒るなど、各野党が一斉に批判しました。

バラマキ政策の尻ぬぐい許さぬ
 「脱小沢」路線の菅首相と亀裂を深めた小沢一郎前幹事長は「4年間上げないと約束したのに、カネがないとの理由で実行しないなら改革は出来ない。選挙は敗北だ」と選挙中に激しく批判、亀井静香国民新党代表も「庶民いじめの消費税増税は断固許さない」と連立解消の構えを見せました。首相が目指す野党との政策連携(部分連合)に対し、谷垣総裁は「超党派の協議は元々自民党が言い出したことで基本的には受けて立つ」と言いつつも、「民主党は公約の基本で『子ども手当、高速料金無料化などは無駄を削れば財源が出るので4年間は上げない』と言って来た。財政、財政構造の見方が狂ったからといって、バラマキ政策の尻ぬぐいをさせるのは許せない。国民に謝罪し、同党内で論議し基本設計を示さないと協議には応じない」とまず“詐欺的公約”の後始末を求めています。このように消費税増税を含む税制改正論議は、年末に向けて予算編成の焦点に浮上してきました。

8月後は複雑怪奇政局と予言
 小沢氏は先の代表選で原口一博総務相か田中真紀子氏を擁立しようとしましたが、田中氏が「国政の中間選挙で、選挙管理内閣への出馬は嫌」と固辞したため、自主投票にしました。だが、9月は本気で対抗馬を立てて戦う構えです。ただし、今月末にも第5検察審査会が小沢氏の「起訴適当」を再議決した場合は、直ちに起訴されて刑事被告人になるため、アンチ小沢派が小沢氏の除名運動起こすことは間違いありません。そうなると、小沢氏自らの出馬は消えますが、原口、田中氏らのダミーを立てて、キングメーカーの「闇将軍」に徹するか、「壊し屋」宜しく党を割って分裂するか――の2通りが予想されます。民主党の勢力図は小沢グループ(G)160人、鳩山G60人、菅G60人、前原G(凌雲会)60人、野田G40人などですが、仮に鳩山G全員が小沢G支持に回れば、同党衆参両院議員約420人の過半数を制することになります。代表選にはこれまで未出馬の枝野幹事長、野田佳彦財務相も立候補する可能性があり、こじれた場合は連合系やタカ派・ハト派に核分裂、「第3極」新党も巻き込み政界再編成が進行すると思われます。大勲位・中曽根康弘元首相は、読売のインタビューに、「8月以降は複雑怪奇政局」と予言しています。